漫画家志望編4
そして迎えた休日に、遂に私は笹野の誘いに乗り映画を観に行くことになった。
「ごめん、待たせたね」
学校では見せないクールな立ち振舞いで、笹野は私をリードした。
あれほど嫌だったのに、そのギャップに少しだけど魅力を感じていく。
言葉では上手く言えないけど、くすぐったいような、そんな気分だった。
「これ観たかったんだよね。一人で観に行くのは切ないからね」
意外いに映画に詳しくて、あれこれウンチクを述べ私に説明してくれる。
その目は真っ直ぐで、以前私をイジメた笹野は居なかった。
「笹野って映画好きなんだね」
「ま、まぁな。特にこういう恋愛モノには憧れんだよね」
「へぇ~」
笹野の選んだ映画は、今話題の邦画で恋愛モノだ。
ベタな内容だが、私もこういうシチュエーションには憧れる。
映画が終わり余韻に浸っていると、笹野は切り出した。
「やっぱ、付き合うのは無理かな?」
「映画観たから?」
私は意地悪な質問で返した。
「違うよ。本当、マジで……」
「いいよ。笹野の彼女にして下さい」
言ってしまった。
映画の影響を受けたのは、笹野じゃなく私の方だった。
でも、不思議と後悔はない。
知らず知らずのうちに、笹野の惹かれていたのかも知れない。
それからは、笹野にぞっこんだった。
嫌いだったなんて、まるで夢のようだ。
しかし、一週間が経ち、二週間が経っても茜に笹野のことを切り出せずにいた。
申し訳なさと、ズルさが切り出せない理由だった。
――そろそろ言わないと――
そう思いながらも、時間だけが過ぎていく。
一ヶ月が過ぎる頃には、キスだってした。
もちろん、初めてのことである。
茜を見ると罪悪感に苛まれたが、私は自分の幸せを優先した。
「次の休みは何処に行く?」
最近では、積極的に私の方から笹野を誘っていた。
漫画も描きたかったが、漫画より笹野を取った。
「ごめん。週末は用事があるんだ」
「ふ~ん」
一度も私の誘いを断ったことのない笹野が、用事があると言い出し断った。
私は疑いもせず、『仕方ないね』と引き下がった。
笹野と付き合い始めて、初めてフリーの週末。
私は以前と同じように、ペンを走らせた。
しかし、なかなか集中出来ず、ネームの段階で行き詰まっていた。
「はぁ……駄目だ。全然描けない」
そこで私は気分転換に、外の空気を吸いに行くことにした。
そして、事件は起きた。




