第一話 龍の魔女 part3
実はこの作品、昔僕が中学生の時に作ったゲームがあるんですけど、これはそれをアレンジ小説にしたやつなんですよ。その名も「リベリオン=モディフィケーション」……現在のモディフィケーションの二十五年前のお話として作った作品でした。……3DSでリメイクしましょうかね……
「メイティア!村が!」
俺は急いで燃えている村の方へ行こうとしたが、メイティアが険しい表情で俺の腕を強くつかんだ。
「馬鹿!今行ったら確実に奴らに殺されるぞ!様子を見るんだ」
「奴ら?」
村をよく見ると、火に照らされて大きな影が建物に映る。人の形をしていない?ひょっとしてモンスターなのか!?
「……あれは……モンスターなのか?」
「いや、モンスターじゃない。………あれは森にいたプギーマン達だ。決して人には危害を加えない連中のはずだが……やはり奴らもモンスターだったということなのか?カケル、あれは普通の人間では到底立ち向かえない存在だ。できるのはただ逃げることだけ、お前のような奴はすぐに捻りつぶされるぞ」
逃げること……。だが俺はモンスターの事よりもメイティアの態度を不思議に思った。メイティアからは何の緊張感も感じられない。まるでロボットみたいだ。
「だったら………何でそんなふうに冷静でいられるんだよ!?助けなくちゃ駄目だろうがっ!」
俺はメイティアの襟に掴みかかる。だが彼女は顔色一つ変えずに俺の腕を強い力で振り払った。
「私だって助けたい。だからこそ考えている。最善の策をな」
「でも、考えている暇があったら助けなくちゃ駄目だろうが……っ!?」
俺の脳裏にあの日の光景が浮かぶ。大切な物を失ってしまったあの時の事を。
……その直後、俺の足は自然と村に向かって走っていた。メイティアの言葉を無視して走り続けた。
「おい!待てカケル!……っ!」
……ハァ……ハァ……やっと村に着いた。………大きな建物が向かい合っている広場の辺りを見回すと、大きくて毛深いイノシシの頭の人型の怪物がいたどいつも大きな斧を持っていて、見回りをしている。……しかし人の姿は無い。家の中も見たがやはりいない。恐らくもう避難したのだろう……それとも殺されてしまったのだろうか?
「……ウガァ?」
やっべ見つかった!とりあえず建物の陰に隠れて様子をみよう。
「…………ウゴォ?」
「ウグォオ!ゴォォォオオオ!!」
………おかわりですか?私頼んでませんけど?………いやいや冗談考えてる場合じゃねぇ!一体増えた!来たやつはもう一匹に何か言ったようだが、言われた方は凄い怒ってるぞ!……奴の持っている斧に俺の姿が映る。この場所を離れなきゃ確実に殺される!急いでここから逃げよう!
「……気づきませんように……気づきませんように………」
そろーりと足を忍ばせて奴らの背後にまわり距離を取る。その時、
「きゃああああ!!」
女の子の叫び声が聞こえた!急いでその場から離れて声が聞こえた辺りに向かった。
「…嫌っ!嫌ぁっ!来ないでぇ!!」
叫び声の主は茶髪の女の子のようだ、彼女の後ろには高い壁があって逃げられそうにない。しかも足をけがしているようでうずくまっている。そして彼女に近づいているのはやはりあの怪物、……でもこのまま行っても一方的にやられるだけ……何か武器になるようなものを探さないと。……家の中になら武器になりそうなものがあるんじゃないか?
俺は近くの家の窓を映画さながら肘で割り、家の中に侵入する。あった……俺はすぐに壁に掛けてある立派な剣を見つけた。ひょっとこれならいけるんじゃないか?
剣の柄には柄と台座を固定する錠前がついていたが、その辺にあった椅子を二、三回ほど思いっきり叩きつけて壊し剣を取り外した。生まれて初めて触った剣の感想は………結構重い。でもこれで行ける!
