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ダンジョン棟は部室棟の地下にある。

地下に進むほど難易度の高いダンジョンになっていく。

光太郎一同は初心者用ダンジョンのあるB1に着いた。

光太郎の目の前に、鋼鉄製の白々した大きな扉が立ち塞がった。

それをまじまじと見て光太郎が口を開く。

「なんか割と現代的なんですね、入り口」

「そうね、他にも洞窟っぽい入口のダンジョンとかもあるけどねぇ」

光太郎はその重いドアをぎぎぎと両手で押して開けた。

光太郎の眼房には期待と不安の輝きが満ちている。

ドアを開けた向うには、四方に分かれた道があった。

光太郎は辺りをきょろきょろと見回す。

壁、床はすべてコンクリート打ちっぱなしだった。

天井は高く、幅は三人だと少し余裕がある程度だ。

証明は天井に埋め込まれLED電球だけで、その間隔は広く、ダンジョン内は薄暗かった。

梨宇洲が真面目な表情になって叫ぶ。

「それじゃあ行くわよ。シミュレーション通り陣形を崩さないで。曲がり角には気をつけてね」

「は、はいっ」

「…了解」

光太郎が先頭を歩き、進む方向を決める。

ソニアが四方を警戒しつつ、光太郎に続く。

最後尾を梨宇洲が後方を警戒しながら続く。

光太郎の進む足取りは重い。

両手に持つ剣は、重さを増していくように感じる。

口の中はからからになり、身体は汗みずくになっている。

目はきょろきょろと四方を泳ぐ。

ソニアは依然として平常を保っている。

 光太郎の様子を見かねた梨宇洲が声を掛ける。

 「光太郎くん落ち着いてね。シミュレーション通りにやれば絶対安全だから」

 ダンジョンは曲がり角に差し掛かる。

光太郎は、梨宇洲に振り向いて、かすれ声で答える。

 「は、はい。大丈夫です。わかってます」

 突に、ソニアを緊張した声が走る。

「天野!左ッ!」

「―え?」

光太郎が振り向くや否や、光太郎は腹部に何か重い弾力のあるものが当たる衝撃を感じ、武器を放り出し突き飛ばされた。

「ぐっ…かはっ」

みぞおちにまだ重みを感じる。

咳込みながら、自分の腹を擦る。

自分に何が起きたのかわからず呆然とする。

ソニアの甲高い声が光太郎に刺さる。

「何してんの!早く武器を取って!」

「あ、ああ」

光太郎は慌てて剣を取りに向かう。

光太郎の剣のすぐ横に、何かどろどろした青いものが蠢いていた。

――あれがブルーゼリー…。僕は体当たりされたのか。

ソニアが、ブルーゼリーに向かって疾走する。

勢いをつけて、ブルーゼリーを蹴りあげる。

ブルーゼリーは壁にたたきつけられて、ぐちゃりと平たくなる。

「天野、早く!」

光太郎は、その隙をついてスティールソードを取りに駆けだす。

光太郎はなんとかスティールソードを手にして、ブルーゼリーから距離をとった。

ブルーゼリーも態勢を取り直して、光太郎の前に立ち塞がった。

梨宇洲が光太郎に向かって叫ぶ。

「光太郎君、斬るんじゃなくて、叩きつける感じで剣を振るうのよ!」

光太郎は、すり足でブルーゼリーににじり寄る。

目は剣先とブルーゼリーに注がれている。

呼吸も大分落ち着いてきた。

瞬間、ブルーゼリーが光太郎をめがけて飛びかかってきた。

一刹那、光太郎はスティールソードを上から下に振り下ろした。

「曵ッ!」

柔らかい弾力のある感触が剣先から伝わる。

飛びかかろうと跳ねていたブルーゼリーは地面に叩きつけらた。

梨宇洲が後方から叫ぶ。

「ほら、攻撃を続けて!今がチャンスよ!」

光太郎は、今度は袈裟切りをブルーゼリーに仕掛けた。

「応ッ!」

光太郎の袈裟切りはブルーゼリーにうまく決まった。

ブルーゼリーはスティールソードを叩きつけられた箇所だけ凹んだまま、その場でもぞもぞと蠢いた。

ソニアが叫ぶ。

「今よ!トドメをっ!」

光太郎はスティールソードを真っすぐに振りかぶると、そのまま一直線にブルーゼリーに叩きつけた。

「耶ッ!」

ブルーゼリーは光太郎の一閃をくらうと、淡く輝きだした。

それから、光の泡をぶくぶくど出して、そのまま消滅した。

光太郎は、ガクリとスティールソードを下げて項垂れた。

「ふうっ…」

ソニアがそんな光太郎の様子を見て怒気を孕んだ声で叫ぶ。

「天野!油断しない!倒した後も四方を警戒して!」

光太郎はびくりと体を跳ねあがらせて、剣を持ちなおして、周囲を警戒した。

敵の気配はなかった。

梨宇洲が二人に声を掛ける。

「もう周囲にはモンスターはいないみたいだね」

 それから光太郎に近づいて、声を掛ける。

 「ちょっと不格好だったけど…初陣おめでとう」

 光太郎はちょっと照れ臭そうに頭を掻きながら答える。

「はい、ありがとうございます」

ソニアは不機嫌そうな顔で光太郎に突っかかる。

「アンタがもっと警戒していれば、ブルーゼリーの存在に気づけて、最初の攻撃だって食らわずにすんだんだからね」

光太郎は返す言葉もなく、項垂れた。

梨宇洲がフォローに入る。

「まぁまぁ、初陣としては上出来だよ。ちゃんと武器もつかえていたし」

光太郎は、スティル―ソードをかざして、じっと見つめる

――剣を振るった時、確かに懐かしを感じた…。僕は前世で戦闘経験があったということだろうか。間違いないのは、前世で確かに武器を使ったことがあるということだ。

 梨宇洲が二人に向かって話す。

 「早いと思わるかもしれないけど、今日はダンジョンはここまでで終わり。もう帰還しましょう」

 ソニアが意外そうな顔をする。

「え、早くないですか?まだまだいけそうな状態だと思うんですが」

それに梨宇洲が答える。

「初陣はうまくいったら帰還するのが吉だよぉ。それに部室初陣記念お茶会したいからね」

「はぁ…」

ソニアは気の無い返事をして、短剣を鞘にしまった。

「それじゃ、戻ろうかね」

「はいっ」

三人はまた陣形を作って、来た道を戻っていった。



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