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第一話 龍の魔女 part1

目覚めた場所は……?


「……ッ!?………ここは?」


 目を覚ますと俺はベッドで寝ていた。どうしてこんな所に?さっきまで俺は公園で子供を撮っていて、それであの光の柱に呑みこまれて、それで………。唐突な展開に頭の中は混乱していた。

 

 とりあえず起きて、ここがどこか確認しよう。そう考えてすぐに体を起こそうとした………がすごくだるい。それでも体を動かそうと必死に全身を動かす。少し風邪でも引いたに違いない、そう思っての決断だった。だが次の瞬間、俺は体中に打撲のような鈍い痛みに襲われて、逃げるように弱弱しく背中をベッドに戻した。だが割られたような頭痛がまるで俺に休憩させる暇を与えないように追撃してくる。

 体は全身の鈍痛と強い倦怠感に支配されていた。でもその一方で、思考だけは妙にはっきりとしている。俺は体を動かすことを諦めて、この状況を整理する事にした。

 

 ……一回落ち着いて覚えている事を思い出してみようか。……そうだ、まず突然現れたあの光は何だったのだろうか?

 ……訳が分からない。いきなり現れて飲み込まれちまったからよく見てなかった。


 ただ間違いなく分かるのは、アレは今の技術なんかじゃ出来ないってことだ。光の柱をあんな風に何もないところから出せて、そしてあんな広範囲にまで広げられることなんて無理に決まっている。それにもし出来たとしても、一般人がたくさんいる中でする訳がない。例え告知されていたイベントだったとしても、あまりに不自然すぎる。

 

 ………もしかして俺、宇宙人に拉致されたんじゃ!?

だってほら、ノストラダムスの予言だと1999年は人類最後の年だったし、ひょっとして俺以外の皆は全員宇宙人に消されて、絶滅した人間のサンプルとして俺が……。……んなわけあるか!そんなオカルト漫画みたいな展開だったら笑ってやるわ!……多分ここは病院か何かに決まってるさ。

 

 被っている布からの視界の端から見える壁から木で作られた小さな部屋だとは分かったが、全てがコンクリートで作られている大都会の東京(ここ)にそんな場所なんてあるのか?首だけを持ち上げて部屋の中を見回すと、俺の頭の方にぎっしりと本が詰まった本棚が二つと、俺の足元の方に本が積み上げられた机が一つ、そして寝ているベッドの向かい側にある扉と、どこか勉強部屋を思わせる質素な作りだった。………もしかしてここは誰かの家なのか?

 

 そう思った時だった。突然机の上の積みあがった本が崩れ落ち、俺は緊張していた事もあってか驚いて、思わずヒッと甲高い声を出してしまった。


「………起きたのか?」


 どうやら俺の声に気付いたらしく、扉の向こうから女性のような声が聞こえた。俺はさっきまであんなことを考えていたせいで怖くなり、被っていた布で頭を隠して声の主を震えながら待つ。


 ……そして部屋の扉がゆっくると開いてあの声の主が入ってきた。驚いた、外国人の女性だ。それも凄い服を着た金髪の姉ちゃん。その姿に釘付けになった俺は布から頭を出した。彼女は俺を見て安堵のような表情を浮かべると、ゆっくりとこちらに近づいてくる。

  

「私が怖いのか?……大丈夫だ。私はお前の敵じゃない」


 怯える俺の手を取ると、宥めるような優しい声でそう言った。そして彼女はそっと俺の喉に手の甲を当てる。……熱でもはかっているんだろうか?ゆっくりと手を離すと、彼女はこう言ってきた。


「まだ熱があるが、この様子だと大丈夫そうだな。念のために熱冷ましの薬を用意しておくから、熱が下がりそうになかったら飲むと良い。……あぁそうだ、私の言う事が分かるか?」


 彼女の言っている事は聞こえているし、内容も勿論分かっている。だが俺は答えられなかった。実を言うと、俺はこんな美人と話した経験なんてあまり無い。しかも外国人の姉さんなんて胸がドキドキして、本当にどう答えれば良いのか分からなかった。それに加えてまだ宇宙人かもしれないと疑念があるし、下手に答える気にはなれない。ここは簡単に答えよう。


