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13話 伊勢コレクション

 熊野暦10月中旬


 今俺は、20名ほどの若者に囲まれていた。

「若 何かあっしらに出来る事はありませんか?」と集まってきた様だ。


 この熊野領はまだまだ土地が余っているので、次男や三男が後を継げないと言うことはないのだが、どの時代にも親の敷いたレールの上を走るのが嫌な奴は一定数いる、ここに居るのもそんなやつらだな。


 最近俺が何か新しい事を始めたので興味を持ったらしい。

 来年から北畠の里も始動するし人手は有れば有るほど助かる。

 しかもここに居るのは、農家や猟師・鍛冶職人・大工とかの息子たちで、素人の俺よりその道に詳しいはずだ。むしろこちらからお願いしたい位だ。


 あと最近町の人たちから、若とか旦那と呼ばれる様になっていた。

 何故そう呼ばれるのか解らないが悪気はなさそうなのでそのままスルーしている。


 集まった若者達の多くが、太郎さんやら一郎さんとかが多く覚えにくかったので、君は加藤あんたは伊藤と、勝手に苗字を付けさせてもらった。


 なぜかその若者達は、感動したように拳を握りしめ「俺は加藤次郎」とか言っていた。

 この地域の同名の多さに何やら不満を持っていたようだ。


 親の用意した仕事を良しとせず、こんな所にに来る奴だオリジナリティーとかに価値を見出して居るのかも知れない。


 こいつら勅使河原とか長宗我部とか名前付けたら、歓喜の舞を舞いそうだ。


 何をしてもらおうかな、井村屋の従業員はナシだなと感じていた。

 野郎どもの暑苦しいノリも嫌いではないが、主力商品が「農村の母」なので従業員は女性が良いと思う。


 行商人として愛知県 岐阜県の販路拡大及び情報収集をお願いしようかな?戦国時代で言う所の忍者の様な物だ、本拠地は伊賀にしよう。


 俺もまだまだ中二病が抜けないな。


 熊野領では、塩の生産も主力産業の一つなので、内陸部には需要はあると思うが・・・


 片道切符じゃ儲けは出ないな、向こうで何か特産品を仕入れて来て欲しい。あゆちの里の長は養鶏成功してるかな?


 あと、こちらが欲しいと言う需要の有る物出ないといけないな。何かあるか?


 拠点を置いていた織田信長には悪いが、岐阜ってパッとしないいんだよね、三重県も五十歩百歩か?


 岐阜の特産品? 長良川の鮎? 鮎はこっちでも取れるな、今は鵜飼漁もしてないだろうし、各務原(かがみはら)キムチ?有る訳ない


 おお、美濃和紙があるじゃない。たしか一時期(南北朝時代)に、紙のシェア日本一だったんじゃないか?


