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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第4章 天下布武(岐阜・滋賀南部編)
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83話 両面宿儺 前編

熊野歴4月下旬


 思いのほか時間を喰ってしまったが、当初の予定通り恵那に向かおう。恵那は俺たちの世話になった土岐から土岐川を上流に向かい15km程進むと有る。この道の途中に有るタマが温泉を掘った辺りには人が住めそうな平地が広がっているが、雑草が生え放題で開拓するのには時間が掛かりそうだ。


 土岐は焼き畑農業をしているので、人口が増えればこの辺りも農地や住宅地になるのかもしれないな。ちなみにタマが大豆を植えた際に広範囲の雑草を焼き払ったので、土岐ではタマは神の様な扱いを受けている。山の中腹に祠を建ててタマを祀るらしい。


 土岐と恵那は交流が有るので、人の足で踏み固められた細い道がつながって居が、今後の事を考えると鹿車が通る位の道を作った方が良いのかもしれないな。


 これをすると発展すると言うビジョンは有るんだけど、何をするのにも人手が足りないんだよね。熊野さんの持ち込んだ現代米のおかげで食料自給率は高いので、山で狩猟をして定住していない人達の手を借りたい所だが、今のところ狩猟を主体に生活している人たちとは狩猟協会を通じて取引をしているだけだな。


 ここから先は、うんざりするほどの山が続く、山に住む民を束ねる王様見たいなヤツは居ない物だろうか?


 考え事をしながら道を進んで行くと恵那に着いた。この辺りは木曽川の中流に有り豊富な水量により稲作が進んでいる。もしかしたらこの地に住む人達は、岐阜から焼き畑農業をしながら徐々に北上して、新天地を見つけた人達なのかもしれないな。


 今回は、土岐で作った新作の焼き物を幾つか持って来た。自分で提案しておきながらこの焼き物が売れるかどうか自信がないんだよね。従来の物よりは良いとは思うが、現代人として世の中に億を超えるお椀が有るのは知っているが、陶器にべらぼうな価値が付くイメージが沸かない。


 こればかりは当たって砕けろだよな。近くの村に向かい村長に相談してみよう。

 柵と水掘りで守られた村の前まで行くと、門は閉ざされておらず容易に中に入る事が出来た。奈良と同じくオークなどの化け物対策なのかな。たしかこの辺りは猿の化け物が出ると聞いて居たがソイツへの対策だろうか?


 村の中心部の広場を囲むように竪穴式住居が有り、村の奥には穀物倉庫と村長の住居らしき大きな木造の家が有った。山間部に有る村の作りはどこも規模は違えどぼぼほぼ同じだな。一つ違うのは広場の中心部に大きな木造の像が有る事か、近づいて見てみると円空仏か一刀掘りかを彷彿とさせる荒々しい掘りで顔が二つに手が四本の仏像の様な物の彫り物だった。何だコレこの地には仏教が伝来しているのか? 


 熊野さんは伊勢神宮のお膝元の生まれなので神道を重視しているが、この地にマレビトが居たら仏教を取り入れていても不思議ではないが……


 少し気になったので、遠巻きに俺達を見て居た村人に聞いてみた。


「ねえ、あの木彫りの像はなんなの?」


「あれは我らの英雄リョウメンスクナ様だ、それよりお前は何者だべさ」


「ああ、すまない。俺は土岐から新作の焼き物を売りに来た天野と言う者だ。出来れば村長に取り次いでくれると助かるんだけど」


 土岐からの行商人だと知って安心した村人に村長を紹介してくれる事になり、村長の家に向かう途中でリョウメンスクナについて根掘り葉掘り聞いて見た所、今から20年程前にこの村が猿の化け物に襲われた時に、山から突如現れて村を救ってくれた英雄らしい。その縁で山間部に住む狩猟を主体とする一族と交流しているとの事だ。像は両者の有効の証と尊敬の念をこめて広場の中心部に建てられた様だな。


