表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

第四話 終話

「うおおおおおおお! おやぶううううううん!」


 砂化嵐から少し離れたところ、待っていたカンナの車両群と合流した。早速中から完全防備の男たちが現れて、ゴーグル越しに涙を拭いている。

 ぶっちゃけ拭けていないことは見ればわかったが、突っ込む気力はなかった。


 カンナに肩を貸して、近くの男に渡した。


「泣かない! ちゃんと私は生きてたんだから!」


 先ほどまでの弱気なカンナは消えていた。それでも体力はギリギリだったからか、深くせき込んでいる。


「砂化しかけたからしばらく安静に。カンナに無理させたら、崩れちゃうかもだから」

「へい! 姉御!」


 並んだ男たちが、声を合わせて敬礼した。


「誰が姉御だ!」

「そうよ、こんなやつを慕うな! リーダーは私よ!」


 二人の突っ込みに、男たちは笑う。

 カンナは大きくため息をつき、ネイルは肩をすくめた。


「──それで」


 しかし、カンナのワントーン下がった声で、空気が豹変した。

 ネイルも何を言いたいのか察して、口を閉じる。


「一人巻き込んでしまって、その上助けられなかった」


 よろける体をなんとか自分で支えながら、男たちに向かってカンナは頭を下げた。

 彼らは顔を見合わせて、困った様子だ。


「これは完全に私のミス。罰なら何でも受ける。ごめんなさい」


 その言葉の重みを受け止めながら、それでもなお男たちは笑っていた。


「正直、悲しいですよ?」

「でもさ、笑って過ごしたほうがあいつのためになると思うんすよ」

「そうっす。それに親分に真剣さは似合わないっすよ!」


 湿っぽい空気を吹き飛ばす豪快な笑いに、カンナの額に青筋が浮かんだ。


「人が真剣に話してる時くらい、静かに聞けー!」


 そして、笑いが周りを包み込む。それは砂の音さえ押し返した。


 これが彼らがこの世界で生きていける理由で、原動力なのだろうとネイルは小さく息をついた。

 こういう人間関係もあるんだねと、苦笑を浮かべる。


 やかましい声を背にしてネイルは車の中に乗り込んだ。


「ネイルー!」


 エンジンをかけると同時に、カンナの声が聞こえた。


「次会ったら、絶対倒してやるから!」

「いや、懲りなよ!」

「懲りるわけねぇでしょバーカ!」


 それでこそカンナだなと笑みを浮かべてから、アクセルを踏んだ。

 砂を巻き上げながら、ネイルは目的地へと発車する。



※※※※※※※※※※



「さすがだね。今回も助かったよ」


 兄弟コロニーの艦長が、ネイルを迎え入れた。握手を躱してから、部屋の椅子に座る。


「安心安定のネイルだね」

「そう言ってくれるとうれしいんだけど……」


 ネイルにしては歯切れが悪く、頬をかいていた。その様子を見て、彼は首を傾げる。


「何かあったのかい? 第二危険域なんて行き慣れてるでしょ?」

「私だけならね」


 その言葉に、彼は首を傾げる。


 そんなことを気にする様子はなく、ネイルは大きく伸びをした。

 

 自分の生活には不満はない。これからも変える予定もない。

 しかし、少し考え方くらいは見直してみようかなとは思えた。


 頬杖をつくネイルの口元には自然と笑みが漏れる。


「じゃあ、こちらは契約通り、一ヶ月の安全は保証するよ。あと、君の愛車も修理しておくね」

「うん、ありがとう。助かるよ」


──砂化した世界でも、人間たちはたくましく生きていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