Youは何しに俺達の元へ?
「お疲れ様、白。どうだった?」
「ちょー楽しかった。」
戦闘が終わり、俺たちはお互いに労いの言葉をかけた。先ほどまで戦っていた相手を構成したポリゴンが砕け散るのを見届けると同時に、世界が俺と白のレベルアップを告げる。上がったレベルは俺が二、白が一レベルだ。しかし俺たちには上昇したそれ以上の恩恵がもたらされた。
「うお、二レベルしか上がってないのに一気にスキルが五個も増えた。」
上昇したレベル分で考えると僥倖の白蛇のほうが多かったがスキル習得に関しては今回のほうが多いのを見るに、やはり戦闘中の行動によってスキル習得の有無が変わってくるんだな。
「ひとまず街に向かうとするか。次のツヴァイデルを超えたらドライヴィアだろ?」
「そうだね。でも街に着いたらまず武器を何とかしたいかな。ちょっと火力不足かも」
そう言えば武器がまだ初期のままだったな。拳系の武器は恩恵が他より少ないからあんまり気にしてなかったが、双剣使いともなるとそこは火力に直結する。
「なら街に着いたらいったん別行動するか?俺も別でやりたいことがあるし。」
「じゃあそれで。」
「了解」
戦闘後の余韻も冷めねままに俺たちは次の街へと足を運ぶ。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
ツヴァイデル。アルクロにおいて二つ目の街とされている街だ。大きさこそアインスベルやドライヴィアほどはないがそこそこ大きいほうだ。多くのプレイヤーがこの街の武器屋や防具屋で装備を新調する。俺も例にもれずポーションや防具の新調を行い、一足先に宿に戻る道中だ。。白とはすでに分かれており、この宿屋で再び合流するつもりだ。
(回復方法に制限があるのは注意しなきゃな。さっきの戦闘でも結構ぎりぎりだったし。)
少し多めに買ったポーションで回復しながら戦闘について振り返る。VIT(防御)を多めに振ってるとはいえ別に無敵というわけではない。当然攻撃を受け続けるとHP(体力)がなくなる。現状白と二人で攻略を進めているがあいつはアタッカー体力は少なめなのであまり負担はかけられないとなるとやはり、そこら辺の体力調整は慎重に行う必要がある。
(後は紅吏のビルドがどんなのかだよな……)
今後のことを考えていると突然背後から声がした。
「やっと見つけました!ここに来るとマーキングが使えなくてすっごく困りましたよ。」
振り返るとそこにいたのは白銀とも見間違う美しい空色の髪に、まるで全てを見え透いている様なを藍色の瞳を持つ少女。
周りを見渡し他に人がいないかを探すが、ここは路地裏なので該当するような人は誰もいない。つまり俺に話しかけている訳だ。
「えっと…俺?」
「うん?そうだけど。」
「俺たちどこかで会いましたっけ?」
「初対面だよ?」
何なのこの子?え、初対面で探してたって何?てか今さらっと変なこと言ってなかったか?マーキングって何?このゲームマーキング機能あるの?いやでも今使えないとかも言ってたような……
初対面の謎の少女による突然の訪問、クロトの思考には多くの疑問が思い浮かぶ。そこにさらに追い打ちをかけるように少女はこちらに質問をしてくる。
「あれ?ハクアちゃんは一緒じゃないの?」
なんでこいつハクアのことまで知ってんの?マジで意味が分からん……
「えっと…あいつとは今別行動中なんだけど…一先ずあんたは何者なんだ?初対面の割には随分なれなれしいというか、というか俺たちについて知ったような反応をするというか。」
「ん?あぁ、自己紹介がまだだったね。初めまして、僕の名前は瑠璃月希空!この世界のラスボスだよ!」
特大の厄ネタだったかぁ……
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
何この状況。新装備の調達やら街の探索やらをした後に宿屋に戻ると、そこには頭を抱えた黒と見たこともない女の子がいた。
「まさか黒が女の子をナンパするとは。」
「ちげえよ」
「そうだよ。僕は女の子じゃなくて男だもん。」
「そうだったのか……ってツッコみどころはそこじゃない。」
天然くんかぁ。黒がナンパとかするようには思えないし、何ならこいつ普通に小心者だからそもそもできないからね。
「で、実際この子何?」
「俺とお前を探してたっていう自称ラスボスさん。」
「何一つとしてわからないんだけど。」
「安心しろ。俺もわかってない。」
ダメじゃん。私たちを探してた?ラスボス?何の為に?っていうかそもそもここまだ序盤のエリアだよね?仮にこの子が本当にラスボスだったとして何用で私たちのところに来たの?
「えっと…じゃあその、自己紹介をおねがいしてもいい?」
「いいよー。こほん!改めまして初めまして二人とも。僕の名前は瑠璃月希空!この世界のラスボスだよ。あ、ラスボスっていうのは本当だからね。」
(う、噓くさい!まず何を根拠にそれを信じろと?)
「……じゃあそのラスボス?さんが俺達に何のご用で?」
「用?うーん…あいさつ?」
「「え」」
「あ、後二人の冒険を見てたら楽しそうだったから僕も一緒に旅がしたくなった!」
そのときクロトに向けてパーティの加入申請が届く。
『星の観測者・瑠璃月希空からパーティ申請が届きました。承認しますか? Yes/No』
その少年の眼にはワクワクとした期待の眼差しで満ちていた。
4話ラストの語り部。




