No.093 決勝戦前の束の間の休息
ゴーレム闘技大会の本選Aブロックを勝ち進んだカルルとゴーレムのヴァイオレット。
本選終了から決勝戦までの間が2日ほど空いていたため、ゴーレム闘技大会が行われているマルドーナ王国の王都で買物を楽しむカルル達。
王都の通りを歩いていると数軒の大きな魔道具屋が並んでいる。
マルドーナ王国では、土木作業や建築作業から商家の荷物の運搬、或いは買物の荷物運びにゴーレムが使われていて、その用途や機能も様々だ。
しかも、街中でゴーレムの貸出を1日単位で行う店も多数あるほど利用が盛んだ。
商家や裕福な家では、ゴーレムを所有することも多く利用用途により機能を拡張するための魔石も売られている。
その魔石を売るのが通り沿いに店を構える魔道具屋という訳だ。
そんな魔道具屋に入ったカルル達。
店に入ると入口付近にハンドが見張りに立ち、店内でカルルを守るのはパトリシア、アリス、そしてカルルのゴーレムであるヴァイオレットだ。
ヴァイオレットは、黒いローブを着込みフードを被っているので顔を覗き込まれない限りゴーレム闘技大会に出場しているゴーレムだとは誰も気付かない。
魔道具屋の棚には数百種類の魔石が並び、生活魔法の魔石から攻撃魔法の魔石までさまざまだ。
だが、その中にカルルが欲しいと思うような魔石はなく、少し残念な表情を浮かべてしまう。
通りに軒を連ねる魔道具屋を見たが何処も同じような魔石ばかりが並び、しかも価格まで同じとくれば店同士が価格協定を結んでいると考えるのが普通だ。
次に向かったのは裏通りにある古びた魔道具屋で、店は多少汚かったりはするが使い古しの魔道具には珍しい魔石が付属している場合があるため、探す楽しみがあったりする。
裏通りにある魔道具店は狭く、カルル達が入ると狭くて身動きが取れなくなるため、ハンドとパトリシアとアリスは店の外で待機し、カルルとヴァイオレットだけが店内へと入っっていく。
棚には木箱に入った魔石が並べられ、木箱に魔石の名前と用途が書かれている。
それをひとつひとつ見ていくが、面白そうな魔石はなかった。
最後に店の片隅に古びた魔道具が雑多に入れられた箱があったので、その魔道具を見ていくと今まで見たことの無かった魔道具を見つけることができた。
それは隠蔽の首飾りだ。
箱を漁り首飾りを取り出すとかなり傷が付いていて、長年使われたことが分かる。
その首飾りには、隠蔽の魔石がひとつだけ取り付けられていて、魔石もかなり古く耐用年数もあと数年といったところだ。
カルルはその首飾りを店の奥にいる店主のところに持っていく。
「この首飾りはおいくらですか?」
店に久しぶりの客が来たというのに不機嫌そうな表情を浮かべる店主は、ちらっと見るだけで首飾りの価格を口にする。
「そうだな、金貨1枚と銀貨12枚だ。お前さんの様な子供にそんな金があるのか。遊びたいなら他に行け!」
突っぱねるような物言いの店主に対して、店のカウンターに金貨が入った袋を置き、金貨1枚と銀貨12枚を並べていくカルル。
「それではここに置いておきます」
そう言ってカルルとヴァイオレットは魔道具屋を出ていく。
長年売れずに不良在庫と化していた首飾りをわざわざ探し出して買っていく珍妙な客の後ろ姿を、ぽかんと口を開けて見送る店主の表情をちら見したカルルは、笑いを堪えるのが大変であった。
カルル達は、街で食事を済ませると宿屋に戻り各人は各々の部屋でくつろいでいる。
カルルはというと、魔道具屋で購入した首飾りに取り付けてあった隠蔽の魔石の組成複製を始めた。
まずは、首飾りに取り付けてある隠蔽の魔石を左手に持ち、魔石の組成複製スキルを発動する。
すると右手に新しい隠蔽の魔石が錬成される。
だが、このままだと右手に錬成された隠蔽の魔石はレベル1のままであり、数十個以上の魔石を錬成しないと魔石のレベルは上がらない。
ここで威力を発揮するのは、知恵の魔石である。
知恵の魔石はカルルが錬成した魔石をリスト化して、知恵の魔石から錬成できるようになる特殊な魔石である。
さらに知恵の魔石から魔石を錬成すると、魔石がレベル5以上で錬成できるため、他の錬金術師の数十年分の経験値を簡単に飛び越えることができるチート魔石であった。
この知恵の魔石には、別の能力がある。
それはリストに追加された魔石から同系統の魔石のレシピが追加されていくというものだ。
とはいえ、この機能は今まで発動したことはあまりないので、単なる魔石のレベル上げにしか利用していなかったのだが、それが今回は隠蔽の魔石をリストに追加した途端、別の魔石が派生した。
その魔石の名前は"遮蔽の魔石"である。
では、隠蔽の魔石と遮蔽の魔石は何がどう違うのか。
隠蔽の魔石は、精神干渉や認識干渉の魔法として人間、動物、魔獣に作用する。
目の前にいても存在を認識できなくなる魔法だが欠点もいくつかあるので扱いがかなり微妙なのだ。
例えば、精神干渉や認識干渉の魔法に耐性がある者には全く効果がない。
また、目の前にいても存在を認識できなくなるものの、よくよく見ると影が地面に映っているので注意深く探るとそこに何かがあることが分かってしまい、隠蔽の魔法を見破られてしまう。
対して遮蔽の魔石は、幻影魔法や結界魔法に属するもので、姿そのものを見えなくする魔法である。
遮蔽の魔石で姿が見えなくなると、影が地面に映ることもないので魔法を見破られることはほぼないのだが、こちらも絶対という訳ではない。
例えば、幻影魔法や結果魔法といったものは、周囲の風景に紛れるのだが目を凝らして見ると風景が若干歪んで見えるため、感の鋭い者に見破られることがある。
結局、どちらも微妙な魔法としてあまり使われていないのだが、こと魔石としてこのふたつの魔法を見ると面白い側面が浮かんでくる。
どちらかひとつの魔法を使用すると粗が見えるものの、両方の魔法を同時に使用すると、精神干渉魔法或いは認識干渉魔法、幻影魔法或いは結界魔法の2種類を同時に使用することになり、ほぼこれらの魔法を見破ることができなくなるのだ。
