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No.078 精製所での戦い

ヴィスターク王国のAランク冒険者チーム"チームフェンリル"は、冒険者ギルドからの指名クエストにより、モンデレーザ王国で施設の警備任務に従事していた。


ヴィスターク王国は、ベルラード大陸にあるが"チームフェンリル"が居るのは、南ラルバート大陸にあるモンデレーザ王国である。


大海原を超えて別大陸の聞いた事もない王国へとやって来た理由は、ヴィスターク王国が国家事業として援助した魔石を使った薬の開発を行う施設の警備をするためだ。


山奥の砦に作られた施設の外をモンデレーザ王国の兵士がぐるりと取り囲む。


だが、モンデレーザ王国の兵士であっても施設内への立ち入りることはできない。


理由は、薬を作る施設内はヴィスターク王国の治外法権となっているからだ。


"チームフェンリル"は、この施設内を守ることが任務なのだが、施設がある砦は山奥にあるため近くの街へ酒を飲みに行くことすら叶わない牢獄のような場所であった。


砦の隅に新しく作られた施設では、ヴィスターク王国が作った"精製の魔石"により魔術師の魔力量と魔法強度を100倍に上げることができる魔法薬の量産が行われていた。


この魔法薬は、ある程度の魔力量を持つ魔術師が使うことを想定して開発され、戦争において魔術師の攻撃魔法の威力を遥かな高みへと引き上げるというものだ。


だが、この魔法薬を作り臨床試験を行ったところ思いもよらぬ副産物が見つかってしまう。


魔力量の少ない者がこの魔法薬を使うと麻薬として作用し、それを常用すると脳が破壊されて死に至るのだ。


ヴィスターク王国は、魔法薬を魔法量の多い魔術師に使うことを前提にしていたため、麻薬として作用する点に関しては問題にしなかった。


元々、鎮痛剤の原料として薬草や特殊な樹木の栽培を行っていたモンデレーザ王国に援助を行い、魔法薬の量産を始めて間もなくモンデレーザ王国は、この魔法薬が麻薬として使えることを知り、密かに国外に麻薬として密輸を始める。


魔法薬は、通常の薬とは異なり特殊な魔石を取り付けた魔道具でしか体内に取り込むことができない。


他の方法で魔法薬を体内に取り込んでも薬としては意味をなさないため、この魔道具で使われる魔石と同等のものを他国の錬金術師に作らせ、それを砦の別施設で腕輪にはめ込み魔法薬と共に密かに周辺諸国の裏社会に麻薬として売り出したところ爆発的に拡散した。


モンデレーザ王国は、ヴィスターク王国へ引き渡す魔法薬の数倍の量を作り、それを周辺国の裏社会へと密輸して得た金でヴィスターク王国から飛空艇を購入した。


それにより他国がモンデレーザ王国に対して軍事的な圧力をかけられないよう軍事力をより強固なものとしたが、それは周辺諸国との対立をさらに悪化させるだけであった。


そんな時でもチームフェンリルの一行は、魔法薬を作る施設を誰かが襲撃でもしないかと淡い期待を抱いていた。


「あー、暇だ。だれか砦に攻めて来いよ。こんな山奥じゃ誰も来ないだろうけどよ」


「ザイオン、めったなことを言うものではありませんよ」


「俺達は戦ってなんぼだろ。なのにここの警備に来て以来、誰とも戦ってないんだぞ」


「誰とも戦わなくても給料は払いますよ」


「あー、俺は戦って戦ってその見返りとして給料を払って欲しいんだよ。こんな所でくすぶっても面白くない!」


チームフェンリルの攻撃担当である魔法剣士のザイオンが、チームリーダーである治癒師のセイブルに対して憂さ晴らしに文句を言い出したが、これはこの砦に来て3日目から毎日行われている日常行事だ。