 紙の材料又は紙その物を、塩と引き換えに交換してくるのは有りだな。


 いい加減『うちの妹が下着を履いてくれない件』を解決しないとな。

 実際に血は繋がってはないが、そう言っても過言では無い位の絆は感じている。


 若と呼ばれ、ふと自分が思考の渦に飲まれていた事に気付く。


「どうしたお前たち」


「この集団に、名前を着けて欲しいんでさぁ」


 名前か・・・ この前のオークの件もあるしある程度の戦闘集団で有ってほしいな。


 海援隊?坂本竜馬(創始者)が暗殺されてる縁起が悪い、後に三菱の創始者に乗っ取られそうな所も駄目だ、そもそも陸路が主体だしな。


 幕末・・・ 戦闘集団・・・ 新撰組?剣術の集団では無いな 俺槍主体だし・・・


「奇兵隊でどうだこう言う字を書く」


「「「おお~ 奇兵隊いいですね」」」

 喜んでくれてなによりだ 傾き者(変り者)の集団の様な物だ、あながち間違いでは無いだろう


 俺は奇兵隊の連中を連れて熊野邸にやって来た。


「よお仁って、何だそいつらは・・・」


「何か慕われちゃてさ、仕事を手伝ってもらおうかと思い連れてきました」


「今度は何するんだ?」


「紙を作りたいんだけど、こうぞとみつまたと言う木を知りませんか?」


「神社の敷地に生えてるぞ」


 聞くところによると紙の製造は熊野さんも考えた見たいで、一応神社の中で木は育てていて作り方も知ってはいたが、需要がなさそうなので今まで保留してたらしい。


「紙なんか作ってどうするんだ?」


「それは後でのお楽しみですね」


 俺は猿田彦と伊勢のご夫人たちの協力の下紙の製造に着手し、そして何枚かの紙の試作品が出来上がる。


 紙は一応麻でも作れるが、表面がざらざらになるため加工が面倒で、(こうぞ)三椏(みつまた)の皮を原材料にした物に取って変わられる。


とある木の根から出る 粘りを利用し繊維を接着するが、今回は米から澱粉を取り使用した。


 新米の始める季節、古米がだぶついて来るので皆に持ち寄ってもらった。


「今回はこれで服を作ろうと思います」


 一般的にはなじみがないが、江戸時代は紙でも服や寝巻きを作っていた。


 良く時代劇に出てくる侍が、服の上から着ているている逆三角形の奴が和紙だ。


(かみしも)と呼ばれている。


 それと同じく服の上から着る一種の、お洒落アイテムをつくろうと思っている。今回は試作品なので糊止めだけど、麻糸などで縫ってもらう事になるだろう。


 そして肝心な下着だが、こちらは洗えないので勿体ないが時と場合によっては使っても良いとの事だ、所謂勝負下着だな。


 なればと言うことで、悪ノリして細い紙でレース状に編んだ物や、極限まで薄く漉いて向こう側が透けそうな物も作って見た。


 ご婦人達は顔を真っ赤にしてはいたが、まんざらではなさそうだ。


 洗える耐久性の有る下着を望まれたので、成牛や子牛の皮を使用した者を上下セットで提案してみた。


 個人的にはうちのお姫様(うずめ)が、せめて外出時は履いてくれれば素材は何でもよかった。


 男の意見も聞きたいので、奇兵隊の中から彼女持ちの人を選び、感想を聞いたりして試行錯誤の末、完成の目処が立った。


 そして、恥ずかしがる天音さんを拝み倒し。伊勢コレクション(伊勢コレ)(表)が行なわれた。


 秋の紅葉と一緒に漉いた紙で季節感を出した服、笹を鳥の形に切った物を漉いた可愛らしい服、草木で染めた紙を格子状に編み鮮やかな服などと、着せ替え人形の様に衣装を変える天音さんは、最初は緊張していたが、最後の方は観客に手を振る位にはノッていた。


 娘のあでやかな姿に熊野さんも感動していた。


 そして、その日草木も寝静まった頃、かがり火の元、伊勢コレクション裏(下着部門)が行なわれた。


 モデルのご夫人と観客には、仮面舞踏会の様な仮面を被って貰いプライバシーの保護をしてもらった。


 もう結構な時間なのに、会場は熱気に包まれていて、丁字に作られた舞台に男達はかぶりつきだ。

「色っぺー」とか「マジ、ヤバイっす」とかの感想が耳に入って来る。


 観客には女性も来ていて、大胆な下着に黄色い悲鳴を上げて大喜び、モデルのご夫人もノリノリでセクシーポーズを決めていた。


 娯楽の少ないこの時代、皆が満足が出来るイベントが出来て良かったと思う。


 好評だったので伊勢婦人会による、夏の伊勢コレクションが行なわれる事が決定した。これで、こうぞの需要が高まれば、岐阜県とも交流出来るな。










このあと服飾会社が出来たら、松坂屋とか伊勢丹とか呼ばれるかもしれませんが、多分出てこないと思います。

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