「こっちだ!こっちに来い!ほらっ!!」
イノシシ頭達を大きな声で呼ぶ。……おおっ反応した!よぉしこのままこっちに………。
「へぶっ!!………ふぇ?」
突然頭の後ろを殴られたような強い痛みがした。恐る恐る後ろを振り返るとメイティアがこめかみをピクピクさせて立っていた。その鋭い眼光に睨まれて足が動かない。
「何をしている!死にたいのかお前は!」
「メ、メイティア!?俺よりあの、あだだだだっ!!離して!!離してぇ!!」
かなり怒っているらしく俺に組み技を仕掛けてきた!!やられている体勢から考えるにいわゆるコブラツイスト……なんてやっている暇じゃない!!……あ、少し緩んだ。
「それよりもメイティア!あの子を助けてやってくれ!残っている住人はあの子一人だけだ!」
「……あれはセシルか!?もしかして私を呼びに……?……カケルお前は逃げろ。お前がいると…」
「足でまといだってか?」
……自分でも良くわかっている。俺みたいな奴じゃすぐ殺されるだろうな。
「わかってる。でもな、俺はあの子を助けたいんだ!そのためなら例え俺の命を捨てたって!」
「……?何を言っているんだお前は!?お前とあの子はあったばかりのはず!何故お前が命を懸けてまで助ける必要がある!?」
「確かにそうだ!でもそんなの関係ない!助けを求める人がいるんだ!助けなくちゃいけないんだ!」
俺はメイティアを睨みつけた。……そして折れたらしく大きくため息をついた。そして口を開いた。
「……私はあの子を運ぶ。カケルは囮を頼むぞ」
「わかったぜ!」
改めて見れば全部で四体………あいつらさっきので混乱しているな。さっきと同じように…。
「おいっ!!こっちに来いよ!!牡丹鍋にして食ってやるからよぉ!!」
………よしっ!こっちに来た!そのうちにメイティアが女の子を助けに行く。順調順調……もっとやるか。
「どうしたノロいぞ!そんなんじゃ俺を捕まえられないぞ!!ほらもっとこっち来い!!」
「ウゴォ!?ウゴォォォォオオ!!¥」
……怪物は言われた言葉の意味が分かったのか、一匹が大きく腕を振り上げて俺の方にタックルの姿勢で突進してきた!俺は寸でのところで避けることが出来た。突進してきた奴はそのまま転んだが、残りの三体もこっちに来た!……でもその前にこいつをなんとかしないとっ!!
俺は急いで手に持った剣で転んだやつの胸を切りつける。だが手応えがしない!まるで豚肉の脂の部分を切っているみたいだ!起き上がろうとする怪物の肩を足で抑え、確実に倒すために首に剣を突き刺した。
怪物は大きく痙攣をして動かなくなった。……メイティアはどうなった!?
「メイティア!もういいか!?」
「いいぞ!!……カケル危ないッ!!」
「ウグォォォオオオ!!」
後ろから強い殺意を感じ、振り返ると怪物が斧を大きく振り上げていた。俺は反射的に剣で受け止めた__が、衝撃が思っていた以上に強い!腕が折れるんじゃないか!?
「っ!!メイティア!今のうちにその子を外へ!!」
「……わかった。死ぬなよ?」
そう簡単に死ねるか!……でも状況はまずい!さっきの奴がまた振り下ろしてきた。
「ウガァァァアア!
「っ!!……折れたぁ!!?うわぁっ!!」
受け止めた瞬間、俺の持っていた剣が折れた!それを見た怪物は斧を投げ捨て俺の左腕を殴りつける。
「……ハァ……ハァ…いてぇ……!」
……奴らが近寄って来る。……もう駄目かもしれない。俺は膝を地面に着いた。
「奇跡でも起きねぇかな………。俺にもっと力がありゃ……こんなザマには………」
頭によぎるのは故郷の事などではなく、そんな情けない事ばかりだった。まったく……これじゃあ。
《…こえ……か。………聞こえるかっ!》
変だな……誰もいないのに声がした。こんな時に幻聴か?
