演算世界群
仕事が壮絶に忙しい……。(半分死んでる)
2014/2/23 初稿投稿
2/24一部修正
さて、本気でかっとばします。
何十人脱落するでしょうか。(何百?)←真剣
『この最強の敵を眼前にしてしゃべくる愚か者どもが!!! 死ねぇ――《神魔必滅天地終焉砲》発射!』
叫び声と共にカイザーリンブルグの胸部にある巨大な砲門から膨大な荷電粒子束が渦を巻いて発射される。
フェテリシアたちの会話中にエネルギーチャージをしていたのだ。
禍々しく凶悪な光の束が、全てを焼き尽くさんとフェテリシア達に迫り――
「わたしのモノとなぁああれぇぇええっ!!!」
「全力でおことわりぃぃぃいいいいいっ!!!」
――演算世界群が激突する。
剣は瞬息。
息を吐くその瞬間、ただの一足で間合いを割った。
剣が振り抜かれ――。
ねこみみメイドはその反応を上回る。
剣を弾きながら前進し、肘を打ち込みフェテリシアは弾かれてた剣を手放して肘を抑えて膝を打ち上げメイドが肘打ちの回転力を利用して外側に回り込んで脚を払いフェテリシアがその足を踏みつけようとして反応したメイドが手首の宝珠からレーザーを撃ちフェテリシアが弾かれた剣で反射――
メイドが事前にばらまいていた手りゅう弾がさく裂する寸前にメイドを盾にして、むんずとフェテリシアを掴まえたメイドがバックドロップするのを半回転して足から落ちて手りゅう弾を踏みつけて不発お返しに小刀を胸に突き刺そうとしたらぶるるんと超振動する爆乳で弾かれ畜生と血涙を流して騎士服の足裾をつかまれて咄嗟に転がるとズボンが破けて脱げ――(略)――
無数の可能性が演算され廃棄されていく。
互いが望む世界を現実化すべく、演算がさらに加速する。
超々高速演算が“世界”を創る。
――戦場が瞬間沸騰する。
人間の反応速度など事象の彼方に置き忘れた人外速度で二人は対抗する。
仮想物質で瞬時製作された電磁誘導式12.7mm亜光速ガトリング銃の実体弾掃射。秒間三十万発の重元素金属嵐は、地を這うように旋回するねこみみメイドの背後へ面白いように外れ、物理法則を無視した切り返し機動により突如反対方向へと出現する彼女が、脇の下に出現させた30mm電磁誘導式臼砲を発射、融解するアルミニウム蒸気が爆薬となりフェテリシアの視界を覆いつくし背後の上部から88mm電磁誘導式滑腔砲を撃つと出現ポイントをずらしたねこみみメイドが左手に持った無誘導ペンシルロケットランチャーを一斉発射二液混合式液体ロケットのそれが射出されるより早く、フェテリシアがきゅるんと回り込むと同時に亜空間から引き抜いた近接格闘用ライフルを叩きつけると銃身棍とメイドの打撃盾が激突して、小柄な彼女が押し返され――
「あんまりにゃめんなよっ!」
「そんなわけねーですっ!」
自分ごと掃射する。
12.7mm亜光速ガトリング銃総勢12基、秒間660万発は瞬時に空間を埋め尽くし、刹那の差で悠々と回避するねこみみメイド。光速の90%以上の速さで動ける彼女たちにすれば、たかが光速の数%でしかない亜光速弾なぞ見てから回避が出来る。
しかし、それはどちらも織り込み済。
身体の向きを入替え、跳び退る。同時に超兵装群が亜空間より展開される。
フェテリシアの背後に8基の亜光速戦闘対応型万能機動砲塔が異相空間より出現する。思考脳波誘導方式の超々高速無人戦闘機だ。
そして同じ数がねこみみメイドの前にも出現。
同仕様・同性能である以上、フェテリシアが持っていれば彼女も持っている。
「いけぇ、万能機動砲塔たち!」
「迎撃にゃっ!」
――激突する。
重力制御の余波たる重力震の尾を曳きながら上下左右縦横無尽にめまぐるしく三次元機動、直線から直角ターンをかまし機体を錐もみ回転しながら重粒子ビーム弾を撃ち合い、何千何万何億と交叉する。
機動・弾道予測プログラムにより、互いにかすりもしない。プロセッサは射撃は効果がないと判断、範囲攻撃に切り替える。一発で大陸が崩壊する反応弾が連弾発射され、同数が激突、対消滅して上位次元に吹っ飛び、多数の粒子ビームがめまぐるしく曲線軌道を取りながら激突と減衰を起こして互いを食い合って消滅。
