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少女はつぶやく

登録150件突破ということで新作を投稿。

おまたせしたのかはよくわかりませんが。

「なにか言い遺すことはないか」

 少女はなにもいわない。静かに顔を伏せる。

 身体再生中の証であるうすい白煙を身体中からあげ、緋髪の色がゆっくりと抜けていく。

 取り囲む皇帝騎士たちもまた微動だにせず、少女の一挙手一動を油断なく見据えている。


 皇帝騎士アインがゆるやかに剣を掲げた。

「……なにもないか。――帝国の名の下、騎士の礼に則り、汝を葬ろう。その魂に安らかなる眠りを」

 祝詞を静かに唱え、魔法剣を起動する。

剣身に刻まれた文字列が輝き、切断魔法圏が発生する。


その剣を振り下ろすべく構えた瞬間。


「待て」


レオン・ド・ゴルド宮廷魔法師長だった。

 背後には魔法騎士に砲撃魔法士が勢ぞろいしている。いずれもが苛烈な戦意を揺らめかせ、少女を睨んでいる。

 彼らは、いままで少女に翻弄されてきた騎士や魔法師たちだった。


「皇帝騎士よ、其の者はこちらに引き渡してもらおう」

「ゴルド宮廷魔法師長閣下。その命令は聞けませぬ。我らは皇帝陛下直属の騎士、その行動のすべては勅命に拠るもの」

「其の者の身柄は私に預けられておる。それは勅命にて定められたことであり、汝らが処分することは勅命に背くことになる」

「皇帝陛下は我らにこの者を討伐せよと仰せられた。よって最も新しき勅命たる我らが優先される」

「その勅命は、〝天塔騎士を討伐せよ〟というものか。違うであろう、あくまでも城下を騒がせる賊の討伐であろう。しかし、それが天塔騎士であることは想定されていない。違うか?」

「最も新しき勅命が優先される、この原則に変更はありませぬ」

「ならば、我が新しき勅命をもらいうけるゆえ――っ!?」

 突如レオン・ゴルドが目を見張って絶句した。


「……続けてもらっていていいですよ?」


 皇帝騎士たちから少し離れたところに、フェテリシアと名乗っていた少女が立っていた。

 肩口から斬られたはずの左腕があり、まるで調子を見るように指を動かしていた。

 斬られた腕をくっつけて動作確認をしていたのだ。


「い、いつの間にっ!?」

 皇帝騎士たちは驚愕した。たった今まで目の前にひざまづいていた天塔騎士が居なくなっていたのだ。

 一瞬で動いたのではない。それならば四人八対の瞳が必ず気づく。だが、居ないことに気が付かなかったのだ。

 皇帝騎士四人、宮廷魔法師長レオン・ド・ゴルドを含む超一流の騎士や魔法師十数人の誰一人として。


「あら? どなたか一人くらいは気が付くと思ったのですけど……」

 むしろ意外そうに少女はつぶやく。髪の色が白銀へと変わっていき、逆に瞳の色が濃くなっていく。


 皇帝騎士達は合図をすることもなく一瞬で少女を再包囲する。

「――貴様、誰だ?」

 鋭い眼をした皇帝騎士アインが剣を構えたまま、静かに問う。

 少女の雰囲気が先ほどと違うことに気が付いたのだ。

 先ほどまでの少女は強者のもつ鋭い雰囲気を纏っていたが、今は令嬢のようなゆったりとした雰囲気でいて、隙がまったくない。

先ほどよりもむしろ警戒するべきだと皇帝騎士たちのカンが囁く。。

「わたしですか? そうですね……"フェアウィルド"とでも名乗りましょうか」

「ふざけているのか? 公平な運命(フェアウィルド)などと……」

「べつにふざけていないですよ? わたしは本当の名前を奪われましたので。元の名は、そこの人に聞いてくださいな」

 ほとんど服の体をしていないぼろぼろの服装の少女が指差した先には、宮廷魔法師長レオン・ゴルドが立っていた

「どういうことですかな、レオン殿?」

「――知らぬわ、賊の戯言を真に受けるでない」

 きっぱりと否定する。だが、その場の人間は誰も信じなかった。

答えるまでの極小の間が、なにかがあることをうかがわせてしまっていた。

「ええ、そう云うでしょうね、元お父様」

 少女はくすくすと笑う。

「どういうことかはあとでお聞かせ願いましょうか、閣下――。さて、まだ抗うのか、天塔騎士よ」

「せっかく名乗りましたのに、呼んでいただけないのですね」

「戯言には付きあわんよっ!」

 声を後方に残して、突きを繰り出す。残像すら残らない超速の突き。

たとえ躱されても、皇帝騎士三人の時間差攻撃が控えている。

 だが、少女は躱さなかった(・・・・・・)