 しかし、顔が二つに手が4本の人間なんか居るのか? あと一対づつ顔と手が有れば阿修羅像だ、昔はこの手の人種が存在したのだろうか? 疑問は残るが村長宅に着いたので思考をやめて、村長と面会をして土岐で作られた焼き物を見せた所、反応は上々の様だ。是非買い取らせて欲しいと言われたが、俺は米はいらないので、何か欲しい物が有れば交換させて貰うと判断を保留した。特に何もなければこの辺りで取れる珍しい鉱石と交換して帰ろうと思う。


 良かったら泊まって行ってくれと言われたので、言葉に甘えて数日逗留させてもらって、この辺りの山で取れる鉱物を探して見ようと思う。奈良もそうだがこの辺りも客人を持て成す習慣が有るらしい。客人と書いてマレビトと呼ぶので、過去この地に訪れた転移者が村の発展に貢献したとかそんな所だろうか? 単に娯楽に飢えていて、遠くで起こった事を見聞きしたいと言う物かもしれないが……


 後者の可能性も捨てがたいので、講談師よろしく板と木の棒を使いバシバシと音を立てながら、奈良で起こったオークの襲撃の物語を尾ひれを付けて話しをした所かなりウケた。この辺りにもオークは居る様で、その恐ろしさをまるで自分達の事の様に感じているようだな。



――翌日


 タマと俺は木曽川流域の渓谷を抜け対岸の開けた土地に向かった。ここでダウジングをして、貴重な鉱物の有りそうな山を目指して山に分け入って行った。しかし、分け入っても分け入っても青い山とは良く言った物だ。完全にこの先は人間の住む領域じゃないよな。山間部に住む人は居るが良くやるよな。


「なあ、主様よ」


「分かっている。もう少し様子を見てみよう」


 山に入った辺りから何か視線を感じるんだ、とは言っても悪意や殺気の様な物ではないので少し様子を見て見る事にした。


 それはさておき、ダウジングの反応の有った場所を少し掘ってみよう。この辺りも地質は粘土層なんだな。少し掘ると粘土の中から六角形をした水晶の結晶が出て来た。どうやらこの辺りに水晶窟が有るようだな。


「変な物を見つけたぞ主様よ」


「これは鉄? いや鉄より何だか重い様な気がするが……」


「タマ、これが何か分からないがもう少し集めて置いてくれ」


「ふっふっふ、ワシがこの石を取りつくしてやろう。任せて置くがよい」


「ああ、頼んだぞ」


 さてと、この監視されている環境も飽きてきたな。

 タマも居なくなったし少し声を掛けて見よう。


「お~い、お前たち覗き見もそろそろ止めて出て来いよ」


 ガサガサと音を立てながら藪の中から、黒曜石の槍を持った10人の仮面を被った男たちが出て来た。仮面はバリ島の神様や鬼のような顔をした牙を持ったデザインだな。何か特殊な信仰でも持って居るのだろうか?


「コイツは驚いた、気配は完全に消したつもりなんだがな」


 言われてみれば、タマは聴力で感知していたと思うが、俺は何で分かったんだろうな。取り合えずナメられてもいけないしブラフでもかましておこう。


「伊達に死線をくぐっちゃいないんでね。それ位の感知は出来るさ」


「ほお、ソイツは面白い。見知らぬ土地の若者よ、尋常に我と立ち会え」


「えっ、なんで?」


「我らの神は強き者を愛する。弱き者にこの山に立ち入る資格はない」

 脳筋かっ!!


 穏便に話し合いで解決したかったが、どうやらこいつ等に認められる為には、強さを示さないといけない様だ。少々面倒だが、自分が相対的にどの位強いのか知りたいからその提案を受けて見よう。取り合えず名乗りの一つでも上げておこうか。


「やあ、やあ、我こそは、東海・近畿を束ねる王ニニギヒコなり」


「我は周辺の樹海を統べる王リョウメンスクナ、いざ尋常に……」


「「勝負!!」」


 


 両面宿儺リョウメンスクナは仁徳天皇の時代に討たれた、飛騨高山周辺から関市までを統べる豪族の名前で、岐阜県山間部に多くの伝承が有り。高山市では宿儺かぼちゃと言うリョウメンスクナにちなんだ商品作物が存在する。


 この話の中では、リョウメンスクナとニニギヒコは役職名で世襲する。

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