25
翌日、朝。
光太郎は全身筋肉痛になっていった。
「いててて…」
光太郎は痛む体を押して、学園へ向かっていた。
すると、ちょうど登校していたソニアに遇った。
「あ、おはよう」
光太郎は手を上げて挨拶した。
「…おはよ」
と、ソニアはちらりと光太郎を見て答えた。
光太郎がソニアの横に駆け寄ってくる。
「一緒に登校してもいいかな?」
ソニアは前を向いたまま答える。
「…別にいいけど。わざわざ聞かなくてもいいでしょう」
つんとして言い放った。
光太郎は苦笑いしながら並んで歩いた。
教室についた光太郎は、前の席の友人、円藤正晴に声を掛けられた。
「よっ、おはよ、光太郎」
「おはよう、円藤君」
正晴は春明の返事を聞くと頭を振る。
「名前で呼んでくれよ」
「あ、うん、正晴君、おはよう」
「君もつけなくていいんだけどな、ま、いいけど」
正晴は身を乗り出して、光太郎に囁く。
「今朝さ、俺見たんだけどさ、天野と宗方が一緒に登校してるの」
光太郎はびくりと身体を反応させた。
なぜだか恥ずかしい気持ちになり慌てて答える。
「いやソニアとは、部活が同じなだけで…今朝はたまたま…」
正晴が驚愕した顔で言う。
「ソニアって、女子に対して名前で呼んでるのか…」
光太郎はあたふたとして答える。
「それは本人がそう言えって言ったから…」
光太郎はちらちらとソニアの席を見る。
ソニアの席には女子達が群がって黄色い声を上げている。
正晴が思い出したように言う。
「そういえば、お前牧歌部っていう新しく作られた部活に入っているんだったな」
光太郎はソニアから視線を戻して答える。
「あ、うん。そうだけど…」
「実際どうなんだ?ちゃんと活動してるのか?」
光太郎は少し誇らしげになって言う。
「うん、ちゃんと活動してるよ。昨日もダンジョンに行ったよ」
正晴は心底驚いたように、顔を引いて目を見開いた。
「ダンジョンに!すげぇなぁ…」
光太郎はハッと何かを思いついて正晴に尋ねた。
「そうだ、正晴君って何か部活に入っている?」
「いや、どこにも入ってないよ。帰宅部よ帰宅部」
光太郎は身を乗り出して熱気の籠った声で言う。
「入らない?牧歌部。正晴君もリピーターだったよね」
「あ~…」
正晴は気まずそうな表情をして鼻の頭をぽりぽりと掻いた。
「俺の前世の話、してなかったけか?」
「うん、まだ聞いたこと無いよ」
「そっか、実はな俺、前世ではなんの変哲もないただの農民だったんだよな」
「へぇ、そうだったんだ」
「だからさ、記憶があっても戦闘の知識とかなんもないし、勿論特殊能力なんてものもないんだよなぁ」
「そんなの僕だって、戦闘知識無いけど転生部に入ったし関係ないんじゃないかな」
正晴は難しい顔になってむむむっと唸る。
「う~ん、そもそもダンジョンにも戦闘にも魅力を感じないんだよな。それにリピーター皆が皆、転生部に入る訳でもないし」
光太郎は残念そうに表情を曇らせた。
「そっか、それならしょうがないよね」
正晴はにししっと歯を見せて、光太郎の肩を叩く。
「でも、ダンジョンの話を聞くのは楽しいぜ。だからちょくちょく俺に話してくれよな、牧歌部のこと」
光太郎はがらりと表情を明るくして、勢いよく答える。
「うん!もちろんだよ」
光太郎も誰かにダンジョンの事を話すのは、つまり自分の活躍を話すことは気持ちよかったので快諾した。
つと、よく通る落ち着いた声が教室に響く。
「おぉい、ホームルーム始めるぞ、席につけよぉ」
担任の近藤翔子が教室に入って来た。
正晴は光太郎の肩をまたぽんぽんと叩くと、椅子を戻して前を向いた。
光太郎は友人との仲の進展が嬉しく、自然と笑みがこぼれた。