「ぬぅっ!?」

 攻撃が当たらなかった。超速の突きが肩の数ミリ横を抜け、大地を割るような振り下ろしは数センチ背後に、滝を斬るような切り払いはかすりもせず、放たれた必中の矢は白銀の髪を揺らしただけだった。

 驚愕の声はあげても自失はしなかった皇帝騎士たちはすぐさま次の攻撃に移る。だが、結果は変わらない。

 豪速の突きも切り払いも唐竹割りも袈裟切りも逆胴も、武芸全てをもってしても当たらない。

 まるで騎士たちが勝手に攻撃を外しているかのよう。

 少女はただすこし歩いただけだ。

「離れろっ!」

 弾かれたように距離をとる皇帝騎士たち。

 少女は別に追わない。ふわふわした笑みを浮かべながら、ただその場で立っている。


 彼らは誰一人として理解していない。

彼女はただ歩いていただけだ。ただしヒトの認識の隙間を紡いで。

 人の認識は連続していない。意識と認識は脳の構造上、別々の処理系統であるためである。

 認識が断続している以上、意識の空白ともいえる瞬間が必ず存在する。

 その空白を縫うように動く歩法を、技をヒトは幾千年の時をかけて練り上げた、その究極の一。

 現生人類が失伝した遥か過去の遺失武術(ロストアーツ)

だが、帝国人達は知らない。皇帝騎士たちが、まるで自分の意思で攻撃を外したかのように見える。

 少女は決して早くはない。むしろ遅いとさえいえる動きで、するすると歩いている。


「なにをしている、そんな小娘に情でも湧いたかっ!」

 レオンが叫び、最速で魔法陣を構築する。

最速最強の雷撃魔法。かつて少女に放ち、その身と絆を灼いた超速度展開の魔法。

「《雷撃――》――っ!?」

「ダメですよ、元お父さま。魔法なんて遅いもの(・・・・)を近接戦で使っては」

 少女がいつのまにかレオンの前に立っていて、ローブの胸元を指でつついていた。

 戦慄したレオンが一足で後方へ跳ぶ。

 周りで魔法を構築しようとしていた魔法師たちも巻き込みを避けてばらばらに跳んだ。

 誰一人として接触したりしていないのはさすがである。

 包囲していた皇帝騎士たちは、背筋に冷たいものが流れるのを感じた。

 一瞬たりとも気を抜いていないというのに、気が付かせることなくまた包囲を抜け出られた。


「あら、避けられるなんて元娘として寂しいですわ、元お父様」

 本当に悲しそうな表情をしながら少女はくすくすと笑う。

その手には魔法剣がいつのまにか握られていた。


「……な、それはっ!!」

 魔法騎士の一人が叫んだ。自分が構えていたはずの魔法剣がなくなっていた。

「ちょっとお借りしています。帝国標準魔法剣ホーエル・コウレージ(誉ある勇騎士の剣)86式。――いつか握ってみたいと思っていました」

 古い記憶の中で、憧れだった象徴、そして握ることのなかった剣。

 史上最年少で得るはずだった、それを少女は感慨深げに眺める。

「か、返せっ! その資格のない汚い手で触るなっ!!」

 剣を奪われた騎士が怒鳴って少女に掴みかかってくる。

「――勇気がありますね、ほんとうに」

「なに、を……!? あ゛?」

 騎士が突如膝をつき、無防備に倒れこんだ。いつのまにか彼の首元に剣を当てて少女は立っていた。

 彼の両手両足がありえない方向に曲っている。彼女が叩き折ったのだ。

「やっぱり、だめですか。そんなことだろう(殺せないように)と思いました(ロックされている)

 平坦につぶやきながら、剣をゆるゆるとひく。

「でも」

 ふらりと身体を揺らしながら、周囲を見回す。

「叩きつけることはできるみたい」

「なにを云ってやがる、この小娘――がはぁっ!?」

 また魔法騎士の一人が転がった。今度は両手両足に加えて喉元が潰されている。

「喉を潰すことも出来るのですね。うん、だいたいわかりました(制限範囲が)

