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滅国の少女騎士 ~ボク、とってもざんこくなんですけど?~  作者: 森河尚武
第二章 魔法の超☆手品師 マジカル☆バニー
12/49

マジカル☆バニーと愉快な近衛騎士さんたち<3>

お気に入り登録100件突破と総合評価300pt突破記念と云うことで。

登録&評価を入れてくださった方、ありがとうございました。


「あはははははっ!!」

 爆炎と立ち上る膨大な煙を前にして、アーサー・バーカナンは狂ったように哄笑している。

 そんな彼の前に巨大な影――銀色の魔装騎士が地響きを上げて煙の中から現れてくる。

 装甲の華麗な装飾は汚れたり、一部は損壊しており、巨大な剣も半ばから折れている。腕や脛の一部装甲には融解しているところもあり、アーサーの叩き込んだ魔法火力の強さを物語っている。

『アーサーっ!! この私ごと撃ちやがってっ!! なにを考えているっ!!!』

「ああっ!? なんだよ、魔装騎士に乗ってんだからなんともねぇだろぉ?」

『ふざけるなっ! 調子に乗りすぎだ、このクソガキっ!!』

「ああっ!? なんだよ、何か文句あるのかよ、このオレに。模擬戦ですらろくに勝ったことのない〝銀髪の騎士さん〟よぉ!?」

『……殺すぞ?』

 魔装騎士が砕け折れた剣を投げ捨て、背中の武装支持架から新しい大剣をゆっくりと引き抜く。

 アーサーもまた聖剣を地面から引き抜き、構えた。

 一触即発の空気。

 なにかがあれば殺し合いが開始される緊迫した場に、その声は響いた。


「――まーどーでもいいことで言い争いが出来るものですね」


 アーサーと魔装騎士が凍り付く。それはあり得ないはずの声だった。


「しかしまぁ……帝国近衛騎士ともあろうものが、私有財産を好き勝手に壊しちゃって……いいんですかね~」

 貴族のものだからいいのかしら?と小さくつぶやきながら、何者かが爆炎の中からゆっくりと歩み出てくる。


 炎を背景としていて、何者かが判りづらい。

 人影が腕を水平に揮うと、大風が吹き、爆炎が晴れ、姿を現す――|うさみみをつけた無傷の少女・・・・・・・・・・・・・


「バ、バカなっ! な、なんで生きてんだよっ!!」

 アーサーが絶叫した。

 あり得ない、あれだけの攻撃魔法を、小砦なら破壊し尽くすだけの魔法火力を投入したのだ。それで生きているなどと彼は信じなかった。

『あ、あの爆発で無傷だとっ!? これ(魔装騎士)すらも壊す魔法攻撃を防いだとでもいうのかっ!!』


――彼らは気がついていないが、少しだけ彼女の恰好は変わっていた。

 腰回りのフリルがなくなり、盾型の小片がいくつか浮いていて、ゆっくりと少女の周囲を回転していた。

 半自動浮遊フィールド防御兵装――〝アクティブ・シールド〟

 広範囲防御に使われる先進範囲防御兵装(ナアカム・マーキナー)である。

 だが、彼女はこれを自分の防御には使っていなかった。

単に周囲の被害を抑えるために起動させていたのだ。


「ああ、あの連携はすばらしかったですね。一人が敵を止めて、もう一人が大火力で制圧する。攻撃タイミングもまるで読めませんでしたよ。魔装騎士が破損するタイミングでくるとは、打ち合わせもなしによく出来たものです。実にすばらしい」

