むちなるはがね
御待ちの方には、たいへんお待たせしました。
ファイブスター物語 連載再開分一気読みの勢いのままに、なんとか書いてみました。
いつも通りのややこしい言い回し・くどい表現・重複する説明が多々あります。
削ったり整理したりして文章の洗練化をしたいのですが、仕事で気力が……
落ちる墜ちる堕ちていく――
機能が喪失、天を翔けれなくなった身が、地へと堕ちる。
――それが、どうした。ヒトはもともと空を飛べない、翔けれない。
ヒトはいつだって地を駈けている。
ゆえにそれは喪失じゃない。
少女は地に堕ち、地に着いた脚に、ぐっと力を入れる。
――前へ。
踏み足を、蹴り足を、身体をしならせ、肉の限界を超えてなおもう一歩。
力だけじゃない/技術だけじゃない/意思だけじゃない。
ぜんぶがぜんぶ必要で、それが出来ると判っているから、真の技/業と成る。
そう、力の、身体の、意思の使い方がわかっている。
だから使える。
観てきた/覚えてきた/繰り返してきた/鍛えてきた技/業
――ゆえに彼女の放つ技/業は、全て絶技。
視界が闇に堕ちる。視えないから戦えないなんて、云わない。
そんなことは、さんざんやってきたのだ。
それくらいで止まることなんて、ない。
前へ、ただ前へ踏みこむ。
決めたのだ。あれを叩き斬る、と。
「|ろっくん・ろーる《転がり踊りくるっちゃえ》」
師より教えられた開戦の言葉を口にし、一足にて距離を無とする。
砲弾の壁を意識すらせずに斬り捨て抜けてはるか後方、翡翠色の巨人が前に
淡く翡翠色に発光する戦闘装甲をまとう、不落の壁。
既に一足一刀の間合いにて、共に"鞘"をはらっている。
敵を滅ぼせ、殲滅せよと。
俯角が付けられた|巨大な砲口《45口径460mm多段重力子リニアガン》が黒々と真円/深淵を覗かせ、|巨岩のごとき打撃盾《超光速航行用単一分子衝角》が打ち込まれてくる。
その余波だけで人間など痕も残らない。
抗う意思は無意味、思うことすら無駄。
立ち向かえば無へと還る、死そのもの。
それが旧地球人類統合科学が生みし史上最強の統合戦闘機構――シルエット・システム。
それまでの戦闘兵器体系を全て統合した陸・海・空・宇宙、場所を問わず戦闘を行い勝利する全領域戦闘兵器。
ベクトル操作・確率操作・時空間操作・超光速移動・対矛盾並立領域操作・人工生命体エトセトラエトセトラ……
彼らは、いったい何と戦うことを想定していたのか、常軌を逸し狂気/偏執的なまでにありとあらゆる機能を開発・搭載した。
統合事象制御機関、起動させるための次元相転移炉、稼働・操作させることに特化した量子伝達神経群人工生命体を組込み、超光速移動を持ってあらゆる防御を突破し、惑星とて破壊できる全高16メートルのヒトの似姿を与えた巨大な機械人形。
旧地球人類統合科学技術の最高傑作。
その、全力全開攻撃がただ一点に集中。
いかなる方法をもってしても防御不可能、回避不可能。
だが、少女はそんなことは知らない。
事象境界、虚無次元、次元断裂、なにもかも無視/無知のまま、地を駈ける。
邪魔するなら、斬る――ただそれだけだった。
その意思のままに身体を動かす。
何万何千万何億と繰り返し繰り返し繰り返した技/業が超光速空間に顕現する。
幻光一閃――
ただ一太刀にて翡翠の巨人の四肢を砲身ごと割断。
返す刀が首を刎ね、そのまま跳んだ。真横に――全方向から砲弾檄雨。
橙の巨人が照準射撃、全領域駆逐射撃。
最小で12.7mm、最大で88mm、大小合わせて万を超える小口径火力が全力射。
少女の全周囲に弾頭群が跳躍出現。
だが、それは囮。
本命は超光速戦闘対応型120mm亜空間レールガン、弾頭構成は5・7・5チューン。
超光速航行する7基の万能対消滅反応弾頭が対象を取り囲み一斉起爆、虚数空間が出現、周囲と断絶させる。次に最後尾の空間構造破砕弾5基が起爆して領域内を粉砕する。最期に鈍足の物理法則崩壊弾頭5基が一斉起爆、その一帯は虚無と化しなにもかも消滅し――”一足の間”をゼロとした少女の一刀が橙の巨人の胴体を構えた巨砲もろとも両断した。
二騎を斬った少女は、強大無比な圧へと顔を見上げる。
天より落される巨大な鉄鎚。
緋の巨人の最強攻撃。
自騎よりも巨大な鉄鎚による超圧潰攻撃
星の大地を破壊することすら厭わずに繰り出されるその攻撃は、かつて太陽系第九惑星を一撃の下に破壊し、余波だけで星系重力干渉圏を歪ませた星系落しの異名をもつ。
その大威力を極小範囲へ集中させ、時空間ごと圧潰。
