イジメからの憎悪編1
次なる愛と憎悪の始まりです。
『あなたには、晴らしたい恨みがありますか?』
◇◇◇◇◇◇
私の名前は『上岡 鈴』。
私は元々明るい性格だった。
人と話すのが大好きで、活発な女の子だった。
そんな私にも悩みがあった。
土偶のように太った体型、顔はどう見てもブスだ。
だからこそ、それを跳ね返すかのように、周りには明るく振る舞っていた。
「鈴ちゃんは面白いね」
人にそう言われると嬉しくて、ぽっちゃりとした頬に笑窪が浮かんだ。
しかし、それを覆す事件が発生した。
あれは忘れもしない小学三年の一学期、算数の授業中だった。
休み時間トイレに行きそびれた私は、おしっこを我慢していた。
素直に先生にトイレに行きたいと名乗り出れば良かったのだが、恥ずかしくて言い出せず遂には漏らしてしまったのである。
先生は呆れ、クラスメイトは私を罵った。
「鈴が小便漏らした~。汚ねぇ」
密かに恋心を抱いていた春樹が、私を指差して笑う。
それに同調するかのようにクラスメイトも私を笑った。
私は耐えきれず、泣きながら教室から逃げた。
それがきっかけで、仲の良かった友達も私を避けるようになり、卑劣なイジメに耐える日々が始まった。
今までは『鈴ちゃん』と呼ばれていたのに、いつしか私のアダ名は『デービス』になっていた。
デブとブスを掛け合わせ、デービス。
誰が付けたか、私はずっとデービスと呼ばれ続けた。
完全に私は自分の殻に閉じ籠り、学校では笑わなくなった。
何より、好きだった春樹に罵倒されたのが一番のショックだった。
◇◇◇◇◇◇
席替えのくじ引きでも、皆私の隣は『汚い』『臭いからイヤだ』と大騒ぎする。
先生に相談しても、『あなたの考え過ぎです。このクラスにイジメはありません』と断言し、取り合ってくれなかった。
自分がきっかけを作ってしまったのだが、春樹がイジメに発展させたことが何より許せなかった。
それでも私は学校を休まなかった。
休み時間も一人、給食も一人、一言も話さない日が多くなっていった。
母親にも相談出来ず、ストレスのため私は食べることに専念した。
結果、体重は半年で二十キロも増えた。
その姿を見て、クラスメイトは笑った。
三学期になるとイジメは更にエスカレートした。
教科書は隠され、縦笛は便器に放り込まれ、運動着は引き裂かれた。
さすがに運動着の異変には母親も気付き、私を問いただした。
でも、誰が主犯かは言わなかった。
どんなにイジメられても春樹が好きだったから。
母親は担任に真相を確かめようとしたが、担任は『イジメられる方に問題がある』の一点張りでイジメを認めようとはしなかった。
◇◇◇◇◇◇
五年生になり、私に転機が訪れた。
クラス替えである。
少ないながらも、友達が出来た。
私に笑顔が戻りつつあったその時、またも春樹のせいで友達は去っていった。
クラス替えで、春樹と離れたのに数少ない友達に、
『アイツは嫌われてたんだ。それに汚いから近付かない方がいい』
そう告げた。
以前のようなイジメはなかったが、私はまた独りぼっちになってしまった。
『春樹……絶対に許せない』
遂に私は堪忍袋の緒が切れ、春樹に恨みを抱き始めていた。
愛から憎悪に変わった瞬間である。




