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外伝 フェテリシア訓練生 毎日がんばっています そのいち

8/19追記 主人公の過去話の外伝です。

     初めての方はプロローグ『残酷な世界』までお進みください。



唐突ですが、外伝です。

フェテリシアの過去、天塔騎士になってから半年ぐらいたったころの話です。

……いきなりSF風味になっていますが、仕様です。


2013/8/6 初稿投稿

2013/8/9 修正

2013/8/19 先頭に移動

「チェイサー1から3、所定の位置につきました」

「映像回線自動追尾システムチェックシーケンス54から88を完了。オールグリーン」

「輸送機カーゴ3は現在、予定降下ポイントの――」

「本部〝TSUKUYOMI〟との超高速通信リンク確立されています。量子暗号同調、〝ウィル〟との同期率98.8%で安定」

「スパロー1、降下予定地点まであと+60秒、脈拍、脳波、動態反応のモニタリングは正常です」

狭い扇形司令室に報告の声が響く。

十メートル四方くらいの扇形階段状の部屋に八人ほどの白衣姿の人間が席に着いている。

空中投影モニターに大量のデータが表示され、技術者でもあるオペレータ達が分析と指示を忙しくおこなっている。

中央モニターには周囲200kmの天気・気圧・状況図が表示され、両側の立体モニタには追跡機からの映像とセンサ情報が重ねて投影されている。

司令室中央の空中には少女の形をした立体投影図が浮かび、大量の情報がリンクされている。それらはオペレータ達の解析した結果が反映されているのだ。

忙しく動き回る彼らを、長身の女性が司令室最上段で眺め回していた。

美しい金髪の彼女は、タイトスカーツの暗緑色の軍服に身をつつみ、腕組みをして仁王立ちをしている。

彼女は一般回線用インカムを身に着け、空中投影モニター付シェードグラスで司令室に流れる全ての情報を同時に観ていた。

「NM循環相転移機関のアイドリング出力は安定度98を維持、思考推進機関イマジネーション・ドライブのノイズは0.005以下」

「NMマテリアル・リンク率はテン・ナイン・パーセントをクリアしています、形態は現在Aモード」

「武装庫との常時リンク率はテン・ナイン・パーセント、転送エラー率はオーナイン以下」

 被試験者の状態報告を受けて、空中に浮かぶ少女の立体投影図の項目が全てグリーンに変わり、OKと表示される。試験補佐官が最終報告を試験担当官に告げる。

「コード・アイン大佐殿、試験規定の項目をオールクリア、試験可能です」

金髪の女性はうなずくと、インカムを操作して、被験者に語りかける。

「スパロー1、調子はどうだ?」

『はい、全て問題ありません』

 一般回線によって流された少女の声が指令室に響く。

「うむ、――今度は"乙女のしずく"こぼすんじゃねーぞ」

『それは、いま云うことですかぁっ!?』

 少女が金切り声を上げる。

「なに、緊張をほぐしたまでだ。――安心しろ、誰もが必ず通る道だ。私とて数十回はやったからな」

『いや、それ自慢になりませんからっ!』

 少女のツッコミに司令室内でも失笑寸前の空気が流れた。

 この二人のコミカルなやりとりには慣れていても笑いそうになって困っているのだ

「そろそろ開始する、集中しろ」

『誰のせいですか……』

 オープン通信回線でぶちぶちと文句を言い続ける少女の声が司令室に流れる。

アインは通信回線を切って、オペレータに確認する。

「体調や精神安定度はどうだ?」

「予想よりも安定しています。思考推進機関のノイズも0.0001増えただけですね」

「最初のころよりは格段の進歩だな。――つまらん」

 コード・アイン大佐は憮然とする。

「からかいがだいぶ酷いですよ、大佐」

「この程度で動揺するようじゃ使い物にならんさ」

 そこで会話を終わらすように手を振ると、アインの前に空中投影された三次元戦術指揮コンソールが現れる。

