巨人たちの招来降臨
新年明けましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いします。
なお新春早々、内容はカっとばします。
――ついて、来れるか?(某朱い服の男風)
それはまさに轟音だった。
天空を埋め尽くすほどの武具の大群が豪雨のごとく降り注いだのだ。
無銘、有名、伝説にも到ろうかという武具の大軍勢。
戦場を灰にする超大規模攻撃。
激突、破砕、粉砕、圧壊、劈開、破断、ありとあらゆる壊れる音が幾重にも連鎖して周囲を圧する。
雷鳴が轟き、大地が割れ、暴風が吹き荒れる。
殲滅はおろか過剰殺戮の大暴嵐。
飛来した武具が中り、突き立ち、叩きつけられる。
彼女の騎士服が引き裂かれ、千切られて飛び散っていく。
袖が吹き飛び、スカートが破け、ストッキングが引き裂かれ、後ろ髪をまとめていたリボンが千切れ。
身体を拘束している鎖が割れて砕け、飛び散る。
豪壮な大剣が肩口に激突。
剣先が砕け、破片をまき散らしながら彼女の後方へ跳ね転がっていく。
高速回転する蛇矛がフラットな胸に突き立ち、潰れひしゃげて分解破砕する。
何十もの矢が降り注ぎ、突き立ち、四散して飛び散る。
ばらばらになりながら空中を回転する槍、砕けて飛び散る大斧、明後日の方向に跳ね返される弓矢、折れ曲がった剣身が逸れて後ろに跳ね転がる。大地を抉り、転がり、飛び散り、土煙を巻き上げる
数百、数千、数万。
無限に続くかと思われた武具と魔法の大瀑布が止み、静寂が支配する。
――地形が一変していた。
肥沃な黒い大地だった場所に深く、抉られた深く広い爪痕のような溝が縦横無尽に走り、さらに丸い砲撃痕の丸いクレーターがいくつも重なり、荒野と化していた。
そして無数に散乱する武具の成れの果て。
たたずむフェテリシアは――全くの無傷だった。
「――」
エールゼベトが絶句している。
手に持った魔導槍はぐぉんぐぉんと唸りつづけ、大量の魔力を放出している。
古代魔導遺物の一つである神威槍ウリエル。古代遺跡で発見したそれは、魔力を大量発生させ、大規模儀式魔法級を単独行使することが可能な逸品。
その能力を全開にして実行した聖域構築、そして過剰火力といえる武具投射、塵ひとつ残さないはずの大規模攻撃が、まるで通じていない。
「く、まさか武具投擲を凌ぐとは。なんと強力な魔導遺物だっ、いまいましい!!」
「……」
「だが、その力も無尽蔵というわけではあるまいっ!! いくら強力な魔導遺物とはいえ、この“世界”全てを相手に出来るほどでは――」
「逆ですよ――この“世界”である限り、ボクのほうが有利だ」
叫びながら武具を次々と生成していくエールゼベトの言葉をフェテリシアが遮った。
「なに?」
「この世界は魔力に満ちている。しかも“_無色”の魔力が。現実世界ではほとんどないそれなら、ボクにも扱えるからね」
「は、バカな。魔法器官のないお前が魔法を扱うことなど出来るはずがない。魔導遺物を使っているのだろうがっ!!」
もうフェテリシアは否定しない。ただ熱のない目で見ながらつぶやくように告げる。
「――魔法の本質は、“自分の意思を現実世界に具現化”すること」
フェテリシアは淡々と言葉を続ける。
その瞳に色はなく、声にもまた感情がこめられていない。
「帝国の魔法、つまり魔法器官による魔力制御法は、手段の一つでしかない」
「何、を…云っている?」
「魔法を実現する手段は一つじゃない。ボクは帝国の魔法は使えないけど、最も古き魔力制御法なら、使えるんだよ」
指先をついっと動かす。
微かに光る八角形をした魔法防御盾が出現した。
「威力や効果はたいしたことはないけど、それもこれだけの魔力に満ちた世界でなら、数で補える」
言葉と共に彼女を無数の八角形の防御壁が取り巻いていく。
「さらにいえば、魔力で形成したそれらの武具。魔力支配がほとんどされていないから、支配権を奪うのも簡単」
足下に落ちていたひん曲がった剣を拾い上げる。
なにかをつぶやくと突如解けるように剣が分解されて地面にこぼれ落ちた。
魔力物質固定を解除されたのだ。