「セレンもそう思わないか。城壁の上から魔獣相手に火魔法を放って狩をしたところで、面白くないだろ」


「そうね。ここの魔獣は弱すぎるわ。でも給料を払ってもらえるならリーダーに従うわよ。ケイルもそうでしょう」


「そうね。毎日食べる物も寝るところも用意してもらって給料も出るんだから文句は言わないわ」


セレンは、チームフェンリルのもうひとりの攻撃担当である魔術師で、火魔法を得意とする。


ケイルは、支援魔法と防御魔法を得意とする魔術師であり、チームフェンリルの防御担当だ。


「とにかく、ここにいるだけでお金が手に入るんです。しかも遠距離手当まで出るんですから文句を言われる筋合いはありません」


すると魔法剣士のザイオンが砦の城壁の上で大声を発する。


「この砦で麻薬を作ってるぞ。麻薬だ麻薬。誰かこの砦に攻めて来い!」


いきなり大声で叫び散らされ、砦を守る兵士達の顔に動揺の表情が浮かんでいく。


「こらザイオン。そんな事を言ってはいけません。あれは麻薬ではなく魔法薬ですよ。あなただって魔法薬として使っているではないですか」


「あー、あの魔法薬を使うと頭の中がぶっ壊れるんだよ。そんな薬を世の中では麻薬って呼ぶんだよ」


「でも、ザイオンは正気を保ってますよね」


「お前の特殊な治癒魔法があるから俺は正気でいられただけだ。お前の治癒魔法が無かったら今頃廃人だ!」


ザイオンは、城壁の上で大声で叫び続けているが、セイブルはそれに静かな表情で答えていく。


するとセイブルが言葉を発するのを辞めるると、砦の城壁の上に倒れ込んだ。


「おい、どうした。いつものあれが来たのか。ご神託ってやつか?」


ザイオンが大声で叫ぶのを辞めると、セイブルが静かに話し始める。


「そうです。今夜、ここに誰か来ます。詳細は分かりませんが夜に空から人が降ってきます」


その言葉を聞いたザイオンは、不適な笑みを浮かべる。


チームフェンリルのメンバーのザイオン、セレン、ケイルがセイブルの元へと集まり、稀にセイブルの元へと降りるご神託の内容を精査していく。


「夜だな。だったら宿舎に戻って体を休めておく。問題ないよな」


「ええ、陽が落ちる前にここに集合してください。皆さんもそれまでは待機で構いません」


ザイオンは宿舎へ戻り、セレンとケイルは、ベルラード大陸から南ラルバート大陸へやって来た時に乗ってきた飛空艇の中に入ると、1階の床に座り魔力の流れを整える鍛錬を始めた。


ザイオンは、砦の城壁の上で遥か遠くの空を見上げる。


「何かとんでもないのがやって来ますね。夜がとても楽しみです」


そしてしばしの時が経ち、陽は山々の稜線の向こう側へと消えた頃、チームフェンリルの4人は魔法薬を量産する施設の前でご神託が示した誰かが空から降って来るというのを待っていた。


「中には誰もいないんだよな」


「はい、施設内で作業していた人達は、全て避難してもらいました」


「だったら全力で戦えるぜ!」


「待ってください。魔法薬には注意事項があるのはご存じでしょう」


「ああ、何だったかな・・・」


「火気厳禁ですよ。絶対に火は使わないでください」


「火を使わなきゃいいんだろ。なら俺の魔法は雷撃だから問題ない」


「何を言ってるんですか、雷撃も同じです。絶対に使わないでください」


「ちっ、めんどくせえな!」


「もし魔法薬が爆発でもしてこの施設が使えなくなったら、僕達は違約金を払う羽目になりますよ。そうなったら借金を抱えることになります。ザイオンは貯金なんてしてないでしょう」