中央には少女のモデル。そして彼女が指揮する全域対応兵器群の輝点。

送られてきた現状ステータスに異常がないことを確認し、うなずく。

そして宣言した。

「それでは第九世代型プラネッツ・ガーディアン13号機 第18次稼働試験をはじめる。状況開始せよ」

「了解、第18次稼働試験を開始します。管制室よりスパロー1へ、項目1より順次開始せよ」

『スパロー1、了解』


  ★☆★☆★☆


 海上3400メートルの空を飛ぶ一機の中型無人輸送機の格納庫内。

『格納庫後部搬入ハッチ・オープン。周囲人員は注意してください』

音声アナウンスと警告ランプの点滅と共に後部搬入用ハッチがゆっくり開き、膨大な風が舞い込む。

「うう……またやらなくちゃいけないのか」

 機内にいるタイトミニの軍服を着ている少女がぶつぶつとつぶやく。ダークグリーンのUNSF正式軍服。

いまは、フェテリシアと名乗っている黒髪の少女。家名はない。

 塩気のある強い風が、前髪や短いポニーテールを吹き散らしている。


『後部ハッチ開放、フルオープン。降下ポイントまで+20秒、……+18……』

 カウントダウンが開始され、天井の信号灯がグリーンに点灯する。


「うー、大丈夫だとわかってても怖いなぁ……」

 開口部近くで手すりにつかまりながら、下をのぞき込む。

雲一つない真っ青なオーシャンブルーの海が視界いっぱいに広がっている。

 

『……0。予定ポイントです。降下開始してください』

「うぅ……っ!!えーい、 女は度胸ーーー!!!」

 そのまま、ぴょんとハッチから飛び降りる。


  ★☆★☆★☆


『きゃーっ!! スカートがめくれるぅーっ!!!!!!』

 中央スクリーンに大写しにされるストッキング越しの純白のくまさんぱんつ。

 チェイサー1からの映像。無駄に優秀なブレ補正と超高解像度のおかげで縫い目までバッチシだ。

「……成長せんな、あいつは。何回目だ、まったく」

「まぁ、あのドジッ娘属性は治らない気がしますが」

 大佐と補佐官の耳に別の会話が入ってくる。

「今日のフェテリシアちゃんのぱんつ占いは、くまさん柄か!」

「レア度はまぁまぁだが、今日の天候と八卦陣からの方向に星座からするとラッキーデイだな!」

「よし、撮影はバッチシだな、おい」

「くくく、なめるではない。みよ、秒間一千枚高速度撮影の威力っ!!」

「他機のデータはどうだ?」

「大丈夫だ、チェイサー1から3の六基のカメラを操作して3D展開も可能だぜっ!!」

「パーフェクトだ、セバス!」


 大佐が、こめかみに指を遣ってため息をつく。

「バカどもが……」

「言動を記録しました。ロリコンは病気です、強制入院許可を」

「許可する」

阿呆な会話をする白衣の研究員たちの周囲に突如ずざっと出現する保安部。

「な、なんだっ! いま、いったいどこから現れやがったっ!!」

「いだっ! なにをするかーっ! あ、まて、やめて、ぎゃー、画像データを、データを消さないでっ!! 貴重な憩いなんだ、フェテリシアちゃんはっ!!」

「な、なんてことを。貴重なデータを消すなんて、重大犯罪だっ!! 我々は謝罪と賠償を要求しるっ!!」

がっちりとホールドされた数人の男性技術者たちがくちぐちに懇願する。

「ロリコンとペドフィリアは病気です。おクスリで治りますから、大丈夫ですよ?」

純粋無垢に悪意の欠片もない完璧なまでの天使の微笑み――ゆえにうさんくさくみえる。

同じ事を感じたのか、研究員たちも特に反応していない。にょるんと保安部の拘束を抜け出した研究員が机の上に仁王立ちして、性年の主張を始める。

いつのまにやら、『YES、LO! NO! TOUCH!』の鉢巻を締め、メガホンを手に持っている。

「我々をあんなものと一緒にするでないっ!! 我々はただかわいいものを愛でているだけだっ!! みよっ!!! この、ひよこちゃん柄ぱんつをはいたフェテリシアちゃんの雄姿をっ!!」

