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No.007 流浪の家族

カルル達は、慣れ親しんだ家を棄て飛空艇が新たな家となり流浪の旅へと出た。


何処か行くあてがある訳でもない家族は、海を見に行くとにした。


海を見たことがないというカルルの希望を叶えるためと海沿いを南に進みながら新天地を探すことになった。


生活費は、カルルが錬成した魔石を売った金が必要十分以上にある。


急ぐ旅でもないので海岸を目指しながら飛空艇の操作を家族で順番に変わりながら動かし方を覚えていく。


家族の中で飛空艇の操作を最も理解しているのはカルル。


カルルの父親であるダラムは、子供の頃に城の飛空艇部隊に操術士見習いとして働いていたこともあり、子供の頃になれなかった操術士になるという夢を十数年ぶりに実現できたことに興奮を隠せずにいる。


カルルの母親のララはというと、飛空艇の操術よりも飛空艇の小さなバルコニーに出ては、空から地上へ攻撃魔法を何度も放ち、飛空艇からの攻撃魔法の使い方を模索していた。


数日もすると飛空艇は、海岸へと到達した。


そこでカルルは初めて水平線というものを見て、思わず感動の涙を流してしまう。


カルルにとっては、見たことの無い美しい景色。


きっとこれから見るもの全てがカルルにとって初めてとなるに違いないのだ。


飛空艇を海岸近くの林の中に止め、家族3人で仲良く夕食をとる。


家から持ち出したのは、着替え、毛布、水が入った壺、畑で収穫した野菜、家の近くで狩った動物の干し肉。


飛空艇は2階建てで1階は居住スペースとなっている。


トイレなどはなく大人が10人程度が座れるほどの広さがあり、家族3人はここで寝泊まりをする。


飛空艇の外殻は、ちょっとやそっとの攻撃魔法ではびくともしない。


それは、アルバート男爵の兵士が放った火魔法の攻撃でも飛空艇にダメージは無かったことで実証済みだ。


その日からは、海岸線を南へと向かい、よい景色があれば上空から景色を楽しんだ。


海岸近くには街道があり、そこを目印にしながらか空高く飛ぶ飛空艇。


あまり低く飛ぶと飛空艇を目撃したと領主へ報告する者がいるとも限らない。とにかく面倒毎だけは避けたいという思いからだ。


とある場所に来たところで街道の前に大きな川が立ちはだかる。


川に橋はかけられておらず、両岸に数隻の小舟と数人の人がいるだけだ。


「大きな川だと人が歩いて渡れないから船賃を払って渡らせてもらうんだが、船賃がけっこう高いんだ」


カルルの父親のぼやきとも思える話である。


「私達も冒険者の頃に利用したことがあるけど、人の弱みに付け込む商売よね」


カルルの母親も同意見である。


今のカルル家族にとって大きな川も山も気にする事なく進むことができる。飛空艇様々だ。


大きな川は、王国の国境となっている。


川を越えると次の国へと入ったことになり、陸を這う様に進む街道の先を見ると小さな砦の様なもの見える。


「あの砦は、検問所だな。本来ならあそこで身分を証明できるものを見せる必要があるんだが、空にそんなものは無いからな」


カルルの父親は、笑いながらときたま雲の中を通る飛空艇の旅を楽しんでいる。


「明日には、メリダの街を通る頃か」


「あら、もうそんなところまで来たの、飛空艇は早いわね」


飛空艇を街から少し離れた森の中に降ろし、明日の朝早くに街へと向かう事にした。


近くには人家も畑もない。あるのは街へと続く街道のみ。


月明かりがあるとはいえ森の中は暗い。


そして月明かりが届かない閉ざされた飛空艇の中はもっと暗い。なぜかというと飛空艇の中には灯りが全くないからだ。


「えーと、魔道ランプどこに置いたかしら・・・」


カルルの母親が飛空艇の中に持ち込んだ魔道ランプを探す。


魔道ランプとは、屑魔石に魔力を込めると周囲を照らしてくれる照明なのだが、思ったほどは明るくはない。


「そういえば、この飛空艇に灯りって無いのよね。夜はちょっと不便よね」


母親の言葉に思わずはっとするカルル。


飛空艇内で夜を過ごす事は想定してはいたが、家では魔道ランプを使っていたためそれで代用できると考えていたからだ。


「照明かあ・・・何か考えてみる」


カルルは、飛空艇を創り飛ばすことにのみ考えを巡らせていたため、それ以外のことについてはこれからなのだ。


トーデスインゼルは、冒険者の中ではCランクになったら腕試しに来るべき場所として有名である。


メリダの街からは、船でトーデスインゼルへと渡る冒険者が大勢いる。


トーデスインゼルには、神殿遺跡と呼ばれる遺跡があり冒険者達がこぞって魔獣狩りに赴く狩場となっている。


メリダの街は、トーデスインゼルへ渡る船が出ている港町であり冒険者の数は、街の住民よりも多いと言われるほどだ。


飛空艇内で一夜を過ごしたカルル達は、飛空艇を森に残して徒歩でメリダの街へと向かう。


両親は、冒険者の頃に装備していた鎧と武具を装備し、背中に鞄を背負っている。


街で食料や必要な衣類などを購入して飛空艇内での生活品を持ち帰るためだ。


3人で街道を1時間ほど歩いたところで街へと入る城門が見えてきた。


両親は、冒険者証があるので入街税は取られないが、冒険者の家族には税の免除の特典は無い。


