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17話 来年の事を言うと鬼が笑うというが

伊賀の天然水炭酸水と言う商品がありますが、あれは湧き水に炭酸ガスを注入した物です。

日本の天然炭酸水は軟水が多いため、すぐ気が抜け持ち運びには不向きです。和歌山市に超炭酸泉が有るらしいですね。

 熊野暦11月下旬


 野外演習から帰った俺は北畠の里に来ていた。

 ここには奇兵隊の借り隊舎が置かれ、大工の息子達は里の建築を猟師()の息子達は食料調達に向かっている、預かった子供はここで面倒見ることになった。


 北畠の里なら、なにかしら新しい事を試す予定なので、この子達もやりたい仕事が見つかるかもしれない。


「おに~ちゃ~ん」


 うずめが忠勝(鹿)に乗ってやって来た。熊野町から30kmほど離れたこの場所も鹿に乗れば30分ほどで着く。まあ乗れるのは今の所うずめだけだが……


「なんだあれ かっこいい」


「私も乗りたい」


 かっこいい? 鹿に乗るのが? 俺はアレに乗るのにまだ抵抗を感じていた。


 うずめが子供たちに囲まれ質問攻めにされている、困っているうずめを見れるのは中々レアだな。


「おにーちゃん助けて」しょうがないなー


「みんなうずめが困っている 今日はこの位にしておけ」


「「は~い」」


 試しに鹿に乗せた所、一人を除いて皆ぐったりしていた、やっぱり鹿って跳ねるんだな。


「やっぱり お姉ちゃんみたいに上手く乗れないや」


「どお、うずめは偉いでしょ~」


 鹿に乗れた少年の名は耕太と言う、今度 幸村(鹿)を任せようかな、うずめも弟分が出来たら成長するかもしれない。


 うずめは熊野さんから様子を見て来いと言われここに来たらしい。

 様子と言われてもな、順調に里造りはいってるし、そうだ醤油はどうなってたかな?1

 俺は高台にある地蔵堂サイズの醤油蔵に行き、醤油の味をたしかめた。


「やっぱりここが一番かな」 


 大豆と小麦半々の割合で仕込んだ物がちょうど良かった、あと偶然の産物で米麹が出来た。

 米麹は肉を漬けると柔らかくなるし、日本酒が造れるな。仕込み水にもこだわりたいが……


 あるじゃない、この前行った名水百選。養老の滝の水を使おう、悪乗りしてビールも造るか?


 たしか、焦がしたパンを水瓶に落とした物が発酵したのが起源なはずだ。日本でやると麹菌が強すぎて麦焼酎になるかな?


 ビールは飲めないが、無性に炭酸飲料が飲みたくなって来た。この辺りで炭酸水が湧く所は伊賀か?

 直線距離で40km山有、いや山を迂回して鈴鹿~亀山~伊賀の名阪国道のルートが無難かな?


 今度の演習地は伊賀だな、冬に山越えは危険なので春になってから行こう。

 炭酸水はそのまま飲んでも美味しくないから、何か味付ける物を考えながら年を越すとしよう。


 今月は、醤油と日本酒生産の目処が立っただけでも儲け物だな、この里は実質熊野さんからの借金だから早く返さないと。


 恩も、義理も、借金もある、熊野さんには頭が上がらないな。そろそろ5月に仕込んだ真珠が出来るんじゃないか? 少しでも借りが返せるといいのだけど……


 うずめを送りがてら俺も熊野町まで帰ることにした。


「お姉ちゃんまた遊びにきてね」


「うん またくるよ~」


 どうやらうずめも子供達と仲良くなったようだ。


 熊野町へ帰ったら直ぐに熊野さんに相談して見た。


「熊野さんそろそろ真珠の様子を見にいきませんか?」


「そうだな、出来てると良いが」


 俺達はアコヤ貝を沈めた場所に行き貝を割って確かめたら、ちゃんと真珠が出来ていた。


「おお 仁できてるぞ」


「やりましたね熊野さん」


 全体の7割ほどであるが真珠が出来ていた。少し引き上げるタイミングが早かったのか、仕込む時期が悪かったのか、問題点はある物のまずまずの成果だ、来年はこの養殖を鳥羽で行なうことになる。


「そういえば仁、こんな物が取れたんだが」


「鰹じゃないですか」


「正確には譲ってもらったと言う方が正しいか……」


 聞くところによると、和歌山県の方に名草一族と言う女当主が治める一族が居て、そこから買ってきたらしい。熊野町以外にも豪族は居たんだな、交易路を開かないといけないな。今の所海路で交易できるから、それほど重要ではないが……


 で鰹が有り熟成途中とは言え醤油が有る、お刺身タイムの時間だ!!


「熊野さん、農家からわら貰ってきて」


「おう、わら焼きを作るんだな」


 鰹のわら焼き別名土佐造り。いや、たたきと言った方がいいか?


