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とらぐな  作者: 森村芥
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第四話 怪異ノ根

桜男の問いかけには一拍置いて返事が返ってきた。


「なんだよそれ…聞いた事もねぇ」


怪訝な顔をしたままの少年の返事は、少しふて腐れたような音が含まれている。


「人の想い…例えば愛情、嫉妬、憎悪、それらが強くなれば呪いへと変る事があります」

「呪い…?」


桜男の言葉に、ゆらりと揺れる炎に照らされた少年の赤く染まった顔が、小さく歪む。


「そうして生まれた呪いが、様々な怪異を起こす…それを、私達はとらぐなと呼びます」


静かに笑みを零した後、桜男は小さな窓から見える雪に目を移した。

はらはらと、華のように雪が空から落ちてきている。


「怪異…それは止まない雨だったり、枯れる事ない木々だったり…霊と呼ばれるものだったり…」

「…この雪も、それだっていうのか?」


落ち着いたまま、よどみなく口にする桜男に、半信半疑ながらも少年は首を傾げた。


「おそらくは…ですが」


言葉と共に、また怪しい笑みが少年に向けられる。


「だったら…だったらどうにか出来るって言うのか!?」


怒ったような声をあげて、少年が立ち上がった。

事実怒っているのかもしれない。その表情は酷く歪んでいる。


「ええ…その怪異の根さえ、見つけられれば…」

「怪異の根?」


食って掛かりそうな少年を気にした風もなく、桜男は言葉を続けた。


「怪異を生み出し呪い、その呪いの元凶である想いを持つ者…それが怪異の根」

「想いを持つ人間…それを探してどうするんだ?」


桜男の意図が分からず、少年は眉をひそめる。

一瞬どうしようか悩んだように見えた桜男だったが、すぐに…口を開いた。


「その想いを……喰らいます」

「は…?」


今度こそ意味が分からないと、少年が気の抜けた声をあげる。


「意思あるモノが想いを無くすは、死も同じ…」

「どういう意味だよ…」


静かに、独り言のように呟いた桜男はやはり笑っていた。

ずっと笑ったままの桜男に、少年は気分が悪くなってくる。


「すぐに分かりますよ…私と貴方の縁は、もう結ばれてしまいましたから……」


静かなその声にぞっとしながらも、少年は目の前の男の言葉を信じていた。

明確な理由は分からない…確信もない、それでも信じようかと思ってしまう。


「俺に…出来る事は?」


だから気が付けば口にしていた。

決意染みたその声に、少年自身、不思議な感覚を持つ。


「では、お話下さい……この雪が降る前からの、町の事を…」









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