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No.087 解放後の悲劇

深夜1時過ぎに仕事から帰宅して深夜2時に就寝。

5時に起きて6時前には家を出る。

就寝時間3時間では体が壊れる。もう無理ですわ。


惑星防衛システムから依頼された魔石の錬成も終わり、そろそろこの施設を去る時期に差しさしかかった。


だが、今回はカルルの飛空艇を追ってこの施設に無断侵入したヴィスターク王国の2艇の飛空艇は、損傷していて飛ぶことができない。


飛空艇に乗っていた兵士達も、飛空艇が破損した時に多数のケガ人を出していて、まともに動ける者はごく少数であった。


カルルは、そんな者達に薬と水を分け与え、1日に1食ではあったが12人分の兵士の食事も提供した。


そして明日にはこの惑星防衛システムから退去するという日になり、ヴィスターク王国の2艇の飛空艇の周囲を囲む防壁の前やってきたカルルは、兵士にある提案を持ちかけた。


「僕達は、依頼された仕事が終わったので明日にもこの施設から退去しますが、皆さんはどうされますか?」


カルルの言葉に即座に立ち上がり会話を始めたのは、リオール中尉のあとを引き継いだ兵士であった。


「できれば、我々もここを出たいと考えている。正直、水も食料も薬もない状況でここに残っても何もできない。まして飛空艇が動かないので出ていくこともできずに困っている」


「でしたら、僕が飛空艇を修理します」


「貴兄は飛空艇を修理できるのか?」


「ええ、僕は錬金術師で飛空艇を創るのが仕事です。2艇の飛空艇の何処を修理すればいいのかも分っています」


「ならばお願いしたい」


「ただ、僕の身の安全を保障していただきたいのです。防壁の中に入った瞬間に剣で刺されたら終わりですから」


「分かった。それは他の兵士に徹底させる。それに我々は貴兄に水と食料と薬を提供してもらった恩義がある」


「そういえば、あなたの名前を聞いていませんでした。お聞きしてもよろしいでしょうか」


「私の名前は、メイソン軍曹だ」


「では、僕は護衛を2人連れて防壁内に入りますから、準備が整ったらまたここに来ます」


カルルは、その足で惑星防衛システムのゴーレムへ要件を伝えると、ヴィスターク王国の2艇の飛空艇の周囲を囲む防壁の中へと入っていく。


防壁の中に入ったのは、カルル、ハンド、ヴァイオレットの3人である。


惑星防衛システムが展開している防壁内に出入りできるのはこの3人のみで、ヴィスターク王国の兵士が防壁の外に出ることはできない。


兵士達が遠巻きに見守る中、カルルが最初の飛空艇へと入り1階の床板を剥がすと魔道回路と魔石の状態を確認していく。


「こことここの魔道回路が破断しているから繋げて、この浮遊の魔石とこっちの飛空の魔石が寿命で使えないから交換。固定魔法を解除して魔石を外して・・・」


カルルが作業をしている姿を後ろから見ていたメイソン軍曹は、カルルの手際の良さに驚きの表情を浮かべている。


「凄い。飛空艇の修理ができると言っていたが、魔石の錬成もできるとは」


「カルル殿は200艇以上の飛空艇を作った実績がある。その辺にいる魔道具が作れる錬金術師とは比べてもらっては困る」


メイソン軍曹の言葉に答えたのはハンドであった。


カルルは、飛空艇の1階の床板を元に戻すと飛空艇の内壁へと続く魔道回路を追っていき、破断した魔道回路と亀裂が入った躯体の修繕にとりかかる。


「なるほど。飛空艇の構造を理解していなければ修理などできないという訳ですか」


カルルの手際の良さに感心しているメイソン軍曹の言葉など耳に入らないカルルは、飛空艇の2階へと続く梯子を上り、操術師卓に埋め込まれた魔力の魔石に魔力を注いでいく。


「これは酷いな。かなり古い魔力の魔石ですね。これだと壊れるのも時間の問題かな」


そういいながら、カルルが魔力の魔石に魔力を送り込むと飛空艇はふわりと空中に舞い上がった。


「おおっ、こんな短時間で飛空艇の修理ができるとは驚きです」


飛空艇はゆっくりを床に着陸するとカルルは飛空艇の外側に移動して亀裂の入った外壁の修繕を始める。


「この手際の良さには驚きました。ヴィスターク王国にも飛空艇の修理をこれだけ短時間でこなせる錬金術師はいないでしょう」


そんな話をしているメイソン軍曹に修理を終えたカルルが話しかける。


「修理は終わりました。ただ、飛空艇に使われている魔石が耐用年数を遥かに超えていて、あと数ヶ月もすればこの飛空艇は飛べなくなります。なので皆さんは自国に戻ったら魔石を交換するか、新しい飛空艇に乗り換えることをお勧めします」


だが、メイソン軍曹はクビを横に振る。


「飛空艇は国の所有物なので我々ではどうすることも出来ないのです」


「そうですか。だとするとこの飛空艇は、空を飛んでいる最中に魔石が破断して墜落しますよ。そうなったら乗っている兵士全員が死ぬことになります。まあ、それは僕がどうこう言う話ではないですね。では次の飛空艇の修理に移りましょう」