 ぱちぱちと拍手をしながら講評をする。

 もちろんフェテリシアは全て気がついている。それでいて、あえてほめることで、彼らの分際を教えて上げている。


――何をしてもムダなのだと。



――フェテリシアの網膜には投影された半透過表示のステータスがあった。


NM-ARMED UNLOCK

Permission time : 576sec


 秒数カウントが刻一刻と減っていく。


「その連携に敬意を表して、ボクも技を見せてあげましょう」

 奇妙に芝居がかった声色で宣言する。


――少女の気配が変化した。


「ひっ!!」

アーサーは総毛だった。

帝国最強の兵器たる魔装騎士が轟音を立てて一歩後退さる。


「さぁさぁ、お遊戯の終幕といきましょうか?」

 からかうような抑揚でしゃべりながら、脇に手挟んでいたステッキをくるりと回して、身体の前に出した。。

 ステッキ本体に指をゆっくりとすべらすと、薄紅色の優美な刀身を持つ太刀へと姿を変えていく。

 完全に太刀へと変わると、すぅーっと弧を描いて悠然と片手左下段にした。

 舞曲のように行われたそれを、騎士たちは指一本動かせなかった。

完全に気を呑まれていたのだ。


――そうして、フェテリシアは彼らに告げた。

「全力全開、余力なんて微塵も残さず、不惜身命、捨て身で抗ってみせてくださいな。そうじゃないと――死んじゃうからね?」

殲滅の光弾軍団バレット・ファランクス・シフト!』

 間髪を入れずに魔装騎士が全ての機関を全力稼働。

 展開される魔法砲撃浮遊砲台群――その数24。一瞬の遅滞なく猛烈な掃射を開始。

秒間10発を超える無誘導魔法弾の大量射出を開始して、光の壁にも等しい弾幕を張る。。

しかし、それはただの牽制。

 空間制圧魔法の発動準備、術式は火炎を選択、重複起動の指令を|四系統核式魔導演算機関クアッドカア・アーストラット・エンジンに指令、それだけで魔法演算領域の八割を消費、本体制御に問題が生じたため、自分の魔法器官(ナームカア)で無理矢理に補助する。