「うん、分かるよ」


「そうか。話は通じるようで良かった」


 ……取り敢えずだ。もし自分が生きて帰れた時に書くであろう自伝の為に、この美人(宇宙人)の姿を覚えておくか。

 綺麗な金髪のストレートで顔は少し釣り目の美人。目はカラーコンタクトでも入れているのか瞳が赤い。身体つきはほどよい筋肉質でかなり引き締まっている。……あれだ、いわゆるアスリート体型に近いんだ。


「それにしても、意識が戻って本当に良かった。四日間も寝ていたものだから、てっきりこのまま起きないものかと考えていたよ」


 ………胸はかなり大きい。それもDとかEとか比べ物にならないくらいだ。ぶっちゃけ小玉スイカ……よりもメロンをぶら下げてるのかって思うくらい大きい。着ているのがネグリジェのような服だから、彼女のスタイルも巨乳も余計に強調されている。そんな風に見ていると、彼女は俺の視線に気づいたらしく、困惑の表情を浮かべ大きく咳払いをした。


「……元気があってよろしい」


 も、申し訳ございません………。本当に今考えるべきことではありませんでした。やっぱり綺麗な外国の姉ちゃんは田舎者でそういうお年頃な俺には刺激が強すぎるんよ。

 


「……よ、四日もか。そんなに寝ていたんじゃ、きっと叔父さんも心配しているはずだ。すみませんが電話を貸してくれませんか?連絡だけでもしておきたいんです」

 

「デンワ……だと?そんなモノはウチには無いし、そもそも知らないな」


 嘘だろ……電話が無いならともかく、電話すら知らないだって?そんな事があるのか?大都会東京にいて、そんな人が本当にいるのか?……いや、そんなはずは無い。きっと彼女は俺に嘘をついているんだ。多分軽い冗談かなんかで………いや、違うな。

 

 ふと子供の頃に見た映画を思い出す。あの映画では宇宙人を見てしまった男が政府に捕まって、拷問とドラッグで最終的に精神崩壊してしまう話だった。

 冒頭では男が謎の美女と出会うという展開だったが、それは今の状況と完全に一致する。多分俺もあの時に見てはいけないモノを見てしまったから、それで今政府の手先に捕まっているのだろう。そうじゃなきゃ、俺はこんな美人に看病されてるはずがない。

 ………早く外部と連絡を取らなければ、俺はこのまま拷問死させられてしまう。多少の体の痛みは忘れて、彼女を殴ってでもここから脱出しなければ!


「……そうですか。それじゃあ俺、近くに電話がないか探しに行きますんで」


 俺は立ち上がろうとしたが腰に力が入らず床の方へと倒れてしまう。危うく顔がぶつかりそうになったが、彼女がさっと左腕を差し出して俺の身体を支えてくれたから助かった。その時に感じた柔らかい感触は………胸だ、胸に当たったんだ。


「だから無理を………」


「……大丈夫です。電話を探しに行くだけなんで………見つかって用が済めばすぐに戻りますから……」


「待て待て!」


「だからぁっ!……うぐぅ……頭が痛い」


 クソッ!頭痛がさっきよりも………強くなった………っ!俺はたまらず床に座り込んだ。


「ハァ……、今はベッドで静かにしていろ」


 彼女に腰を支えられベッドに戻る。……この時も胸が背中にあったが気にしないようにしないとな………。


「そうか。何か必要になったときは私を呼んでくれ。私は隣の部屋にいるから」


 彼女はそう言って部屋から出ていった。………彼女の言うとおりに大人しく寝ていよう。あの時、一体何がどうなったのかは知りたい。けど、今は体をどうにかしないとな………。












