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5.雫さんのファインプレー!?

5.雫さんのファインプレー!?


 修善寺温泉『菊屋』。漱石も逗留したことがあるという宿だ。ボクはロビーで予約名を告げ、部屋の鍵を受け取った。女中さんが案内役で来てくれた。

 このホテルは…。いや、ホテルというよりも温泉宿と言った方がふさわしい。建物を迷路のような回廊が巡らせてあり、角を曲がるたびに違う時代に足を踏み入れたような雰囲気を味あわせてくれる。

「5名様、女性のお客様はこちらでございます」

 女性陣が泊まるのは蔵を丸ごと改装したメゾネットタイプの部屋。吹き抜けのある二階建てで露天風呂も付いている。

「ねえ、ちょっと来て!スゴイよ!この部屋」

 先に部屋に入った律子さんのはしゃぎ声が聞こえる。

「それじゃあ、お先に」

 雫さんがにっこりほほ笑む。

「どうぞごゆっくり」

 女性陣とはいったんここで別れる。ボクたちの部屋は離れの方になる。

「男性のお客様4名様、こちらでございます」

 部屋に入るなりボクらは大の字になって横たわった。

「ねえ、4人で寝るにはこの部屋少し狭くないですか?」

 部屋を一通り見渡した大橋さんが言う。

「じゃあ、寝なきゃいいじゃん!」

 閉伊さんはいとも簡単に解決策を打ち出す。尤も、それが解決策になるのかどうかは微妙なところではあるけれど。

「さて、お茶でも淹れましょう」

 午雲さんはみんなの分の湯飲みにお茶を淹れ、ボクに話し掛けてきた。

「だけど、日下部さん。よくこの宿が取れましたね」

「そう!奇跡的にこの日だけ空いてたんですよ。雫さんの怨念としか思えないですよ」

「怨念ですか…」

「おっ!露天風呂があるじゃねえか!」

 と、閉伊さん。大橋さんもすごいと言って駆け寄る。

「そうなんですよ。この離れの部屋には露天風呂が付いているんです。多分、女性たちの部屋にも付いていますよ」

「なに?そうなのか?よし!じゃあ、覗きに行こう!」

「閉伊さん、何言ってるんですか!ダメですよ!とりあえず、お茶でも飲んでゆっくりしてくださいよ」

 まあ、仕方がないと言って閉伊さんはようやく落ち着いた。

「あれ?大橋さんは?」

「ああ、大橋君ならさっき、露天風呂に入って行ったよ」


 その頃、女性たちは居間のようなスペースで寛いでいた。

「日下部さん、よくこんな部屋取れたわね」

 香穂里さんは感心して言う。

「と、言うよりこういう所を知っているのがすごいよね」

「彼、こういうの、けっこう好きなんだよ。旅行の幹事なんてやり慣れてるって言ってたし」

「星野さん、それで日下部さんに幹事をお願いしたのね」

「そういう事!」

「じゃあ、これって星野さんのファインプレーってわけね」

「まあね…」

 ちょっとばつの悪そうな雫さん。

「お風呂、すぐに入れるみたい。私、先に頂いてもいいかしら」

「どうぞ」

 美子さんは露天風呂に向かった。

「私も」

 香穂里さんとまゆさんも美子さんの後に続いた。

「雫ちゃん、これ」

 律子さんはそう言って、ワインのボトルを1本取り出した。いつの間に買ったのか地元のワイナリーで作られたものだった。

「いいね!じゃあ、私はこれ」

 雫さんはソーセージの詰め合わせとさきいかなどの乾きものを出した。

「うわー!雫ちゃん、最高!」

「あと、日下部さんに昼の弁当の残り物を届けさせよう」

「それ、グッドアイディアですね」




修善寺の『菊屋』は実在するホテルですが、物語の設定の都合上部屋の収容人数や館内施設等実際とは違うものにしていますのでご了承願います。

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