No.086 知能の魔石
カルルが惑星防衛システム内のとある部屋で見つけたゴーレムの残骸からは、カルルの知らない魔石の破片が見つかった。
その魔石の破片は、ゴーレムの体内から見つかったため、ゴーレムに関する魔石ということは明らかだ。
その魔石は"知能の魔石"という。
では、この知能の魔石をゴーレムに装備すると何がどう変わるのか。
カルルが創ったゴーレムは、ゴーレムの魔石により動く人形のように動き、カルルの命令をそのまま実行するというものだ。
ゴーレムは、単純な命令しか理解できないため単純な命令を反復実行するには向いているが、複雑な命令は理解できないため無視する。
また、走れと命令すると何処までも走るため、ゴーレムは遥か彼方で行方不明となってしまうか魔力切れを起こして停止してしまう。
カルルは、魔力切れを防止するためとゴーレムに複数の機能を持たせるために魔力の魔石と組み合わせているが、これが仇となり戦闘用ゴーレム1号機は、遥か彼方へと飛んでいってしまい今でも行方知れずのままだ。
つまりゴーレムに命令するためには、目の届く距離に置くか命令を伝達する機能を付与する必要があった。
カルルは、それを中継コアによりクリアしたが、この中継コアというのはダンジョンコアからの命令を中継する魔石で、中継コアに制御させたい魔獣を登録すると半径50km程度の距離までなら登録した魔獣を制御することができる。
中継コアにゴーレムを魔獣として登録すると、カルルの頭の中にゴーレムの周囲の風景が直接伝わり、ゴーレムに命令を伝えることができるのだが、ゴーレムに伝える命令はその都度細かく指示をする必要があり、ゴーレムが全て自動で行動してくれる訳ではない。
通常はダンジョンを作り出したダンジョンコアがダンジョン内にいる全ての魔獣を制御しており、その数は数百から数千にのぼるのだが、人が制御できる魔獣の数は1体がやっという難易度であった。
そしてカルルが惑星防衛システム内で見つけたゴーレムの残骸からは、恐らくゴーレムを自立行動させていたであろう魔石を見つけたのだ。
それが"知能の魔石"である。
カルルが"知能の魔石"に求めたのは、ゴーレムの自立行動と人と自然に会話ができる機能だ。
このふたつの機能は、惑星防衛システム内で行動しているゴーレムには備わっているため、恐らくこの"知能の魔石"がそれであるとカルルは確信していた。
そして"知能の魔石"の欠片を左手に持ち、魔石の組成複製スキルを発動することにより、右手に完全な形の"知能の魔石"を錬成することができた。
次に行うのは、"知能の魔石"の魔法術式を開いてどんな機能があるかを把握し、使う機能、使わない機能を仕分けする。
例えば、カルルが創ったゴーレムは中継コアを使って操作しているが、この中継コアには魔獣を生み出す機能があるため、その機能は使えないようにしている。
"知能の魔石"の魔法術式を調べていくと、自立行動、曖昧行動、最適行動、推測行動、自己防衛行動、使用者保護行動など複数の行動に関する機能があり、その中に会話機能、曖昧会話機能、推測会話機能、使用者優先会話機能
といったものがあったが、カルルにとっては何が必要で何が不要なのかの判断がつかず、結局標準設定のままとした。
早速、カルルは錬成した"知能の魔石"を戦闘用ゴーレム2号に装備して、会話ができるかを動作確認を行ったところ、最初に発した言葉は名前の指定であった。
「戦闘用ゴーレム2号の固有名詞を指定してください」
「固有名詞って名前のこと?」
「戦闘用ゴーレム2号の固有名詞を指定してください」
カルルは、ゴーレムの名前を聞かれるとは思ってもみなかったため、少し戸惑ったが思案すると頭にとある言葉が浮かんだ。
「ヴァイオレット」
「ヴァイオレットでよろしいですか?」
「はい!」
「それでは、戦闘用ゴーレム2号の固有名詞を"ヴァイオレット"に設定いたしました。今後はこの名前をお呼びください」
すると戦闘用ゴーレム2号の顔や手の色が金属色から人と同じ肌色に変化し、メイド服は黒色へと変化していく。
そしてヴァイオレットの姿は、どこからどう見ても人間と遜色ない姿へと変貌を遂げていた。
「カルル様。ヴァイオレットは、戦闘用ゴーレムとしてカルル様をお守りします。何なりとご命令を」
あまりの姿の変容ぶりに言葉が出ないカルル。
その光景を見ていたアリス、ハンド、パトリシアも思わず言葉が出ずにゴーレムの姿を見守っている。
「では、そこにある椅子に座って待機していて」
するとゴーレムは、カルルの言葉通りに椅子に座ると頬を少し赤らめ笑みを浮かべてカルルをじっと見つめている。
その光景を見て最初に行動に移したのはアリスであった。
「そこに座っているメイドは、カルルが創ったゴーレムなんだよね」
「うん。知能の魔石を組み込んだから名前を"ヴァイオレット"にしたんだけど、そうしたら体の色が金属色から人間そっくりな色に変わったんだ」
アリスは、椅子に座るゴーレムの顔や体をまじまじと見つめるが、どこをどう見ても人にしか見えない。
そんなアリスの瞳をゴーレムのヴァイオレットが見つめると言葉を発した。