 ………目を覚ますと日の光が窓から漏れて俺の顔に当たっていた。体を起こすとだるさとか頭痛とかは残ってない。


「よっいしょ!ふぅ、久しぶりによく眠れたなぁ」 


 ベッドから体を起こし大きく背伸びする。ついでに腰のストレッチも久しぶりにやってみようか。


「よしっ!元気充分!」


「元気が有り余っているのはいいが、人がいるという事も忘れないで欲しいものだな」


 いつの間にかあの女の人がいた。


「悪い悪い。……そういえばまだ名前を教えてもらってなかったけ?あっ、俺は葛城翔!ジャーナリスト志望の新成人!よろしく!」


「……じゃーなりすと?しんせいじん?……なんだそれは?………まぁいい、私の名前はメイティアだ」


「メイティアか、いい名前だね。早速で悪いんだけど……」


 ぐぅぅぅぅぅ………おなかの音がメイティアにも聞こえるほど大きく出た。


「ふふっ……残り物のシチューならすぐ用意出来る。それとパンでいいか?」


「うん。じゃあそれでお願い」











メイティアが用意してくれた食事を食べながら、俺は自分が覚えていることをすべて彼女に話した。


「成る程………カケルはその光に呑みこまれてここに来たのか?」


「うん。…………でも気を失う前に黒いプレートみたいのに触ったようなぁ?」


 四日ぶり、いや五日ぶりの食事だ。俺はぽっかりと空になった腹を満たすために夢中で食べていたもう手が勝手に食べ物を口に運んでいるようだ。喋りながら食べてるから気が付くと口の周りがシチューで汚れていた。


「食べながら言うな。汁とかパンくずが飛んでくるだろう」


「でもそのさ………モノリス(・・・・)だっけ?なんで俺がそんなところにいたんだ?」


「………恐らくモノリスの本来の力だな。あれは私たちの世界と異世界を繋げる門だ」


「……今異世界って言った?」


「そうだ。もしかしたらお前はあれを通ってきたんじゃないか?」


「………えっとここは東京じゃないってこと?」


「それはさっき言ったはずだ。そんな地名はこの世界にはない」


 ここが異世界だって?メイティアは「見せてやろう」と言って右の掌を大きく掲げた。するとメイティアの手が燃えた!


「なっ!?メイティア!手が!?手が燃えてる!い、今水を持ってく……」


「落ち着け。これはフリクショナルヒートといってもっとも簡単で唱える必要が無い火属性の魔法さ」


 メイティアは左の掌で火を叩く。すると火が跡形もなく消えた。


「………これが魔法?」


「そうだ……これでわかったか?」


「うん。………でも凄いよ。本当に凄い…」


「どうかしたか?」


「俺も今みたいに火をパッて点けてパッて消したい!なぁなぁ俺にも出来るかな!?」


 俺はメイティアの肩を掴んで大きく揺さぶった。


「……その反応………少し質問させてもらおうか。お前の世界には魔法が伝わって無いのか?もしくは伝わっていてもも使えないのか?……」


「そうだな。俺の世界の魔法はゲームや本の中にしかないものだよ。皆使いたいとは思っているだろうけどね」


メイティアは腰から小さな手帳を取出して、俺の話を聞きながら記し始めた。


「なるほどな。伝わっていても創作の世界にしかなかったのか。……これだけでもだいぶ絞り込めるぞ」


「絞り込める?」


「お前の世界の事さ。………あぁっ…話がだいぶそれたな。魔法の前に私は何を言っていた?」


「モノリスのところまでじゃなかったっけ?」


「それだ。私の方からも言っておきたい事がある」


「………何?」


「お前が現れたあの日の事だ。私はいつものようにモノリスのデータを記録していた。やがて日も落ち、私はそろそろ帰ろうと荷物を纏めていた時だった。突然空に紅い星が浮かび、落下してきたんだ。星は欠けて十四の小さな光となって降ってきた。そしてその一つがモノリスに直撃したんだ」


「モノリスに流れ星が?」



「このあとモノリスの様子を見に行こうと思っている。その時にこれからの話をしよう」


「これからの?」


「あぁ、いつまでもお前を泊めているわけにはいかないからな。取ってきたら近くにあるソルマという村に行くつもりだ。恐らく往復で時間がかかるだろうから。準備が出来たら私に言ってくれ」


「わかったぜ。それじゃあ、お腹いっぱいいただきますか!」




 




 だが俺はまだ知らなかった。自分の立ち向かうべき運命を………。

フリクションとは摩擦という意味で、フリクショナルヒートで摩擦熱になります。

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