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No.076  薬の王国

カヌーナ王国の沿岸警備隊の施設で飛空艇創りを始めたカルルは、20艇の飛空艇を創り終えると、沿岸警備隊の指揮官にある提案を行った。


「納入した飛空艇には、探査の魔石と鑑定の魔石を装備しています。このふたつの魔石により麻薬の位置を特定できます」


「なんと。つまり密輸船が麻薬を運んでいるのが分かるということか」


「ただ、麻薬と飛空艇の距離は1km以内であることと、ある程度の量がないと探査の魔石では発見できません」


「密輸船は大量の麻薬を運ぶから少量ということはない。隊員には直ぐに伝える」


その日から密輸船の捜索に要する時間は、以前に比べると格段に短くなった。


だが、飛空艇が空を飛べるのは陽が出ている昼間に限られ、視界が悪い夜には飛空艇は危険なため飛ぶことができない。


それを知った密輸船は夜に麻薬の密輸を始めたため、沿岸警備隊の飛空艇も危険を承知の上で夜に密輸船の捜索に乗り出した。


沿岸警備隊員は、昼間にアリスとカルルが飛空艇の操術師の訓練を行いつつ、ハンドとパトリシアが魔道砲の砲術師の訓練を行うという日々が続いた。


そんなある日、カルルは沿岸警備隊の指揮官に呼び出され重大事項を打ち明けられた。


「隊員の訓練で忙しいところ呼び出して申し訳ない」


「何かありましたか?」


「これから話すことは国家機密なので他言無用に願いたい」


「承知しました」


「わが国の諜報部隊がモンデレーザ王国へ潜入して麻薬の製造方法や製造場所をつきとめたのだ」


「それは凄い。かなり危ない橋を渡ったんじゃないですか」


「命を落とした者も少なからずいる。モンデレーザ王国の南にラングスタという山がある。その麓で麻薬の原料となるハリハ草と魔力樹を栽培し、麻薬の精製を行っている」


「そのふたつがあれば麻薬が作れるのですか」


「いや、このふたつだけでは鎮痛剤が作れる程度だ。だがこのふたつの材料を使って鎮痛剤の純度を上げていくと麻薬になる」


「鎮痛剤の純度を上げるというのは、簡単にできるのですか」


「鎮痛剤の純度を上げるには"精製の魔石"というものが必要らしいが、そのような魔石は聞いたことがない。カルル殿はご存じか」


「いえ、"精製の魔石"というのは、僕も初めて聞きました」


「そうか、カルル殿は多種多様な魔石を錬成できると聞いたのでもしやと思ったのだが」


「その"精製の魔石"というのは、何処で作られたものかは分かったんでしょうか」


「ベルラード大陸にあるヴィスターク王国だという事は分かったが、正直なところ何処にある国なのか見当もつかない」


「そのヴィスターク王国が"精製の魔石"をモンデレーザ王国に提供して麻薬を作らせているんですね」


「モンデレーザ王国は、麻薬を作る"精製の魔石"だけではなく、他にもある物を作っていることが分かった」


「ある物とは?」


「飛空艇だ」


カルルはそこで沿岸警備隊の司令官がなぜカルルに国家機密を話したのかをようやく理解した。


「そのヴィスターク王国は、モンデレーザ王国に対して麻薬を精製する"精製の魔石"を供与し、麻薬の売買で得た資金で多数の飛空艇を購入しているそうだ」


「麻薬の製造を止めるには、麻薬の材料もさることながらその"精製の魔石"をどうにかする必要があるということですね」


「麻薬の精製を行っている施設は、ラングスタ山の麓にあり多数の兵士と武装した飛空艇で守られているので手出しができない」


「麻薬の精製に魔石を使うのであれば、相応の魔力を持った魔術師なり錬金術師を集めないといけないのでは?」


「その通りだ。"精製の魔石"で麻薬を作るには、相応の魔力量を持つ者が数日かけて何度も麻薬の純度を上げていく必要があるらしく、王国の内外から多くの魔力を持つ者を集めているという話だ」


