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すべてが    になる。(検閲済)

御待ちの方には、たいへんお待たせしました。

ごうごうと渦巻く豪風と雷光の暴流。

神々しい神光(ハロゥ)をまとって顕現した《《四つの巨人》》


”帝国が滅亡の危機を迎えようとするとき、現れた真の勇者が真の巨人と真なる神の舟を従えて顕現するだろう”


偉大なる太祖が遺せし口伝、神話の光景。


からだが、魂がふるえる。涙がとめどなくあふれる。カーラは、ただ歓喜のままに感謝を捧げる。


「偉大なる太祖よ、あなたの御言葉はいまここに――」


 髪を風に巻かれるまま、こぼれた言葉が風に乗って世界に広がっていく。


神祖を名乗ったオロカ者たち(マガイモノ)ではなく、伝説の四騎神をわたくし(・・・・)を助けに遣わされた真なる神。

これで世界(わたくしのモノ)は救われる――


勇者さまを失うこともなく、この願いを聞き届けてくださった。

それは、この身が世界を治める正しき選良であるとの証。

そう、このわたしこそが真に偉大な正統人類指導者にして救世主――。


救世の乙女は、この上もない歓喜に包まれ、ただ涙をあふれさせてたたずむ――



騎士たちはただ圧倒されていた。

神々しき光をまとい、勇者に従うかのように現れた神々しき巨人騎士たちに。

「俺たちはいま、伝説を見ているのか……」

薄汚れた帝国騎士の一人が呆然と口にする。

その言葉はうずまく風の中で周囲に届き、その瞳に力強さが蘇えらせる。

そうだ、われらは選ばれし人類。神はわれらを見捨てられるはずもないし。

みよ! 

あの神々しき衣をまとう美しき巨人騎士たちを。

燃えるように鮮烈な真紅

静謐な湖水のような翡翠

陽光のように煌めく橙黄

そして太極の原たる真の墨

おお、それはこの世全てを顕す貴き色。

正しく人類唯一にして永遠足る帝国に相応しき色。

すなわちあれは太祖神が遣わされし帝国の守護神であると。

勇者とその従騎を遣わされた方は、姿は見えど我らを慈しまれている。

それは愛であり、そして正しく報われる正義なのだ。

苦難の日々は終わりぬ。

神の御使いがご降臨成された。

正しき道を進むものは正しく報われる時が再び。帝国は救われるのだ――!

正義はある、ここにあるのだ!