同性能がゆえに互いに完璧な防御を繰り返す。
16基の機動砲塔が熾烈な機動空戦を繰り広げる直下でさらなる大規模攻撃。
ねこみみメイドを包囲するかのように亜空間から亜光速ミサイルが射出される。
その数12基。
仮想展開カタパルトで光速の50%まで加速された重元素芯貫通ミサイルは空間歪曲のリング状痕を多数残して、さらに重力制御ブースターにより加速。
こんな零距離戦闘では射出と着弾が同時という極小の時間差の中、反応は須臾すらも超えて、先読みで既に射出されていた単分子ワイヤーが弾頭部を切断、さらにワイヤーに張り付いていた虚数重元素によって対消滅が起こり、上位次元まで貫いた次元破孔が生まれる。そこに亜光速ブースターが飛びこんで爆発、次元破孔を歪めて消滅させる。
余波は二人が展開していた空間確率制御により、微風以上の影響を与えない。
|命中した未来を演算してから《因果律の上書き》発射したにもかかわらず、結果は外れ。
因果律の上書きは先にした者が敗ける。未来からの上書きを止める手段は存在しないからだ。無限に繰り返した末に元に戻ることになる。
すなわち、天塔騎士には飛び道具などまず命中しない。最悪でも命中する因果を書き換えてしまえばいいからだ。
逆に云えば、回避可能な未来が存在しない飽和攻撃ならば命中する。普通には不可能でも天塔騎士ならば可能。ゆえにフェテリシアは行っている大量掃射攻撃は、破片と弾丸で戦場を飽和させて回避経路を丹念に潰していく。
なにせ光速の数パーセントという極速の物、当たればさすがの天塔騎士といえども無傷ではない。回避するのにも演算を必要とするし、まして瞬時再生でもすれば、もっと削ることが出来る。
ゆえにフェテリシアはただただ攻撃あるのみ、
とにかく手数で牽制して止めの一撃で決める、と決めた。
“世界”が数千回破壊される威力の爆弾やミサイルが飛び交い、巨大な山脈を吹っ飛ばす砲撃が何千と交叉する。
生成されたモノポールが多数射出され、浮遊物質と衝突してエネルギー衝撃波に変換、逆位相のそれによって差し引きゼロとされる。飽和したエネルギーは大量のナノマシン生成に使われ、地表寸前に不可視の対抗障壁が形成されて、あらゆるエネルギーを上空へと逃がして、オーロラを形成する。いま宇宙から地表を見れば、巨大な噴火のようなオーロラが見える事だろう。
もはやこの時代の人間にはとうてい理解出来ぬ神代の戦場がそこに。
迎撃と攻撃が無数に繰り返されて激突、威力は相殺されて確率制御の雲が微風以上の結果を出させない。
「にゃはははっ! この超々機動幻想妖精たるわたしにミサイルなど無駄無駄無駄ぁああああっ!!!」
「やっぱりだめかぁああっ!」
この結果は視えてたから予定通り起動させる。
ここまですべて布石。ほんのわずかな距離を稼ぐ必要があったから。
最速で思考が現実化する。
イメージは剣、物質創成、自分を象徴する幻想をもって形とす――
“極度に発達した科学は、もはや魔法と変わらない”
神代の科学予言者が遺したこの言葉に、この超兵器は到達していた。
刹那で完成する人類の到達点、最終最後の超武装――世界を叩き斬る万能事象制御器《森羅万象自在剣》――それが二振り出現する。
「まさか、わたしにできないとはおもってにゃいよなぁあああっ!」
「そんなの当然だとおもってるわぁあああーーーー!」
互いに自分の身長よりも巨大な剣を、構えもせずに踏み出して斬る。
有象無象の区別なく次元ごと叩き斬る重力子制御剣が鍔迫り合い、局所重力変異を起こして空間が歪み――
フェテリシアが撃った鏡面反射仮想物質爆弾が同威力の反鏡面反射仮想物質爆弾で相殺されて微風すら起こさないまま終わる。
「フェスの攻撃は全て直観済みにゃっ! 何をしても無駄無駄無駄無駄無駄っ!!」
「まだ! まだ負けて――っ!?」
凄まじい悪寒がフェテリシアの背筋を閃光のように駆けた。
ねこみみメイドのバイザーが透けて、“眼”が視える。
極限まで黒く澄みながら、粘着質な視線/感情が放射されてくる。。
さぁ、わたしのものとなれ、フェテリシア・コード・オクタ―――!!!!!!
