思い出
あの日の朝。
待ち合わせの駅に、1時間も早く着いてしまった。
キミと一緒に居られるっていうだけで、嬉しかったから。
だからこんなに早く来ちゃったんだ。
でも、僕が着いてから5分もしないうちにキミは来てくれた。
僕を見つけたときの驚いた顔。今でも忘れない。
キミは言ったね。
『どうしてこんなに早く来たの?』
そんなの決まってるじゃないか。
『キミに会いたかったから』
恥ずかしいのか、キミの頬はすぐに真っ赤になった。
そんなキミが、とても愛おしく思えたよ。
そして、僕も聞く。
『どうしてこんなに早く来たの?』
少し間をおいてから、僕の前に飛び出すキミ。
『キミに会いたかったから』
今度は僕が恥ずかしがる番だった。
キミの頭を撫でて言った。
『ありがとう』
あの日は、何故か電車にほとんど人がいなかった。
僕達のために用意された特別列車だったのかな。
隣に座っているキミ。
その横顔を見て、ずっと守りたいと思った。
キミを好きでいよう…いや、キミしか好きになれないだろうと思った。
そんな僕の気持ちが伝わったのかな?
キミは、ゆっくりと僕の手に自分の手を重ねた。
正直、ビックリしちゃった。
と同時に、僕は確信したんだ。
僕とキミは、いつもつながっている。
キミの方を向くと、キミはさっとうつむいてしまったね。
僕のことを見て、何を思っていたんだろう?
何を考えていたんだろう?
キミは顔を上げ、こう言った。
『私とキミは、いつでもつながってるからね』
電車を降りる。
新鮮な空気が、僕達を包んだ。
深呼吸をする。
思わず笑顔がこぼれた。
そんな僕を見て、キミも深呼吸をした。
『この年になって、まねっこ?』
僕が聞くと、キミはこう聞き返したね。
『ダメ?』
すこしションボリした顔。そんな顔を見てしまったら、答えは決まる。
『ダメなわけ無いじゃん』
お互いの顔を見て、笑った。
キミの笑顔が、世界で一番素敵だよ。
遊園地。
キミはジェットコースターが本当に苦手だったね。
でも、今日はそんなのには乗らないよ。
『じゃあどうして遊園地?』
そう聞くキミに言った。
『ここが一番好きな場所だから』
一度は一緒に来たかった。
小さな広場。
芝生が綺麗に生えている。
僕はそこに寝そべった。
キミも、僕の真似をする。
青い空。
白い雲。
小さな子供たちの笑い声。
時々聞える、親が子供を叱る声。
たくさんの足音。
ジェットコースターが動く音。
『ここにいると、いろんな音が聞えるでしょ?それが好きなんだ』
キミは。
『素敵な場所だね』
それだけ言った。
キミのほうを向く。
目を閉じて、まわりの音を静かに聞いている。
僕は、キミの手をそっと握った。
ピクっとキミが動いたのが分かった。
でも、キミはすぐに僕の手を握り返してくれたね。
本当に嬉しかったよ。
今日初めてのキミのお願い。
『私、あれ乗りたいな』
観覧車…
僕は高いところが苦手だった。
でも、大好きなキミのお願いだもん。
『いこっか』
キミは手を外そうとした。
いつも、誰か他の人の目があるところでは
つないでなかったから。
でも、今日は。
『え…』
僕は、その手を離さなかった。
『今日はそのままがいいな』
みるみるうちに、キミが真っ赤になった。
思わず笑みがこぼれる。
僕達はお互いに恥ずかしがりながらも、
手をぎゅっと握ったまま観覧車に乗った。
どんどん上がっていく。
『怖い…』
思わず、言ってしまった。
『えっ?』
しまった…。
『なら…』
もうすぐ頂上につくだろう、という頃。
『目、閉じて』
キミに言われた通り、僕は目を閉じた。
しばらく経って、キミが動いたかと思うと。
僕の唇に、柔らかなきみのそれが重なった。
時間的には5秒にも満たなかったかもしれない。
たったそれだけでも、僕は嬉しかった。
キミからなんて、初めてだったから。
ここが観覧車の中で、僕が苦手な高いところだということは
僕の頭の中からは消え去っていた。
『びっくりしたぁ』
『えへへ…恥ずかしいっ』
僕の腕につかまるキミ。
本当にかわいかった。
照れながらもあの日へ。
観覧車を降りた。
『次はどこに行くの??』
キミが聞く。
予定は無い。
『じゃあ、キミはどこに行きたい?』
『あたしはキミと一緒にいられるならどこでも』
遊園地の中にある、ゲームセンター。
街中の高校生や大人が行くような雰囲気ではなくて、
