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シェル編 1

話が進むと、世界設定も登場人物も増え続けます。

お気に入りのキャラを探してください!


「…腹の立つ世界だ」


 ゾウの頭をした灰色のラクダに乗る時点で、

この世界ではシェルと名乗ることにした女はそう思っていた。


 ここは急に砂漠なのに、気温も湿度も快適としか思えない。


「面白がれとは言わないけどね、

 あんたもっと顔から力抜いたほうがいい。きれいなんだから」


 シェルの斜め前を同じ生き物にまたがって行くセルスと名乗る男は、すぐ軽い口を利く。


 愚痴を言える相手に出会えただけで有り難いのか、

シェルはよくわからなくなってきた。


「美男美女かよ。組まないか? 魔術師は初心者だろ?」


「遠慮するよ、今敵のレベル上げたくない」


 セルスについて移動しだした途端、始まり増えた勧誘はすべてセルスがすぐあっさり断る。


「二周以上の剣士!組もうよ!」


「イベントクリアが目的じゃないんだ、悪いね」


 求められる理由はいつも違うから、

断り方もいつも違う。


 そのやり取りだけで、シェルもこの世界を気取りだした。


「やはりRPGなのか」


「ダンジョン探索型、かな。誰が何の役割持ってるのかわからない。ストーリーがない上に、エンディン グがないからね」


 規定イベントをクリアしてもセルスのように、記憶と経験値を引き継いだまま若返ってまで、

同じ世界をやり直すらしかった。



「知り合いはまったくいないのか」


「俺言ってなかったね、パラレルワールドってわかる?」


 パラレル。


「平行?」


「あんた頭いいね、同じ時空間に同時に存在する平行世界だって、俺もこっちの住人に聞いたよ。

 大体同じなんだ。でも同じ冒険者には二度と会えないみたいだ。住人も全員違う」


 何の為に? とシェルは聞こうとしてやめた。

 酷な質問に思えたからだった。



「魔術師プリーズ! 水使える?」


「あ、いや、私は」


「風と火の初心者だよ、まだ何も食べてない」


「あー、じゃ残念」


 魔術師であるシェルが使える属性については、いつもセルスは嘘をつく。


 左手の甲の紋章を、きれいな手だからとか言って白い手袋で隠させるくらいだ。




 セルスが振り向いて見た顔は予想通りだった。


「そんな怪しむ顔しないでよ。珍しくないだろ?」


 確かにすれ違う魔術師らしき姿の者たちは、男女問わず手袋をしていることが多い。

基本的な装備らしい。




 やはりシェルは納得がいかない。


「女性と組みたい」


 ストレートだからセルスは面食らう。


「俺が女ならこの扱い怪しまないの?」


「そうではないけれど、できれば同性の第三者が欲しい。

 お前の言動が普通なのかどうかも、私にはわからないんだ」


「普通。普通ね…」




 珍しく、よくしゃべるセルスが即答しなかった。


 前を向いたまま、長く答えない。




 シェルは気持ち背にかける声を大きくした。


「気に障ったなら謝るよ、この世界自体が異様だ」


 あんたやっぱり優しい、と思っても、セルスは間を空けた。


 何が異様なのかこれから説明しなければならないくらい、

彼女はここの事を何も知らない。


 優しすぎるという事だった。





「メンバーは、いずれ慎重に選ぶよ。誰にも見えない場所で、あんたの特殊性を試させて。

 ごめん、ここは、力ずくで行く。出た後は決めてない」


 妙な乗り物から下りてすぐ左手首を握ったセルスの顔と言葉は切実で、

少なくとも不誠実には、シェルには思えなかった。



「わかったよ」


 ダンジョンは一組ずつ姿を変える。


 セルスはシェルに手袋を外させて、また左手を繋いで進んだ。



「ようこそヘキサゴン」


 セルスは振り向いた。


「シェル?」


 シェルは立ち止まっていたが、もう何も聞こえない。


 ヘキサゴン。六角形。シェルの左手の甲にある記号。


「何でもないよ」





 二人はピラミッド型ダンジョンの階段を登りきり、石扉を横に開けて、中へ入った。





シェルとセルスの出会い方は話が進んでいくと、

アフターワールドの多くの謎と一緒に明らかになります。

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