けんにいきた
待たれていた方にはお待たせしました。
もうすぐ10万UAみたいです。日頃の愛読に感謝いたします。
残酷・残虐・流血・全裸シーンがあります。
苦手な方はご注意ください。
2014/12/3 細部変更 ストーリーは変わりありません。
轟砕音。
魔力斬圏を全開にした大剣が、少女を地面ごと破砕した。
血飛沫が飛散し、千切れた手足がばらばらと落ちてくる。
狂相を浮かべたアフィーナが激しく息をつきながら、ゆっくりと大剣をどける。
陥没した地面の周囲に転がる腕や脚の一部、肉や内臓の破片、土に広がる血だまり。
そこに居たはずの少女は原型もとどめていない。
――潰した。
ゴミ虫を潰すように。
無慈悲に。間違いなく。
あの屈辱は死をもって報いてやるとそう決めていた。ゆえに一切の容赦も慈悲もなく殺した。
――いや、そもそもこの結果こそが正しい。
このわたしが卑しきゴミごときに、敗けることなどありえぬのだ。
昏く淀んだ心が、温かい光に斬り裂かれて晴れる。
この澄んだ晴天の様に。
晴れ晴れとしたアフィーナが大剣を天へと突きあげ、咆える様に宣言した。
「大罪人メイフェーアは討ち取った!!」
憑き物が落ちたかのように狂相がなくなり、凛々しい女騎士の顔となった。
「さぁ、勇士たちよ、進め! 侵略者どもを生きて返すなっ!!!」
掲げた大剣を敗走する敵どもへ向けて、味方を鼓舞する。
……が、帝国軍は静まり返り、誰一人として動かない。
「どうした! なにをしているっ!!」
帝国騎士たちは凍り付いたように動かない。
勇者ユウキも動かない。
その中ではっきりと蒼ざめている者がいた。
帝国末姫カーラである。
言葉もないまま、彼女がそれを指差す。
その指先が震えている。
「っ――!」
姫の指差す先へ顔を向けたアフィーナが愕然とした。
☆☆
「……“コード=オクタ”が、死んだ?」
静まり返っている管制室内に、その小さなつぶやきは大きく聞こえた。
メインスクリーンに映されている地上の超望遠映像。
虹色に輝く大剣を振り降ろした女騎士。
陥没した地面に散らばる肉塊――原型をとどめていないヒトの身体――
「フェス姉さま――!!!」
メインモニタに映る惨劇に蒼ざめる黒髪の少女。
「天塔騎士が……敗けるなんて……」
「ばかな……地上人の戦力で勝てるはずが……」
ありえない事態に、みな呆然とメインスクリーンに目を向けている。――ゆえにステータスモニタの表示に気づく者はいなかった。
CAUTION!
All STATUS BAT
CONSCIOUSNESS : POSE
SITUAITION : DEAD (RECOGNIZE)
Reproduction...Complete!
Re-Start Process...Done.
Project "PAaTBM" Control AI Program Code No.13th-REY
Personal Code Name "FATELEISIR"
Wake up! My little Reproduct doll!