「あまいわっ!! みよ、この超レアな薄緑ぱんつっ!!」

「ふ、その程度をレアとは片腹痛いわっ!! みよ、この伝説に究極の1、そうこれが、あの〝しまぱん〟だっ!!!」

 薄い青のしましまぱんつが丸見えのフェテリシアの写真データが空中に展開される。

「「「おみそれしましたーっ!!」」」

 ふらいんぐ土下座を敢行して、フェテリシアのぱんちら写真データを掲げた中年技術者を崇め奉る。

「「「死ねばいいのに」」」

 冷たい目をした女性陣の一声にも怯まずに、主張を始めようとした男性陣。

こめかみに青筋をうかべた補佐官がぱちんっと指を鳴らすと、本気になった保安部がガチで拘束し始める。

「うでがー、うでがー!」「目つぶしはやめry」「ぎゃー首引っこ抜いたら死にます、死にますっ!!」

全員確保したことを確認した補佐官が手を振って云った。

「連れて行けっ!」

「な、なにをするっ! まて、やめry」

「まって、せめてBモード移行まで待ってっ!!」

「ああ、殺伐とした日常の憩いの時間がっ!!」

 ずるずると引きずられながら連行(ドナドナ)される研究員たち。

「スパロー1、何をしている?  項目1より順次開始せよ」

 ぱったんとドアが閉まると、他の研究員や技術者たちは何事もなかったように仕事を続けていた。


  ★☆★☆★☆


 風圧でずりあがるタイトスカートを必死に抑えながらフェテリシアは落ちていく。

 逆巻く風が紙を巻き上げ、息をするのも苦しい。

 地球の重力に捉えられて自由落下していく。

『スパロー1、なにをしている? 項目1より順次開始せよ』

 管制官より催促の通信が入ってくる。

「スパロー1、了解。Bモードに移行しますっ!!」

 やけくそ気味に通信を返すと、息を吸ってはいて、はいて、顔を真っ赤にして叫んだ。


「NMマテリアルモード変更《Bモード》っ!!!」


コマンドワード確認。

NMスキンをBモードに移行


網膜投影された稼働状態の報告を流しながら、両腕を伸ばして、まぶたを閉じる。

次の瞬間、全身が発光しながらNMスキンの結合が解除され、軍服が帯状にほどける。

ほどけた帯がきゅるきゅると体中に巻き付き、形をととのえて再結合。

ローファーが装甲ブーツに、ジャケットがハイレグのホルターネックハイレグウェアに、頭にカチューシャが現れて、うさみみがのびる。

 再結合して全体の色がフェテリシアの専用色である緋色へと変わる。


展開終了。所要時間0.8秒

Bモードに完全移行。

思考推進機関アイドリング状態で待機


 思考推進機関により、降下速度は緩やかになっており、同時に風も弱くなっていく。

まぶたを開く。

動作状態の確認のために表示されている自分の3Dモデルは――バニーガールだった。


「うう……なんでこんなかっこうしなくちゃいけないんだろう……はずかしいよぉ……」

 股座が鋭角に切れ上がった超ハイレグ仕様の緋いバニースーツ。

 腰回りにテールフィンが追加されて、後ろに伸びているが、それでもおしりは丸見えである。

 ちょっと鬱になっているが、管制官は無情に試験項目を淡々と進める。

『項目4までクリア。続いて、項目5に入ります。無人戦闘機展開完了。カウントダウン省略、試験開始』

「へっ!?」

あわてて周囲を確認すると、リフティングボディ型の派手なオレンジカラーリング無人制圧戦闘爆撃機が36機、囲まれていた。

「ちょ、ま――」

 フェテリシアが待ってと云おうとする前に、無人戦闘機の銃口カバーが開き、30mmガトリングキャノンが火を噴く。


思考推進機関 動作開始、全制御を分割思考フェテリシアNO.4に完全同調

周囲空間改変 実行中


網膜投影されている現状報告を流しながら、フェテリシアはくるくると必死に動いて高機動力を発揮、とにかく火線を避ける。

訓練弾とは云え、当たれば痛い。

NMフィールドの動作試験はもっと後なので、いまのフェテリシアはヒトと大して違わない防御力なのだ。


36門秒間720発を超える十字砲火を、両手両足による重心移動に思考推進による慣性を無視した機動で避け続ける。

思考推進機関の基軸を各関節に据えて空間改変し、慣性と重力を制御、空力的にも物理学的にもありえない動きを実現する。

いまのフェテリシアは32の基軸を同時制御していた。ここまでくると、その機動力はもはや人間には理解できないレベルになる。

火線を中心にぎゅるぎゅると身体をまわし、跳ね跳び、瞬時ダイブし、かくかくと慣性を無視した鋭角機動を見せたりする。


『試験項目5をクリア、続いて項目6に入ります』

管制官からのテキストメッセージ。思考加速状態では音声は同調できないため、超光速通信によるテキストメッセージで交信するのだ。


 無人機から高機動ミサイルが発射された。その弾頭は気化爆弾。効果範囲は実に半径200mにも達する。それらはマッハ6を超える速度で一直線に突き進むものもあれば大きく迂回してフェテリシアを囲むように飛ぶものもある。ミサイル同士で連動して、目標物を追い込むようにプログラミングされているのだ。

しかし、彼女にとってこの攻撃を躱すのは簡単だ。思考推進機関の出力を全開にして振りきってしまえばいい。大気圏内の最大速度が光速の90%を超える彼女にとってそれはたやすい。しかし、この試験はそれをしてはならない。気化弾頭ミサイルによる広域飽和攻撃への対処だからだ。