カルルの入街税として銅貨3枚を払い街へと入る。


街は、島に渡る冒険者とそれらを相手にする店で活気に溢れている。


「凄い数の人!」


カルルは、人が多く住む街に行った事がないため、人の多さも売っている物も全てが珍しく映る。


「トーデスインゼルの神殿遺跡には、何でも作り出せる魔石が存在するという話だが、その魔石を持ち帰った者は100年前にいたそうだ」


父親の話を聞きながらカルルはふと疑問に思う。


「でも、魔石を錬成するには、スキルがないとダメなんじゃ・・・」


「確かにカルルが持っているスキルが無いと魔石を作る事はできないはずだが、神殿遺跡にある魔石ならスキルが無くても魔石を作れるという話だ」


そんな話をしながら歩くカルル達だが、目の前の道端で剣を交える男達がいる。


「そんな剣で俺を殺そうっていうのか?」


「ああっ、お前の首がそこを転がるところを見せてやるさ!」


冒険者同士の喧嘩である。


よくよく見ると目の前で剣を抜き戦う男達以外にも、殴り合いをしている者は数多くいる。


「こうやって見るとこの街は、かなり治安が悪いな」


「そうね。冒険者として以前に来た時はあまり感じなかったけど、住むところではなさそうね」


カルル達は、長年住んでいた家を棄て次に住むところを探す旅をしている。


「どっ、泥棒!」


誰かが叫ぶ声が街中にいびき渡り、数人の男達が走り去っていく。


街の路地に目を向けると、やたらと薄着で肌の露出が多い女性もちらほら見える。


「この街は、子供の教育にもよろしくないようね」


「そうだな。他を探そう・・・」


カルルの両親は、そう話すと生活に必要なものと数日分のパンを購入してメリダの街を出て飛空艇へと戻った。


「あまり大きな街は問題も多そうね。住むなら小さな街も対象に加えてみるのもよさそうね」


「そうだな。このまま海岸沿いを南に行ってよさそうな街があったら行ってみるか」


飛空艇は、海岸沿いを南へと進みながら街を見つけると近くの森に飛空艇を降ろしては、街へ入り住み易いかを確認した。


だが、結果はあまりよいものでは無かった。


街がさびれていたり、スラム街がある街も少くない。


さらに街によって入街税がかなり異なるのだ。


領主が違えば入街税は異なるが、その金額が街によって数倍の差がある。


街に入って物の値段を調べたが、これもかなり差がある事が分かった。


街に入り調べれば調べるほどどの街も住み易いとは思えなくなり、どうしたものかとカルルの両親は悩み始めていた。


海岸線を南下しながらいくつかの街を調べ、数日が経過した時にいくつもの大きな塔が建つ屋敷が目にる。


「あれは、この国の王太子殿下の屋敷だそうだ。あの川が国境になっていて近くに大きな街があるらしい」


カルル家族は、一縷の望みをかけて街へ入ってみることにした。


街は大きいものの閉じている商店は多く街中を歩く人の数もまばらで活気が全くない。


「期待はずれか?」


「街は大きいのに何かさびれてるわね」


開いている露店で果物を買い店主のおばちゃんに話を聞いてみると・・・。


「ああ、ここの領主様は王太子殿下なんだが領地経営はあまり得意じゃないようでね。税を上げないように努力しているみたいだけど、食べていけない人が多くて店を畳んで街を出て行く人が後を絶たないんだよ」


市場にも足を運んでみたが、露店主が言っていたように殆どの店は開いていない。


住宅街にも足を運んだが空き家が目立つ。


ただ、空き家が多いせいか家賃は安く今ならカルルの魔石を売った金で空き家を買うこともできる。


安く住むならこの街もいいかもと思ったが、住民が減っていく街に未来はないということでこの街に住むことは断念した。


住む場所を探すというのがいかに難しいかを改めて実感したカルル親子。


そして飛空艇は、ふたたび海岸線を南へと飛び続ける。


西側に峰に雪を蓄えたグルズ山脈が連なり、カルルの心を釘付けにする。


飛空艇に乗って旅を初めて10日が過ぎた頃、とある川の近くに飛空艇を止め今夜の宿泊地とした。


カルルが飛空艇の周囲に土魔法で土塀を作り、魔獣の襲撃から飛空艇を守る備えを行っている。


そろそろ陽が暮れるという時間になった時だった。


川の対岸の森の手前を横切る道を馬車が疾走する。


馬車の後方には、2頭の馬と騎乗した兵士が2人。


それを10騎ほどの騎兵が追う。


「助けに行く!」


「どっちを助ける?」


「馬車に味方する!」


父親の言葉に母親が即座に返し、それに答える父親。


家族は飛空艇へと乗り込み、カルルが操術士席へと座り魔石に魔力を込める。


飛空艇は、空へと舞い上がると一気に森の木々の遥か上へと飛び出した。





◆飛空艇の外殻や躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆魔石を創るスキル

・魔石錬成


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:2

 1000艇まで残り998


◆飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇


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