「カルル様は、ヴァイオレットがお守りしますのでアリス様は飛空艇の操術に専念なさってください」
「えっ、これってどういうこと?」
アリスは、カルルがゴーレムに言わせているのだと思ったのか、カルルの顔を睨みつけるように視線を向ける。
「僕がヴァイオレットに言わせてる訳じゃないよ。ゴーレムが勝手に言ってるんだよ!」
「本当に?」
「アリス様は、カルル様をお好きなようですが、カルル様はご迷惑に感じております。カルル様のお世話はこのヴァイオレットがいたします。アリス様はカルル様の従業員という立場をわきまえて行動なさってください」
「ちょっ、ちょっと。なによこのゴーレム!」
ヴァイオレットに要らないことを言われたアリスは、頭に血が上ったせいでヴァイオレットの腕を掴もうとするも、その手はさっと避けられてしまう。
「なっ、なによ!」
さらにアリスはヴァイオレットの腕を掴もうとするも、ヴァイオレットは椅子からするりと立ち上がりアリスとは程よい距離を取り始めた。
むきになったアリスは、ヴァイオレットの腕を掴もうと必死にあとを追うも、そこは戦闘用ゴーレムの行動能力の高さが数段上手で、アリスがどう行動しようがヴァイオレットの腕すら掴むことができずにいた。
「ヴァイオレット。アリスをからかわないで」
カルルがそう言うと、ヴァイオレットは頭を深々と下げてこう言い放った。
「カルル様のご命令の通りに。アリス様におかれましては、カルル様のご指示の通りに敬うことといたします」
そしてヴァイオレットは再び椅子に座ると、魔石を錬成するカルルの顔を見つめていた。
「なっ、なんなのよあのゴーレムは!」
ヴァイオレットは、知能の魔石が創り出した疑似感情機能によりアリスの行動から軽口をたたいて見せただけで、実際にそういった感情を持ち合わせてはいない。
カルルは知能の魔石の魔法術式の設定を確認しているため、ヴァイオレットの行動は全て魔石による疑似行動だということを理解しているが、それを知らないアリスにとっては面白くないゴーレムの発言の数々であった。
その光景を見ていたハンドとパトリシアは、お互いの顔を見合いながらゴーレムの行動に驚いていた。
「ゴーレムが表情と感情を持った人間の様に振舞っているが、これを驚かずにはいられないな」
「ええ、どのダンジョンに行ってもあんなゴーレムは見たことないわね。この施設にいるゴーレムでもあれだけ感情豊かな話し方はしないわね」
「俺達は、ダンジョンで散々ゴーレムと戦ってきたし、目の前のあれがゴーレムだと知っているからいいが、アリス殿にとっては我慢ならない存在が出来たという感じだろうな」
「アリスさんにはちょっと辛い相手かもね」
カルルがヴァイオレットに追加した"知能の魔石"は、行動や感情を全て疑似的に作り出す人口生命体と言っても過言ではない。
そんなゴーレムは、メイド服を着てはいるが戦闘用ゴーレムであり、分解魔法の防壁を展開すれば飛空戦艦ですら破壊できるほどの力を持つ危険な存在であった。
◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法
・土魔法
◆飛空艇を創るために必要とされる魔法
・強化魔法
・固定魔法
◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など
・浮遊の魔石
・飛空の魔石
・魔力の魔石
・魔道回路
◆カルルが創った飛空艇
飛空艇:264
1000艇まで残り736
◆カルルが創った飛空艇の内訳
・飛空艇試作一号艇
・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用
・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用
◆北ラルバード大陸
王国向け飛空艇
・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)
・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇
・ハイリシュア王国軍向け飛空艇 80艇(通常型30艇、戦闘型50艇)
・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)
・マレーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)
・カヌーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)
錬金術ギルド用飛空艇
・グランドマスター用兼商談用戦闘型飛空艇
・薬草栽培兼治療用飛空艇
・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇
・トーデスインゼル(死の島)物資補給用飛空艇 2艇
・遊覧用飛空艇 4艇
◆北コルラード大陸
王国向け飛空艇
・ユグドリア王国向け飛空艇 50艇(戦闘型50艇)




