15話 万能家電 一家に一台天音さん
日の目を見ない、メインヒロインにテコ入れ。
熊野暦11月上旬
俺はいつもの日課を終え、熊野神社の敷地にやってきた。
天音さんと話合った結果、「魔法をより多く使い、勘を研ぎ澄ます方法が良いんじゃないか」と言う話になった。
ついでに、どんなな魔法が出来るか実験する事になった。
「こんにちは天音さん」
「あら、仁さん今日は早いですね」
「日課の訓練も、体が慣れて来たのか早めに終わってね」
「私は体を動かすのが得意じゃないので、仁さんが羨ましいです」
そんな、取りとめの無い会話をした後ふと気付いた。
今、天音さんは神社の本殿の横に有る、おみくじとか売ってそうな小さな建物の中にちょこんと座っている。
そこの窓? から暖かい空気が流れてきていた。
「何かこの辺り、暖かく有りません?」
「今日は寒いので魔法で部屋を暖めているんですよ」
「ちなみに夏は?」
「逆に涼しくしていますね」 エアコンいらずだな。
今日はお勤めも、暇なので実験を手伝って貰う事にした。
俺は瓶に水を張り、この中の水を沸かす事ができるか聞いてみた。
「ちょっと難しいけど大体のイメージは解ります やってみましょう」
そう天音さんは言って、瓶に手をかざしてから約3分後に、お湯が沸いた
「あっ、これ便利ですね」
あっ、便利ですね。じゃねーよ!! 何でさらっとやっちまうかな。
ちなみ俺が以前やった時は、10分かけて人肌位の温度だった。
「次は冷まして見ましょう、多分冬の雪をイメージする感じかな?」
「はい 少しまってて下さいね」
それから3分後瓶に氷が浮き始め、五分後には瓶の水が凍っていた。
だんだん面白くなってきた。今度は人指し指と親指で円を作り、この位の氷は出せるか聞いてみた。
「ん~」そんな可愛らしい声と共に両手の平から氷がガラガラと音を立てて出てきた。
イメージとしては 千と千尋の神隠しに出てくる顔無しだな
さすがに「仁、氷なら有る、これで仁と遊ぶ」とか言わないけどな。
と言うか、今絶賛遊んでいる最中だ。
冗談はさておき、この人万能調理器具だな。
IHコンロに・製氷機・コツを掴めば土鍋で炊飯もしそうだ。あとは何か有るかな?
俺は土魔法でかまどを作り、その中を囲炉裏のイメージで暖めてもらった。すると・・・
「これは内部温度 200℃以上有るんじゃないかな?」
オーブンの機能も備えていた。これ食材の確保さえ出来れば、現代の料理はすべて出来るんじゃないかな。
現在ある物でも作ろうと思えば作れるけど手間が段違いだ、この人が居れば料理の幅が大分広がる。そう思うと俺は感極まり、天音さんの手を握り、「俺と結婚して下さい」と言ってしまった。
「結婚?」
「今、言った事は気にしないで下さい」
この辺りに結婚の概念が無くて助かった。
熊野領周辺では、ウマが合うから一緒に居ると言う、ゆるい夫婦環境だ。子供が出来た家庭は何故かずっと一緒にいるが、俺は子供を持った事がないのでその辺りの感情の変化は解らない。
う~ん、気まずい何か話題をかえなければ。
「このかまどを使って、何か作りましょうか」
「これで美味しいものが出来るんですか?」
美味しい物と言われれば期待にこたえねばなるまい。
土かまどのオーブンと言えばピザだよね、面倒だけど作るかな。
肝心な生地なんだけど・・・
よく転生物の小説で、ぶとうなどの天然酵母からパン生地を作っているが、実は無くても出来る。
パンの発祥自体が、焼く前のパン生地を外にしばらく放置していたら何故か膨らんでいたと言う所から始まっている。つまり小麦粉自体に発酵作用は起きる。効率的に行なうならば、麦芽の入った全粒粉を水で溶き暖かい所に放置すれば発酵が始まる。
その発酵で出来たアワを生地に練りこみパン種を作る。これに小麦粉と水を足して、発酵と言う工程を何度か繰り返すとパンが出来る。
味は小麦粉オンリーなので、うどんに似た味と成るがこれはこれで美味しい。
セモリナ粉とオリーブオイルを使わないので、正確にはピザとは言えないが、代用品としてバターを利用し、インドのナンの様な物を作りピザ生地にしようと思う。
トマトソースは無いのでベシャメルソースで作ろう。
「天音さん、牛乳とバターと小麦粉取って」
「はい、これですね? これで何を作るんですか?」
「ベシャメルソースさ」
「べしゃめるそーす?」
いきなり洋食系の単語を言われても要領を得ないよな、とりあえず見てもらうことにした。
バターと小麦粉を同じ重さではかり鍋で炒めていく、たまねぎがあれば先に炒めてから作るのだが、たまねぎは無い。
ある程度小麦粉が炒まったら、少しずつ牛乳を入れてかき混ぜて行く。
「だんだん粘りが出てきましたね、これは魔法ですか?」
「これは小麦粉に含まれる、グルテンが作用して粘りが出てくるんだ、天音さんもやって見る?」
「はい」
ここまで来ると後は牛乳の分量だけなので、天音さんに練って貰い横から俺が牛乳を入れる事にした。
「いいですね もう少し練りましょうか」
「はい」
「これで、塩などで味を調えれば出来上がりだ。今回は隠し味に味噌と蜂蜜を使おう」
甘みと風味を出す為に隠し味を使ったけど、たまねぎが有れば必要無いんじゃないかな?