 帝国でも有数の魔法力を誇る彼が総力を挙げた攻撃魔法群。

 一個師団を優に薙ぎ払えるだけの莫大な魔法火力の嵐の中を。

 兎装少女は悠然と歩いていた。

 ひとたび太刀を揮う。

剣圧で魔法弾がまとめて薙ぎ払われ、揮われた刀身が直射砲撃を切り裂く。

 剣先が超音速を越えた衝撃波が魔法弾を弾き、隣の魔法弾に連鎖衝突して軌道を次々に変えていく。

 彼女の両側の地が抉られ、爆発して土砂を巻き上げる。土煙を切り裂くように次々と魔法弾が撃ちこまれ、弾き、潰されていく。

『っ! 師団を殲滅できる火力だぞ、戦局を左右する絶対の力だぞっ! それがっ!』

 魔装騎士は連射速度をさらに上げ、面制圧魔法の術式を最高速で演算する。

 全力稼働する魔導炉からはあと200秒で貯蔵魔力枯渇のため稼働停止、魔導演算機関からは循環養液温度上昇の警告が表示されるが、彼は全部無視する。

 あの化け物を殺せるならば、壊れてもかまわないと判断したのだ。

『アーサーっ! 呆けてんじゃねぇっ! さっさと攻撃しろっ!!!』

 まだ火力不足と判断した銀髪騎士が叫ぶ。彼は気が付いていなかった。

アーサーもまた総力で攻撃魔法を連射していることに。

「《光よ》!」

 必死の形相で魔法術式を多重展開し、一つのトリガーワードで連射する。

 太い光柱のような直射魔法砲撃が四つ射出され、莫大な余剰エネルギーが魔導皮膜と反応して発光し、周囲気温を上昇させる。

 さらに四つの浮遊砲台がフェテリシアを取り囲み大量の無誘導魔法弾を秒間12発もの猛烈な掃射。

一つ一つが、大木を抉り、石壁を砕くほどの威力。

十字砲火を超え、全方向砲火。縦横無尽に叩き込まれる魔法弾

 しかし、太刀を揮う兎装少女に届かない。直射魔法砲撃を切り払い、太刀を揮う衝撃波で弾道をそらさせる。

 誘導、無誘導、砲撃。攻撃魔法の全てが、彼女には届かない。

 少女の周囲が爆発し、火炎に焼かれ、直射砲撃魔法が地面を蒸発させる。

 地形を変えるほどの大火力が集中されているというのに、少女は太刀を揮いながら、まるで散歩のように歩いている。


「な、なんで、魔法が斬れるんだよっ!!」

 アーサーは悲鳴を上げながら魔法を発動し、もはや狙いも付けずにとにかく乱射。


「魔法も発動してしまえば物理現象なんだから、斬れるのは当たり前でしょう?」


 少女は律儀に答えてあげる。魔力で編まれた魔法術式は通常斬れなくとも、発動したものは物理的影響を受けると云うことは、帝国で知られていない。

魔法には魔法か、魔導皮膜が施された魔法武装で対抗するのが普通だからだ。

 魔法武装が普及しているから、そんな現象があるということすら知られていない。


 フェテリシアが目の前に撃ちこまれてきた砲撃魔法を斬り捨てる。彼女の両側へと裂かれて、着弾、地面を爆破する。

「くそ、なんなんだ、その魔法剣っ! 魔法を弾くなんて卑怯だぞっ!!」

 アーサーが自分達を棚に上げて責める。

「ああ、そう見えるんだ。でも、違うよ、これは魔法効果なんてない、ただ堅いだけの刀。魔法を斬っているのは〝技〟だよ?」

 莫大な魔法火力の嵐を、少女は太刀一本でこともなしに無力化して、悠然と歩いてくる。

 三本の直射魔法砲撃を横薙ぎの一撃でまとめて切り払い、返す刀で魔法弾をはじいて他の魔法弾へとぶつけ、連鎖爆発させる。

 全ての軌道を計算し、もっとも効率よく連鎖自滅させる要の魔法弾を選んで弾いているのだ。

 太刀を大きく揮って、一刀のもとに大量の魔法を潰した。

次の魔法が発動するまで空白が出来る。それはどうしようもない隙だ。

殺される――アーサーと銀髪騎士の直感が閃く。


「まー、そんなことよりさぁ、ねぇ、これが全力、貴方たちの全力なの? この程度で? 違う、違うよね、帝国最強の兵器に世界最強の騎士さんが居るんだから、もっとすごいんだよね、そうだよねー?」