「――帝国、万歳!」

帝国騎士の一人が感極まって声を張り上げた。

「帝国よ、永遠なれ!」

「偉大なる帝国は永久不滅!」

「帝国に栄光あれ!」

騎士たちの歓喜の声が轟く。苦難の日々は報われた。


『これが、世界を救う勇者の力だ――』



正しき正義の剣を突き上げた勇者騎が高らかに宣告する。

ああ、その姿の、なんと力強く、神々しいことか。あれこそまさに神の化身に違いない。

そう、正しき道を歩む帝国を太祖神は見捨てなかった。

正義はあるのだ、それは我らが帝国、そして選ばれし優等人類たる我ら帝国人である。

太祖神よ、照覧あれ。我ら正義がこの悪に染まった世界を切り拓く正しき光となることを――


「帝国、万――」


――世界が爆発した。


カーラは轟風に撥ねられ衝撃に殴られて地を転がっていく。

「――っ!!!」

天変地異がごとき衝撃と大地の大瀑布。常時展開している風の魔法障壁が猛烈に出力を上げ、大量の魔力を使用する。

それでもなお障壁が軋む。

魔法器官が全力稼働し、頭をかち割り脳髄をかき混ぜる様な鋭痛をまき散らす。宙を舞っているのか地を転げまわっているのも判らずに、ただただ障壁を全力展開して耐える。

どれくらいの時間を経たのか。一瞬だったのか、それとも一日経ったのか、其れすらわからなくなって。


カーラは自分が横倒しになっていることに気が付いた。まぶたをこじ開け、その瞳に映ったものは――一変した世界だった。


空はごうごうと渦巻く灰色と蒼の混じった曇天。


緑あふれた大地は見渡す限り赤茶けた土が剥き出しとなり、白い湯気をくゆらせ

地形が変わり見渡せる平原にぽつりとある、それ。


頭部を刎ねられ、四肢を断たれ、腰斬され、唐断ちされて。


擱座した巨人騎士たち。


「いったい……なにが……」


声は絶えていた。

帝国万歳と唱えていた騎士たちは、どこにもいなくなっていた。それは、どうでもよかった。


世界の(わたくしの)守護騎が倒されている》。


その事実しかみえず。



★☆★☆★☆



ただ一騎、大地に立つ勇者騎は、剣を掲げたまま。

そして、黒い少女は、ゆっくりと闇色の刀を納刀する。


『……う、そ……だ』

 ぼうぜんと勇者ユウキがもらす。

『うそだうそだうそだっ!! 負けるはずがない、負けるはずがない、負けるはずがないっ!! 勇者の従騎、最強兵器が負けるわけがっ!!!』


がなりたてる勇者騎にむかって、少女がかろやかに跳ぶ。

高く、勇者騎より高く跳びあがる。

その頂点に達した時、くるんと身体を回転させ右足を前にした蹴りの体勢に――急激に加速。

それは伝説の武技。

遥か太古、偉大なる仮面の鉄騎士の最終最後の必殺攻撃。

神に至らんとした銀の月影を滅ぼせし対神攻技。如何なるものとて爆発四散させる必滅の蹴撃。


天を揺るがす重低音が轟き水蒸気の傘(ヴェイパーコーン)を後に残し、大地と激突。

剛重音が轟き、円錐状に窪み、巻き上がった土が吹き飛んでいく。


『な、めるなぁっ!!』

神技的な回避をしてみせた勇者騎が巨剣をぶん投げた。瞬間で音速を突破し、正確無比に少女に直撃――寸前、腕を伸ばして止めた。二本指で挟みこんで。

そのまま持てるはずもない大剣を振り上げて、勇者騎に叩きつける。

轟音をあげて勇者騎がふっとぶ。


『うぉおおおっ!!!』

吹っ飛ばされながら、椀部から射出された柄を取り、起動。

桜色をした灼熱の刀身(エネルギーソード)が形成される――。

光剣をふりかざして突進する勇者騎。

迎撃する漆黒の闇刀を持った少女。

エネルギー干渉場が断ち切られ、噴出するプラズマが大地を灼きはらう。

いくつもの神の雷のごとき白光(エネルギー衝撃波)が地を灼き、虞風を巻き起こす。


「誰か」

 帝国の聖女は請い願う。


それは、もはや戦闘になっていなかった。

刃合わされた黒刀と桜光の剣。甲高い轟音。

弾かれたのは光の剣、姿勢が乱され、たたら踏む勇者騎。

うまく操縦しきれていないのだ。


「誰か――帝国(わたくし)を」

聖女は真の神に請い願う。


黒い少女が蹴り上げる。胴に喰らって宙に浮かぶ勇者騎。ありえない膂力。

おろした脚の反動を利用して最適曲線で揮われる黒い刀。

黒刃と装甲が背筋を粟立てさせる奇怪な音を弾き、勢いを殺せぬ勇者騎が吹っ飛んでいく。


「誰か――帝国(わたくし)を救って――」

それは純粋にして無垢なる願い――


縦横無尽に揺れる操縦席でユウキはなにも出来ない。勇者騎は大地を転がり、仰向けに倒れ込んだ。その胸部にぴょんっとかろやかに跳び乗る黒い少女。


「お願い――」


胸部装甲の隅、操作パネルを開いて4096ケタの強制解放コードを入力。


気密開放音と共に胸部装甲と八重の装甲遮断壁が開く。


露わになる操縦席。

「う、ぐあぁ……」

勇者ユウキは脳を揺さぶられた上に全身を打った痛みで動けない。

黒い少女が手を伸ばし、ユウキを操縦環ごとひきずりだして吊り上げる。


「ぐ、がぁっ! あ゛、はな、せっ!」

無言のまま少女は握力を強めていく。

「はな、せぇええええっ!!」