★★
ぽむぽむと気のない拍手が暗闇に響く。
「おめでとー。いろいろ枷をつけてたとはいえ、よく壊したね」
砕けたヒトの残骸が散らばっている場所を映すいくつもの空中投影モニタ。
それらを眺めながら、闇の中にふわふわと浮かんでいる白銀の少女は心底どうでもいいように賞賛する。
「制限加減がよく判らなかったけど、なんとかなった。よかったよかった。普通の人間の性能ってこんなものだったんだね」
その少女にしてみれば、人間も虫も大差がないゆえに、調整加減が今一つ判らなかったのだ。
「さぁ、どうなるかなぁ――ねぇ、ボクの“後継者”?」
――がっかりさせないでほしいな
☆☆
赤黒く染まった大地の上に、ぺたりと座り込んでいる黒髪の少女。
その一糸まとわぬ身体には傷や染み一つなく、長い黒髪が背中に流れている。
身体はちからなく、顔はうつむいている。
座り込んでいる下にはねっとりとした緋色の水溜まり――
アフィーナは、震えた声を挙げる。それは決して恐怖からのそれではない。
「なぜ生きている――」
憶えている。その感触を。
数多くの蛮族を叩き斬ってきた自分が、今更間違えるはずもない。
殺した。一片の間違いもなく。この手で、この剣でたしかに叩き潰した。
虫を潰すがごとく何の情けも容赦もなく。
情はあった。恨みだ。一度とはいえ、決定的な敗北を喫した。
その屈辱は雪いだが、恨みが無くなったわけではない。
殺すことに戸惑いなどなかった。
たとえ偉大な両親より血を分けられたモノとはいえ、いや、だからこそ、それはゴミ以外のなにでもないのだから。
躊躇もなかった。
悔恨はない。だが――後悔はあった。
「く、くっくく……」
低い嗤い声が、どこからか聞こえてくる
うつむいた裸の少女はぴくりとも動かない。
腕にも足にも力なく、ぺたりと座り込んでいる。
「くくく……ああ、いいだろう。もう一度、殺してやる。ああ、殺してやる」
それはアフィーナの声だった。
「うれしいぞ、メイフェーア……そうだ、一回殺したくらいで!! この恨みが晴れるものかぁあああああっ!」
アフィーナは狂喜の声をあげた。
――まぶたを開けると
あかい、あかい地面としろい、しろい肌
それはボクのひざだと気がつくまで、すこしかかった。
だらんと両脇にあった手をもちあげる。
傷一つないてのひらが目の前にきて、にぎったりひろげたり。
それがボクのてのひらだと気がつくまで、すこしかかった。
顔を上げれば、澄み渡った晴天。
きらりと光る、いくつもの“目”
――目だとなぜか解った。
「無様に潰れて死ぬがいいっ!!!!!!」
空気のはじける音。
苛烈な踏込。風すらも置き去りにし、音を超え
帝国騎士の限界をはるかに超えて、一足の間を零とし
振り降ろす大剣はまさに閃光のごとく
アフィーナの空をも断つ会心の一撃は、元妹を斬――。
――少女が動いた。
意識が覚醒していない彼女は、危険が迫っていることすらわからない。
だが身体は、剣士の本能だけで動いた。
空を斬りながら迫る、剣の神域に届いたアフィーナの撃剣を。
ほんの少しだけ身体をそらして斬線を回り込み
伸びた右腕が柄元を握って、大剣を奪い
撥ねる様に伸びて膝立ちになりながら
片脚を滑らせて上半身を捻り
軸足をずらして極小だけ前へ進んで
アフィーナの脇をすり抜けるその瞬間
ただの一刀でアフィーナの四肢を斬り捨て、首を断ち落と――
「――あ」
――その感触で覚醒した。
アフィーナはまだ己の身に何が起きたか気がついていない。
カーラやアンリは視えていない。
マユは見えてはいるが理解していない。
そして――勇者ユウキだけが視えて理解していた。
すべてが限りなく遅延した意識世界において、彼だけが正確にその光景を理解していた。
魔法斬圏の消えかけた大剣が、アフィーナの四肢を斬って延髄へと――
やめ――
ろという言葉が響く前に
轟音。爆発的に広がる土煙。
一瞬で視界が奪われる勇者パーティ。
強大な剣圧、音速を超えた斬り返し。
その余波で地面が爆裂したのだ。
「やめろーーーー!!!!」
腕を伸ばして突如叫んだユウキに彼女たちは怪訝な顔を浮かべ、突如巻き起こった土煙に視界を奪われて、身構える。
アンリが腕を揮い、疾風が土煙を吹き散らす。
無詠唱による風魔法。広範囲を一気に吹き散らす。
――光景が一変していた。
砕けた地面。表土や石がみな吹き飛ばされて何もなくなり。
すこし離れた場所で、黒髪の少女がぺたりとすわりこんでいた。
激しく肩で息をしている。
「な……あ、……いま……ボク……」
――なにをしようとしていた?
