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16話 野外演習 

栗は日本及び朝鮮半島南部原産。


蓮はインド原産だけど、なぜか2000年以上前の地層から出て来た。ちなみに府中郷土の森公園でその古代蓮が見られる。

古代のひょうたんは、瓜見たいな形をしている様ですが、本作品では現在の形で想定しています。

 熊野暦11月中旬


 最近熊野さんのシゴキがきつい。何故だ? たぶん最近数合打ち合える様になって、これなら勝てるかもと、調子に乗ってたのを見透かしての親心だろうか?


 奇兵隊の連中も最近体力が着いて来たので、演習がてら岐阜との県境(揖斐川上流方面)に行くことになった。

 途中で魔物相手にフォーメーションを確認し、藪や森を切り開き道を作る。

 野営が有る以外はいつもと同じ作業だ。


 その野営も……


「若、良い鳥が取れましたぜ」


「じゃあ、それで田楽味噌焼きでも作ろうか」


「じゃあ、あっしはこっちで米でも炊いときますね」


 俺は土魔法で簡易のかまどや土鍋などを作れるので、特に苦もなく野営ができる。

 日本は山林地帯が大部分をしめるので、川に沿ったルートを取れば薪や飲料水に困ることは無かった。

 奇兵隊の中には猟師の息子も居るので、隊員に弓の使い方を伝授するついでに狩を頼んでいる。困ることと言えば、草木で作った簡易テントの寝心地が悪い位だ。一応簡易携帯食として乾燥させた牡蠣の周りに、煮干の粉末を練りこんだ味噌を塗り焼いた物を作った。


 これを竹筒に入れお湯を注ぐと味噌汁になる。


 熊野領ではカツオが取れないので鰹出汁ではなく、いりこ出汁だ今度トビウオを使ったアゴ出汁にも挑戦しよう。


「若、こんな物が取れましたぜ」


「栗じゃないか、お米炊くの少し待って、栗ご飯にしよう」


 豊かな山林が広がる日本においては旅の途中でもご馳走が食べられる、よく中世が舞台の小説に出てくる、干し肉とカチカチのパンをスープでふやかすスチュエーションに憧れたが、文化の違いと言う奴だ。味噌汁とパンの組み合わせは無いしな。


 ちなみにご馳走の語源は来客時に山野を()せ走り、食材を集めてもてなした事から来ている。


 次の日俺達は、岐阜県養老郡付近に来ていた。ここには養老の滝があるな。


 居酒屋チェーン店じゃないぞ。むしろ、そっちが有った方が個人的には嬉しい。


 要介護老人と若者がこの辺りに住んでいて、養老の滝の水を飲ましたら若返ったと言う伝説が起源だ。現代でも名水100選に選ばれるこの滝の水は、寿命を伸ばすご利益があると言われ老人が集まる東海地区の巣鴨だ。


 ここに着たのは、もしかしたらファンタジー的な展開が有るかも知れないと思ったのともう一つ。


「若、これですかね?」


「ああ、それがひょうたんだ。それは乾燥させると丈夫な飲み物入れに成る。そしてその形は微妙にちがい世界に一つだけだ、お前達そう言うの好きだろ? 気に入った物を持っていけ」


