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翌日、牧歌部でお茶をしている三人。
梨宇洲がお茶を啜りながら言う。
「いやぁ今日は、お茶会ということにしようかねぇ。昨日はお疲れだったし」
光太郎もお茶を啜りながら答える。
「そうですね、僕も体のあちこちが痛いですし」
ソニアは文庫本を開いて集中して読んでいる。
長閑な雰囲気か部室に満ちている。
―バンッ!
突に部室のドアが勢いよく開けられた。
三人はびくんと身体を跳ね上げた。
ドアの方を見ると、背の高い女子が立っていた。
その女子の後ろのには男女入り乱れて多数の生徒がひしめき合っていた。
身長の高いじょしは少し癖のある長髪をなびかせて、腕を組んで顎を上げて三人を見下ろしている。
梨宇洲がにこにことしながらその女子に話しかける。
「これはこれは〈獄楽部〉の部長、剣持魅音さんではないですか。ウチの部になにか御用ですか」
梨宇洲に尋ねられた魅音はふんぞり返って居丈高に答える。
「ここが新しく出来た〈牧歌部〉か。部員は…三人しかいないのかしら?ふぅん、それに部室もパッとしないわね」
光太郎とソニアはムッとして魅音を睨む。
魅音は、そんな視線など全く気にも留めず、梨宇洲に話しかける。
「部長は…あなたね。それでは要件を言うわ。わが獄楽部は牧歌部に親善試合を申し込む」
光太郎とソニアはそんなの知らないといった風に当惑する。
梨宇洲はにこにこと笑みを張り付けながら答える。
「いやぁ、うちの部は出来たばかりだし、見てのとおり部員も三人、それに二人は一年生でそれも初心者ですし…」
魅音は梨宇洲の言葉を遮って言う。
「そんなことは関係ない。これは親善試合だ。そんなことを気にする必要はない」
「そう言いましてもねぇ…」
魅音は言い放つ。
「親善試合は来週に行う。ダンジョンは競技用の中級ダンジョンだ。パーティの人数はそちらに合わせて三人とする。以上」
魅音は言い捨てると、身を翻して部室を出て行く。
三人は嵐が過ぎ去って、呆然としている
呆然としていた光太郎が口を開く。
「部長、親善試合って一体…」
梨宇洲は腕を組みながら顔をしかめて答える。
「獄楽部かぁ、面倒なのに目をつけられちゃったなぁ…」
梨宇洲はぶつぶつ呟いてから、光太郎の質問に答える。
「親善試合はね、スポーツ形式でダンジョンに潜ってその踏破の順を競う試合だね」
光太郎が身を乗り出して更に質問する。
「具体的には…」
「決められたパーティ数で、ダンジョンの最奥まで到達する。最奥にはモチーフが置いてあってそれに触れる。それから脱出する。その脱出した時点での順序を競うの」
今度はソニアが梨宇洲に尋ねる。
「獄楽部について知りたいんですが…。特にさっきの剣持魅音って人の事も」
「獄楽部はねぇ、転生部の中でもダンジョン活動を一番行っている部だね。勿論その成績もいい。ただ、なんとうか、粗暴というかあくどいというか…いい噂は聞かないわね」
梨宇洲は話しを続ける。
「剣持魅音、獄楽部の部長ね。前世はどこかの帝国の女王だった…って自分で言ってるけど真偽は定かじゃないわね。ただ、戦闘能力は高いわね、特殊能力も持っているらしいわ」
光太郎が不安な表情で梨宇洲に詰め寄る。
「それで…親善試合は受けるんですか?」
「うぅん、断り切れる自信もないし、もう相手もその気だし…やっちゃおうか」
「えぇ…僕、すごく心配ですよ。なんか中級ダンジョンとか言ってたし」
「まぁ、光太郎君なら大丈夫でしょ。前回のダンジョンで基礎は学んだんだし。なにより私が全力を出すからきっと大丈夫よ」
光太郎はまだ不安を残した表情でしぶしぶと口をつぐんだ。
ソニアは平然としたまま二人の様子を眺めている。
梨宇洲がいつものようにパンッと両手を叩いてから話をはじめる。
「それじゃあ、正式に親善試合を受けることに決定します。ではこれから、中級ダンジョンについてのシミュレーションを行います」
梨宇洲はホワイトボードの前に立つ。
ソニアと光太郎は梨宇洲の方を見る。
梨宇洲は、説明を始めた。




