第二話
無頼者のような雰囲気の40代くらいの男は、うれしそうな顔をして言った。
「アーマド・・・やめて」
フローラは、俺の服の裾を引っ張って言った。
「だけど・・・あいつは、お前の顔に唾をはいたんだぞ」
「いいんだよ、別に気にしてないから」
フローラは、悲しそうな顔をして言った。
「はーっ、今日もすごい混雑だったね」
フローラは、地下鉄を降りた後、俺の顔を見て言った。
「そうだね」
「もうね、死ぬかとおもったよ」
フローラは、うんざりしたような顔をして言った。
大学に着いた。俺とフローラは、授業がおこなわれる教室のドアを開けて、中に
入った。・・・予想どうり、人がほとんどいないな。サパエロの大学は、学生の
反政府運動で、どこもほとんど授業をおこなっていない状態だった。
サパエロの大学生達が、反政府運動をおこなう理由は、今の政治に不満を持って
いるからだった。
今の政府のリーダーである、セゲディーン大佐は、サパエロの産業の中心である、
石油で得た富を自分の一族で、独占し、一般の国民には、分け与えようとしなか
った。そのため、国は、石油のおかげで繁栄しているのにもかかわらず、国民は
貧しかった。
だから、石油から得た富で、贅沢な生活を送るセゲディーン大佐に、国民は、反
感をつのらせた。さらに、情報統制が厳しく、言論の自由が無い事も、国民が、
セゲディーン大佐に反感をつのらせる理由だった。
しかしながら、政治に関心の無い俺にとっては、セゲディーン大佐の事など、ど
うでもいいことだった。
であるからこういして、反政府活動に参加することも無く、毎日、大学に通って
いるのだ。