 この辺りはひょうたんの産地だ、夕顔の仲間なのでかんぴょうも作れるかもしれないが……

あれそこまでして食べたいか? 携帯食としては有りなのでとりあえず種は確保しておこう。


「若、前方にオークが居ます」


 そう言われた方を見ると、1km位先にオークが居た。


「――ここに落とし穴を作ろう」


 俺は土魔法で地面を陥没させ、それを隠すように指示し、そしてオークを挑発しに前に出た。


 竹槍を木に打ちつけ、音を鳴らすとオークが迫ってきた。すかさず俺は後方に逃げ後し穴の有る方に向かった。



「掛かったぞ…… 囲んで叩け」 


 奇兵隊の連中が取り囲んで攻撃を加えると、オークは耐え切れず逃げ出した、もう少し深く掘るべきだったな。


「若 追いますか?」


「少し待て、後をつけて集落が有るか見極めよう」


 オークの後をつけ山に入ること1時間、開けた場所に草木で作った家が有り、オークが5体住んでいた。


「若、カチコミますか?」


「そうだな…… 奇兵隊の錬度を見たいし行こうか、気付かれない様に背後に回れ」


 俺は隊員を5人ずつ3組に分け指示を出した、そして俺はオークの意識をこちらに向けるべく正面から向かう事にした。


「オーク達に恨みは無いが、此処で槍の露に成って貰う」

 

 食べ物の恨みなら少し有るかもしれない。


 俺は雄たけびを上げ竹槍を打ち鳴らし注意をひき付けた、猪脅し(ししおどし)みたいなまぬけな音だったが何とか食いついてくれた様だ。


「さあ かかってこい」


 木を振り回すオークの攻撃を一歩後ろに下がってかわし、その反動で勢いを付けた攻撃をオークの胸に目がけて放つと見事にオークの胸に刺さり絶命した。


「意外とこの技使えるな」 もう一つの技も試して見たいが……


 俺は奇兵隊に突撃の合図を送り、こちらに来る一頭に意識を向けた、仲間をやられた怒りをあらわにしてこちらに突進してくる、オークはこの攻撃が厄介だが急な方向転換が出来ないのが弱点だ。


 余裕を持って交わし横っ腹に突きを入れるが皮を貫いただけで、弾かれてしまった。


「力が流れて上手く突き刺さらないな、威力の有る攻撃なら行けそうか?」


 しかし、それをどうやって入れるかが問題だ、俺は体をやや横に構えオークを挑発した。


「その程度か、そんなんじゃ仲間の仇はうてないぞ」


 よし掛かった、今度は突進をギリギリで交わしオークの突進力を利用し斜めから槍を突いた。

 槍はオークの腹を深く抉り致命傷には至らずともかなりのダメージを与える事に成功した。


「このまま削りきるのが無難なんだが……」


 修行の成果は出ているが、ハッキリとした何かは掴めずにいた。

 オークは少しよろめいた体を建て直し突っ込んで来た、俺はその間に魔力を練る。

 オークの突進を避けここぞとばかりに魔法を発動。


「土槍」


 斜め下から突き出た土が、槍がオークの腹にカウンタ気味に突き刺さる、槍に磔のようになりオークが絶命した。


「何とか勝てたか・・・」2対1とかの状況なら不覚を取るかも知れないな。


 どうやら奇兵隊の連中もオークを倒した様だ、彼ら初めてのオーク戦なので安全策を取って5人体勢にしたが、出来れば2頭相手取っても勝てる様にするのが目標だな。


「若がオークの意識を逸らしてくれたので楽に倒せました」


 奇兵隊の連中は遠距離からは弓を使い挑発し、突っ込んで来たら散開して槍を浴びせる形で削り切ったみたいだな。


「初めてのオーク戦ならまずまずなんじゃないか、あの突進は油断すると命に関わる慢心せずに行こうさあ帰ろうか」


 来た道を戻っていると、先日紙の原料探しと岐阜方面の様子を見に行っていた犬飼たちと鉢合わせた。


「若 只今帰りました、今日はどうしてこんな所に」


「ちょっとした演習とオーク退治だ、そちらの首尾は?」


 子供を連れている時点で大体の予想はついたが、岐阜市周辺の今年の収穫はイマイチだったらしい。口減らしに会う予定だった子供を引き取ってきたようだ。紙の材料は現在の岐阜県関市辺りに多く自生していたので、(こうぞ)の皮と同じ重さの食料と交換条件で採取を依頼したみたいだ。これで多少なりとも来年の収穫までの支援が出来そうだな。