唖然とするエールゼベト。
物質固定された魔力を、破壊することなく再び魔力化するには魔法使い本人か、それ以上の魔法制御能力をもった魔法使いにしか出来ない。
しかし、フェテリシアは固定解除をして見せた。
つまり、エールゼベトよりも魔法制御能力があると云うことになる。
帝国最強魔導師と呼ばれる自分よりも――
「そんなことが――あるはずがないわぁあああっ!!!!!!!」
事実を認められないエールゼベトの怒号とともに、武具の大軍勢が再度空を覆いつくす。
さらには同数以上の光熱線砲撃魔法陣が十重二十重に連なって展開していく。
威力だけなら、もはや“国落し”――戦略級魔法に匹敵する超火力がフェテリシアに照準を合わせ――
「わが眼前の敵を――滅ぼせっ、 《奈落の混沌へと還れ》!!!!」
勢いよく槍を振り下ろす。
巨大落雷のごとき轟音とともに武具がフェテリシアに殺到する。
フェテリシアがくすりと笑う。
「敵と――認めてくれたんですね」
身体の前に大量の魔法防御盾が出現し、武具と砲撃魔法の大軍団と激突して無力化していく。
剣が砕けながら後方に吹っ飛ぶ。
熱光線魔法が幾枚もの魔法盾を貫きながら減衰して消滅
天空より一直線に突き立った槍が穂先から潰れながら大爆発を起こす。
誘導光弾が魔法盾に弾かれて別の光弾と激突して大爆発を起こす。
回転して飛来した両刃戦闘大斧が激突して砕けて落ちる。
次々と飛来する武具ことごとくが展開された浮遊魔法盾にぶち当たって無力化していく。
豪雨のように降り注ぐ砲撃魔法もまた逸らされ反射され地面を融解し、砕けた武具を爆発させていく。
「生物は多かれ少なかれ、魔力を操る素養をもっている。それはこの身体に刻まれた、この星の刻印だから」
剣電弾雨のごとき魔法と投射武具の嵐の中を、フェテリシアは悠然と歩く。
膨大な破壊/破砕音が轟く戦場で、その声は奇妙なまでにはっきりと響く。
「ところが、帝国では魔法器官を通して制御することを魔法としている。しかも八大属性としてカテゴライズまでされている。魔力は本来は属性なんてない。だって、その方向性を決めるのは意思なんだから」
武具が、砲撃魔法が暴風雨のようにフェテリシアに叩きつけられ、砕け散るガラスのように煌めきながら後方へと流れていく。
「願いを込めて、意思を持って魔力を操り実現すること。それが本来の魔法――!」
飛来する剣を鷲づかみ、くるりと回して手首だけで投げ返す。
「ぬぐぉっ!!」
完全には反応できなかったエールゼベトの真横を過ぎてから爆音が轟く。音の壁を越えたのだ。
衝撃波で彼女の身体が吹き飛ばされそうになり、ふんばる。
「この世界では、魔力支配権の奪い合いになる。貴方がが絶対的に優位というわけじゃないよ?」
現実世界では至近の魔力しか操れないフェテリシアにとって、この世界はすべてが利用できる。
エールゼベトの切り札は、フェテリシアの鬼札だった。
「――いいだろう。貴様をわが敵と認めてやる」
無表情になったエールゼベトがつぶやきながら、左腕の小型盾を構えた。
盾の表面がスライドして内部機構が露わになる。
握りこぶしほどもある紅い珠を取り巻く複雑怪奇な金属部品の集合体。魔導槍“ウリエル”と同系統の機構がきりきりと音をたてながら回りはじめ、やがて歯車がりりりりと高速回転を始める。
「――我が最大最強の戦力をもって貴様を殺してやるっ!!!」
左手を掲げた。天空を覆い尽くすような巨大な魔法陣が現れる。
それは光り輝きながらゆっくりと回り始める。
「天よ、怖れよ! 地よ、叫べよ! 海よ、哭けよ! 」
濃密な魔力が光り輝き渦巻きて吹き上がる。
空間がきしみたわみ、歓喜の声を挙げる。
「神威召喚! 汝、その名を《神装騎神》!!」
黄金の大瀑布が天空より落ちる。
それは、荘厳なる白金
それは、黄金の絶望
それは、無垢なる神威――輝ける巨人が降臨する。
「はははははっはっ!!! これこそが私の最終最強の装備!! これを使わせたことを誇るがいいぞ! 貴様が終わるまでの短い時だけでもなぁっ!!」
エールゼベトが高らかに哄笑する。