カルルの飛空艇修理は2艇を合わせても1時間ほどで済んだが、ここで問題が発生した。


それは、ふたりの兵士がヴァイオレットにちょっかいを出したことから始まった。


ヴァイオレットはゴーレムであり、顔立ちの美しさはその辺りにいる女性とは比べられないほどの美人だ。


そんな女性を見た兵士達が黙っているはずはなく、カルルが修飛空艇の修理をしている最中にヴァイオレットを取り囲み口説き始めたのだ。


最初、ヴァイオレットは愛想笑いを浮かべていたが、ふたりの兵士があまりにもしつこく迫ってくるので、ヴァイオレットはふたりの腕の骨を一瞬で折ってしまった。


その技の速さは兵士の目に映ることもなくあっという間に繰り出された。


「いっ、痛い。痛い。腕が・・・」


ふたりの兵士はぶらりと下がった自身の腕を他方の腕で抑えながら痛みを必死に堪えている。


ふたりの兵士の状態とヴァイオレットが浮かべる笑みを見たカルルは、ヴァイオレットのゴーレムコアから行動ログを呼び出すと何が起きたのかを探し、その答えを見つけるにはさほど時間はかからなかった。


「メイソン軍曹さん。うちのヴァイオレットにそちらの兵士がちょっかいを出したようです。そういうのは止めてただきたいです」


「そっ、そうかすまない」


「ただ、こちらもいきなり腕の骨を折るなどという行動に出たことについては謝ります。なのでこのハイポーションを差し上げますので使ってください」


「よろしいのですか」


「ええ、僕が数日前にお渡ししたハイポーションと同じものなので、骨折くらいなら完治します」


「こちらこそすまない」


「この飛空艇も修理が終わりましたので、明日の早朝に僕と一緒にここを出立してください。もしその機会を逃すと、ここで骨になるまで閉じ込められると考えてください」


「わっ、分かりました」


カルル達は、ヴィスターク王国の飛空艇を取り囲む防壁から出ると、この惑星防衛システム内で食べる最後の夕食の準備を始めた。


その時、カルルの頭の上で寝ていた梟の姿をした暗黒龍がカルルの頭の中に直接話かけてきた。


<カルル。外で兵士達の仲間が飛竜と火龍に襲われて全滅したようだ>


「えっ、本当ですか!」


<飛空戦艦とやらでも火龍には全く太刀打ちできなかったようだな>


「そうですか、分かりました」


梟の姿になった暗黒龍が惑星防衛システムの外の状況をカルルに伝えたが、カルルはそれをヴィスターク王国の兵士達には知らせなかった。


既に雌雄を決した事を今さら知らせたところで、惑星防衛システムの扉が開くのは明日の朝と決まっている。


そして飛竜と火龍の群れがいる危険な場所にわざわざ出て行く必要はない。


カルルの頭の上には、梟の姿をした暗黒龍がいるとはいえ、助けて欲しいとカルルの口からは言えない。


そして翌朝を迎え、カルルの飛空艇は扉の前へと静かに移動してその時を待つ。


「ハンドさん、パトリシアさん。扉が開いたと同時に飛竜や火龍が姿を現したら魔道砲と分解砲で攻撃してください。アリスは僕と周囲の状況を確認しつつ移動先を判断します」


「「「了解!」」」


そして扉が開くと同時にカルルの飛空艇は、惑星防衛システムの外へと飛び出したが、そこには飛竜や火龍の姿はない。


「探査の魔石にも飛竜の姿はないけど、何処か山の影にでも隠れているのかしら」


アリスは探査の魔石によって映し出される周囲の状況を確認すると、惑星防衛システムの周囲にバラバラになった飛空艇や飛空戦艦の残骸やそれらに乗っていた兵士達の無残に食い散らかされた死体が無数に広がっているのが分かった。


「酷い状態よね。ここから早く立ち去った方がいいみたい」


カルルの飛空艇は、山間部の谷間に沿ってヴィスターク王国近くまで2艇の飛空艇を連れていく計画であった。


深い渓谷の底を縫うように進む3艇の飛空艇は、時より狭くなる渓谷の底を時速100kmを超える速度で進んでいく。


カルルの飛空艇は、アリスの操術が上手いこともあり難なく進んでいくが、後続の飛空艇は渓谷の岩肌にぶつかることもしばしばで徐々に遅れていく。


そして渓谷の合間を進んだところで最後尾にいたヴィスターク王国軍の飛空艇が複数の飛竜に襲われ、飛空艇ごと山の彼方へと持ち去られてしまう。


「カルル。凄い数の飛竜に囲まれてる。渓谷の上空は飛竜で埋め尽くされているわ!」


アリスの悲痛な叫び声が飛空艇内に響き渡る。


その瞬間、ハンドとパトリシアが上空の飛竜に向かって魔道砲と分解砲を発砲するも飛竜の動きは早く思ったように命中しない。


さらに飛空艇が飛ぶ渓谷の底の両側から大量の飛竜が飛来していた。


カルルの飛空艇だけなら高高度まで上昇すれば、飛竜の追撃など簡単に振り切れるが、ヴィスターク王国軍の飛空艇は、高高度はおろか高度1500m程度を飛ぶのが精いっぱいだ。