超光速稼働するシルエットから逃げることは出来ず、凌げる防御などない。
盾と矛は、常に矛が先を歩む。普通ならば。
ブラックホール数個分に匹敵する超重圧鉄鎚を少女は呼気一閃、苦も無く蹴りとばし、戻す足の反動で跳んだ。
巨人の腕へ着地、そのまま駆け上り、剣を繰り出した。肘関節部を狙った神速の突き――放った瞬間、少女は宙に浮いていた。
緋色の巨人が鉄槌を捨て、腕を引いたのだ。
宙に浮かぶ少女の周囲を大量の光条が塗りつぶす。
緋の巨人の全身から発射された対物レーザー飽和攻撃。
のろのろと這うような速度で進む緋色の光線。超光速戦闘では、光線などとてつもなく遅い攻撃だ。
ゆえに超光速戦闘領域では超光速運動による物理打撃を主とする。
しかし、そのレーザー攻撃は厄介だった。
”必ず命中する”という因果を付加されたレーザーは、どのように避けようとも軌道を変えて追跡し命中するまで停まることはない。
まるで誘導されているかのように執拗に追跡するのだ。
絶対命中の万の光条が、突如散華。
流星群が飛び散るがごとく、焔の滝が落ちるがごとく散華。
少女がただ一息一刀で全周を斬った。
斬撃による絶対防御圏。圏に入りしものはその因果もろとも切り捨てる。
少女が防御に回った間隙に、緋の巨人は時空間干渉機能を全力発動。
少女の周囲が揺らぎ断絶、空間構造が歪曲。
”重力子連環障壁”
三次元的に深い椀のカタチに見えるそれは、緋の巨人の大鉄鎚と一対。
時空間を捻じ曲げて繋げた虚弦連環干渉壁は、時空間破砕攻撃すらその境界によって効果がない。
時空間干渉機関が稼働する限り破れない最終防壁。
同時に諸刃の剣。時空間的に閉じられるために、防壁越しの観測が不可能になるのだ。
ゆえに別騎からの観測データが必要となり、極小とはいえ時間差が生じる。それは、超光速戦闘においては致命的な隙になりかねないゆえに、飽和攻撃が実行される。
目標の足を止めるために大量の空間跳躍型砲弾が出現。弾頭は、時空間構造体破砕型。
それは”砲神”の砲撃。味方騎を巻き込むことを厭わずに連鎖起爆、時空間構造体ごと相転移破砕、虚無を出現させる。
そのバカげた攻撃力を戟神はただ単一分子装甲の強度で耐えて、鉄槌を墜とす。
物理法則は冷酷非情である。
数式と確率によってすべてが決定される。
それは”演算世界”を構築する旧地球人類統制知性体AMATERASUといえども従う、この世界の絶対の理
理に基づき生存確率ゼロと算定される対PaTBM戦術は最大10マイクロ秒で完了すると算出済。
本来のチューンド/天塔騎士はシステムに組み込まれる部品のひとつでしかない。シルエット単騎ならばともかく、完全同調したシルエットシステムとでは戦いにすらならない。天塔騎士は機能封印されれば、少しばかり頑丈なヒトにしか過ぎないのだ、
抗うと考えることすら無駄である。
隔絶と云う言葉でさえ生温い、超えられぬ絶対の壁がそこにある。
その上でシステムは過剰なまでの攻撃を実行する。
破壊不可能な障壁と空間構造破壊。
いかなる物理強度を持とうともその防御ごと破壊する超々重攻撃。
如何なる計算をもってしても生存率ゼロを確定させるために。
だが、少女はそんなことは知らない。
知らないがゆえに、障壁をただ斬り裂いて突き抜ける。それが出来る/出来てしまう。ありえないことを起こす。
AMATERASUはただ演算する。感情なく無数無間の試行を繰り返し、対応策を策定し実行する。
強制停止コード――少女の天塔騎士たる機能を強制停止している。
時空間干渉機関強制停止――少女の亜空間構造体に混沌を叩き込み機関を稼働停止させた。もはや、彼女の機能はすべて使えない。
超光速戦闘――天塔騎士としての機能を停止した少女は行えない。
時空間破砕――時空間干渉機関が停止した少女には防ぐ方法はない。
生存確率 零パーセント
いかなる条件・計算をもってしても目標が生存することは不可能。
だというのに。
少女はシルエットをぶった切り、蹴飛ばす。何もできないはずの少女に、システムはなす術がない。
シルエット・システムとは、この世界の理をつきつめた、理を体現する存在である。
それが押されているということはすなわち、世界の理が押されているというに等しい。
世界は理によって形作られ、その中に在るものたちは必ず理に従う。理に従わぬものは在れない。そう出来ている。
だが、その理を覆す不条理/理不尽がいまここに。
地球人類意思統合汎知性体AMATERASUは致命的に誤った。
今回の出撃に天塔騎士は乗騎させていない。