怒声とともに無詠唱で勇者魔法《雷撃》を手より放つ。

黒い少女の腕が焼けて炭化していく。肉が焼け焦げていく匂い。

支えられなくなったのか、少女は勇者を無造作に放り投げた。

ユウキは吐きそうになりながらも、ずきずきと痛むのを無視して立ち上がり

「来いっ!!」

緋色に輝く聖剣(・・)が手元に出現する。

「うぉおおっ!!」

掴んだ聖剣を構えて、黒い少女へ突進。

真っ向から振り降ろす。

瞬間、黒い少女は、抜く手すら見せずに勇者の腕を斬りとばした。


「――うでが、うでがっ!! ――っ!?」


脳髄を灼く痛みによって理解が及んで絶叫しながらその光景が目に入る。

くるくると宙を回って飛んでいく聖剣と握り手が黒い霧となって霧散。

『聖剣』が地に突き刺さる。


「――きえ、た?」


唐突に痛みを感じなくなり、自分の斬られた腕を覗く。のっぺりとした黒い断面。血も筋肉も骨もなにもない、ただの黒い断面。

「な、んだ、これ……」

なんだこれなんだこれなんだこれ

ユウキは理解できない。

自分の身体のはずなのに。

さっきまでの凄まじい痛みが感じられない。

動かす。その通りに動く上腕部。

「……な、んだ、これ……」

「ああ、知ってしまったのですね、勇者様……」

その声は奇妙なまでによく響いた。

ユウキが呆然としながら声の主――カーラに振り向く。


帝国皇姫カーラは、まるで祈る修道女のように胸元で手を組んではらはらと涙を流していた。


「カーラ……これは、いったい……」


僕はいったいなんなんだという言葉を呑み込む。とてつもない恐ろしい予感に囚われたのだ。


「真なる神よ、わたくしに試練をお与えになるのですね」


美しき皇姫の涙は止まらず。


「カ、カーラ?」


彼の言葉を聞いていないかのようなカーラにユウキは戸惑う。彼女はユウキの言葉をいつでもよく聞いてくれていた、のに。


「愛する勇者さまだけでは世界を救えないとおっしゃるのですね……」

哀しみの瞳に彼を映す。彼はとまどう。

「な、なにを」

「わたくしは一度だけ悪夢をみましょう」

 決意を秘めて。

「愛するヒトをここに捧げましょう」

 首元の朱い玉を手に握り、祈るように捧げるようにして深く静かに言ほぐ。

「いったいなにを、なにを云っているんだい、どうしたっていうんだよ、カーラ!」

 戸惑いをふきとばして、いらつきのまま問い詰めようとし、横から蹴りとばされた。


「うが、がはぁ、ぎっ……」

無表情のフェテリシアがせき込む彼にゆっくりと近づき、また蹴りとばした。

ユウキは血反吐をまき散らしながら地面を転がっていく。撒き散らされた血はすぐに黒い霧と成って宙に消えていく。

三度蹴りとばされた彼がカーラの足元に墜落する。

奇妙に曲がった手足、口元からあふれでてくる血。薄汚れ、血と汗と涎に塗れた顔はとても美男子に見えない


「かー、ら……ち、ゆを……」

「ああ……勇者さま」

カーラは涙で潤んだ瞳で彼をまっすぐにみつめる。

「わたくしはあなたのことを愛しています。とても愛しています」

「かー、ら……」

「でも……」

「わたくしは、世界(わたくしのもの)を愛しているのです」

カーラは、微笑んだ。最高の笑顔で。

「わたくしの愛する勇者さま、どうか安心して帝国を救う礎になってくださいませ」

唖然とするユウキに構わず、カーラは懐からそれを取り出す。

しゃらんと銀鎖の音をたてながら取り出されたのは、銀の懐中時計。

かちんとふたを開けると同時、朱い光が溢れ出す。

「偉大なる真神、太祖神へかしこみかしこみもうしあげたてまつります! 神器”ヤタノカガミ”よ、勇者さまをいまここに――」

膨れ上がる朱い光玉と共に両手を頭上に捧げる。

世界を覆い尽くすかのように膨れ上がるいく筋もの朱光の帯。

光が収束し、朱い平面鏡となってくるくると宙を回って勇者ユウキを鏡面に映しとる。

そこには《《平面な黒いヒトガタ》》。


ユウキは悟る、それが己であると。



流れ込んでくる(・・・・・・・)いや堰が破れ(・・・・・・)露わとなる(・・・・・)彼の存在情報。


”――○ とは、&%によって構成した人造肉体に$類過去◆■体より抽出した記憶情報を#<‘@人?=%である。その==-&より~:最高の#力を持たせ――”


”その記憶%出の内容は不X則性が高い。そのため基 情報を元に複数△@を形成”Lことにより人■安定性を向上――”


”すなわち人X&#体の 思を―”


――理解していく。莫大な情報の奔流を理解していってしまう。自分が人工的に作り出されたモノであり、その記憶も知識も経験もすべてが自分のモノではなく――殺されたマユもまた同じモノで――幼なじみとその記憶もまた全部が全部作り物(フィクション)でしかないのだと。


過去の行動/記憶が訂正されていく。

視覚・聴覚・触覚etcの情報が。

金臭い赤い血、斬り裂く肉と臓物の感触、肉が焼け爛れる匂い。転がる、頭部。

動物の耳を生やしているもの、ふつうのもの、獣の顔をしたもの――あれは魔物なんかじゃなくて。

特徴の違う人類……?

