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シェル編 4

ダンジョンの基本的な仕組みは、四つです。

・入り口の扉が開いている間は見えない壁に阻まれて中に入れない。

(先に入ったチームが出てくるまで入れない)

・一度に入れるのは1組のチームからランダムに5人まで。

・最深部に辿り着くと、そこに現れた怪物を倒すまで、ダンジョンを出られない。

・最深部で怪物を倒すと出現する装備品を手に入れると、クリア扱いとなる。


 巨大虫の顔面を覆う水のボールが発生!


 虫はひどくもがいて身体をぐねぐね振るが、

液体は飛び出してこない。


 セルスは距離を取り立ち止まって、フロアの全方位も気にした。


 シェルにはイメージを消させようとするような頭痛が起こっている。

彼女はそれに耐えた。



 やがて巨大虫は、

大きな音と砂埃を立てて倒れた。


 虫がすうっと消えてから、シェルが気を抜くと、魔法が解けた。


「大丈夫?」


 あれだけ止まらずに動いたのに、

セルスに疲れはないようだ。


 シェルは汗を拭った。


「大丈夫だよ。ところで」


「何?」


「…そろそろ降ろしてくれないか」


「抱き心地いいのにの前に、これで済むかな」



 また地面が揺れたのにシェルも気づくほど、セルスの身体が揺れた。


 揺れはどんどん大きくなる、

足音みたいに!!



 シェルの硬直して口が開いた顔から説明を受けずに、セルスは首だけ振り向いた。

轟音に近い声がそれに応えた。


 「「裁きを受けよ!」」



「やっぱりね。逃げるから我慢してよ」


「頼むよ!!」



 六本ある腕が、伸びながら二人を殴ろうとした!!


「ネスト!!」


 両サイドからの攻撃を

シェルは瞬時に造り上げた二つの直方体の固い土で防いだ!


 が、壁はどちらも半壊して、

シェルはゾッとすると同時に壁は消えた。


 シェルの防御なしでも今の攻撃をセルスはかわせたが、

この面子で倒すのは無理と判断し、

急いで階段を跳び登った。


 やはりセルスが知らない怪物は、遠距離攻撃はしかけてこない。

入り口は開いている。





 外に出ると、石扉は自動的に閉まった。


「そんなにヤバいのここにいた?」


 次にダンジョン探索を待っていたチームだ。


 セルスはシェルを降ろし、

さっと不自然に、シェルを隠すように立った。


「初心者には刺激が強かったみたいだ」


「ああ、そうなんだ」


 それ以上は言わずに、

チームはダンジョンに入っていった。


 シェルは言われなくても手袋を付け終えていたのを知り、

セルスはまた前を歩く。

 シェルはついていった。


 他の冒険者たちともすれ違うから、

見える背中にかける言葉が、シェルにはわからない。

 さっきのチームリーダーらしき者の反応は、

腫れ物に触れないような類のものに、彼女には思えていた。





 階段を下りたらもう夕刻だ、側には誰もいない。


「刺激とは虫の事か」


「トラップで有名なダンジョンなんだ、本来はね。いや」


 また頭を取ってつけたような変な生き物に

セルスはひらりとまたがるので、

シェルもそうした。


 大人しくて扱いやすい上に、

ゾウの鼻は、身軽ではない者の踏み台になってくれる。



 危険は大きいが、刺激は、

過去このダンジョンでセルスが体感した中でもっとも、少なかった。

 直でボス戦だったなら、ゼロということになる。

 


 

 セルスは否定して、続きを言わない。



「言いかけた言葉が気になるよ。聞かないほうがいいのか」


「あ、気にしてた? 大した事じゃないよ。

 それより、今夜一部屋でもいい?

 物々交換だから、アイテムの消耗抑えたいんだ」


 そういうのがごく普通の提案なのかが、

シェルにはわからない。

現実なら彼女は頷かないからだ。


 多分、そういう性分だったとだけは確信を持てている。


「わからないから、今日はいいよ。

 明日からは私も自分で考える」


 もっと早くこの特殊な人に会いたかった?


 誰とどう出会いどうやって自分はまたひとりになったか、

考えても、

後悔なんて彼はしない。


 だから、

逃がしたりはしない。


「オーケー。

 今日は怖かったもんね」


「あれは状況の問題だ、仕方がないだろう!」


 抱えられてしがみついてしまった事を思い出した声と顔だったから、

振り向いていたセルスは笑った。

 シェルは恥ずかしくて、

もう黙っていた。






シェルにとってはこれが最初の冒険ですが、

セルスはシェルとの冒険にひどく違和感を持っています。

それをそう悟らせない風の彼には、何か思惑があるのか……?


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