 こくこくとうなづきながら、少女は彼らのほうを向いた。

 彼らもまた油断なく構えながらも困惑を隠せなかった。

 戦う者の気配を微塵も感じさせない、しかし何をしたのかもわからずに仲間を一瞬で倒した。

 一流の騎士であり魔法士であるゆえに彼らは戸惑っていたのだ。


「さて、他の方々はどうされますか? わたしとしては、このまま去りたいのですけれども……?」

 半裸の少女がふわりと云った。

 まるで淑女が、お茶会の誘いをするかのように優雅に。

 透き通った、濁りのない笑みを浮かべて。

 二人の騎士を須臾の間に倒しておきながら、闘志はおろか感情の揺れさえも感じさせない。

 それが逆に騎士達に恐怖を感じさせた。

強さなど感じられず、魔力も感じないただの小娘なのに、得体のしれなさが薄気味悪さを感じさせ、ありえないことが起きて恐怖を招いている。   

 だが、ここで引くなどという選択肢は最初からない。ゆえに、騎士たちは一歩前に出て、一斉にかかった。



――それは、一方的な蹂躙だった。


「ぶげぇっ!!」「ぎゃひぃっ!」「がぁっ!!」


 一斉に加速して踏み込んだ騎士が、突如はじき返されたように宙を舞った。

篭手や脛当てが砕かれ、剣を取りこぼして。

 受け身すらとれずに無様に地面を転がる。

 

「なっ……!」

 第二陣として踏み込もうとしていた騎士が唖然として、声をこぼす。



ぺたり。

少女の足が踏み出された。

「か、かかれっ!!」

 小隊長の怒号と共に、弾かれたように騎士達が超速で踏み込み、剣を揮う。――結果が再現される。


 少女が一太刀揮えば、騎士が倒れる/吹っ飛ばされる/潰される。

 光弾や炎弾は面白いように外れ、魔法剣から放たれる衝撃刃はかすりもしない。

 四方八方から攻撃する騎士の剣は、まるで定められた剣舞のように空を斬り、少女の揮う剣を防ぐ防護盾魔法は意味を成さずに打撃を受ける。


 少女はぺたぺたと歩いている。


 超加速した騎士の刺突は遥か横を反れ、魔法を放とうとした騎士が衝撃斬り(ショックブレード)で喉を潰される。

  

 少女はぺたぺたと歩いている。


 無造作に揮った魔法剣で騎士が二人、両手両足を叩き折られて魔法剣を取り落として仰向けに倒れこむ。

 上から襲撃した騎士は、少女がついっと上に向けた剣で喉を潰され、両腕を折られた。

 

たったひとつの斬線にしか見えないにもかかわらず、複数の騎士が何撃も叩き込まれている。帝国でも一流の騎士たちがなす術もなく蹂躙されていく。

 いや、もはやそれは蹂躙ですらない。

 たとえば、人間が草を踏み潰すときにそれを蹂躙と云うだろうか?