地に放り出された魔法斬圏の消失した大剣。
掴んでいる右手が、がたがたと激しくふるえている。
掌で顔を覆いながらつぶやく。
泣きそうな顔。いや、実際に涙と、そしていっぱいの汗を流しながら蒼ざめている。
かたかたと歯の根を鳴らしているが、本人は気が付いていない。
そこにあったのは、少女が年相応におびえている姿だった。
「……くくくく」
低い嗤い声が小さく響く。
「……凄まじいなぁ、ああ、まったく凄まじいよ」
少し離れた場所に転がっているナニカから声が聞こえる。
幼い子どもより、少し大きいくらいのそれ。
二回りくらい小さくなった肉体。四肢を失い、もはや動くことすらままならない。
――変わり果てた姿のアフィーナだった。
フェテリシアの瞳が限界まで見開かれた。しかし何も映していない。
「何をされたのかすらわからぬ。ああ、まったく……凄まじいものだな」
口元からごぼごぼと赤い血をこぼしているにも関わらず、声は奇妙にきれいだった。
隷属首輪から簡易治癒魔法陣が展開されているが、修復は遅々として進んでいない。
「剣に生き、剣に死ぬは騎士の定め。だが、貴様に斬られるとは思わなかったよ、くくっ、まったく眼前の先は闇とはよく云ったものだ。四肢を斬り捨て、さらに首を砕くとは……完璧な致命傷だ、治癒術式が無ければ即死だったな」
低い嗤い声。
鬼気に押されて誰一人として動けない。
「メイフェーア、お前に姉として最期の言葉を贈ってやる」
口元をゆがめながら、アフィーナは云った。
フェテリシアの方へ向くということもなく。彼女の眼は既に視えていない。
「誇れよ? お前はわたしを――そうとしたのだから」
黒髪の少女は、よく聞き取れなかった。
いや、脳が理解しようとしなかった。
「このわたしを、血のつながった姉であるわたしを殺そうとしたのだからなぁっ! 永劫に誇るがいいっ!! あひゃひゃはははっ! 」
血を吐きだしながら、狂ったように哄笑する。
凍りついたように誰も動けない。
「――ほんとうによくぞよくぞよくぞ! この出来損ないが! 血の繋がった姉を! 殺そうとしやがって! この屑が! メイフェーリぁけひゃるぁっ!!!!」
アフィーナが不自然に声を止める。
頭が奇妙な方向にねじれ、いつの間にか首輪の治癒術式が消えていた。
ぴくぴくと痙攣しながら、その瞳が光を失った。
もう、その身体に力がはいることもない。
冷えていく。熱を失っていく。
誰が見ても……
ユウキたちは呆然と見ている。身動きすらしない。
カーラは惨劇に怯えたかのように口元を覆っていた。
黒髪の少女が無感情につぶやく。
「ボクが……」
目の前にある両手が、ぶるぶると震えている。
「――殺した?」
「――よくも、アフィーナさんをっ!!!!」
勇者ユウキが咆えながらただの一足で、フェテリシアの正面に飛び込み、斬り捨てた。
袈裟切りにされたフェテリシアが後ろに倒れながら、ばしゃりとほどけた。
大量の赤い水が撒き散らされながら広がり、そして
「――ユウキっ!!」
マリの鋭い叫び。
真横に、ぺたんと座り込んだままの黒髪の少女があった。
「っ!! 勇者剣技“竜虎乱舞連斬”!」
いくつにも分身したユウキたちが、ありとあらゆる剣技を黒髪の少女に叩きつける。
突き刺し、首を薙ぎ、袈裟切り、胴を薙ぎ、脳天を叩き割り――
「無に還れぇえええ!!! ――『アブソリュート・メギド・フレイム』!!」
背後に残ったユウキが放った勇者専用魔法がさく裂、極炎が黒髪の少女を呑みこんだ。
「アフィーナさんの敵っ!! 『アブソリュート・メギド・フレイム』!!」
咆えて、極大魔法を叩き込む。