 しかし彼女はその絶好の機会に、大げさに両腕を広げて彼らに問いただすだけだった。


 彼女は気づいていない。唇の端を歪めて、自分が嗤っていることを。

その嗤いが騎士たちの怒りを買う。

『な、なめるなっ、この小娘がぁあああああっ!!』

 自分を鼓舞するように怒鳴りながら、銀髪の騎士は魔装騎士を駆った。

 魔導機関が甲高い轟音を上げて魔力を精製し、人工金属筋が紫電をまき散らしながら唸りをあげて、彼の操作を忠実に再現する。

 少女の目の前まで瞬間移動のごとき速さで現れ、豪速で剣を振り下ろす。

音速突破の衝撃波が周囲に広がり、屋敷の窓や木々を破砕していく。 

「とりゃぁっ!」

 かわいらしいかけ声をあげて兎装少女は、足を高々と掲げて巨人の剣をブーツの底で受け止めた。

 衝撃波が地面を抉り、大気をかき回して庭園の木々を揺らす。

そして、剣を踏みつけるようにして地にたたきつけた。

 轟音を発して巨人の剣が砕ける。

『かかったなっ!!』

 銀髪騎士の声とともに大量の魔法弾が降り注ぐ。頭上に移動していた浮遊砲台からの攻撃。

 速射性を重視した銃弾サイズの対人魔法弾は、強固な装甲を持つ魔装騎士にはなんら影響がない。

「あーまーいっ!!」

 それらをことごとく切り払う。太刀が霞むほどの超高速斬撃。

 軌道の反れた魔法弾が地面にばらまかれて爆発し、爆煙を大量発生させて煙幕状態となった。相互の姿を隠すほどの視界不良。

しかし、双方ともに相手の位置がわかっている。

 その煙の中から轟音を後に曳きながら巨大な足が現れ、フェテリシアを襲う。

 数多の蛮族を踏み潰してきた脚部は魔装騎士で最も装甲の厚い箇所だ。その大質量で堅牢無比な脚部に存分に速度を乗せた蹴りは、あらゆるものを粉砕する。

 巨大砲弾が直撃したような轟砕音が鳴り響く。

 脛から断ち切られた脚部が宙を舞い、邸宅を直撃していた。

「あ゛……軌道予測ちょっと間違えた……?」

 脚部を断ち切り、返す刀で直射砲撃魔法を斬り捨てたフェテリシアは、ちらりと目をやって、大きな汗を浮かべる。

 片足を斬られた魔装騎士が膝をつきながら、剛腕を揮って地を抉った。

 土をめくりあげて、膨大な土砂が津波のようにしてフェテリシアを押しつぶさんとする。さらに前後左右には大量の魔法弾、逃げ道はない。

それでも少女は焦りもなく、逆袈裟に斬りあげる。

 斬線に沿って生まれた莫大な剣圧と衝撃波が土壁を粉々に粉砕し、その向こうに隠れていた誘導型魔法弾が姿を現す。

「げっ! ちょっとピンチかな?」

その数、実に32768。もはや人間が回避できる量ではない。

 魔装騎士のもつ莫大な魔法演算力、それをさらにリミッターを解除して演算機関の破損を覚悟して生成されたそれは、空間すべてを覆い尽くしてフェテリシアへと一斉に叩き込まれる。

「はっ!!」

 彼女は気合いの声をあげて、太刀を縦横無尽に揮う。

 脚は複雑なステップを踏み、揮われる太刀が霞み、魔法弾を弾く打撃音が連なって破砕音を奏でる。

 誘導弾もまたただ撃墜されるだけではない。

 誘導弾の嵐を薙ぎ払うように太い直射砲撃魔法が撃ちこまれてくる。それを切り払うのではなく、初めて回避した。

 回避運動により生まれる一瞬の遅滞。誘導魔法弾は無慈悲に正確に彼女を狙い続け、その包囲を狭めていく。

「だー、もうめんどくさいっ!!」

 いらついたように叫ぶと、彼女の身体がぶれた。

 突如、連鎖爆発をする誘導弾群。

 体表面で衝撃波を発生させて、誘導弾に直撃したと誤認させたのだ。

「ああ、うっとおしいなぁ、もうっ」 

 爆炎と魔力残滓を手で振り払いながら、フェテリシアはぼやく。


 とすっ


 不意に軽い音がした。

 フェテリシアの背後に銀髪の騎士が刺突の姿勢で立っていた。

「まさか、あれが全て囮だとは思わなかっただろうっ! 油断するから死ぬことになるんだ、はははっ!!!」

 彼女を刺した騎士が狂喜して高笑いする。

 恐怖を乗り越えた、いや、そんなものは最初からなかったのだと自分の記憶を変えようとしたときに、呆れたような声が耳朶をうつ。

「あのね、こんなの奇策ですらないよ。やるなら見えないようにやらなくちゃ」

「あ゛……?」

 フェテリシアは背中に手を回して、魔法剣を指でつまんでいた。肩越しに投げやり気味な視線を投げて、ため息をつく。

銀髪騎士は、慌てて剣をひき、再度斬りつけようとしたが

「ぬ、な、なぜだ、なぜ取れないっ! なにをしたのだ、くそっ!」

 指二本で抓まれた魔法剣はびくともしない。

「あー、もうめんどくさいや。とりあえず死なない程度に半殺しにしてあげるから、もうからんでこないでね」

 くるりと身体を回して、彼と向き合う。

「ひっ!」

 彼は恐怖にひきつった声を思わず漏らす。

彼女はとくに反応を示さないまま、抓んだ剣ごと騎士の身体を持ち上げる。

軽量素材の鎧とはいえ、全装備重量で80kgを超える彼を軽々と持ち上げて、宙に放り投げた。

まるで、重力を無視した(・・・・・・・)かのように(・・・・・)

