DreeM02「GloomY」
俺は佐藤蓮。高校1年。クラス委員を務めていたりもする。
成績も割と良いし、部活の方も順調。
クラスにも仲のいい奴が多いし、俺の高校生活は充実していた。
―昨日までは。
昨日、俺は死に、そして生き返った。
これは俺と俺の仲間の不思議な物語…
DreeM02『GloomY』
イオン。それは俺らの最高の遊び場だ。
少し前に不良に絡まれたりもしたが、それでも行くのを止めない。
それほどまでに、俺らはイオンのゲーセン-楽市・楽座を好んでいる。
―昨日までは。
それは楽市・楽座での出来事。
俺らがそこで遊んでいるその時、一つの黒い影が、迫っていた。
「「「大和」」」
俺らの中で一番小柄な大和だった。
大和に迫る黒い影。通り魔なのか、何なのか、推測する暇も無い。
だが、男が持つ刃は確実に、大和に向けて迫っていく。
「「「危ねぇ!!!」」」
飛び出したのは颯太だった。
大和の代わりに、颯太が刺された。
「颯太!!」
「くそ…あとは頼んだぞ」
颯太はぐったりとしている。
仇を討つと言わんばかりに、犯人に向かっていく俺ら。
翔太が電話をしている。時期警察や救急車も来るだろう。
それにしても颯太は大丈夫だろうか…最悪だ。
―病院
あれから1時間は経つだろうか。
俺らは病院に来ていた。
既に颯太の顔には白い布が被せられていた。
颯太の家族が泣いている。勿論俺らもだ。
畜生…
「どこだ…ここは」
目が覚めると、俺はどこもかしこも真っ白な、意味不明な空間に居た。
「はじめまして…」
「誰だオマエ…」
「私はこの空間の〈管理人〉です。
まさか、続け様に死ぬとはねぇ…」
「はぁ?何の話してやがる。
…つか俺…死んだんだな…」
「はい。しかし、生き返るチャンスはまだあります。
というか、生き返ってもらわなければ困る」
「何言ってんだよオマエ。
俺は確かにさっき、大和を庇って死んだ。
あとはこの訳分からん空間で、俺を刺した犯人の死刑を祈るだけだ」
「だから言ってるでしょう。貴方には生き返ってもらいますよ」
「ああ?」
「さっき別の方に説明したばかりなんですよねぇ…
面倒なのでワープっと…」
男は眩い光を放つと、確かに場所が変わっていた。
「どこだここ…」
「見覚え、ありませんか?」
電気が消えていて分からなかった。
そう、ここは俺が死んだ…楽市だ。
「何でここに…生き返ったのか!?俺」
「いいえ、まだです。ここは昨日の貴方の夢の中。
これは予知夢なんですよ。言ってる事分かります?」
「全く」
「クックック…貴方は馬鹿なんですねぇ」
「うっせぇ死ね」
「死んだのは貴方の方です」
「うぜぇ…」
「つまりですねぇ。
昨日貴方は、貴方が死ぬ夢を見たんです」
「そんな覚えはねぇけどなぁ」
「当然、覚えてないでしょうねぇ。
逆に予知夢を覚えている者がいるとしたら、
その方は死にませんから」
「…て事はなんだぁ?
この夢に、アイツが出てくんのかよ」
「そう言う事です。
そこでですね、貴方にはこれでその悪夢を倒してもらいます」
男は棍棒を差し出してきた。
「これは?...」
「蒼之棍棒です」
「これでどーしろって?...」
「そうですねぇ…とりあえず撲殺とか…
まぁ、ただの棍棒ではないですからねぇ。
色々と試してみてください」
「ああ!?んな無責任な話あるかよ。
ちゃんと説明しろよ!!」
「面倒です。それでは私、もう行きますので」
「はぁ!?」
叫んだ頃には時既に遅し。男は消えていた。
「くっそ…訳分かんねぇ…」
辺りは薄暗い。UFOキャッチャーやその他ゲーム機が怖い。
いつどこから奴が出てくるのだろう…
何か後ろで気配がする。マズイ!!
「オラァッ!!!」
蒼之棍棒を勢いよく振る。
空振りだ。誰もいない。
―ふふ…ビビりすぎですよ
「あ!?オマエどこにいやがる!?」
―天の声です。場所は教えられません。でも…
「でも?」
―奴の場所は教えられる。貴方の正面です…グッドラック!!
「嘘っだったら殴るぞ!!」
それでも、今信じれるのはあいつぐらいだ。
正面に向かって突っ走る。
「ウオラッ!!!」
棍棒を振りかざす。
「ぐおっ」
何かに当たった。大方奴だろう。
「よくもやってくれたな糞野郎!!」
「くぅっ」
男は二発目を避けると、ナイフで応戦してきた。
男の方が押している。
俺は奴の攻撃を棍棒で何となく防ぐ一方だ。
「く…そっ」
集中力が切れてきた。恐怖が俺を支配する。
「うらぁっ!!!」
一瞬だった。
「ぐはっ」
刺された。吹き飛ぶ俺。
腹部にナイフが刺さっている。
「また死ぬのか…」
違う。こんなところで死んでたまるか。
とりあえずナイフを抜く。
激しい痛みが俺を襲った。
血も恐ろしいほど出ている。
「くそっ…」
奴の方ももう一本のナイフを出して、構えている。
だが、落ち着け。さっきの男の言葉を思い出せ。
ここは夢だ…だとすれば、どれだけ血が出ようと関係無ぇ。
そうだ…イメージしろ。俺は…勝てる!!
「はぁっ!!!」
蒼之棍棒から水が噴き出す。
それも半端じゃねえ。洪水レベルの水が棍棒から溢れだす。
「なんだぁ!?」
奴も流石にビビっている。
「のわぁっ」
なすすべも無く、ただ濁流に呑まれていく。
「ハッ、じゃあな」
「たっ、助けてくれぇっ…誰かぁぁぁ」
「おめでとうございます」
拍手をしながら、またあの男が現れた。
「何だよ、どこ行ってたんだよ」
「金の間から、しかと見させて頂きました。
男はいずれ死ぬでしょう。
そして貴方は生き返る」
「っしゃ!!それマジだろうな?
嘘ついてたらぶん殴るぞ」
「マジです…しかし、その代償をきちんと支払って頂きます」
「代償?...」
「はい、貴方にはこれからも悪夢と戦ってもらいます。
そこで悪夢に負ければ、貴方は再び死にます」
「は!?冗談じゃねえよ!!」
「彼は既に引き受けていますよ…」
「誰だよ」
「佐藤蓮です」
「は!?...アイツ、死んだの?」
「はい。まぁ、生き返りましたけど…」
「ああ、そうか。
…畜生、やりゃあいいんだろ!!」
「良かった。引き受けないなら助ける価値無いですからねぇ…」
男の言葉のあと、俺らは生き返った。
楽市だ。俺が倒したから、アイツは現れない。
俺はみんなと、ゲームを大いに楽しんだ…
To Be Conted