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昼食の時間になり生徒たちは、原っぱにシートを引いて食事を始めた。
上機嫌なソニアは光太郎とベンチに座って食事をしていた。
二人とも弁当ではなく、買っておいたパンだった。
ソニアは明るい調子で話し始める。
「充実したレクリェーションね。自然もボブスレーも満喫して」
「いや、生徒同士の親睦を深めるのが目的であって…」
ソニアはいたずらっぽい笑みを浮かべて、
「それをお前が言うか、ぼっちめ」
と、光太郎に言った。
「ぐぬぬ…」
光太郎には返す言葉が無かった。
「昼食が終わったらまた自由時間ね」
光太郎が呆れたように言う。
「またボブスレーにでも乗るのか」
ソニアはちちちと指を振った。
「生徒同士の親睦を深めてくるわ」
「あっそう」
「あなたも早く友達つくったほうがいいわよ」
「わかってるよ、もう」
ソニアはふふふと笑みを溢した。
光太郎も笑う。
――あ、なんか少し打ち解けたかも。
光太郎はソニアとの仲の進展を感じ嬉しくなった。
昼食を終えた二人は、分かれてそれぞれの行動をとった。
ソニアは女子達と自販機の周りのベンチにたむろして駄弁っていた。
光太郎はそんなソニアを横目に、原っぱの上に体を投げ出して、空を見上げていた。
――この空を自由に飛び回れたら、さぞ気持ちいいんだろうな。
ソニアは空を飛んだ記憶を持っている、今度、空を飛んだ時の気持ちを聞いてみようかな。あ、機嫌のいいときに聞かないとまたつっけんどんにされるだろうな。
光太郎はそんなことを考えながら、意識が遠くなって行くのを感じた。
目を閉じると、草がそよぐ音だけが聞こえる。
光太郎の意識は、ここでぷつりと途切れた。
「―光太郎」
どこか遠くで僕の名前を呼ぶ声がする。
「―天野光太郎!」
誰だろう、僕を呼ぶのは。
「いい加減にしろっと!」
―バシッ。
光太郎は頭を叩かれた衝撃で目を覚ました。
「あ、朝?」
ドッと笑いが起きた。
「朝じゃない、もう帰る時間だぞ。バスに乗れ」
光太郎に声を掛けていたのは担任の近藤翔子だった。
周りには生徒が沢山いる。一部始終を見られたのだ。
光太郎は顔を真っ赤にして自分のバス乗るバスへと駆けて行った。
日は既に暮れかかり、夕日が丘をオレンジ色に染め上げる。
急いで自分の席に向かう光太郎。
席に着くと既に隣にはソニアが座っていた。
「遅いぞ、なにをしてたんだ」
「いや、ごめん。つい寝込んじゃって」
「それじゃあ、友達は出来なかったようだな?」
光太郎は胸をぐさりと刺され、がくりと肩を落とした。
「まさか、寝てしまうとは…せっかくの機会だったのに」
「まぁ、機会なんていくらでもあるさ、天野次第でな」
「あぁ、ありがとう」
すると、ソニアは右手をすっと光太郎に差し出す。
「え、なに」
「相談料、ガム一枚」
「えぇ、卑しいなぁ」
光太郎はしぶしぶガムを一枚出して、ソニアに渡す。
「ありがと」
ソニアはすぐにくちゃくちゃとガムを噛み始めた。
光太郎はそんなソニアを見ながら微笑んだ。
――確かに友達は出来なかったけど、ソニアとの仲が進展したっぽいし、このレクリェーション、無駄ではなかったな。
ソニアは来たときの反省を活かして、帰りは本を読むのをやめた。
バスが出発して数分後、光太郎が横を見ると、ソニアは眠っていた。