 虐殺ですらない。彼女は誰一人として殺してはいない。


 それは、たとえるなら空前絶後の巨大近代要塞に正面から剣一本で挑む兵士。圧倒的な火力の前に玉砕しにいくようなものだった。


 帝国騎士団員達は為す術もなく叩き潰されていく。


「な、んなのだ……」

 ド・ゴルドが呆然としながらつぶやく。


 皇帝騎士が四人がかりで同時に包囲攻撃、ゆるやかに歩く少女の進行方向にいたダイヤとハートが両手と咽を潰された。

 残り二人は危険を感じた瞬間、跳んで少女の剣を躱した。ダイヤとハートは一瞬だけ遅れたのだ。


「貴様は、いったいなんだっ!!!」

 恐怖を振り払うように怒鳴った。

「あなたに捨てられた元娘ですよ、元お父様」


 振り向きもせずに背中に回した剣を跳ね上げて、後ろから斬りかかってきた騎士を弾き飛ばす。

 無様に弾き飛ばされた騎士がべちゃりと地面に落ちる。

すでに残った騎士は数人もいない。

 皇帝騎士ですら、まったく歯が立たない状況では、無防備と同様だ。


「復讐だとでもいうのかっ!」

「いいえ? フェテリシアが宣告したはずですよ。そんなのつまらないからしないと」

「では、なぜだっ!!」

 ド・ゴルドが叫ぶと一瞬で構築された雷撃が発射され、少女を襲う。それらを剣で叩き斬りながら半裸の少女はぺたぺたと歩く。

「不思議なことをおっしゃいますね。そんなの攻撃してくるからに決まっているじゃないですか」

 剣を横薙ぎにする。放たれた衝撃斬りが魔法射出態勢にはいっていた魔法師をまとめて上空にふっとばす。

 落ちてくる魔法師たちは、乱舞する衝撃切りが両手両足を叩き折り、喉を潰す。

「帝国でも精鋭たる帝国近衛が、ここまで無造作にやられるとはっ!!」

 皇帝騎士が歯ぎしりをする。

 うかつに動けば、同じように餌食になると隙を狙っていたが、少女の動きがあまりに無造作すぎて隙かどうか判らないのだ。

「あら?」

 不意に少女が視線を空に向けた



「死ねぇえええええええっ!!!!!」

 上空から聞こえる声が大きくなり、真っ赤に赤熱したなにかが何かが芝生を直撃する。

爆発音にも似た破砕音と土を巻き上げて、土煙が視界を覆う。

爆発中心部から火焔風が舞い、土煙を吹き散らす。

そこには炎に包まれた一人の女騎士が立っていた。

「眼を覚まされたのですね、息災で何よりです、アフィーナ元姉さま」

「うるさいっ!! ゴミ屑に姉などと呼ばれたくないわっ! 耳が腐るっ!!」

 突き立てた魔法剣を引き抜きながら、アフィーナ・ド・ゴルドが怒鳴る。

 彼女の全身にゆらゆらと緋い炎が揺らめいている。まるで彼女を護るかのように。

 それの正体を少女は昔の知識から引っ張り出した

「〝精霊鎧〟ですか。燃費も効率も悪いその魔法を発動させているということは、なにかしていますね?」

「ああ、そうだ。教えてやる、ゴミ屑には絶対に到達しえない力があるということをっ!!」

 引き抜いた魔法剣を構える。

 それは異様な剣だった。剣身の根元に四本ほどシリンダーが装着されていて、魔力導線が剥きだしで配線されていた。


「魔法を使えぬこの世全てのゴミどもに教えてやる、人との間にある超えられぬ壁というものをなっ!!!! 《〝ロンギヌス〟起動》《身体強化重複》《神経加速》!」

 アフィーナは剣の鍔元につけられた拡張スイッチを押しながら短縮呪文を唱える。


 アフィーナの起動言葉と共に剣の機能が発動する。

 ガキンと音を立てて、剣身の根元に埋め込まれたシリンダー二つに導線部が装着される。

同時に複数の魔法陣が展開――身体の関節・筋力を強化させる強力な身体強化魔法。強化された身体を制御するための神経加速

剣身が発光し、装着されたシリンダーが赤熱化する。


 その剣はアフィーナが動作試験を担当してきた開発中の試作魔法剣だった。

 星の海より落ちてきた鉄を女神が鍛えたと云われる聖剣を超える人造聖剣を目指す計画。

かつて、聖人が携えたという聖剣の名前をつけられたそれは、試作中のなかで最も性能が高い一本だった。


人を覆い尽くすような魔法陣が可視化される。

「まぁ……ずいぶんと大きい魔法陣ですね。もしかしなくても魔導演算器ですか」

 少女が感心していると、レオン・ド・ゴルド宮廷魔法師長が焦ったように怒鳴る

「まて、アフィーナっ! それはまだ試作品だっ!! 実用には耐えぬっ!!」

「問題ありません、速攻でこのカスを叩き切れば済むことですっ!!」

 炎をまとう剣を構え、身体強化された加速で襲い掛かる。蹴った地面が爆発し、苛烈な踏込がひび割れを起こす。

 その動きは皇帝騎士たちですら完全には捉えきれなかった。



周囲、全ての物が見える……っ!!


 人造聖剣ロンギヌスが起動した瞬間、アフィーナの意識が切り替わり、周囲すべての物が見えるようになる。

それは全方位視界などではない。

魔法によって取り込まれた周囲すべての情報を元にして構築された精密情報地図。

それは、莫大な魔法演算領域に作りあげられた〝世界〟の限定的な模式だ。


アフィーナの視界の中で、騎士や魔法師たちがゆっくりとなる。

皇帝騎士達ですら、追えていないのが判る。

周囲百メートルの状況が手に取るようになんでもわかる。

笑みを浮かべているゴミカスが見える。

笑う。

これから何が起きるのかも理解していない間抜けな顔。それが歪む様を思い浮かべていい気分になる。


圧倒的な力、魔法力。

あまりも強大なそれが高揚感を誘う。

身体強化も普段とは比べものにならない。

莫大な魔法演算を剣の魔導演算器が行い、意識加速を自前の演算領域で行う。

魔法行使があまりにも容易におこなえる。

指先にまで充ち満ちる圧倒的な魔力。

それらが意志によって完璧に制御され、圧倒的な力を生み出す。

ほんの少し脚に力を込めるだけで、身体は加速を始め粘着質な空気がまとわりつく

今まで感じたことのない全能感に包まれる。

そうだ、これが、これが、真の魔法、真の騎士!

