第7話
フローラは、思いっきり力を入れてアタックしてきた。
「ボールが見えねえ」
アリーは、驚いたような顔をして言った。
アリーの言う通り、フローラがアタックしてきたボールは、ものすごい速さで、
はっきりと肉眼で確認することができなかった。
ドンッ。フローラがアタックしたボールが、コートの中に落ちた。
「やったー。1点ゲット」
フローラは、拳を握りしめて言った。
「ふーっ」
アリーは、顔を横に振って、言った。どうやらアリーは、フローラのあまりの強さに
戦う気をなくしてしまったらしい。
「よし、じゃあ次いくよ」
再び、フローラは、ビーチボールを上にあげて、アタックしようとする。
「みんなお待たせ」
マルヤムがこちらに向かって手を振りながら、走ってきた。
「あっ、マルヤム」
フローラは、ビーチボールをアタックするのをやめて、マルヤムのほうに顔をむけて
言った。
「こんなに暑いんだから、ビーチバレーなんかやめて、海で泳がない?」
マルヤムのビーチバレーをやめて、海で泳がないかという提案は、フローラとビーチ
バレーをするのが、楽しく無くなり始めた俺にとって、魅力的な提案だった。
アリーも俺と同じ気持ちだったらしく、マルヤムの顔を見て、しきりに首を縦に振った。
「マルヤムの言う通りだな。早く、海で泳ごうぜ」
「うーん。僕は、ビーチバレーのほうがいいんだけどな」
アリーは、お前から何か言えよと言っているような顔をして、俺を見た。
「なあ、フローラ。僕も、海で泳ぐほうがいいと思うな」
「アーマドがそういうんだったら・・・」
フローラは、なごりおしそうな顔をしながらも、ビーチバレーをやめて、海で泳ぐことを
了承した。
「アーマドも、海の中をもぐってみなよ。きれいなお魚がたくさんいるよ」
フローラは、水中眼鏡を取って、俺の顔を見て言った。
「そうだね。じゃ、2人で一緒に潜ろうか」
「えっ?2人で・・・」
フローラは、困ったような顔をして言った。
「嫌ならいいんだけど・・・」
「嫌・・・、嫌じゃない、嫌じゃないよ」
フローラは、しきりに首を振って言った。
「じゃ、一緒に泳ごう」
「うん」
俺とフローラは、一緒に海の中に潜った。
海の中には、黄色やオレンジ色のカラフルな色の魚達が、泳いでいた。その光景の美しさ
に、俺は、おもわずため息をついた。
とんとんとん。フローラがしきりに、俺の肩を叩いた。俺は、フローラのほうに
顔を向ける。
フローラは、右の方向を指差していた。俺は、フローラの指のさきを見つめる。
・・・でけえ。フローラが指差した方向には、巨大なうつぼがいた。そのうつぼの大きさに
俺は、恐怖を感じた。