「もし、その施設を破壊できれば麻薬の密輸を阻止できると?」


「だが、モンデレーザ王国が"精製の魔石"の供与を止めないかぎり、麻薬の精製は続くだろう」


「モンデレーザ王国次第という訳ですね。でもモンデレーザ王国というは何処にあるのかすら検討もつきません」


「これの件は、国家間の問題ではあるのだが、カルル殿には多大な助力を得ているので、耳に入れておきたいと思った次第だ」


「貴重な情報を聞かせていただいてありがとうございます」


沿岸警備隊の司令官から得た情報は、カルルでは知りえない貴重なものであった。


カヌーナ王国での飛空艇創りと沿岸警備隊員の訓練が終わり、再びマレーナ王国へと戻ってきたカルル達は、沿岸警備隊の司令官から飛空艇から何度も攻撃を受けたことを告げられる。


「警備隊の飛空艇は、所属国を明らかにするためにマストに国旗を掲げていたにも関わらず、所属不明の飛空艇から攻撃を受けたのだ。幸い防壁を展開していたおかげで無傷ではあったが、これでは密輸船の臨検もできない」


「攻撃を仕掛けてきた飛空艇は、国旗を掲げていなかったんですね」


「国籍が分かる旗などは一切なかった」


「では、その飛空艇がモンデレーザ王国のものだとなぜ分かったのですか」


「軍船から飛び立った飛空艇だからだ」


「軍船?」


「軍船とは、船尾に飛空艇を搭載した帆船だ。船には武装こそはないが、武装した飛空艇3艇を積んでラルバート海峡内を絶えず航行して、わが国の飛空艇が不審船の臨検を行っていると攻撃してくるのだ。その軍船がモンデレーザ王国の軍港に出入りしているのを、わが国の貿易船が何度も目撃している」


「その軍船は、麻薬の密輸を取り締まるマレーナ王国の沿岸警備隊の飛空艇を、攻撃するために海峡を航行しているんですね」


「わが国もモンデレーザ王国との戦争だけは避けたいのだが、最近はわが国の沿岸近くまで飛空艇が飛んで来ては威嚇を行っているのだ」


「状況は理解しました。僕の飛空艇もラルバート海峡を飛行すれば攻撃される可能性は十便にありますね」


「恐らくだが海峡の上空を飛べば確実に攻撃されると考えるべきだ」


「分かりました。気を付けます」


カルルは、気を付けるとは言ったものの、それはあくまで便宜上の言葉だ。


とりあえずマレーナ王国に迷惑にならないよう、依頼された飛空艇を創り終わったところで行動に移すと決めたカルルであった。


そして数日後に事件は起きた。


不審船の臨検を行っていたマレーナ王国の沿岸警備隊の飛空艇が、モンデレーザ王国の飛空艇に攻撃を受け損傷したのだ。


幸い飛空艇が海に沈むといったことは無く、沿岸警備隊の基地まで自力で戻ってきた。


状況は、不審船を臨検中に2艇の飛空艇が魔石砲による攻撃を行ったのだという。


しかも、臨検中で防壁を展開していないところを狙われたようだ。


損傷した飛空艇は、カルルが修理を行ったが沿岸警備隊員2人が軽いケガを負ったことで、マレーナ王国はモンデレーザ王国

に対して強く抗議を行った。


ところが、モンデレーザ王国は自国の船を守るための自衛手段だと言い張り、逆にマレーナ王国を強く非難してきた。


そんな危険な情勢となった頃、カルルの飛空艇創りは終わりを迎えた。


「では、飛空艇は全て納入したのでこれで失礼します。連絡用にこの”転送の小箱”を置いていきます。この小箱に手紙を入れると僕のところに手紙が送られてきます。飛空艇の修理などの依頼は手紙でお願いします」