直線で飛んでいたフェテリシアが垂直ダイブ。数十メートル行き過ぎたミサイルが追従。

予測進路を修正した他のミサイル群も追従する。

さらに軌道変更、今度はいきなり後進。追従してきていたミサイル群の中を逆行し、近接信管が反応するよりも早く離脱。

広角センサーといえども後方まではカバーしていない。そのまま目標を見失った第一ミサイル群は、他のミサイル群からのデータを受け取るまで迷走して推進剤を消費する。

「楽勝、楽勝っ!」

『などと思うなら間違いだぞー』

「えっ!!」

 認識するより早く身体が反応していた。ぎゅるんとその場で螺旋回転。

 フェテリシアの薄い胸の直前を"槍"が超高速で通過する。

海上にいつの間にか浮上していた艦艇のVLSから発射された超高速ミサイル。その速度はマッハ40を超えていた。


 1200メートルを超える大型艦艇のVLSハッチが次々と開き、ミサイルが発射される。発射されたVLSにミサイルが再装填され、さらに発射。

 超高速ミサイルと超高機動ミサイルの入り混じったミサイル弾幕は250基を超えていた。

「ちょ、いくらなんでも、多すぎじゃないですかぁっ!!」

『うむ、実は消費期限が迫っているミサイルが多くてな。訓練にはちょうどいいだろうかと思って乱れ打ちをしてみた。後悔はしていない』

「むちゃくちゃだっ!!!!」

『そうか? これくらい通常加速内で避けられなければ宇宙戦闘なぞ出来んぞ』

「なんですか、宇宙戦闘って!! そんなの聞いてないですっ!!」

『いま云ったじゃないか。それと天塔騎士はもともと宇宙空間での超光速戦闘用に開発されたものだ。惑星上では能力が制限されるけどな』

「なんですか、それぇえええええええっ!! 聞いてないですぅうううう!!」

 会話をしながら、高機動ミサイルのセンサ有効範囲から逃れ、超高速ミサイルの筐体を駆け下って跳躍し、うねうねと迫ってくるミサイル群の合間を縫って避ける。

近接信管のセンサ有効範囲には決してとびこまない。

 さすがに爆風の有効範囲から逃れるには、強力な加速が必要で、それを制御しきれるかまだ不安だったからだ。

『回避は問題ないか。では、起爆するぞ。――怪我するなよ?』

「ちょっとまてぇえええええええええっ!!!!!!」

 まるで不安を読んだかのように大佐がそれを強要してきた。

 マイクロ秒のズレで、ミサイル群が一斉起爆する。

 爆発力調整型レーザー核融合弾頭の華がフェテリシアを中心とした半径20kmを一瞬で灼き尽くす。

 完全核融合のため残留放射能を残さないとってもエコな兵器として、一般大衆には好評だった戦場の花形の兵器だ。

 効果範囲外は大気圏外で待機していた艦艇が大規模大気整流を行って他地域に影響を与えないように調整する。

フェテリシアは知らされていないが、今回の試験は宇宙空間で保管されている凍結艦隊の定期整備を兼ねているのだ。そのため搭載兵装や機能を稼働させて状態チェックが行われている。閑話休題

 

「し、死ぬかと思いました……」

 大気圏内制限巡航速度である第二宇宙速度まで出したフェテリシアは肩で息をしている。

念のために実行したシステムチェックはオールグリーン。制御も問題なく行えたことをバックログで確認する。

 意識が一瞬途切れたのか、記憶がとんでいたのだ。

「つ、次の項目は、なんだっけ……」

『レーザー攻撃の回避だ。それから、周囲状況にはいつも気を配っておけ』

「ぁっ!!」

 足を停めていたフェテリシアの周囲を大量の無人機が包囲している。

 フェテリシアを追跡して囲みながら周囲を飛び回る無人機の別の場所が装甲がスライドして開く。

大型の多重集積光学レンズ。

『機動回避しつつ、必要なら弾け』

「む、むちゃ――」

『泣き言は聞かんと前から云ってるぞ』

「ひどっ!!」

 フェテリシアの抗議とほぼ同時に、レーザー攻撃が開始される。

彼女の五千万倍まで思考加速された分割思考NO.5からNO.11が、全天に方位展開した無人機の光学レンズが発光し始めたことを捉える。


瞬時に射線予測をして、主思考であるフェテリシア制御人格に結果を伝達。


どーやって避けろというんじゃぁあああああっ!!!


