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2.日下部君、腹減ったから弁当買って来て!

2.日下部君、腹減ったから弁当買って来て!


 こうしてボクは“なろう”のメンバーと温泉旅行に行く準備を整えた。

 待ち合わせの東京駅9番ホーム。11時30分集合。ボクは11時前に到着してみんなを待った。最初に到着したのは午雲さん。11時10分。

「ちょっと早かったかなと思ったけど、幹事はさすがに早いですね」

 さすが午雲さんだ。続いて美子さん。それから香穂里さんとまゆさん。律子さんと閉伊さんも時間前には到着した。

「やあ!日下部君、会うのは初めてだな」

「はい、閉伊さん。会えて光栄です」

 最後に大橋さんがやって来た。

「遅くなってゴメン!」

「大丈夫だよ。まだ時間前だから。それにしても大橋さん、酒臭いですよ」

「やっぱり?昨日、会社の飲み会でさ。正直、二日酔いできつくて」

 ボクは事前に人数分の切符を購入していたので、来た人から順に切符を渡して料金を受け取った。

「あれ?」

「どうしたの?」

 最後に切符を受け取った大橋さんがボクの手元を覗き込む。

「切符が1枚余るんだけど…」

「自分のじゃないの?」

「いや、自分のは別に持ってるから…。あっ!」

 ボクが突然大声を上げたものだから、みんなが驚いてボクの方を見た。

「ヤバイ!雫さんに待ち合わせ場所を伝えるのを忘れてた」

「えーっ!」

 一同、声をそろえて驚いている。そして、すぐに知らんふり。狼狽えているボクのポケットで携帯電話が震えだす。ボクは恐る恐る電話を取り出す。着信表示には雫さんの名前。

「もしもし…」

「おい!日下部!東京駅はいいんだけど、東京駅のどこに行きゃあいいんだよ!」

 雫さんの怒鳴り声にボクは思わず携帯電話を耳から離した。

「ごめんなさい!9番ホームまで上がって来てください」

 11時59分。息を切らして階段を上がってきた雫さんを見つけた。雫さんもボクに気が付いた。同時に発車のベルが鳴り響く。ボクは電車の方を指して「早く乗って!」と合図を送った。いちばん近いドアから電車に飛び乗る雫さんを見届けてボクも電車に乗った。


 車内で雫さんと合流したボクは、みんなが乗っている車両へ雫さんと一緒に移動した。みんなは4人掛けのボックス席を通路の両側で確保していてくれた。片方には閉伊さん、律子さん、香穂里さん、まゆさん。もう片方には午雲さん、大橋さん、美子さん。

「おう!日下部君、腹が減ったから弁当を買って来てくれよ」

「鉄人、私も!」

 律子さんが手を上げた。そして、みんなも手を上げた。

「そうですね。お昼ですからね。すぐに社内販売が回ってくると思いますから…」

「何、悠長なこと言ってるかな?今でしょう!売り子さん見つけて買って来てよ」

「マジっすか?」

「マジっすよ!」

 閉伊さんの言い付けには逆らえない。ボクは仕方なく弁当を買いに行った。

「お茶もお願い」

「美子さんまで…」

 ボクは取り敢えず、車両が多い方へ向かって歩き出した。弁当とお茶を買うために車内販売の売り子さんを探した。最後の車両まで行ってみたけれど、売り子さんには行き合わなかった。発車したばかりでまだ準備が出来ていないのかもしれない。仕方なく引返した。すると、次の車両に売り子さんの姿を発見!

「幕の内弁当とお茶を9個ずつください」

「はい。全部で9千9百円です」

 ボクは代金を立て替えると、9人分の弁当とお茶を抱えて席に戻った。席に戻ったボクは信じられない光景を目にした。

「遅いぞ、日下部君」

 そう口にした閉伊さんの手には既に弁当が。他のみんなも。

「えっ!それって…」

「おお、日下部君が居なくなったらすぐに売り子さんが反対の方からやって来てね」

「ちょっと待ってくださいよ。だったら、もう買ったからって電話でもしてくださいよ」

「悪い、腹が減っててそこまで気が回らなかったよ。でも、ちゃんと日下部君の分も買っておいたからな。金は俺が立て替えといたから、千百円くれ」




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