殲滅目標は同僚とその兵装であり、目標に執着する天塔騎士もいるため、むしろ情が作戦を阻害する確率が高いと演算されていたためだ。まして人工知性汚染が進行している現在、天塔騎士の隔離は優先事項として扱われた。
シルエットは天文学的な費用と数十年単位の時間が必要だが、再建造は可能だ。
だが、天塔騎士は違う。
彼女たちは全て生体改造者であるのが現状だ。
人工生命体生産技術は失われ、ほそぼそと研究はされているが未だ成功例がない。
そして生体改造は十億分の一以下の適合性を持った希少な候補生を消費してなお数万分の一以下の成功例、その上で改造成功者とてなにかしらの欠陥が発現しているのが現状だ。
特に正常な倫理観と思考を持つ者は絶無であり、フェテリシアが過去数百年における最優の成功例と称賛されたくらいだった。
その最優成功例ですら、いくつもの命令・服務規程違反の上に反乱したと判断され、殲滅指令が発動された。天塔騎士は一騎当千万すら生温いくらいの戦闘能力をもつ。
被害が発生する前に殲滅しなければならない。被害無く捕縛するには同等の天塔騎士四人をもってしも難しいゆえに殲滅するのである。
対天塔騎士作戦の成功率はシルエット単騎では80%前後と算定されている。天塔騎士が乗騎すれば99%とされているが、100%ではないのは情動に拠る乱数性が生じるためだ。だがシルエットシステムを投入した場合、天塔騎士が乗騎したシルエットを相手としても勝率100%とされる。
システムは情など考慮しない。見下ろし舐めることもない。必要と判断すれば最良の対処を実行する。
対元第八位天塔騎士殲滅戦において、シルエットシステムは対処させる時間を与えずに完全消滅させることを選択した。
時空間破壊、物理法則改変、虚無空間破砕……この世界の理そのものである超統一場理論による最大攻撃をもって、それを殲滅しようとした。
だが、少女はもはやその法則に従っていないナニかへ成り果てていた。
理不尽に曝され磨り潰されていった少女は、理から外されて《・・・・》しまったのだ。
黒い少女は緋の巨人よりも高く宙に跳びあがり、ふりかぶった刀を身体ごとぶん回す。
緋の巨人は鉄鎚にて迎撃。下段からの振り上げ粉砕攻撃。
シルエットの単一分子装甲を傷つけることなど出来ない。
劣化技術たる魔法や、ただの体術では、源型技術たる統合科学技術の頂点たるシルエットの前には無力。
それは神に挑む蟻に等しい。現生人類に”神を一撃で殺す武器”はない。
――だというのに闇色の刀は、鉄鎚もろとも緋の巨人を唐立割りにぶった切った。
超光速領域戦闘では汎時空間物理法則が形骸化する。そこに存在するが、結果が先に、過程は後、逆もあり、そもそも結果も過程もないことすらある。
全ての因果事象を含むがゆえになにもないそれに揺らぎを起こすのは、意思だった。
ただその意思によって、結果を顕現する。
理を突詰めたが、そこに意思のないシルエットシステムでは、憎悪の化身と成り果てた少女に遥かに届かない。
少女とシルエット・システムとの戦闘相性は正真正銘空前絶後無尽皆無なまでに最悪であったのだ。
シルエットシステムと同調するAMATERASUは推論考察対処を同時演算している。
あらゆるセンサは、それがただのヒトだと観測・計測する。
だというのに、それはシルエットシステムを赤子の手を捻るよりも容易く蹴散らす。
攻撃手段が無効化/無効化された手段が不明/エスカレートしていく攻撃手段/しかしことごとくが無効化される/そもそもそれが対処したのか観測計測できていない/それがヒトであるのか、そうでないのか。
現状とデータが矛盾対立を起こしている。
だが、AMATERASUはそれ/そういう存在を知っていた。
ヒトの姿をしたヒトで無きモノ。
何をもってしても殺せなかったモノ。
生きとし生けるあらゆる知性体にとって、最も無慈悲で最も最悪で最も古き――敵。
AMATERASU/旧地球人類は、知っていた。それは歴史にその名称も存在すらも記録されていない。
だが、それは必ず抹消しなければならない。
現在のAMATERASUの存在理由/意義はそれを監視破壊するためであるからだ。
並列思考による検討と多数決による意思決定。千年にわたり試行され続けてきた、それを対消滅させるための最終手段。
最終最後の手段が発動される――
★☆★☆★☆★☆
緋の巨人を唐竹割にした黒い少女の前に出現する刃先。
数百を超える刃を避け/刀で受け/足捌きで避け/後方に跳んだ。
踏込めなかった/攻撃に転じる隙などなかった。
着地し、
(無理――!?)
