私と彼があまり会話をしない理由
すごく久しぶりに書きました。
コメントくれた人がいて、この小説の続きを書こうと思いました。
「哉太!」
私がそう声をかけると、彼はこちらを振り向き、少し驚いた様な顔をした。
それもそうだろう。
彼とは中学校へ入学してから、あまり話していないのだから。
でも、それには理由がある。
1. クラスが一度も同じにならなかったから。
この歳になると、特に用もなく異性に会いに別のクラスへ行くと、好奇の目に晒される。
初めの頃は、よく哉太のクラスに行っていたが、その度同じクラスの女子に、「凛ちゃんと哉太君って付き合ってるの?」や、「凛ちゃんって、哉太君のこと好きなの?」と聞かれるので、私はいつの間にか彼を避ける様になっていた。
2. 哉太が人気者だから。
え?理由になってない?いや、十分な理由なんだなこれが・・・。
というかこの場合、人気者で済ませていいのか分からない。ファンクラブがあるくらい
それがもう恐ろしいのなんのって。
例えば、哉太と二人で話した女子(委員会や日直などは例外)は、ファンクラブの幹部から校舎裏に呼び出しを受け、「哉太君に色目使わないでくれない?」と、笑顔で言われる。
その笑顔は、とても可愛らしいのだけれど、目が笑っていない。それが逆に恐ろしい。
けれど、例外で呼び出しを免れた女子には、ファンクラブメンバーに、哉太とどの様な時間を過ごしたか (どれほど哉太が素晴らしいか)を細かく語る義務があった。
おかげで哉太は中学校三年間、必要以上に親しくなれた女子は居らず、一度も彼女が出来ことがない。それどころか女子と遊びに行ったことなど皆無な、残念系イケメン男子へと成長した。
モテるが故に彼女が出来ないなんて、どこかのギャグ漫画だよ・・・。
ここまでくると、男子も
「これに嫉妬するのも・・・なあ?」って感じだった。
それに、男子が哉太をあまり妬ましく思われていないのは、
ーーー自分は女子に嫌われてる
という哉太の致命的な勘違いのためだろう。
・・・。
何故そうなった?
そう思ったそこのあなた!
哉太の立場になって、よーく考えて欲しい。
例えば、廊下を歩くと、まるで自分を避けるかのように、一斉に女子が壁際へと寄る。
そして、時々こちらを見ながら、コソコソと何かを話す。
それが気になって、周りをチラリと見ると、偶々目があった女子に、ガバッと勢いよく視線を逸らされる。
哉太からしてみれば、女子から嫌われてると感じるのは、当たり前だろう。
まあ、実際はーーー
「哉太君が廊下を通るわよ!」
「壁際へ寄って!彼の姿をじっくり見たい!」
。。。。。
「きゃー!すれ違った時、すごくいい香りがした〜!」
「カッコイイー!」
。。。。。
「ちょっと待って!?今一瞬目があった!カッコ良すぎて直視出来ないよ!」
というやり取りが行われているのだけど、哉太がそれを知るはずもない。
男子は、哉太の勘違いを知ってるから、それを面白がっている。
イケメンが、女子に嫌われてると思って「俺、女子になんかしたのかな?」と本気で悩む姿は、さぞかし笑えるだろう。実際は全くの逆なのに。
(何こいつ、イケメンなのにめっちゃ残念。)
というのが、男子の哉太に対する共通の評価である。
でも、哉太が女子にモテモテなのに変わりはない。
私が哉太の幼馴染だと知られた時は、女子からの闇討ちを警戒した。
けれど、最近私が哉太とあまり話していないのと、小さい頃の哉太の写真 を引き渡す(哉太に「これを女子に渡さなかったら私は殺される!幼馴染が殺されてもいいの!!??」と言って強引に了承してもらった)を引き渡すことによって、制裁は免れた。
うん、女子って怖い。
まあ、そんな理由もあって、私が哉太と話すのは本当に久しぶりなのである。
だから哉太も予想してなかったはずだ。
私の口から
「今日一緒に帰らない?」
なんて言葉が飛び出すなんて。
不定期更新です。