あと、チーズの様な物も作っておこうか。
牛乳を温めてから、酢(熊野美人を強発酵させた物)を入れると蛋白質が固まってきた。
「なんでこれ固まるんでしょう 不思議ですね」
「俺もこの辺りの事情には詳しくないんだ」
この固まった物をカッテージチーズと言い、それを乳酸発酵させるとチーズになるが、時間がないのでそれは次の機会だな。(あくまでも一例 他の方法が主流)
出来たカッテージチーズを天音さんに冷やしてもらい、蜂蜜をかけて食べて見た。
「「美味しい」ですね」 いい仕上がりだな、カッテージチーズはデザートとしてもいける。親の話だとワインとも相性が良いらしい。
さあ、先ほど作ったかまどに行こう。
先に作っておいたナン生地にベシャメルソースをひき、上に牡蠣・浅利・伊勢海老など、この辺りで取れる魚介類をのせ、香りの良い野草とカッテージチーズを乗せオーブンで焼く。
「海の幸のグラタンピザの完成だ」
「わ~ 何か良いにおいがする~」
タイミングよく、うずめも来たので3人で食べて見た。
ナン生地からかすかに香るバターの風味と、ベシャメルソースのクリーム感そして乗せた具材から出た旨みと微かな塩分、重くなりがちな味を野草がひきしめ全体の調和を取っていた。
「お兄ちゃん、これ美味しいよ。もっと焼いて」うずめは気に入ったようだ。と言うか語尾延ばさずに話せたんだな・・・
「ん~」天音さんは言葉にならないと言う感じで、恍惚の表情を浮かべていた。二人とも気に入って貰ってなによりだ。
「こんな美味しい物を作れるなんて 仁さんは凄いです」
「天音さんが居ないとここまで上手にはできませんよ」
実際に、微妙な火加減はこの人無しでは無理だな、あまり甘えてばかり居られないから、早く自分でも出来る様になならいとな。
この料理は、今後熊野家の定番メニューとなる。
その日の夜 熊野邸
「お父様、結婚とはどう言う意味ですか?」
「あ 天音、何処の馬の骨に言われた」
「仁さんですが・・・」
「あの野郎、まああのヘタレにしては頑張った方か、結婚と言うのは男女の仲になりたいとか、アレだよアレ」
「要領を得ませんね、ハッキリとおっしゃって下さい」
「その、なんだ、チョメチョメしたいて事だ」
「お お父様、な 何をいってるんですか? 仁さんがそんな事言うはずが有りません」
「俺もそう思うが・・・」
天音は仁がそう言うはずが無い。そう思いつつも、もしそうだとしたらと思うと、夜も寝られなかった。
「もしそうだとしたら私はどう答えるべきなんでしょうか?
私と仁さんが、ま まぐわい的な・・・ 昼間ですよ? ありえない、でも・・・」
「はぁ、私は仁さんの事をどう思っているのでしょうか?」
そのころ、仁は・・・
「勢いとは言え、天音さんに変な事言っちゃったな、聞き流してくれたらいいんだけど、天音さんと結婚か・・・」
以下 妄想
天音 「あなた、5番卓うどん二人前」
仁 「あいよ、焼き魚定食上がったよ。うずめ、3番卓に持ってって」
うずめ「はぁ~い」 「おまたせ~」
モブ 「うずめちゃん今日も元気だね」
熊野 「よお仁、調子はどうだ」
仁 「あっ 熊野さん、ぼちぼちですよ」
熊野 「この客入りでぼちぼちなら他の店は商売上がったりだ」
モブ 「ちがいねぇ はははは」
仁の妄想は天音と違い、平和だった。
おまけ 「ヨーロッパにおける、中世までの業務用調理台」
少し本格的に料理が出来そうなので、猿田彦と鍛冶職人に頼んで業務用コンロ(プラックストーブ)を作った。
まず、石の壁でコの字型を作りその上に鉄板を乗せる。
鉄板の右下を薪で加熱すると鉄板が熱せられ、右側が強火、左側が弱火と安定した火力が得られる
これで鍋とかを温める(フライパンも)
左下の何も無い空間はオーブンだ。火力調節が難しく熟練が必要だが、なんとか現代の調理と遜色ない物ができる。
あとは、吸排気口などを微調整して完成だ。
鉄板で直に肉を焼いたりすることがある為、手前側にゴミを受ける所があれば良いかな。
やはりラブコメ要素は難しい、この作品にハーレム展開はあるのか? 請うご期待。
熊野領では通い婚です、男が女の家に通う感じ。行きたくなければ行かなくてもいいし、甲斐性があれば複数の女性と関係を持つ事も有る。逆に女性も浮気の概念が無く、逆ハーレム展開も有る。
江戸時代までの田舎ではこのシステムだったんじゃないかな? 少子化対策ばっちりだし。