そう言い残してカルルの飛空地は、沿岸警備隊の基地から飛び立ち高度3000mまで上昇するとラルバード海峡をゆっくりとモンデレーザ王国へと向かう。


モンデレーザ王国に向かう理由は、ラングスタ山の麓にある麻薬の製造を行う精製所の位置を特定することにあった。


コルラード海峡の上空を飛ぶカルルの飛空艇内では、海峡を航行する船が目の前に映し出されていて、その船がどの国の船籍なのかが手に取るように分かる。


「アリス、高度を3000mから500mまで降下してモンデレーザ王国へ向かってください」


「カルル、やる気なのね」


「当然です。僕達が住んでいる北コルラード大陸を麻薬で汚染しようとする国を野放しにするはずがないでしょう」


「カルル殿ならそう言うと思っていました」


「私達が住んでいる国や街が麻薬で汚染されるなんて見過ごせるはずがありません」


カルルの言葉に、アリス、ハンド、パトリシアが賛同の言葉を並べていく。


「今回だけは、生半可なことでは済せたりしません。皆さんが止めても僕は絶対に止めませんので覚悟しておいてください」


カルルの言葉には怒りが満ちていた。


「もしかしてあれを使うつもりなの」


「この大陸に麻薬が蔓延したら、空を飛ぶダンジョンで出た死者数を軽く超える被害が出ると考えています。そうなる前に手を打ちます」


飛空艇は、徐々に高度を落とすとコルラード海峡の上空500mをゆっくりと飛行する。


そしてカルルが待ち望んだコルラード海峡を航行するモンデレーザ王国の軍船が見えてきた。


「僕の飛空艇はマレーナ王国とカヌーナ王国の沿岸警備隊の飛空艇と全く同じ形です。勘違いでも何でもよいので撃ってきなさい、さあ早く!」


カルルの意気込みは凄まじく、横に座るアリスにもそれは伝わっていた。


「軍船から2艇の飛空艇が飛び立ったわよ。真っすぐこちらに向かってる」


カルルは、魔石が映し出す地形図と軍船と飛空艇の位置を睨みながら状況の推移を見守る。


「モンデレーザ王国の2艇の飛空艇が後方に移動したわ。攻撃態勢に入ったみたい」


「ハンドさん、パトリシアさん、モンデレーザ王国の飛空艇が撃ってきたら容赦なく撃ち返してください」


アリスが船から飛び立った飛空艇の状況を伝え、カルルがハンドとパトリシアに自身の明確な意思を伝える。


そしてカルルの飛空艇に対して魔石砲が放たれると、飛空艇の真後ろで攻撃魔法がさく裂した。


「モンデレーザ王国の2艇の飛空艇が攻撃を開始!」


「こちらも攻撃開始する!」


アリスが状況を報告し、カルルの言葉にハンドとパトリシアが一斉に魔道砲と分解砲を発射すると、モンデレーザ王国の2艇の飛空艇はあっけなく破壊され海上へと落下していく。


「アリス、飛空艇を軍船に向けて降下。ハンドさん、パトリシアさん、軍船が見えたら攻撃を開始してください」


「「「了解」」」


カルルの飛空艇は、軍船を魔道砲の射程内に収めてはいるが分解砲の射程は短いため、軍船に近づいてから攻撃を開始した。


軍船の甲板には、カルルの飛空艇から発射された魔道砲と分解砲により次々と穴が空き、船体が傾きあっけなく沈みはじめる。


「飛空艇が軍船から1艇飛び立ったわよ!」


モンデレーザ王国の飛空艇は、軍船から飛び立つとカルルの飛空艇を追わずに、コルラード海峡をモンデレーザ王国へ向かって進路を取った。


「逃がすか!」


そう言葉を発したのは、魔道砲の砲手を担当するハンドだ。


ハンドが放った魔道砲は、モンデレーザ王国の飛空艇の1階の床を撃ち抜き、続いて2階の操術室を撃ち抜いた。


飛空艇は、破片をばら撒きながら海上へと落下していき大きな水しぶきを上げながら海の中へと沈んでいく。


「次は、ラングスタ山の麓にある麻薬の精製所を目指します」


飛空艇は、徐々に高度を上げるとモンデレーザ王国にあるというラングスタ山に向かった。


目的は、精製所の破壊ではあるが、カルルのもういとつの目的は"精製の魔石"の入手である。


この"精製の魔石"がどういう魔石なのかをカルルは知る必要があると考えたのだ。


それは、ヴィスターク王国との対決を意味していた。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:264

 1000艇まで残り736


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイリシュア王国軍向け飛空艇 80艇(通常型30艇、戦闘型50艇)

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)

・マレーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)

・カヌーナ王国沿岸警備隊向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼、商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物資補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇



◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 50艇(戦闘型50艇)


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