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残酷な世界

パクス・バニーをうっちゃって、新シリーズ始めました。

ロボットものが書きたくなったので。


※注意 後半にレイプ的暴力描写があります。ご注意ください。

   ただし、本編は特に鬱展開があるわけではありません。 

    

2013/4/12 設定変更に伴い、一部修正

2013/5/6 設定変更にともない一部修正

2013/6/22 物語概要を追加

2013/8/11 レイプ描写ありと前書きに追記

2014/4/19 一部修正





――これは、おとぎばなし。

ひとりの少女が、おとなになるための旅立ちのお話。



遠い遠いはるか未来か、過去かもしれない時代。

大宇宙に浮かぶ青い水の星の、とある国での物語。


 その国のとある名門魔法師一族の家で、ひとりの女の子が生まれました。

 その国を支える賢くて優しい両親、厳しいけれどかわいがってくれる姉、とても慕ってくれるかわいい妹、幼馴染の男の子、親友になった同い年の少女。

 とてもとてもいい人たちに、いっぱいの愛情をうけて、女の子はすくすくと育ちました。


 そして10歳の時に行われる〝魔法適性の儀〟を迎えました。

 それは誰でも体内にもつ魔法器官を動かし始める一生一度の儀式です。

ところが、少女は魔法が使えませんでした。――彼女には、その魔法器官が無かったのです。



――少女の世界は一変しました。


「あら、ゴミのようなものが。近づかないで、汚れてしまうわ」

 親友だと思っていた少女。



「なんだ、その目。ゴミがそんな目をしていいと思ってるのか?」

 気高く、優しかった幼馴染の婚約者。



「ああ、臭い、臭いわ、ゴミの匂いがする」

 顔すら向けない、かわいがっていた妹。 



「ふん――」

 何かを云うのさえもったいないと目もあわせぬ美しい姉。



「私たちから魔法が使えない子どもが生まれることなんてあるはずがないわ」

 少女を無かったことにした母親。


「ふん、命を奪わないのはせめてもの慈悲だ。わしの寛大さに感謝するんだな」

 顔を踏みつけ、虫ケラを見るように見下ろして告げる父親。


 家族から、国からも追い出され、辱められて死にそうになった時。



――少女は出会いました。

漆黒の巨人騎士とそれを駆る騎士に。


そして、時が流れ――少女は故国だった国へと降り立ちます。

巨人騎士を駆る少女騎士として。


これは、少女が望まなかった亡国の物語。













 ガタゴト……

 揺れと音で意識が徐々に覚醒する。

(わたし……身体が重い、なんかしびれてる……父様から受けた雷の魔法のせいかな……)

