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幼馴染み編3

 安藤はキスをすると、私の身体を舐め回すように弄び、求めてきた。


「ま、まどかさん。俺……もう」


 安藤は私の中で、果てた。

私はそれを確認すると、不敵な笑みを浮かべた。


〈加奈……今に見てなさい〉


◇◇◇◇◇◇


 翌日、私は何食わぬ顔で出社した。

加奈は何も知らずに黙々と業務をこなし、安藤は私を腫れ物を見るかのように避けた。


〈実に愉快だ。二人の中を引き裂いてやる〉


 私の中の憎悪は歪み増幅していった。

 世間一般からしたら、私は泥棒猫。

しかし、身体を張っての偉業でもある。

 過去に私が受けた『傷』に比べれば、何のことはない、そう信じていた。


 それからというもの私は加奈に優しくなれた。

これから起こる惨劇を考えると、いくら加奈に恨みがあるとはいえ心が痛む。


 加奈は嬉しそうに語っていた。


「披露宴の準備が忙しくてさぁ、毎日大変。ウェディングドレスもいっぱいあって、どれにしようか迷っちゃう。ダイエットもした方がいいかなぁ」


 某結婚専門雑誌を開きながら、目を輝かせる。


 しかし、幼なじみなのに友人代表のスピーチの依頼はなく、それどころか招待状さえ届かない。

加奈とはそういう女だ。



 そんな時だった。

私の身体に変化があったのは。


私の中に新たな命が宿ったのである。

勿論、安藤の子である。


 私は復讐を忘れて、喜んだ。

人生の中で、一番と言えるくらい感激して涙を流した。


 翌日、私は加奈の目を掻い潜り安藤を給湯室に呼び出した。


「何の用だい? 俺は忙しいんだ」


 忙しいというより、私といるのが誰かに知られたらまずい、そんな態度が伺えた。


「単刀直入に言います。私、妊娠しました。あなたの子です」


「何だって? それは本当なのか?」


 安藤は慌てふためく。


「本当よ……ねぇ、どうするの?」


 私は安藤にとって人生最大とも言える選択を迫った。


「……。堕ろしてくれないか」


「イヤよ。私、産むわ」


「まどかさん……君も知っているだろ? 俺は加奈と結婚するんだ」


「わかったわ。その代わり加奈に話すわ。あなたの子だってね」


「俺を脅すのか? 頼む、許してくれ……」


 そんなやり取りをしていると加奈がやって来た。


「どうしたの? 二人で」


「安藤さんの湯呑みが見つからなくて、探すのを手伝ってもらっていたのよ」


「ふ~ん」


 加奈は不思議そうな顔をしたが、その場はそれで話は終わった。

 我ながら加奈に負けず劣らず『嘘』がうまくなったと感心した。



 翌日、今度は安藤の方から私は呼び出された。


「これで、何とかならないか?」


 安藤が差し出した真新しい封筒には、札束が忍ばせてあった。


「そういう問題じゃないわ」


 私は簡単に安藤の行為をはね除けた。


「じゃ、どうすればいいんだ。俺なりに誠意を見せたつもりだ」


「加奈と別れて。そして、私と結婚して」


「そんな無茶な……」


「出来ないなら、加奈に全てを話すわ」


 私は最後の賭けに出た。

これで話がまとまらなければ、全てが台無しだ。

 長い沈黙のあと、安藤は重い口を開いた。


「……わかった。加奈とは別れる。でも、君との結婚は考えさせてくれ……」


「わかったわ。あなたを信じるわ」



◇◇◇◇◇◇


 数日後、加奈は会社を休んだ。

 その理由を私は知っていた。


〈まだだ。私の復讐はまだ終わっていない。安藤と結婚して初めて復讐を成し遂げたと言えよう〉


 休んだ加奈に私は白々しく、電話を掛けた。


「どうしたの? 突然、会社休んだりして……」


 思わず笑みが溢れる。


「彼に……別れようって言われた」


「どうして? 婚約までしてたのに」


「理由は教えてもらえなかった。ただ、別れようって……」


 それから、程なくして加奈は会社を辞めた。

それ以来、加奈とは連絡を取っていない。


〈これで、安藤と堂々と付き合える〉


 そう思ったが、加奈のことを思うと少々胸が傷んだ。

悪女になりきれない私の甘さが次の問題を引き起こしたのは言うまでもない。



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