「それを言われると辛い」


「だったら戦い方には注意をしてください」


「セレン、施設内で攻撃魔法を使うのは厳禁ですから注意してください」


「ケイル、今回はあなたの防御魔法と支援魔法が重要になりますからね」


「「了解」」


セイブルは、3人に戦い方について注意を促すと刻々と暗くなっていく夜空ときらめく星々を見つめていた。


「あれは流れ星、あれも流れ星、あれも・・・、なかなか来ませんね」


すると夜空の星が不自然に明滅するのを見つけたセイブルは、それが星の光を遮る何かであることに気が付く。


「あれは・・・まさか飛空艇でしょうか。空から人が降ってくるというのは、そういうことですか」


セイブルは、チームフェンリルのメンバーに声をかけると、空に目的の相手が来たことを告げる。


「いいですか、火魔法や雷撃魔法は厳禁です。魔法薬に火が引火したらこんな砦なんて跡形もなく吹き飛びますからね」


チームフェンリルの4人は、魔法薬を量産する施設の外で、人が夜空から降りてくるのを待っていた。


すると、それはいきなり施設の天井を突き破り施設内へと侵入した。


「なっ、何という大胆な行動でしょうか。これは戦うのか楽しみです」


最初に施設内に突入したのは、魔法剣士のザイオンで次にセレン、その後ろにケイルが続き、最後にセイブルが入る。


チームフェンリルの4人が扉を開け、施設内に入っていくとケイルが鑑定魔法で侵入者の職種をチームメンバに告げる。


「Aランク魔法剣士で火魔法使い。ランク不明の錬金術師。それとメイド姿のゴーレムが1体・・・メイド?」


ケイルがメイド姿のゴーレムを見て動揺している。


「おいおい、メイド姿のゴーレムだとよ。しかもすげー美人じゃねえか。こんなの反則だぞ!」


「女の私が見ても思わずキレイだって嫉妬したなるくらい美人ね」


他のメンバもメイド姿でしかも美しい顔立ちのゴーレムに思わず見とれていた。


「えーと皆さん。メイド姿の美人なゴーレムに見とれるのは分かりますが、侵入者を捕まえてください」


「「「了解!」」」


ケイルがチームメンバ全員に魔法防御と物理防御を付与し、さらにザイオンに攻撃力倍化の支援魔法を付与した。


「よーし行くぜ!」


ザイオンが剣を抜くと侵入者で最も近くにいたメイド姿のゴーレムに向かって上段から剣を振り下ろす。


ザイオンの剣はゴーレムの体を縦に切り裂いた・・・はずであったが、剣は空を切ったように抵抗が全くない。


「何だ。俺は確かにゴーレムを両断したぞ!」


ふと手に持つ剣に視線を移すと、片手で握っていたグリップとブレイドの根本だけのが残り、ブレイドから先端部分まで全て消失していた。


「どうしたっていうんだ。まさか剣が融けたのか!」


「ザイオン、そのメイドゴーレムは、体全体を未知の魔法で覆ってる。それに触れると剣が消失するわよ!」


ケイルが鑑定魔法でゴーレムの特徴を伝える。


「セイブル、俺の剣を治せ!」


ザイオンは、セイブルに向かってブレイドが融けてグリップだけになった剣を放り投げる。


それを受け取ったセイブルは、がっかりした表情を浮かべながら剣に対して治癒魔法を発動させる。


本来なら治癒魔法は人や動物に対してのみ効果を発揮するものだが、セイブルの治癒魔法は武具や魔石に対しても効果を発揮するという何でも有りのチート能力であった。


剣を熔かされたザイオンは、予備の短剣を手に持ち相手の攻撃に備えている。


そこで剣を治癒しているセイブルが言葉を発する。


「そこの侵入者さんにお尋ねします。あなた達がここに来た目的は何ですか?」


その問いにカルルが正直に答える。


「モンデレーザ王国の周辺諸国で麻薬の蔓延が問題になっています。その麻薬を製造しているのがここだと分かりました。この施設を破壊することは容易ですが、それでは他の場所に麻薬の精製所が移されるだけです。だから麻薬を作る"精製の魔石"の魔法術式を調べれば、麻薬中毒者を治す方法とかが分かるのではと考えました」


「ひとつ言っておきます。ここで作っているのは麻薬ではありません。魔法薬です。魔力量の多い者が使えば魔力量の増大と魔法強度を高める効果があります。ただ、魔力量の少ない者が使うと麻薬の様な副作用が出ます。それを悪用して麻薬として売り出したのは、このモンデレーザ王国でありヴィスターク王国ではありません。それは知っておいて欲しい」