 とりとめもなく少女は思った。意識がはっきりしていないままつぶやく。

「ここ……は……」

「お、こいつ目が覚めたみたいだぜ」

 少女は知らない男の声で、はっと目が覚めた。

 彼女が自分を見下ろすと粗末な荒い目の布服で、後ろ手に縛られている。


「あなたたち、だれ……?」

 少し警戒しながら、少女は尋ねる。

 馬車には黒髪の少女のほかに、同じ荷台に座っている小太りの男と幌馬車の御者台に座っている背の高い男が二人いた。

「まぁ、自己紹介するような身分じゃないんでね、勘弁してもらおうか。おれたちは仕事であんたを預かったのさ」

「俺らが頼まれた仕事は、お前さんを〝黒き死の森〟に捨ててくることさ」

 馬車の御者台から別の男も教える。

「けっこういい金もらったぜ、へへ……」

 下卑た男たちに嫌悪感を抱きながらも、それを表面には出さないように少女は気を付ける。

「で、お前さん、〝能無し(ノマー)〟なんだろ?」

「だ、だったらなんだっていうのよ……」

「魔法を使えないんだよな?」

「……」

 黒髪の少女は黙る。どう答えてもまずい気がして。

〝能無し〟というのは何らかの理由で魔法が使えなくなった人間のことを指すものだ。

だが、少女は最初から使えない。ウソをついてもすぐにばれることだろう。

「何も言わないってことは、本当みたいだな。んじゃ、抵抗できねぇな」

「んで、あんたは名前も戸籍もないっと」

「な、なんで……」――それを知っているのか。

 御者台の男の言葉に、少女は動揺した。

 今の少女は家名も名も奪われ、戸籍すらもない。

それはつまり帝国の保護を失っていることを意味していた。

「ん、そりゃ依頼主さんから聞いたからさ。つまりあんたは完璧な〝能無し〟、帝国民じゃない」

「帝国民ってゆーのはなんでもいいから魔法が使えるからな」

「つまり、お前さんには何したっていいっていうこと。わかるかなぁ?」

 男たちはやたらに饒舌だった。それは、獲物を追い詰めて嬲っていくように。

「な、なにをする気――!」

 黒い瞳に恐怖を浮かべ、怯えて後ずさる。でも狭い幌馬車の中だ、逃げ場なんてない。

「なぁに、〝能無し〟ていっても人間さまと同じ身体なんだ。だから、ちょっとおじさんたちにご奉仕してもらうのさ」

「おいおい、ずいぶんまどろっこしいことしてんな。さっさとヤっちまえよ」

「はは、怯えたのをヤるのがいいんじゃねぇか。娼館じゃなかなかできねぇからな」

「ったく、あいかわらず悪趣味だな、おい」

 男たちが云っていることがさっぱりわからなかった。

まだ10歳の少女、そういう知識はほとんどなかった。

「じゃ、処女はおれがもらうぜ~」

「はいはい、じゃんけんで負けたからな。代わりにうしろはオレな」

「おうよっと。おっと、抵抗するなよ、痛いだけだかんなっ!」

 ぎらぎらと欲望を昂ぶらせた目の男が少女を捕まえて、ボロ服に手をかける。

「きゃっ! あ、なにするの、やだぁっ!!」

 傷一つない真白な肌が露わになる。

 男は少女をつ伏せに押さえつけ、そして――。



  ☆★☆


 主要街道から歩いて15分ほどのそこは鬱蒼と生い茂った森の中で、木々に阻まれて薄暗い。

 そして、野生動物や魔獣と呼ばれる危険生物が数多くいることで有名で、一般人の立入禁止区域に指定されていたそこは、〝黒き死の森〟と呼ばれていた。


「この辺でいいだろ」

 小太りの男が抱えていたそれ(・・)を、どさりと地面に放り投げる。

 後ろ手に縛られた全裸の少女が転がって、木にぶつかる。

黒い目は虚ろで、脚も力なく投げ出される。

無残にちぎれた髪は白く、雪のように真っ白の肌には、いくつもの紫色に変色した殴打痕や焼け焦げた痕。

股やふとももには乾いた茶褐色の血のあとや濁った黄色っぽいなにやらがこびりついている。

暴力に曝され続けた少女は、まるで人形のようになにも反応しない。



「おっと、歩けないようにしておかないとな」

 転がした少女の脚を持ち上げ、小刀で足の腱を切った。

 ぽたぽたと血が滴り落ちる。そこまでされても、少女はなにも反応しない。――心が壊れていた。

「よっと。こうすりゃ狼か魔獣が始末しくれんだろうよ」

 少女の肌でナイフの血をぬぐって懐に納める。ロープを首に巻きつけて、木にくくりつけた。

「けっこう具合もよかったし、このまま飼ってもいいんだが、バレたらめんどくさいからな」

「へへ、殺さないだけでも感謝しろよ、〝能なし〟」

 侮蔑の言葉を受けても、少女は虚ろなままだった。その瞳は、もうなにも写していない。


「さて、急いで――」

 ここを離れないとな。と続けようとした男の声は、甲高い排気音にかき消された。

「な、なんだぁ、突風か?」

「んな、ばかなっ!」

 膨大な風に巻き込まれて土が巻き上がり、木々が大きく揺らされる。

 奇妙な、鼻に突く刺激臭が、風が来る方向から匂ってくる。木々の枝が引きちぎられて、枝の隙間が広がっていく。

 重々しい着地音が響く。

 重圧な金属隗が大地を踏みしめるような音。だが姿が見えない。

 とつぜん男たちの周囲が暗くなる。なにかに太陽光が遮られたのだ。

 なにもなかった空間から空電音をまき散らして黒い巨人が現れていた。


「おい、あ、あれっ!!」