ちっちゃい子たちも入れるようだった。
その一角にあるプリクラ。
初めて、2人だけで撮った。
寄り添い合い、カメラに向かってピースをする。
出来上がったプリクラを見て、2人で微笑み合った。
そして、それが最後のプリクラになってしまった。
写真を見て笑い合い、ゲームセンターを出た時。
全身を強烈な寒気が襲った。
『はぁっ!』
声にならない声を上げる。
その痛みに耐え切れずに、その場に倒れ込んだ。
『どうしたの?!』
その泣きそうな顔を見た。
自分でも、自分の体に何が怒ったのか理解出来ず。
苦しみにもがいている僕の手を、キミが握った。
『今、救急車呼ぶからね!』
キミは、僕のために一生懸命になってくれた。
涙を流しながら。
こういう時は、自分の運命が分かるものなんだ。
もうダメだろうな。そう思った。
痙攣が止まらず、火あぶりにされているような感覚。
声を出すのが辛い。
ギュッと、キミの手を強く握り返す。
『頑張って!!あたしを一人にしないで…』
『…ボク…ハ…』
一言一言、確実にキミの記憶に残したい。
僕の最後の言葉。
『キミ…ヲ…』
懸命に涙をこらえるキミ。
じっと、僕の言葉を待っている。
『ア…イシ…テ…ル…』
その言葉を言い終えた瞬間、
キミの目頭からこらえていた涙がどっと溢れた。
『私も…愛してるよ…だから行かないで…』
その言葉を聞いた瞬間。
まぶたが急に重くなる。
キミの顔を脳に焼付けようと、
必死で目を開けようとする。
キミのほほに手を伸ばす…。
届くか…?
あとちょっと…
あと…ちょっと…
あと…
僕は、そこで終わった。
『…』
なんで…?
僕は…生きてるのか…?
目を開ける。
そこは、学校。
いつもの席に座って、数学の授業を受けていた。
なんで…だ…?
その答えは、すぐに分かった。
窓の外。
歌が聞こえる。
それは、キミの好きな歌。
どっと、涙が溢れた。
でも、それを気にする人はいない。
そうだ…キミは?!
教室を飛び出した。
A組から、D組へ。
キミの席は。
空席だった。
キミ…。
その場に座り込み、ただひたすら泣いた。
止めようと思っても、とめられない。
泣くばかりで、息を吸えず苦しい。
『キミ…』
聞きなれた優しい声。
一瞬で、涙がやんだ。
ゆっくり、ゆっくり顔を上げる。
そこには。
僕の大好きなキミがいた。
『なんで…僕は…?』
『ここは、私の夢の中だよ』
『え…』
『キミは、私の心の中にいつもいるから』
そうか…
僕はここいいれば、
キミを支えることが出来る。
なら…
僕はここでずっとキミを支えよう。
大好きなキミを。
『授業、行ってくるね』
『え?でもここは夢の中で…』
『夢では夢の時間が進んでる』
キミが笑う。
『あたしは、現実の世界と夢の世界の2つで生きてるから』
これは、本当にキミの夢の中なのかなぁ?
これ自体が、僕の夢だってこともある。
…でも。
『あたしは、この場所を楽しみたいから』
きみのその笑顔が毎日見れるなら、なんでもいいや。
たとえ、生きていても、そうでなくても。
僕は、キミのためにここで生きていく。
『じゃあ、また放課後、図書館でね』
『うん。分かった。またね』
『バイバイ』
手を振り、教室へと戻っていく。
僕も、戻ろう。
開けっ放しのドアから、教室内へと入る。
『おお、どこに行ってたんだ?』
『え?あ、いや、ちょっとトイレに』
さっきは、誰も僕のことを気にしなかった。
僕は…きっと、この世界の神様に認められたんだ。
この世界で生きていくことを。
キミのために僕がいる。
だから僕は、精一杯キミを支える。
キミの夢の中で。
キミを。
愛しているから。
-思い出 END-
こんにちは。高橋拓郎です。
1時間クオリティーですので…
少し内容薄いですが、ご了承ください(笑)
ふとした瞬間に書きたくなり、
ばばーっと書いてみました。
遊園地は本当に好きな場所で、
小さい頃よく行っていました。
今でもたまに行くと「なつかしいなー」となります。
さて、最後の場面の解説ですが、
一応主人公は亡くなっています。
その魂が、彼女と会話しているような状況です。
夢、のようなものですね。
なにせ、死んだあとのことは分からないので…。
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。