 胸中で悲鳴をあげる。

 回避経路を完全に潰されている。五体満足で抜けられるほどの隙間がどこにもない。主思考の悲鳴に構わずに、武装を担当するNO.3が亜空間武装庫を開き、右手の身体制御を担当するNO.15が手を突っ込ませて専用刀〝天塔紅蓮24式〟を引っ張り出す。

鞘走りと照射が同時。

思考推進機関が周囲空間を改変して、瞬時に600Gを超える超音速加速。

同時に揮った刀身がレーザーを斬った。

出来た隙間に身体を飛びこませて、レーザー砲による包囲を脱出。

マイクロ波を検知/多点連動型合成レーダー。位置が割れれば、次に来るのは、普通なら不可避の光速攻撃。

しかし思考推進機関が周囲の空間物理法則を改変して、フェテリシアの身体を慣性と物理法則を無視した機動をとらせて回避。光速であるが故に、その軌道は正確無比、したがって、その軌道上に居なければ当たらない。

天塔騎士なら当たり前のようにこの程度のことは出来ると解っている。

大気爆発音がなって、少女が鋭角に跳ねて、後方へと飛ぶ。その瞬間に紅蓮24式で三つのレーザーを叩ききり、形成されていた包囲網を抜ける。


  ★☆★☆★☆


「……いやはや、あいつは……」

「さすがに冷や汗が出ますね。なんであんな無茶を」

「いや、無茶ではないのだ。たしかに可能であるし、次の攻撃を考えると理には適っている。が、訓練とはいえ、一歩間違えれば死にかねない死地に平然と踏み込んでしまうのがな……」

「大佐もあれくらいは可能ですよね?」

「ああ、可能だが、わたしなら踏みとどまって剣技で迎撃する、そっちのほうが安全だからな。……その意味では、わたしはフェテリシアに劣るかもしれん。本当の意味での死地になった時は、負けるかもしれんな」

「まさか、ご冗談を」

「もともと天塔騎士の性能に優劣や差はないからな。異なるのは経験・技量・直観などの人間的な面だ」

大量のレーザー攻撃を、紙一重で避け続けているフェテリシアの映像が中央モニタに表示されている。

めまぐるしく変わる各種数値と解析グラフがモニタ上で踊り狂う。

それらを読み取って自分で解析している大佐はため息をつく。

「まったく、悪い方向に狂ってるな、あいつは」

 全体的に前進して動くことが多すぎるとアインは分析していた。精神状態グラフからすると迷った時ほど前進している。

 これは死中に活を求めるというレベルではない。その判断は極限の状況時におけるもので、普段からその傾向であるのは、死に急いでいるのとなんら変わりない。

脳内で解析をしながら、忙しく腕を動かし、指揮下にある兵器群に大まかな指示をだし、武器弾薬の残量を確かめている。いくつかの予約操作をしながら、分析結果の傾向に気がついて顔をしかめる。 

「こりゃ、矯正が難しいかもしれんな。もう何回か追い込まないといかんかもな……」

「あ」

 金髪の髪を無造作にかきあげて訓練計画を考え始めるアインの横で、補佐官が小さな声をあげた。


 なにを間違えたのか、回避し損ねた超高速ミサイルを顔面で受けているフェテリシアがモニタに映っていた。

ミサイルがぐしゃぐしゃとつぶれていって、大爆発を起こし、はねとばされていたフェテリシアが巻き込まれる。


「ばかやろう、なに顔面で受け止めてるんだっーーーーーー!!! 斬れよっ!!」

「いや、問題はそこじゃないでしょうっ!、訓練中止、すぐに回収して!」

「訓練中止! 訓練中止! 救護班、スパロー1をすぐに回収せよ」


司令室が一斉に慌ただしくなった。




能力をロックしているとはいえこういうのと帝国軍は戦っているのです。

むちゃしやがって……。


さて、このシリーズの基本路線はもともとこんな感じだったんですが、なんか最近シリアスに走りすぎているなぁとおもったのでちょっと書いてみました。


夏コミで無料配布予定の短編もこんな感じの内容です、

(無料配布については8/1の活動報告に詳細がありますので、ご覧ください)



なおこの話は、次話本編を投稿するときに、プロローグの前に移動させる予定です。


8/9追記

 こういうSF風味のものを投稿するとがりがりと登録数が減少していく……。そんなに面白くないですか、SF風味(汗

え、そうじゃなくて単に面白くねぇんだよ、ボケが!! だって? ……精進します。

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