「っ!!!!!!!」
極度に圧縮研磨された極限の感情がフェテリシアを総毛立たせる。
――全くの同性能である天塔騎士同士における戦闘の真髄とは、精神攻撃だ。
重力偏差がフェテリシアの演算から少しだけずれた。
ほんの、極些細な誤差とも云えるズレ。
しかし、準光速戦闘中では致命的。
剣の引きがわずかに遅れ、局所重力制御の重なりが微かにずれて――
ドミノ倒しのようにあらゆるズレが連鎖肥大化していき、確率制御虚源力場にほころびが生じる。
ほころびが生じることを判っていたかのように、迫りくる並行次元連結型拘束単分子鎖の大群がすり抜けてフェテリシアに直撃する。
その“結果”が観える。故に回避のための演算
「な――っ!!」
何万何億何兆――回避できない。
無数の道筋をたどるというのに必ずその結果に収束する。
まるで特異点のように。
演算結果の全てがそうなり、フェテリシアの超直観でさえもその結果しか観えない。
それはどうやっても回避できなかった演算世界。
収束確定したがゆえに具現化する。
刹那で完成する鎖に手足を縛られた半裸少女騎士の像(命名:マヂ狩ル☆メイド)。
途中経過を全部省いて結果だけが現実化したのだ。
「同じ性能なのに、ぜんぶ迎撃できるなんてどんだけーーーーっ!」
「にゃはははっ! 経験が違うのだよ、経験が! わたしに勝とうなんざ、56億7千万年早いにゃっ!!」
「わーん、やっぱり年増には勝てないのかーーーっ!!」
「にゃんだとぉおっ!! 永遠のハタチににゃんてことをいうかー!!」
「へっへー、ボク15歳だもんっ!! ハタチでも年増も年増、大年増だねっ!! やーい、おばちゃん! イカズゴケー!!」
――繰り返すが天塔騎士同士における戦闘の真髄とは、精神攻撃である。
さて、ここまで長々と書いてきたが、実際に起きた現象はこうである。
なんか二人で罵りあっていたら、突如鎖に絡まれた少女の像が完成して、低レベルな舌戦をしている。
何を云っているのか判らないかもしれないが、起きたことをありのまま書けばそういうことである。
地球を破壊できる超兵器の撃ち合いは演算だけで、演算結果の押し付け合いでフェテリシアは敗北し、最期だけが現実化したのだ。
そして読むだけで5分はかかる行動を、1秒以下で行うのが、天塔騎士である。
子供のケンカよりレベルの低い舌戦を繰り広げている横で、呆然自失している者が一人いた。
『な、なにが、起こったのだ……?』
発射された荷電粒子束は、数十メートルも進まないうちに掻き消されるように消滅した。
――天塔騎士たちの凄まじく低レベルな舌戦の背後では数垓を超える世界演算がされ、惑星破壊規模の超兵器を撃ちあって互いを落とそうとしていた。
それらはただの演算だが、現実と同じレベルで仮想再現する演算はもはや並行世界と同じ。
何度もなぞられ積み重ねられた演算世界はどこかの時点で優位性が確定し、その瞬間に現実となるのだ。
しかし、それは重複並行次元が認識できない者にはまったく判らない。
ただの舌戦を繰り広げているだけにしか見えないのだ。
膨大な演算による超高密度重複仮想演算が持つ圧力の前では、ただの荷電粒子束など蟷螂の斧よりも無力だ。
「ふぉおおお、こ・の・わ・た・し・を、怒らせたにゃぁぁあああっ!! 」
「ボクより年増なのは事実でしょー、この差は絶対! 先に生まれた不幸を思い知れ、ボクのほうが若いもんねー!!」
「ブチコロスぞ、このまな板娘ぇええっ!」
「なにがまな板じゃぁああっ!! すこし控えめなだけだもんっ!」
ちょっぴり(主観)だけ盛った胸を張って反論するフェテリシアに、ねこみみメイドは憐れんだ視線を向けて
「ふっ」
「鼻で笑われたっ!?」
ねこみみメイドはそのままつぃっと胸をそらすとたゆんと揺れる。それは決定的な敗北の証。
「うがぁああああっ! おおおお女の子の価値は胸じゃないもんっ!」
「にゃにをいうか、この残念無双めっ!」
「なに、そのすっごく嫌な響きの称号っ!」
「ふっ……料理できない」
びきっ!
