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夕方、チャイムが鳴るとそれぞれの作業に集中していた三人は、ハッと顔を上げる。
梨宇洲が口を開く。
「それじゃあ、今日はこのぐらいにしといて解散しますかねぇ」
「はい」
光太郎は返事をすると、読んでいた本をカバンに閉まって立ち上がる。
ソニアも同じように、荷物をしまって立ち上がる。
梨宇洲は書いていたノートと本を机の端に積む。すでに数冊山積みになっていてごちゃごちゃとしている。
「それじゃ退室しようかね」
三人は部室を後した。
校門まで来た三人。陽は暮れかかって、白かった校舎は煌々とオレンジ色に輝いている。
運動部の掛け声が校門まで響いてくる。
梨宇洲が二人に手を振って言う。
「それじゃあ、また明日。二人とも渡した本をちゃんと読んでくるだよ」
「はい、わかりましたお疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
二人は浅くお辞儀をした。
梨宇洲は手を振って去って行った。
梨宇洲を見届けると光太郎はソニアに話しかける。
「それじゃ、僕らも帰ろうか」
「…そうね」
二人はレクリェーション以来、向き合って話す機会が無かった、
その為、少し気まずい空気が二人の間に流れた。
光太郎が口火を切った。
「初ダンジョン、緊張しない?」
少し間を置いてから、ソニアは答える。
「別に…私、前世の記憶を完全に持ってるし…。戦闘だって見た事あるし」
「あっそっか…」
――ドラゴンが戦闘って…やっぱり人間と戦ったのかな…。いやドラゴン同士ってことも考えられる…。人間だって人間同士戦ってるもんな。
再び、二人の間に沈黙が訪れる。
光太郎はちららとソニアの横顔を窺う。
夕陽に照らされて綺麗に陰影のついた横顔は美しかった。
赤い髪が夕日に照らされて更に赤く燃える炎のように棚引いた。
光太郎がじっとその横顔を見つめていると、ソニアが振り向いて、
「あんた、ちゃんと武器を扱えるようにしなさいよ。私が手を下さなくてもいいくらいには成長してもらわないと」
光太郎はムッとして答える。
「なんだよその上から目線は…。言われなくてもそのつもりだよ」
ソニアはつんと澄まし顔になって前を向いた。
「そう、それならいいけど」
そうこうしているうちに、二人の帰り道の分かれる場所に着いた。
「それじゃ、また明日」
光太郎がソニアに言った。
「…それじゃ」
ソニアは光太郎に背を向けつつ答えた。
光太郎は、ソニアが見えなくなるまで、背中を目で追っていた。
――ソニアの前世の記憶か…いつか聞ける日が来るといいけど。
光太郎は、体を翻して家路を急いだ。
早く武器の説明書を読みたくてしょうがなかった。
家に着いた光太郎は食事を済ますと、家事を一通り終わらせてシャワーを浴びていた。
――ついに初ダンジョンか…。緊張するな。
光太郎の胸は湧き上がる興味と恐怖で張り裂けそうになっていた。
〈スティールソード〉か…。剣道の振り方とはまったく違うんだろうな。
早く、渡された本を読まないと…。
光太郎は早々にシャワーを終わらせて、ベットに向かった。
ベットに横になって、光太郎は本を開く。
すぐに夢中になって無言で文字を追う。
光太郎は時間をまったく気にせず、黙々と本を読み続けた。