飛び込もうとして急停止する。
すでに、そこより先は死地だと少女の勘が告げている。
残心の姿勢から、悠然と構え直す漆黒の巨人。
人類最後の盾にして最強の牙。
漆黒の剣神”ブラック・ウィドー・オブ・デッドエンド”
刀を血振りしながら、少女は見上げた。
黄金色の双眼が見下ろしてくる。
見慣れた漆黒の顔と双眼。
師の愛機にして、自分を見守ってきてくれた知性体。
超光速通信回線は全域公共状態にされているが、どちらも問いかけすらしない。二対の視線がからみ合い――
絶技――双刀断/絶技――切上環斬
同時に踏み込んだ剣神と少女の刀が激突、空間が轟砕し、余波が大地に谷を刻む。
互いに弾かれた得物が、力学完全曲線を書いて再び真っ向から斬りあう。
双刀と一刀が切結ぶ。一合、二合、須臾の間に数万合。
剣神は超光速戦闘の空間余波制御を放棄し演算資源を戦闘演算に投入、更なる攻撃回数の増加させる。
少女もまた一切の剣戟を緩めず。
ゆえに衝撃波がまき散らされ、空を地表を割り、水平線の彼方まで削っていく。一撃ごとに重力波が撒き散らされ、地軸を狂わせ、大陸棚を崩壊させ、いくつもの火山が誕生する。互いの一撃が星落しクラス、それを真っ向から打ち合う。
剣神騎は、少女は止まらない。互いに一歩も退かず。攻撃の手を緩めることはない。
事象制御機関が全開稼働、時空層並列具現化
双刀が全方位より同時に打ち込まれる。
速度全開、一切合財の容赦なく。
過去の剣聖が技を再現した疑似剣聖技”千手観音”。
数千の同時斬撃。
そのことごとくを質量も速度も時空間も無視して少女の一刀で迎撃する。
無数の双刀と無数の一刀が切り結ぶ。余波が空を抉り、地を斬り裂く。
数兆を数える剣戟の果ては、刀の破砕――剣神の刀が。
剣神の装甲袖より光剣が急速展開――だが、あまりにも遅い。
少女は一息で、呼吸を整える。
まだ肉体の感覚が残っていた。
手を柄に添え――鞘に納めた一刀に。
止まれない。憎悪が自分を壊す前に。
たちふさがるすべてをきってでも、アレをきるんだ――だから
鞘を引く/刀を抜く/踏込み/一足
だから、おねがいです
じゃま、しないで――!
魂/獣の絶叫。
放たれる、技。
音などない。動きなどない。姿など見えない。
憎悪の果て、ただ斬るとだけ決めた少女が辿りついてしまった技/技。
音より、光より速く、物理法則を超え、いかなる外部法則にも縛られず。
ただただ少女の意思をこめた、技/業。
絶技”一の刀”
超光速世界の中で、少女は何よりも疾く。
力の象徴で師の愛機で、師と一緒に助けて/育ててきて/見守ってきてくれた漆黒の朧影人形を――刀の峰でなぐりとばした。
きりが良いので今回はここまで。
……おかしい、前回から次話までの分を一話に納める予定だったのに、どうしてこんなに文字ふえてるん?
少しだけ告知。
カク○ムの方で、手直ししたものをこそこそと投稿しています。
まだ一章の途中で止まってますが、少しずつ異なる展開とストーリー分岐をします。
もうちょっとサツバツとしたはーとふる展開とMHもとい人形騎士戦闘を増やす予定。
主人公は血まみれで立たねばならんのです!(※ただしバニー衣装