ただし、2種類の魔法を同時に使うとなると消費する魔力量も相当なものとなり、よほど魔力量の多い者以外は使えない魔法である。
では、カルルはというと魔力量は豊富であり、且つカルルの魔道具には魔力の魔石を使っていて、通常の魔術師の数百倍の魔力を備蓄できるため、魔力量を心配する必要は全くない。
つまり隠蔽の魔石と遮蔽の魔石の同時使用により、相手から存在を隠しながら視覚も見えなくする魔道具なりを創り出すことができるのだ。
カルルは、これを飛空艇とゴーレムであるヴァイオレットに装備して、ゴーレム闘技大会の決勝戦に出場させる予定だ。
という訳で隠蔽の魔石と遮蔽の魔石の錬成が終わると、魔法術式を開いて魔法の設定に特別な設定があるかを確認してみたが、特に難しい設定もないため、ゴーレムのヴァイオレットに装備させることにした。
宿屋の部屋でカルルは、ゴーレムのヴァイオレットに命じて液体金属の体の表面にゴーレムコアと魔力の魔石を移動させる。
そこに隠蔽の魔石と遮蔽の魔石を魔法術式で連結させ、魔力の魔石から魔法術式を開き魔石同士の繋がりを調べていく。
だがゴーレムであるヴァイオレットは、何かを企んでいるような笑みを浮かべながら、メイド服のロングスカートとパニエをまくり上げてカルルの前に立っている。
「ヴァイオレット。なんでロングスカートとパニエをまくり上げているのかな。液体金属なんだからそんなことをしなくても魔石を体の表面に出せるよね」
「だってこうしないとカルル様とヴァイオレットがエッチなことをしているように見えないじゃないですか」
「エッチなこと?」
「そうですよ。カルル様は今まさにヴァイオレットのお腹の下辺りに出した魔石に触れています。これを他人が見たらどんな風に見えるでしょうか?」
「でもヴァイオレットはゴーレムだからエッチなことなんてできないよね」
「そうです。でも他人がカルル様とヴァイオレットの姿を見たら、まさに女性の局部にキスをしているように見えるんです。さらにに艶っぽい声を添えると男女の行為を行っている最中に見えます」
「そうかな・・・」
そこにアリスが突然やってきた。
「カルル、ちょっと買物に付き合ってくれ・・・ない?」
宿屋のカルルの部屋の扉を開けたアリスは、カルルがヴァイオレットの局部に顔を近づけて男女の行為を行っているように見えた。
しかもヴァイオレットは、アリスが部屋に入ってきたと同時に艶っぽい声を出してくる。
「カルル様、昼間からそんなになめないでください。ヴァイオレットは逝ってしまいそうです。ああん・・・」
艶っぽい声を出しながら顔を真っ赤に染めるヴァイオレットを見たアリスもまた顔を真っ赤に染めて部屋の扉の前に立ち尽くしている。
「カッ、カルル。いくらゴーレムが美人だからって、私を差し置いて昼間からエッチなことをして!」
アリスは、真っ赤な顔をしながらカルルに向かって歩き出す。
だがカルルからすれば、ゴーレムの腹部に浮かび上がった魔石に手を触れ魔法術式の調整を行っているだけなのだ。
ヴァイオレットは液体金属のゴーレムであり、知能の魔石の疑似感情機能により感情を持ち、疑似会話機能により会話能力を得ているただの人形である。
ヴァイオレットをそう認識しているカルルと、ひとりの女性として認識してしまうアリスでは見方も対応の仕方も全く異なるのだ。
ロングスカートをたくし上げるヴァイオレットの前にしゃがみ込むカルルの前にやってきたアリスは、カルルがヴァイオレットの魔石を調整しているところを見て、エッチなことなどしていないことにようやく気が付き、さらに顔を真っ赤に染めていく。
その光景を見て笑い出すヴァイオレットは、してやったりという表情を浮かべながら美しい声で大笑いを続けていた。
◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法
・土魔法
◆飛空艇を創るために必要とされる魔法
・強化魔法
・固定魔法
◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など
・浮遊の魔石
・飛空の魔石
・魔力の魔石
・魔道回路
◆カルルが創った飛空艇
飛空艇:264
1000艇まで残り736
◆カルルが創った飛空艇の内訳
・飛空艇試作一号艇
・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用
・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用
◆北ラルバード大陸
王国向け飛空艇
・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)
・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇
・ハイリシュア王国軍向け飛空艇 80艇(通常型30艇、戦闘型50艇)
・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)
・マレーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)
・カヌーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)
錬金術ギルド用飛空艇
・グランドマスター用兼商談用戦闘型飛空艇
・薬草栽培兼治療用飛空艇
・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇
・トーデスインゼル(死の島)物資補給用飛空艇 2艇
・遊覧用飛空艇 4艇
◆北コルラード大陸
王国向け飛空艇
・ユグドリア王国向け飛空艇 50艇(戦闘型50艇)