《貴様!我に気付かぬというのか!貴様の背後だ!》
後ろ?……あぁそういえば俺リュックを背負ったままだったな。リュックのジッパーからあの球が出てきた。……何か光ってないかこれ?
《やっと気づいたか。お前に死なれては困る!さぁ立て!》
……でももう遅い。怪物が目の前に来ている。逃げようにしても体が振るえてマトモに動かない!振り下ろされる拳を目の前にして思わず目を瞑る。あぁもうこれまでなのか。そう諦めかけたその時、突然怪物が大きな唸り声を上げた。……えっ?閉じた目をゆっくりと開けると怪物が大きな火柱を上げて燃えていた。
い、一体何が起きているんだ!?突然の事態に困惑するが、それ以上に頭に響いた声が気になった。。そしてゆっくりと声がした方向に視線を向けると、そこには俺が拾った綺麗な珠があった。……もしかしてこの珠か!?それを恐々と拾いあげると、あの声がまた聞こえはじめた。
《そうだ。我が力によってあのモノは灼かれた。汝、我が力を望むか?》
「……ア、アンタは一体誰だ!?」
《我か?我はお前の奥深くに宿る闇に住まうモノ。光と相反する上位のモノだ。さぁ、我と契約しろ。我と一つとなれば貴様は異界の力を得られる》
手にしていた球が突然砕け散る。そsてその残骸から龍の意匠が入った指輪が出てきた。……一体これは!?
《それは契約の指輪。さぁ決めろ。このまま奴等に嬲り殺されるか、それを嵌めて我と契約し生きるか!?》
「……クッ!!仕方ねぇ!お前と契約してやるよ!!」
もうこれ以上考えている余裕はない。謎の存在に言われるがまま、俺は右の薬指に嵌めた。その瞬間、俺の身体が燃え上がった!
「あぁっ!!熱いっ!熱い!俺の身体っ!!どうなってやがる!?」
《……ありえない………まさかっ!?、貴様、龍の契約者なのかっ!?》
「なっ!?なんだって!?何を言っているんだ!?答えろ」
《……ほぉ……貴様!……面白い!力をお前にくれてやろう!》
俺を包んでいた火が消えた。あれ?俺の身体何もない!?
《前を見ろ!まだ二体いるぞ。怖気づいているのか?》
「まさかっ!いくぜっ!……そういえば名前はなんて言うんだ?」
《ドラゴンだ。真名はまだ明かさん》
「よしっドラゴン!いくぞぉ!」
……ドラゴンと契約したおかげか体に力が湧き出ている!俺は驚いた様子の怪物のうち一体の首に飛びつき腕の力を込める。普通に考えて俺の力なんかじゃこんな太い首をどうにかできないはずだが、
「ググッ……グゥッ!ガッ!?」
そしてそのまま首を捻じり切った。俺が!?これには自分でも驚いた!!こいつがドラゴンの力なのか!?
「あとはお前だけだぁッッ!!」
さっきの奴が落とした斧を拾いあげ、残った怪物の脳天に目掛けて振り下ろした。怪物の血が吹き上げる。
「よっしゃぁあ!!」
勝った……勝てた………でも疲……れた……。……俺はそのまま倒れこむように気を失った。
《ほぅ……なるほど。……向こうの人間にしては面白い奴だ。少しだけこの者の中で眠っていようか……》
……一方そのころ、一人の青年が海岸に打ち上げられていた。……水死体ではない、青年は必死に手を動かそうとしたが、せいぜい砂をかき分けただけだった。そして眠るように意識を失った。
「うっ…ぐぅ…………」
……彼は自分が何者なのかもわからなかった。だが………ただひとつ、ただひとつ覚えていたのは。彼の名前………。………彼の名前はエンデ、この物語のもう一人の主人公。
前書きで書いたようにゲーム(以降原作)が元の作品ですが、原作のメイティアは結構ヤバいやつだったんです。かなりのドケチかつ冷徹、最初に助けた時の反応も「起きたか。……出ていけ」と……。