「掃除洗濯いずれもダメ」
「うっ!」
「あんがい博打が好き」
「なにを根拠にっ!」
「馬と云えば判るにゃ?」
「にゃにゃにゃぜそれをっ!! べ、べつにお金は賭けてないもんっ!!」
フェテリシアは賭け事をしているわけではない。
実は彼女の密かな趣味は馬鑑賞である。
馬術は正式には習っていないのだが、騎士といえば馬と云う短絡思考により幼い頃から好きであった。
いつか帝国騎士団で馬にまたがるのが密かな夢だった。ちなみに帝国騎士の正式装備に馬はないので、これは彼女の思い違いである。物語の騎士と勘違いしているのだ。
それはともかくミズホの競馬場でよく目撃されているので、単純に博打(競馬)が好きだと周りから思われている。
この時代でも競馬は博打であって、馬鑑賞なんていう趣味の人間はほとんどいないからだ。
「フェスのことならにゃんでも知ってるにゃ~。それから~基本的に拳で解決を図る~実は頭が悪い~」
「っ! っ!」
フェテリシアはびくんびくんと反応する。自覚はあるのだ。
「つまり女の子とかそういうレベルじゃないにゃ。ヒトとして残念なのにゃ~!」
びしっと指を突きつけて、ねこみみメイドが断言する。
どどーんっとどこからか太鼓の音がする。
「……」
ぷるぷる震えながらもフェテリシアは反論が出来ない。ぜんぶ事実だった。
――何度も繰り返すが天塔騎士同士における戦闘の真髄とは、精神攻撃なのだっ!
「……母様……引きましょう、このままでは……」
ぐったりとしたノーフェリの力が抜けた小声でした提案は、母親の怒声でかき消される
『ここで引けるわけがなかろうが、この馬鹿者がっ!! 効かぬのなら効くまで撃てばいいっ!!』
乱暴に操作を行い、カイザーリンブルグが鳴動する。
「ぐっ、がぁ……か、あさま……!!」
魔術炉心にされているノーフェリから魔力が搾り取られていく。
魔法器官が限界以上の魔力子変換を強いられて悲鳴をあげ、ノーフェリは頭を押さえて抱え込む。
エールゼベトはそんなノーフェリを見向きもせず画面表示の充填率を見ながら忌々しそうに怒鳴る
「もっとはやくならんのか、くそっ!! かまわん、もっと汲みあげろっ!」
危険注意警告を無視して、変換ゲインの上昇を指示する。
「っ!! っ!」
ノーフェリが苦痛に身を捩って副操縦席で暴れる。
「騒ぐなっ!! まったくこの私から産まれておきながら、この程度の役にもたたんのかっ!」
エールゼベトもまた苦痛に顔をゆがめ、脂汗を浮かべている。彼女自身の魔法器官も全力稼働しているのだ。
そして休息に充填率を上昇させて、発射可能のサインが画面に表示される。
『充填率105パーセント! 神魔必滅天地終焉砲》発射っっ!!!!!』
再び20口径20インチ荷電粒子砲が咆哮をあげて膨大な光の奔流が放たれる――。
「うるさいにゃぁー」
ねこみみメイドがめんどくさげにくぃっと手首を捻る様に揮った。
迫りくる極大光の奔流が割れた。
『な、にぃいいいっ!!』
エールゼベトが驚愕の声をあげながらも、さらに出力をあげるが、割断は止まらない。
そのまま神像巨人まで到達して、通り過ぎた。
荷電粒子砲の掃射が止まり、静寂になる。
突如、カイザーリンブルグの操縦席は警告で埋まった。
『な、なんだ、いったいどうしたっ!』
巨体に線が引かれ、それにそって上半身がずるりとずれていく。
大質量ゆえに初動は遅かったが、落ち始めると加速し、装甲の内側で小爆発を繰り返しながら地面に落下する。
その途中で頭部が分離して、噴射炎を上げて上昇していく。
緊急脱出装置が動作したのだ。
『く、くそっ!! 覚えて――な、なんだっ!! 吸い寄せられるだとっ!!!!』
変形して翼を出した脱出艇が引き寄せられていく。
真空竜巻斬りにより、巨大な真空地帯が生じていたのだ。
『おおおおおっ!!』
膨大な大気が吹き戻されて嵐のようになっておりまともに操縦が出来るはずもなく、木の葉のように翻弄される脱出艇から装甲カバーが爆発ボルトで吹き飛び、射出座席装置が作動する。
エールゼベトとノーフェリが座席ごと射出され、自動姿勢制御噴射で地面に軟着陸する。
遥か後方で、脱出艇が墜落して大爆発を起こした。
……すみません。盛り込みたいネタを仕込んでいったら、また終わりませんでした。
この話は前回に盛り込むべきだったと反省してます。
なお、用語は雰囲気重視です。作者も詳細はよーわかりません(苦笑