40メートルを超える輝ける巨人が大地に降り立ち、巨大な盾を突き立てる。
その偉容、まさに神々の尖兵。
人面を模した頭部の口元が開き、神々しい光が放たれた。
それはエールゼベトとノーフェリを包み込み、空中を上らせて頭部へと導く。
エールゼベトは到着すると、ノーフェリを促して中に入る。
巨人の口元が閉じられる。
それをフェテリシアは黙って見ていた。
表情はないが――見上げる瞳は少し鋭くなっていた。
不意に辺りが黄金色の輝きに染まる。
巨人の後背にまばゆい輝円が現れたのだ。
そして、巨人がゆっくりと両腕を広げ、巨大な双剣を背中から引き抜いて掲げた。
まさに神の威容を体現したかのように神々しく、美しい白金の戦神像がここに降臨した
『神々が最終兵器がひとつ。かつて七日七晩でこの大地を浄化した神意の体現者! ――貴様などには勿体ないが、神に匹敵する真の力というものを教えてやろう!!!』
エールゼベトの拡大された声が轟く。
だまって見上げていたフェテリシアはぽつりとつぶやく。
「――逃げましたね?」
『なにぃ?』
フェテリシアの言葉が理解できなかったエールゼベトが思わず問い返した
「この世界、バックアップを受けているとはい
え、それでも貴方の魔法だ」
フェテリシアが腕を組んだ。
いつのまにかその瞳に浮かんでいた感情は――哀れみだ。
「だけど、それはなに? 貴方が絶対的に信頼し、誇りとしていた魔法ですらない。貴方は最後の最後で魔法ではなく、それをとった。つまり、魔法を捨ててその兵器に逃げたと云うことだ」
「貴様――っ!!!!」
神像巨人が脚を踏みだした。
轟音と地響きが轟き、土煙を巻きあげるが、フェテリシアは意にも介さない。
「その程度でしかない魔法が使えなかった、それだけでボクは徹底的に否定されたんだ――ああ、お笑いだねぇ」
フェテリシアの口元が、目が歪む。
小さい笑い声がくつくつと周囲に広がり始める。
それはフェテリシアの喉の奥、腹の底から響いてくる。
「――いいでしょう。お笑いだというのなら、道化を演じて見せましょうっ!!!」
フェテリシアは両腕を広げて狂ったように哄笑する。
彼女の足元に光で描かれた巨大な陣が爆発的に広がる。
それはと血よりも朱く輝く文字で“CAUTION”と書かれてくるくると周回し、光の粒を吹きあげる。
基本騎召喚……構造想定省略……周辺魔力子干渉……機構省略……製作工程省略!!
魔力があれば魔法の可能性は脳裏で描いた想像次第。
すなわち想像をもって、現実と成す――
「出来上がれ、わが意の下に――っ! 《It’s a show time!》」
大地が鳴動する。
地響きを立てながら足元の魔法陣から黒鉄色のなにかががせり上がってくる。
それはフェテリシアを乗せて一気に立ち上がる。
『な、なんだ、それは――』
――それは、とても四角く、分厚く、そして巨大だった。
黒鉄の城のような威容を誇る巨大な40メートル超の人の形をしていた。
長方形の巨大な頭?には、つぶらな四角い眼と、“ω”の形の口が描かれ、額に光り輝く八角形に二八号機(漢字)の文字
それは、まさにダ○ボー……もとい積み木の人形だった。――とてつもなくダサい。
そう、フェテリシアには致命的に絵心がなかったっ!!!
巨大な頭の上に腕を組んだフェテリシアが高らかに宣言する。
「これが|大鉄人計画番号28《グレートアイアンマン・プラン28》、略してアイちゃんだっ!!」
ついでにネーミングセンスも致命的になかったっ!!
いつからシリアスだと勘違いしてた?>挨拶
この話は、基本コメディです。シリアスは長続きしません。
――ついてきてる?
この章を延々とシリアスっぽく書いてたのはこのためでした。
ここまで見捨てないでくれた読者様方なら、楽しんでもらえるだろうと思っております。(わりと本気)
そういえばいつの間にか30万PVを越えていました。
ここに投稿されている作品中では、大した数字ではないですが、それなりに読む方がいると思えば、もう少しがんばってみようという気になります。
今後もよろしくお願いします。




