それぞれの難しさ、それぞれの楽しさ
穴に落ちて恐らく数分が経ったが身体が動かせない上に、未だ目の前は暗いままだ。最初は死んだと思ったが、落下ダメージを受けたのにも関わらず、視界の端に見えるHPバーはかすかに残っており現在は気絶していることを示していた。
現実とほぼ同様の慣性が働いており、落下時間と距離が長ければ長いほどダメージ量が多くなる。おそらく俺がかろうじて生き残っているのは、防御に多くステータスをふっていたからだろう。
そうこうしているうちに視界が晴れ、周りが見えてくる。見回してみるが、周りには岩でできた壁でおおわれており、やはりというか当然というか周りは洞窟であることを表していた。次に落ちてきたであろう上を見上げるが地上との距離はかなり離れていた。
「この高さじゃ「翔脚」を使っても届かないな…どうしたものか。」
壁走りもできるかどうか試してもいいが、失敗すると今度こそ死ぬだろう。
「できなくはないだろうが多分持久力のほうが持たないだろうな。」
となれば残る選択肢はこの洞窟を進むことだろう。
「ソロでの攻略か…てかそもそもこの先がどこにつながってんのかもわかんねえんだよな。ちゃんと出口あんのか?」
見た感じだと地図も使えなくなっている。つまり荒野とは完全に別にエリアだっていうことだ。だがこのまま待機していた所で助けが来るわけでもない。
「うっし!じゃあ気合い入れて進むか。」
回復ポーションで体力を回復し、気合いを入れる。ステータスとスキルの再確認も済ませて洞窟内を進み始める。
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余談だがクロトの落ちた洞窟は「ヘリクスパイル地底洞穴」といい、全五階層に分けられる地下ダンジョンだ。出現するモンスター自体はエリアに相当する強さで出現する。問題は最下層に存在するダンジョンのエリアボスだ。名をソリティール・フォミケイドといい、乗用車サイズの大きさの蟻だ。
このモンスターはとある群れから追い出された劣等個体であり、他の群個体と比べるとその強さは半分にも満たない。だが群そのものが驚異的な戦闘力を有していることからたとえ劣等個体でも序盤だとその戦闘力は脅威になりえる。何を隠そう、その群……軍団は後半エリアの隠しダンジョンに生息するモンスターだ。
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三十分くらい経っただろうか。地上に出るつもりが更に下へと進んでいた。途中で引き返そうかとも思ったが、あの場所には他に道もなかったので結果的にこっちに行くしかないとなり進んだ。
モンスターとの戦闘も何回かあったが特段強いモンスターは今のところ出てきていない。ただ中々面白いモンスターもいたもんだそうあれは……
ー回想ー
パターン①:地中兎
「兎肉落とせやぁぁぁぁ」
パターン②:捕喰百足
「こっちくんなぁぁぁ!!!」
パターン③:攻的蜥蜴&防的蜥蜴
「しゃあ!同士討ち成功!漁夫ってやるぜ!って二体でこっちを狙うんじゃねぇよ!だぁくそ、まとめて相手してやらぁ!」
ー回想終了ー
いやあ、実に濃い時間だった。特に蜥蜴コンビ、あいつらは個々としてはそんなに強くなかったが同時に襲ってきたときはかなり面倒だったなうん。百足はしばらく見たくねぇな…あいつのレベル34だったんだが俺まだ19だったぞ。何とか勝ったが流石きついわ。
洞穴のモンスターは、地上と比べた時に特別差が空いてるわけではない。だがそれは別にそいつらが弱いというわけではない。更に今はソロだ。さっきまでの複数戦と違い、ヘイト管理から攻撃、敵の攻略方法の観察まですべてを一人担う必要があり、それは人によっては難しく、また人によっては、
「ちょーたのしい!」
パーティプレイが退屈ってわけではない。連携がうまくいった時や、一人では出せない火力を出せたときなど、アッチにはアッチの楽しさがある。
だがソロの楽しさ、それはやはりこの一人で壁に挑戦するとでもいうようなこの感覚。負ければ速終了、とまではいわないが失敗は許されないような感覚。俺はやっぱりこの感覚が一番ゲームを実感できる。
「さて、最初にいた場所から結構下に来たが、そろそろ終点だとうれしいんだが……なんかあからさまな場所が見えるな……」
そんでもって真ん中になんか堂々と居座ってんな。あれは……でかい蟻か?まぁ地下だから別におかしいとは思わないが。そうだな、一つおかしいと感じるところを見つけたかな。
「おいおい……レベル53ってなんの冗談だよ。」
さっきの百足でさえ30ちょっとだったぞ、バランスどうなってんだよ。
今の俺のレベルが21。レベル差倍以上か……ほかに道もなさそうだな。
「行くしかないか……」
覚悟を決め、足を進める。別に生死を決める決戦でもなければ、誰かを賭けての戦いでもない。ただのエリアボスとのただのボス戦だ。覚悟など、そんなたいそうなものなど必要ないだろう。
だが逆にそれがなぜ覚悟を決めない理由になる?少なくとも目の前にいる敵はこの世界で生き、命を賭して戦おうとしている。ならばこちらもそれ相応の覚悟を持つべきだろう。相手のためにも、己のためにも。
それが全力ゲームを楽しむために必要なモノだと信じて。
レベル差バトルが見てて好きなんです