 鰹の身を包丁の背で叩いた事が語源だが、柔らかい鰹の身を叩いたら身崩れするから気を付けろよ。

 捌いた鰹の身に竹串を刺して藁で炙り冷水で冷やす。冷水は熊野家の万能家電こと天音さんにスタンバって貰った。


 にんにくとしょうがが無いのは残念だけど、さあ食べようか。


 最初に藁で炙った燻製香が鼻にぬけ、回遊魚独特の血の味と甘みが口の中に訪れる。醤油に浮き出るくらい乗った油の舌触りは滑らかでいて、クドクない味わいになっている。


 塩で食べる方法も有るが、やはり醤油は良い、久しぶりに味わう刺身の味は格別だった。


 あっという間に鰹の半身が無くなった。


「おい仁 残りはどうするんだ」


「かつおぶしを造ろうかと」


 鰹節は一度茹でた鰹を天日干しして、冷暗所に置いておくと麹カビが生え蛋白質をアミノ酸に分解してくれる。燻すと良いらしいが、なにで燻すか解らないからこれで我慢だ。


 ここまで来たら昆布も欲しいが、東北以北にしか存在しないので不本意ながらわかめで代用するしかない。


 北海道か……遠いな、恐らくロシア系日本人が住んでると思うんだけど、なんとか交易出来ないかな?

 来年は志摩地区の開拓で木材が大量に出る予定だから、大型船を猿田彦にでも依頼しておこう。


 今年もあと一ヶ月、来年は見通しの明るい年になりそうだ。



 おまけ 「勇者の挑戦」


 まな板の上には一匹の魚が置かれている、釣りをする人には餌取りとして有名で、よく突堤で干からびている魚だ。


「本当にやるのか 仁」


「ああ」


「無茶しやがって」熊野家の姉妹も心配そうにこちらをのぞいていた。


 まず、頭をはずし内蔵を取り出す。


「熊野さんこいつオスだ」


「ああ……当たりだな」


 この魚の白子は非常に美味とされ、現代においても高級食材だ。高級すぎて食べたことない人の方が多いかもしれない。白子はしばらく水にさらしておく。


 そして皮をはぎ、塩でよくぬめりを取る。これは一度茹でてから食べるか、酢の物にすると美味しいので、ポン酢が無いのが悔やまれる。


 ここからは普通の魚と同じで三枚おろしにすが、よく水で洗わないと大変な事になる。


 怖いので30分位水にさらしておいた。


 ちょっとつまみ食い、弾力の有る身の独特な食感と強烈な旨みが舌を刺激する、個人的には刺身が一番好きだ。


「うまっ」


「仁、俺にも味見させろ」


「いや、しばらく待った方が良い」


「そ……そうだな」

 1kg以上有る魚は、死後硬直が解けると同時に蛋白質がアミノ酸に分解されるので、しばらく置いたほうが美味しいけど、今回は別の理由だ。


 安全も確認されたので、みんなで食べようか。

 この魚の主な調理方法は刺身・鍋・唐揚だけど、食用油はまだないので唐揚はおあずけだ。

 寒くなってきたこの時期、みんなで鍋を囲むのはいいね。言い忘れていたが一応豆腐も作っておいた。


「大丈夫だとは思うんだけど、舌がピリッとしたら飲み込んじゃ駄目だからね」


「「「美味しい~」」」 どうやら熊野一家は満足してくれたようだ。

 そのあと〆に雑炊にして食べたんだけど、やっぱり海苔と卵がほしいな。こっちでも養鶏するかな





 これから、フグの美味しい季節ですがフグの無免許運転はやめましょう。


「この内蔵分何かに有効利用できないかな?」

 フグの毒は青酸カリの850倍の毒性で、人だと1~2mg摂取すると死ぬ。死ななくても神経毒なので、麻痺とかの状態異常を起こし、その毒は現代の医療技術を持っても解毒不可能だ。


 魔法の有るこの世界では解毒可能かもしれないけど……


 少なくもオーク狩りには役に立つだろう、毒矢でも作るか?

 あと、毒性のある物はこの当たりで取れるのは、トリカブトか? 新美南吉著の童話「ごんぎつね」で彼岸花が咲いてる描写があったな、たしか知多半島が舞台のはずだ。アレの球根からも毒が取れるな。


 矢で思い出したけど、異世界転生物の戦記ではボウガンを造るのが最初の無双だったりするが、ここでも造るか、今まで竹素材しか無かったから張力が足らず断念してたんだけど、オークの牙と竹の複合素材なら行けるかもしれない。






ふぐのテトドトキシンは水溶性でよく洗うことが条件です。

一応これを毒矢に転用していた事がある様なので、オーク狩りに一役買ってもらいましょう

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