「な、なにっ!」

 驚愕の表情を浮かべて、宙に浮く銀髪の騎士。

 フェテリシアは優しく忠告。


「頑張って、死なないでね♪」


 少女の姿がぶれる。

 長い肉打音が周囲に鳴り響いた。

 秒間10を超える超速の連打で、音が一つに重なって聞こえるのだ。

 魔法鎧が固定金具ごと引きちぎられ、関節が外され、インナーが衝撃で引きちぎられる。

それらがほぼ同時に発生した。

「これで、らすとぉっ♪」

「ぷげらぁっ!」

 かわいく叫びながら最終拳打(フィニッシュブロー)にゆるくアッパーカットを打ちこんで、銀髪の騎士だったものが宙を飛んで地に落ち、べちゃべちゃ転がる。

 関節全部が外れ、隅々まで殴られたそれは、もはや麗しい銀髪の騎士の原型をとどめていなかった。

 だが、そこまでズタボロにされながらも、驚くことに血の一滴すら流れていない。

 せいぜい内出血や筋肉断裂程度で、相当手加減した事は明白だった。

「あー、ちょっとすっきりした」

 うーんと、伸びをする。そして、くるりと回って、背後で剣を振りかぶっていたアーサーのほうを向く。

「さて、つづけよっか♪」

 少女が口元に浮かべている笑みを見た瞬間、彼の心が折れた。

「う、うわぁあああああっ!」

 全力で逃走した。


「あれ?」


 フェテリシアはきょとんとした。まさか、逃げ出すとは予想もしていなかったのだ。

 向かってくるのならば半ば無意識にでも反応したが、あいにくと逃走であったため反応が遅れた。

 自己最高記録の速度で全力逃走するアーサーの背を見つめながら、頬をかいてつぶやいた。

「あー、まぁ、いいか」


 フェテリシアはあまり深く考えなかった。

 別に魔法騎士の百人や二百人見逃したところで、どうと云うこともない。

 まして心が折れた者など、もはや脅威ですらない。


 それに、フェテリシアは弱い者いじめがキライだった――昔から。


 幼いころによく読んだいろんな物語。

 特に好きだったのは民やお姫様のために魔王や悪と戦う騎士の物語。

 なんのことはない、彼女は昔から騎士にに憧れていた。

 だから民や家に仕える者たち――すなわち弱者を守るのが貴族や騎士の義務だと昔は本気で思っていたし、今でも弱い者いじめというのは気分が悪い。

 そして、今の彼女にとってほぼ全ての人類が自分より弱い以上、戦うことになればなにをどうしても、〝弱い者いじめ〟になってしまう。

だから、めんどくさいと公言してあまり手を出さないようにしている。

 天塔騎士の中には戦闘狂(バトルジャンキー)やただの変態もいるが、すくなくとも彼女は自分が一番まともだと思っている。

 ただし、天塔騎士の皆がみなそう思っているのだが。


「さて……」

 周囲の大被害をあえて無視して、かく座した魔装騎士を見上げる。

 ひょいっと飛び乗り、胸部の操縦席に向かう。

 胸部装甲をべきべきと引き剥がし、操縦席の下部の中枢が収められているところを覗き込む。

「これは魔導機関だから、これかな?」

 操縦席の真下に設置された1リットル水筒くらいの金属筒が四本束ねられている。筒の一部にガラスがはめ込まれていて、中身が見える。

 粘着質の液で満たされた筒の中には薄桃色の、複雑に皺の寄った肉片のようなものが積層されてブロックになっている。

「――〝ウィル〟、これにアクセス出来る?」

『少しお待ちください、通信ポートの規格を解析中……終了。アクセス……有機体ベースの演算機関です。推測レポートの通りです』

「――そう。イヤな噂や憶測ばかりが事実だなんて、ほんとろくでもないよね。……助けられそう?」

『初期化されて計算回路に仕立て直されています。たとえ復元再生したとしても、それは別の何かです』

「……そっか。じゃあ殺すしかないか――」

 フェテリシアは無感情につぶやくとロンググローブを外して、白い肌のをさらした。

 そして掌の上に青白い火球を生成。

 それは、ほとんど揺らめきもせずただ青白い、超高温の小型火球。

「ボクを恨んで。あなたたちを殺したのはフェテリシア・コード・オクタ。その恨みと嘆きは全てボクに」

 そう宣言すると、ためらいもせず蒼い火球を手のひらでそれに押し当てる。

 超高温に曝されて融解していく演算機関。

融けた材料が飛び散り、フェテリシアの掌や腕を焼く。

 薄い白煙が広がり、肉が焼ける臭気が辺りに立ち込める。

 激痛が駆け巡っているだろうに、少女は表情のひとつも動かさない。

 完全に融解させると彼女はゆっくりと立ち上がり、つぶやく。

「本当だったなんて……なにをしているのか、本当にわかっているんでしょうね、あいつら」

 声には静かな怒りが込められていた。


しばらく投稿する気は無かったのですが、記念碑的な数値に到達しましたので。

次の記念数値にはたぶん到達しないでしょうから、自己満足ですw


次回投稿はまったくの未定です。


感想お待ちしております。

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