渓谷の底の標高は1300mを超えており、飛空艇が飛べる限界高度に近いため渓谷を出れば飛竜の餌となるのはあきらかだ。


「ヴィスターク王国軍の飛空艇を守っていては、こちらも危ない。カルル殿決断を!」


ハンドは、錬金術ギルドから派遣されたカルルの護衛であり、カルルの命を最優先に考えるためカルルに決断を迫った。


その時、渓谷は終わりいきなり開けた場所に出ると、そこには飛竜の群れが待ち構えていて、カルル達の行く手を遮っていた。


ハンドが魔道砲を連射し、パトリシアが分解砲を発射して飛竜を倒していくが、多勢に無勢であった。


そして後方では、魔石砲を撃ち尽くしたヴィスターク王国軍の飛空艇が、飛竜の体当たりの衝撃で川の中へと落下していく。


飛空艇は半分程が水没した状態となり、その中から数人の兵士が川の中へと飛び込んだが、その間も飛竜が飛来しては飛空艇から脱出したヴィスターク王国軍の兵士を次々と捉えてては空高く舞い上がっていく。


「生き残った兵士を助ける。アリス、飛空艇を寄せて!」


「分かった!」


「ヴァイオレット。外で援護を!」


「了解しました」


メイド姿のヴァイオレットが飛空艇の扉を開け、外に飛び出すと空に舞い上がり体の周囲の分解魔法の防壁を展開すると、近づく飛竜に向かって突っ込んでいく。


分解魔法の防壁は、近づいてくる飛竜の体を分解し無へと還元していく。


水没した飛空艇から川の中へと飛び込んだ3人の兵士を助け出すことができたカルルは、飛空艇を高高度へと向かうようにアリスに指示を出す。


「ヴァイオレットは外にいるけど大丈夫なの?」


「重力の魔石を装備しているから飛空艇と同じ速度で飛べる!」


渓谷の谷底から上昇していく飛空艇の中でアリスがゴーレムであるヴァイオレットのことを心配しての言葉だった。


飛空艇は、あっという間に高度5000mへと上昇し飛空艇を追ってくる飛竜の数も減ってきた時、目の前には飛竜の数倍はある巨体の火龍が姿を現した。


ハンドとパトリシアは、魔道砲と分解砲を火龍へと向けるといつでも発砲できる体制に移る。


さらに飛空艇のそばを飛んでいたヴィクトリアが飛空艇と火龍の間に入ると、分解魔法の防壁の魔法強度を上げていく。


するとカルルの頭の上にいた梟がこんなことを言い出した。


<わしが出て火龍と戦ってもよいぞ。この飛空艇では、ちと厳しい戦いになるぞ>


「分かってる。でも暗黒龍さんが以前に言っていたよね。龍族同士は殺し合いはしないって。だからここは僕が戦う」


カルルは、暗黒龍の申し出を断り飛空艇とゴーレムであるヴィクトリアで火龍との闘いに挑む覚悟であった。


ほんの数秒であったがお互いが対峙する状況となったが、火龍は目の前の飛空艇から視線を逸らすと、何事も無かったように空の彼方へと飛び去っていった。


「火龍は、どうして飛び去ったのでしょうか?」


緊張した空気が張り詰めた飛空艇内で言葉を発する。


するとカルルの頭の上にいる梟が鳴き声を数回発した。


それは、同族同士だけで伝わる何かによって梟の姿になった暗黒龍と火龍が何かしらの会話を行ったとカルルは理解した。


「梟さん、ありがとう」


アルルは、頭の上にいる梟の体を撫でながら皆に伝える。


「とにかく、今はこの場を離れましょう。アリス、高度10000mまで上昇してマルドーナ王国へ向かいます。もう水も食料も底をついているから補給しないと」


カルルが飛空艇の扉を開けると、火龍と対峙していたゴーレムのヴァイオレットがふわりと飛空艇内に入っていくる。


「ヴァイオレットお疲れ様」


カルルは、ヴァイオレットにねぎらいの声をかけたが、ヴァイオレットの表情は硬かった。


「ヴァイオレットは火龍と戦ってみたかったです。実に残念です」


ヴァイオレットが発した言葉は以外なものであった。


2艇のヴィスターク王国軍の飛空艇には、12人の兵士が乗っていたが、助けられたのはたった3人であった。


ベルラード大陸の中央部に着陸した惑星防衛システムへとやって来たヴィスターク王国軍の飛空艇と飛空戦艦の部隊で唯一の生き残りでもあった。


今回の出来事により、ベルラード大陸の中央部がどれだけ危険であるのかを身を以て知ったカルルであった。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:264

 1000艇まで残り736


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイリシュア王国軍向け飛空艇 80艇(通常型30艇、戦闘型50艇)

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)

・マレーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)

・カヌーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物資補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 50艇(戦闘型50艇)


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