メイドからの復讐劇編2
旦那様は、私が言った通り郊外に、アパート借りてくれた。
簡単な男である。
「旦那様、これで大事なコレクションも処分されずに済みますね」
「うむ。亜季さんのお陰だよ」
生活感のない部屋に、次々と旦那様のコレクションを搬入する。
旦那様は、嬉しそうにレコードや骨董品などを眺めながら微笑みを浮かべる。
これがあの女にバレたら、ただ事では済まされない。
しかし、私の真の目的はこんな生易しいものではない。
体を張ってでも、旦那様を陥れるのだ。
そう……かつて婚約者を陥れられた時と同じように。
いや、それ以上に。
それからというもの、旦那様はアパートを拠点とし、屋敷に戻られる回数も減っていった。
あの女はそれを良くは思っていなかったが、旦那様がコレクション収集をしなくなったと思い込み、比較的機嫌の良い日が目立った。
「奥様、今日も旦那様は戻られないのですかね?」
私は何も知らないかのように、あの女に言った。
「さぁ……亜季さん、何か知らない? 最近あの人の様子がおかしいのよね」
「私には、わかりません」
女のカンは鋭い。
あの女は、いよいよ持って私にも探りを入れてきたのである。
――そろそろ、頃合いか――
私は、計画を遂行するべく、動き始めた。
◇◇◇◇◇◇
翌朝、休暇を利用して、私は旦那様のいるアパートへと赴いた。
――コン、コン――
私はいつものように、古ぼけたアパートのドアをノックした。
「亜季です」
しばらくすると、寝ぼけ眼の旦那様がドアを開けた。
「おぉ、亜季さんか。入ってくれ」
「はい。失礼します」
すっかりと、生活感が滲み出始めた部屋は、二人にとっての隠れ家になっていた。
――今日こそ、勝負を仕掛ける――
私は買ってきた食材をキッチンに置いたあと、エプロンを掛けた。
「朝ごはん、まだですよね? 何か作りますよ」
「亜季さん、いつも済まない」
旦那様はそう言うと、ソファーに鎮座し自慢のオーディオで音楽を聴き始めた。
旦那様は、好んでクラシックを聴いていて、必死に蘊蓄を並べたが、私はその辺の類いが理解出来なかった為、いつも聞き流していた。
私はキッチンに立ち、手際よく食材を切り落とす。
クラシックは苦手だが、包丁で食材を切る音とのハーモニーは心地よかった。
「さぁ、旦那様。召し上がれ」
旦那様は、テーブルに並べた料理を眺め、目を輝かす。
「亜季さんも、食べたらどうだ? せっかくの料理だ。僕一人で食べても味気ない」
「そうですね。頂きます」
その台詞を待っていたかのように、テーブルの端に腰を据える。
旦那様は、終始笑顔で料理をたいらげた。
「亜季さんの料理は、最高だよ。それに比べてウチの奴は……」
「旦那様、いけません。私の前で奥様を悪く言うのは……」
「おいおい、僕を責めるのかい? 亜季さんは、どっちの味方なんだい」
「それは……」
私は、答えを迷っているかのように、振る舞った。
万が一、私が試されていた時のことを考えると安易に答えは出せなかった。
「言えるはずないよな。済まない」
「そんな、謝らないで下さい。旦那様ったら、謝ってばかり」
「済まない」
「ほら、また~」
私達は、時を忘れるほど和やかな雰囲気のまま、二人の時間を過ごした。
そして、遂に運命は動き出す。