執拗に何度も何度も。
紅蓮の炎がさらに灼かれ、地面もなにもかも融解していく。
青白く輝く焔となってもまだ止めない。
「止めてっ! ユウキ、もう死んでるってっ!!」
執拗に極大魔法を叩き込むユウキにマユが背後から抱きついた。
「こいつがアフィーナさんを殺したんだぞっ!! 」
「わかってるよ、わかってるけどっ! ユウキがいくら魔法を叩きつけたってっ!!」
マユが涙でくしゃくしゃの顔をユウキの背中にうずめながら続ける。
「アフィーナさんは、もう帰ってこないんだよぉ……」
ユウキは脱力する。
「そう……だよね。もう居ないんだ」
「ねぇ、せめてお墓をつくってあげようよ」
「ああ……そうだ……ね……」
構えていた両腕をだらんと落してユウキがぼんやりとつぶやき――そして目を見張る。
「そ、んな……」
「うそ………」
青白い煉獄の焔がゆらめく中心地
その中に、人影――黒髪の少女。
ぺたりとすわりこむ彼女には傷一つさえもない。
いや、正確に言えば灼かれながら治癒再生されている。
その再生速度の方がはるかに勝っているのだ。
「生き……てる……?」
フェテリシアがぼんやりとつぶやく。灼熱の焔の中、熱いと感じながらも火傷ひとつ負っていない自分の手をぼんやりとみている。
握りしめる。開く。握りしめる。開く。
自分の思い通りに動く掌。
煉獄もかくやという焔の中で、なにごともない無傷の身体。
これは、ほんとうに自分のからだ――?
そう思った瞬間――反射的に自分の喉を突いた。
融解しかけた大剣の剣先が彼女の後頭部から突き出る。
唖然とした顔のまま、倒れこむようにうずくまる。
身体が、なんどか痙攣して――ずるりと大剣が倒れて地に転がった。
ゆらりと無傷の上半身をもちあげた黒髪の少女は、宙に視線を向けながらぼうぜんとつぶやく。
「ああ……そういうことか」
少女が天を仰ぎみる。
「死ぬことすら出来ないということか……」
ただ呆然と見上げる。蒼天の空を。
「そうか……死まで奪われたんだ……」
喉を鳴らす。
しずかに、深く。肩をふるわせ始める。
「……ふふ……はは……は……あはははははは………」
黒髪の少女は、ただただ虚ろに嗤う。
涙は出ない。そんなものは、とっくのとうに失くした。
いろんなものを奪われ失くしてきた。
奪われつづけて、とうとう死ぬことまで奪われた。
生きたくもないのに死ぬことすら出来ない。
そもそもヒトなのかすらあやしい。
ボクは――
★★
「さて……ようやく実感したよね」
昏い部屋の中。
いくつもの空中投影モニタに映し出された望遠映像。
その中で黒髪の少女が虚ろに笑っている。
「キミの身体は、キミのものであるけど、キミの意思とは無関係に稼働してる」
白銀の少女が、くるくると回る。踊る様に、子どもの様に、無邪気に、そして空虚に。
「それは兵器として扱われたんだ。古今東西あらゆる兵器の頂点、空前にして絶後、究極にして最強/最恐/最狂の欠陥兵器――」
ふわりふわふわとうさみみを揺らして、くるくると廻る。
「神(笑)にも、悪魔(笑)にもなれるその性能――」
狂狂と廻る。
「さぁ、どうするどうするど・う・す・る♪ キミはどうする~?♪」
楽しそうに歌いあげながら、くるくると。
ぼうぜんと空を見上げる黒髪の少女をモニタ越しに見下ろしながら。
白銀のうさみみ少女はくるりくるくると廻り周る回る。
――なお、その胸は背中と区別がつかない。
あんまりストーリー進んでないなぁと考えながらも反省はしてない。
あとあらかじめ言っておきますが、フェテリシアのコロしアイはこの後に。
これ、当初からの予定なので。