絶対強者たる帝国魔法騎士の頂点っ!!


さぁ、あのゴミカスに教えてやる。

もはや、何をやっても無駄だと云うことを、この世には絶対の力があると云うことを――教えてやる。



突如、内壁が爆発する。

少女は頭を下げて、地面に手をついた。

音はあとから来た。

衝撃破砕(ショックバスター)……」

暴風に巻かれて髪が暴れる少女が小さくつぶやく。それは天塔騎士が使う技の名前だ。

「は、よく避けたなっ!! なら、これは、どうだっ!!」

アフィーナの剣を持った右手が霞む。

地面が沸き立つように爆発し、土煙が’少女の周囲を囲む。煙を払うように手を降りながら少女がまた呟く。。

連弾衝撃破砕(ダムドストローク)…」

「だけじゃないぞ、ゴミ」

アフィーナが瞬間移動のように、少女の眼前に現れ、柄元をぶちこんだ。

 すこしだけ目を見張った少女がぎりぎり躱した。いや、正確にはわずかにかすったのか、残っていた衣服の一部が弾け飛ぶ。

「ちっ、目算が狂ったか」

少女の動きを含めてすべてが〝視えて〟いるにもかかわらず、すこし外してしまい、アフィーナが舌打ちをしながら、いったん距離を取る。

「《魔法斬圏拡大》、《身体制御強化拡大》!」

 アフィーナがいくつもの呪文を同時に発声、剣身にさらに魔法陣が多重展開、斬撃圏が約三倍に拡大した。そしてさらに身体強化魔法を多重展開。

 精霊鎧も同様に領域が拡大し、赤い火焔が太陽コロナの様に舞う。

 アフィーナの端正な顔に血管が浮き出て、どくんどくんと脈打つ鬼のような形相。

 炎の鬼神と化した。


「本物の力というものを教えてやろう。これが、ゴミどもには絶対に届かぬ遥かな高み、神の領域に踏み込む力だっ!!」

「まぁ凄いですね。魔法が神さまの領域に踏み込んでいるなんて、わたし知りませんでした」

 少女は手を口にあてておっとりとした口調。

「は、何を余裕ぶっている。これから死ぬんだよっ!! このわたしを虚仮にした罪を死んで償えっ!!!!!」


アフィーナの周囲に風がまきはじめ、姿が歪む。次の瞬間、姿がブレて、四人に別れた。

超高速ステップによる残像分身攻撃。


そして、四人のアフィーナは火焔の尾を曳きながら駆けた。

十メートルの距離を一瞬で踏破し、少女を取り囲んで、一斉に斬撃を見舞う。

 唐竹、右薙ぎ、逆胴、袈裟、左薙ぎ、斬り上げ――瞬息で打ちこまれた24もの剣戟の余波が石畳を抉り、破片と土を巻き上げる。 それぞれが一撃必殺、死撃の乱舞。

剣線にそって火焔が尾を引く。

アフィーナ達が一斉に跳び退る。


「《獄炎よ》!!!」

同時にトリガワードを異口同音に叫ぶ。

 拡張魔法領域にて構築されていた魔法が瞬時に四重展開、強固な結界が現れる。

結界が完成した瞬間に、内部で起爆する。

強力無比な魔力爆発が結界内を舐め尽くし、限界を超えて、結界そのものすら破壊して轟炎を噴出する。

天に向かってそびえ立つ巨大な轟炎の柱。

火焔が融合して収束し激しく燃え盛る。


 魔装騎士ですら葬る収束爆発攻撃。


 試作人造聖剣ロンギヌスから、赤熱したシリンダーが金属音をたてて排出されて、石畳を転がっていく。


 一人に収束したアフィーナが哄笑する。


「あははははははっ!!! これが真の格の差というものだっ! ゴミどもには永劫に届かぬ絶対の領域!! 一片の肉片すら残さずにこの世から消え去るのだ、ははははっ!!」


アフィーナたんがんばる編。

キリがよいので、ここで。

某宇宙要塞の撃墜王が吐いた名言が思い浮かぶ今日この頃。


次投稿は、登録か、評価のキリ番突破が早いか……

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