「山間部の方(飛騨地方)については何か聞いてないか」


「あっちは猿の化け物が居るようでだれも山に入らないようですね」


 こっちの世界には、飛騨の夜叉猿が本当に居るらしい、行く前に知って良かった勝てる気がしない。

「この人数で徒歩移動もつらいな、筏を作って川を下ろう」


 筏を作る作業を大工の息子達に任せ、散歩していると川べりの湿地帯にとある物を見つけた。


「あれは 蓮じゃないか?」


 蓮の根はもちろんレンコンだインド辺りが原産で日本にはないと思っていたが……


 すぐさま人を集めレンコンを採取した。こればかりは熊野領で栽培できないので、この辺りに交易の中継点を作るのも有りかも知れないな。


 俺達は川を下り桑名の村まで下って来た。ここでし止めたオークを対価に、一夜逗留させて貰う事にした。


「養蚕の方は上手く行ってますか?」


「一応 繭は取れたがこれはどうしたら良いんだ?

「一回茹でて水の中でほぐすと良い様です、中の蚕は珍味と言われてますけど個人的には食べたくないですね」


 2時間ほどゆでて水洗いして、冷ました繭を指で開いて行くと縦にはほぐれないが横には伸びたのでそのまま伸ばして行くと、スイミングキャップ位の大きさになった。


「これこんなに伸びるんだな凄いわ」


「これを乾燥させたら何とか糸が紡げそうです」村人たちも養蚕に光明が見えたようだ。


 養蚕と言えば岐阜県が有名だけどそちらもお願いするかな、合掌作りで有名な白川郷の建物の二階で蚕を飼っていたらしいから、桑の木と蚕は山間部に有ると思うけど……


 後に、岐阜県の一部は紙と繊維の町として発展していく。


 翌日船を出して貰い、熊野町まで送ってもらった。

 これで岐阜との交易路が出来そうだ。桑名の村も養蚕と貿易の中継点として栄えるんじゃないかな。


 今回行った川沿いの、現多度郡や海津町周辺にも何か利益が出る物があれば良いな。



 おまけ 「チーズを作ろう」


 俺は重りを載せて固めた、カッテージチーズを片手に考えていた。


「どうやってこれを乳酸発酵させようか?」


 現世にいた時、牛乳をパックごとラッパ飲みして冷蔵庫に放置していたら、ヨーグルトが出来て居たことがあったな。


「熊野美人って乳酸発酵なんじゃないか?」


 そう思ったおれは、お盆にカッテージチーズを載せ天音さんの元を訪ねた。


「じ…… 仁さん、こ…… こんにちわ」


 何か天音さんの様子がおかしい。声のトーンが違う、風邪でも引いたのだろうか?


「天音さん突然で悪いんですけどこれを噛んで、お盆に吐き出してくれませんか?」


「いいですけど……」


 そう天音さんは言うと後ろを向き、お願いした事をやってくれた。


「で これどうするんですか?」


「お酒と同じで発酵させるとチーズに成るかなと」


「も もしかして 仁さんが食べるんですか?」


「もちろん」

 下手したら食あたりしそうな物、他の人に食べさす訳ないじゃない。


「だ……ダメです。絶対ダメ、返して下さい!」


 天音さんにお盆をひったくられてしまった。きっとアレだな、風邪引いてるからうつさない様に気を使ったんだな。顔真っ赤だったし熱も有るかもしれない。


「しょうがないですね、じゃあうずめにでも頼むか?」


「う……うずめもダメです!」

 うずめも風邪か? この方法はあきらめるか?


「ごめんな無理言っちゃて、体に気を付けてくださいね」

 今日の天音さん何か変だったな余り無理しないと良いけど……


 漬物が酸っぱくなるのも、乳酸発酵かなこの線で試してみるか?





昨日知ったことなんだけど、口噛み酒を造っているヒロインはうちだけじゃなかった。

「君の名は」のヒロインが既にやっていたんだ。パクりじゃないからね。


あと、鈍感系主人公を使ってヒロインをイジリ倒すのは中々おもしろい事に気付いた、読み専の時はさっさとくっつけよと思っていましたが……

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