10
光太郎がふと窓の外を見ると、すでに陽が暮れかかっていた。
梨宇洲もぐぐっと背筋を伸ばしてから外を眺めた。
「そろっと言い時間だねぇ。今日は解散しますか」
「そうですね、僕も疲れました…」
光太郎は読んでいた本を閉じると、本棚に戻し始めた。
ソニアは文庫本をカバンにしまうと、すたすたと部室の出口まで行って、
「それじゃ私、帰ります」
そうぶっきらぼうに言って、部室を出て行った。
光太郎は呆然とソニアが出っていたドアを見ていた。
梨宇洲が帰りの支度をしながら、光太郎に話しかける。
「ちょっと、変わった子だよねぇ。きっと良い子なんだろうけど」
「そう、ですね」
二人は帰り支度を終え、部室を後にする。
二人は夕方の廊下を歩きながら話し始めた。
「光太郎君、やっぱダンジョンに興味あるよね」
光太郎は目を爛々と輝かせて、身を乗り出した。
「勿論ですよ!」
「でも戦闘技術は覚えてないんだよねぇ?」
光太郎はがくりと肩を落とした。
「はい…そうなんです。でも…」
梨宇洲が胸をドンッと叩いて言う。
「お姉さんに任せなさい。そのうちちゃんと説明もするし、連れて行ってあげるからね」
光太郎は顔を上げて明るい声音で返事をする。
「はいっ。楽しみに待っています」
校門を出た二人。他にもぱらぱらと帰宅する生徒が見える。
「光太郎君て歩いて登校してるんだっけ?」
「はい。ウチ、あっちにあるんですけど」
「あぁ、じゃあ私んちとは反対方向だ」
「そうですか、まだ話したいことが色々あったのですが…」
光太郎は残念そうに肩を落とした。
「ほら、それは部活でね。それじゃあねぇ光太郎君。また明日」
「はい。さようなら」
光太郎は甲斐甲斐しく梨宇洲が見えなくなるまで、その方向を見ていた。
陽は既に暮れ、街灯が点きはじめた。
光太郎は、帰路を急いだ。
夜、光太郎のアパート。
ベットに寝転がった光太郎はにやにやしながら枕に顔を押し付けいた。
――牧歌部に入部することにしてよかったな。梨宇洲部長は、第一印象とは違って、まともな人だったし、僕の記憶を戻すことにかんしても積極的になってくれて…。
あの図書室みたいな雰囲気も良い。ソニアはちょっと連れない感じだけど、まぁまだ初日だから。きっとこれから仲良くなっていけるんだろう。
光太郎は前途に期待を膨らませて色々と妄想した。
――今日は心地よく眠れそうだ。
そう考えているうちに光太郎の瞼は下がってきて、意識は途絶えた。