気づく。それは、彼の知識にもある。もっと違う人類さえ居た。カタチで決まるわけではないと知っていた。


彼が戦ってきたのは侵略してくる無慈悲で醜悪な敵で、人類の敵。人類を殲滅すべく送り込まれてくる魔王の手下。

人類(帝国人民)を殺戮する本能だけの存在。

だから人類防衛のために命を奪ってきた。


情報/記憶が訂正される。


憎々しげにこちらを観てくる兵士、敵討ちだと叫びながら突進してくる者、統制された銃撃で帝国騎士を打倒しながら突進してくる者……


戦争のありふれた光景。


人類の存亡を賭けた戦い、ではない。



俺は



たくさんのヒトを





殺した?




――理解した瞬間、絶望/発狂した。





「――う、うわあああ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!!」


絶叫するユウキだった黒いヒトガタが崩れていく。




フェテリシアはなにが起きているのかわかっていない。崩れていくそれ(ユウキ)をただ見ている。



煌めく光明が舞う中、帝国の聖女は誓約する。

「”わたくしは愛する勇者さまを捧げます”」


勇者とは莫大な魔力によって形成された仮初の肉体にヒトの記憶を埋め込んだヒトに似たヒトあらざるモノ。

それが絶望したときに発生する意思の転化によって魔力を超拡大化させる魔力炉と化させる大儀式。

それが勇者召喚。そして、勇者召喚をもって更なる真の超大儀式を敢行する。

帝国史上誰もなしえなかった大儀式魔法。

其はいつのころに完成したか、だれが開発したかもしれぬ、だが絶対にして最高にして究極にして、大宇宙の中心たる史上最高唯一帝国のための魔法を超えた魔法、救国の超魔法。


空前絶後の超魔力炉と化したユウキだったものを糧とし、駆動する神器が激しく明滅する。大気が渦巻き、地が鳴動する。


「ここに、わたくしが真に愛する者を捧げます」


真の神の敬虔で清純なる(純粋な欲望)乙女が、心の底より願い訴える。



「――どうか、どうかわたくしの世界を救ってくださいませ――」







「|真なる神《pax coniglietta》よ――」









――その純粋無垢なる願い(欲望)は、天へと通ず。



浮かぶ”真円”にして第二の月が割れる――


噴出する黒き闇が、地を空を天を覆い尽くす。真なる黒が、全てを呑み込んでいく。

天空に浮かぶ巨船がバランスを崩して地表へと堕ち、大地震のごとき地響きを起こす

”世界”が鳴動する。

第二の月にして天の牢獄が割れていく。

軛が解き放たれ、神話に詠われし真なる神が顕現する。


それは、かつて銀河連邦を、銀河帝国を恐怖の深淵に叩きこみ


それは、かつて銀河連邦・銀河帝国合同艦隊を壊滅に追い込み


それは、かつて旧地球人類をこの青い星より追い立たせ。


それは、星の守護者にして銀河系を壊せるモノ。


それは、"全てを見通す絶対超越者(だいなしにするもの)"――


全き闇の天空が割れ――

降り注ぐ天上の階梯(エンジェルズ・ラダー)


黄金色に輝く天を背景に巨大な青い旗(UN旗)が広がる――




「ご注文は――」



はためく青い旗をつきやぶり堕ちてくる、なにか。

きゅるきゅるきゅるるるんっ

白銀の髪をなびかせ、たてよこななめ全方位大回転捻りを敢行しながら、しゅたっときれいに着地(10点満点)


かわいらしいうさぎのしっぽかざりがついたおしりをむけたまま、くぃっと白銀色のぴったりしたハイレグスーツの上半身をひねって正面をむき、みぎしたななめ30°に小首をかしげ、右てのひらを上にむけ、ひだりてを腰にあてて、きゅきゅっとぽーじんぐ。


ぱちんとウィンク。

|はーとまーくが空中をとぶ《注:レーザー投影式空中広告》

ぴょこんと頭の上にたつ、ふたつの長いうさみみ。


「バニーですか!?」



――(とき)が止まった。


滅国の少女騎士 第四十六話 『すべてがだいなしになる』



よていどおりです(棒

あ、物投げないでくださいー!!


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