「な、"巨大人形騎士(ティタン・ドール)"!! なんでこんなとこにっ!!!」

 それは細身の四肢をもつ巨大な人形だった。

 頭部には巨大な平角が二つ。

 身体は騎士甲冑のように華麗ではないが、優雅で精悍なラインを描き、無駄なものは一切ない。まるで万物を斬るという東方より伝わる(カタナ)を想起させる。

 黒艶色の装甲にある汚れは、実戦を経ていることを物語っている。

 両腰につけられた二振りの巨大な剣はあらゆるものをぶったぎることだろう。


『そこの二人! そのまま両手を頭の後ろで組んで、膝をつけ! 従わなければ撃つっ!』

 黒い巨人から女の声が響く。

 何でも屋の男たちは、以前に聞いた奇妙な噂を思い出した。――とある組織が、〝能無し〟を保護していると。

「逃げるぞっ!」「おうっ!」


 一目散に逃走を図る。ここは森林で、見通しも悪い。

人類最強の兵器である"巨大人形騎士(ティタン・ドール)"でも捕まえることは難しいはずだ、そう考えたのだ。

だが、それは黒い巨人、ひいてはそれを操る者を侮り過ぎていた。

 単発の射撃音が二つ。

「ぎゃあああああっ!」

 血しぶきをあげて転げまわる男たち。走り始めた瞬間、正確に膝が撃ち抜かれたのだ。

『警告はしたぞ?』


 黒い巨人に膝をつかせて、降りてきた操騎士(ライナー)が呆れたように云った。

 栗色の長い髪の女性だ。黒色の耐衝撃緩和服姿で、片手に5.54mm小銃を持ち、腰に翡翠色の鞘に納められた小太刀を佩いている。


「さて、このへんにお前らが運んできた子がいるはずだな? どこだ?」

 小銃を向けて、女騎士は聞く。

「いてぇ、いてぇよ、早く治せよっ、畜生っ!!!」

「どこだ?」

 泣きわめく男たちを無視して再度問いかける。その視線は冷たい。答えなければ殺す――そういう類の目だった。

「っ――!」

細身の男が震えながら指差した方向を見て、女騎士は焦った。

 木に繋がれ、虚ろな目をした裸の少女。

「く、手遅れだったか!? 情報部め、遅いんだよ、いつもっ!」

 駆け寄ると、少女の首筋や手首で脈を計り、呼吸を確かめる。どちらもかなり弱々しい。

《マスター、この程度ならば治癒可能です》

「そうか! キャリアに治療漕の準備を! 急いで運ぶぞ!」

 無機質な音声が耳元で報告すると、女騎士は安堵の表情を浮かべて指示を出す。

《了解しました》


 女騎士がロープをひきちぎり、少女の背中とひざ裏に手をやって優しく抱き上げた。

「遅くなってすまなかった。だいじょうぶだ、こんなケガは、すぐ治るからな、もうすこしだけ頑張ってくれ」 

 優しく声をかけながら、黒い巨人が差し出した掌のうえに腰かける。

「よし、いいぞっ!」

《了解、左腕を上げます。浮上移動を開始》

 両脚から圧縮タービンの回転する高周波音が轟き始め、普段は閉じている吸気口が開く。

 

「おい、俺らを助けていけよ!」

「そ、そうだ、このままじゃ獣に殺されちまうっ!」

 撃ち抜かれた膝を抱えて、地べたをはいずる男たちが情けない声で助けを求める。

「ああ、すまないが、こいつは二人乗りなんだ。自分たちでなんとかしてくれ」

 感情のこもらない冷たい目で見下ろしながら女騎士が告げる。彼女は男たちが少女に何をしたのか気が付いていた。

「な、なんだとっ! 騎士が、一般人を見捨てるのかよっ!」

「ここは、立入禁止区域だろう。そこに入れる君たちが一般人のはずがないよな?」

「っ!!」

 圧縮タービンからの高周波音がさらに高くなり、浮上走行用排気口にある推力偏向板が動作確認をする。

 周囲に豪風が吹き荒れはじめる。

 男たちは腕で覆って巻き上げられる土埃から顔を守った。


 女騎士がさも思い出したかのように男たちに大声で教えてやる。

「ああ、そうだ。近くにいくつか生命反応がある。逃げるなら早いほうがいいと思うぞ」  

「た、たすけてくれぇーーーー!」

 男たちの声を無視して、黒い巨人は甲高い風切り音をあげながら浮上移動を開始した。


 女騎士は少女の白くなった髪を優しくなでながら耳元にささやき続ける。 

「もうすこしだけ、がんばれ。そうすればこんなケガ、痕もなくなるから。そうしたら、私たちの国に行こうか? だいじょうぶ、そこはね、私たちみたいなのが安心して暮らせるところだから……」







そして、月日は流れた――。



少女の名前が出ていませんが、仕様です。名前も何もかも失ったので。

そしていきなりレ○プから始まるのも、世界観説明に必要かなと。

〝能無し〟は、この国ではこういう扱いなのです。

あと叩かれて叩かれても這い上がるヒロインが好きなので、パクスバニーさんと同様に非道い目にあうのは、もうこりゃクセかもなぁ……。


"ティタン・ドール"は、この世界での大型人型兵器の総称で、各国で構造と名称が違います。

"ライナー"もティタンドールを操る人間の総称です。

各国でいろいろと仕様が違いますが、一般人より神経反応が高いのは共通です。

だいたいの人はお気づきでしょうが、ついに連載再開されたアノ物語のオマージュです。もちろん設定は違いますが。

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