カルルは、それについては何も答えずにハンドに探していた"精製の魔石"を見つけたことを伝えると逃げる合図を送る。


セイブルは、カルルと話をしながらもザイオンの剣を治癒し終わり、それをザイオンへと手渡した。


自身の剣をゴーレムによって熔かされたザイオンは、頭に血が上ったせいでセイブルが促した注意事項のことなど頭の片隅にも無かった。


修復された剣を手にしたザイオンは、魔法薬を仕込んだ腕輪を装着すると、剣に雷撃魔法を纏わせる。


「おい、ガキ。よくも俺様の剣を熔かしてくれたな。その報いは死で償ってもらうぞ!」


ザイオンは、剣に纏わせた雷撃をメイド姿のゴーレムへと放ち、それはゴーレムへ直撃した。


「見たか。この魔法薬を使えば魔法強度は100倍へと跳ね上がる。どんな防御魔法を使おうが破壊できないものはねえんだよ!」


そう言って破壊されたゴーレムの姿を思い浮かべたザイオンだったが、目の前には傷ひとつ負っていないゴーレムが立っていた。


「おい、嘘だろ。強度100倍の雷撃を食らっても破壊できないなんてありえねえ」


ザイオンがそう口走った時、セレンが鑑定魔法によって判明したことを伝える。


「うそ。そのゴーレムは魔法防壁を纏っていません。それは分解魔法です。分解魔法を纏っています!」


「分解魔法だ?何だそりゃ?」


「分解魔法は、無属性の攻撃魔法でどんな物質でも魔法であっても分解できる魔法です。今では使える魔術師はいないと言われている失われた魔法です!」


「魔法を破壊できる魔法だと!でたらめな魔法を使いやがって。だったらこの建物ごと消し飛ばしてやる!」


ザイオンは、そう言うと剣に纏わせた雷撃をそこら中に放ち始めた。


「ザイオン。注意事項を思い出してください。魔法薬に雷撃魔法は厳禁です。魔法薬が誘爆したらこの砦は吹き飛びます!」


セイブルの言葉すら耳に入らないほど頭に血が上ったザイオンは、ところ構わず強度100倍の雷撃を撃ち続ける。


そしてセイブルが注意事項としてチームフェンリルに言った事が現実となる。


精製した魔法薬を保管している壺が雷撃により破壊されると、無数の魔法薬が部屋中に転がり出した。


カルルは、身の危険を察して建物の天井に開けた穴から空へ向かって飛び出し、それに続いてハンドとゴーレムも建物の外へと飛び出していく。


「消えろ、消えろ、消えろ!全て破壊しつくせ!」


破壊衝動が抑えられずに無数の雷撃を放ち続けているザイオンの背後からセイブルが首元に手刀を一撃放つ、それにより一瞬にしてザイオンが床に倒れていく。


「ザイオンは、頭に血が上ると破壊衝動を抑えられないのが面倒です。でも剣の腕は確かなのは事実なんですよね」


セイブルが床に倒れたザイオンを背負い建物から出ようとした時、建物のあちこちから青い閃光が発せられた。


「まずい。まずい。まずい。魔法薬が誘爆します。早く逃げましょう!」


チームフェンリルのメンバー4人は、慌てて魔法薬を作る施設から逃げ出すと、砦の城壁に置かれた飛空艇に飛び乗り、砦から一目散に寝逃げ出した。


星々が瞬く夜空へと舞い上がったカルル達は、夜空に空中停止する飛空へと戻ると、アリスに撤退の指示を出す。


「何だか危険な状況になっから直ぐに逃げましょう。速度500kmで高度5000mまで上昇、北ラルバート大陸へ戻ります。急いで!」


カルルの焦る姿を見たアリスは、急いで飛空艇の速度と高度を上げていく。


眼下では砦の施設を中心に青い光が次々を発せられると特大の閃光が周囲を昼間の様に照らし、いくつもの爆音が空の彼方まで響き渡っていた。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:264

 1000艇まで残り736


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイリシュア王国軍向け飛空艇 80艇(通常型30艇、戦闘型50艇)

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)

・マレーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)

・カヌーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物資補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 50艇(戦闘型50艇)


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