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No.063  ダンジョンと暗黒龍(1)

最近、深夜1時を過ぎての帰宅が続いています。ここまでくると体がもたない。

カルルは、各飛空艇を指揮する飛空艇長達に伝えた作戦はこんな感じだ。


作戦は、実にシンプルで高度4000mからダンジョンに向かって全飛空艇で急降下する。


ユグドリア王国の飛空艇5艇が防壁を展開しながら先行し、最後尾を飛ぶカルルの飛空艇を守る。


ダンジョンに最接近したら上部にある縦穴に純度99.9%のミスリルでコーティングした魔力の魔石を投げ入れ、全飛空艇でダンジョン上空から離脱。


魔力の魔石が大爆発を起こし、同時に魔力の魔石とそれに連なる全ての魔石を破壊する現象が起きれば、ダンジョンとダンジョンコアは破壊できる想定だ。


ダンジョンコアの破壊を確認できれば、この作戦は終了である。


前例の無い戦いで、そもそも魔力の魔石を錬成できるのは、カルルだけであり作戦の成功は全てカルルの手腕にかかっている。


6艇の飛空艇は、密集体系で高度4000mを飛びつつ浮遊するダンジョンの上空へと近づいていく。


ダンジョンの前方には、ガルラント王国の地上部隊と少数ではあるが飛空艇が防衛線を構築し、空を飛ぶダンジョンの行く手を阻もうとしているが、多数の飛空艇を繰り出すダンジョンに蹂躙され成すすべが無い。


「あれでは、部隊が全滅するのも時間の問題か。他に術がないとはいえ残酷な戦いだ」


飛空艇部隊を指揮するワイアット大尉の口からは、思わず悲痛な叫びが漏れる。


6艇の飛空艇は、ダンジョンの上空にさしかかると編隊を組んだまま急降下を始める。


ユグドリア王国の飛空艇は、盾となってカルルの飛空艇を守り、ダンジョンの縦穴の直上まで護衛をすることが使命だ。


「ダンジョンから多数の飛空艇が飛び立っています。数は50艇以上。全てこちらに向かってきます」


アリスがダンジョンの飛空艇の襲来を告げる。


編隊を組む飛空艇が次々と防壁を展開しつつ、接近するダンジョンの飛空艇に向けて魔道砲と分解砲を放っていく。


物理防壁と魔法防壁でダンジョンの飛空艇の攻撃からカルルの飛空艇を守りつつ、防壁が限界に達した時点で編隊から離脱し、後続の飛空艇に盾役を引く継いでいく。


ダンジョンの飛空艇の攻撃により、防壁が限界を迎えた飛空艇が1艇、また1艇と離脱しながら、ダンジョンの縦穴めがけて急降下を続行する。


ダンジョンも上空から急降下してくる飛空艇が何処を目指しているかは察したたのか、ダンジョンの縦穴の上に飛空艇を並べて侵入を拒もうとしている。


カルルの飛空艇を防壁で守っていた最後の飛空艇が離脱すると、カルルが飛空艇のバルコニーへと出て、魔石を縦穴に投げ入れる体勢に入る。


飛空艇は、防壁で守られているとはいえ、ダンジョンから飛び立った飛空艇から放たれた魔石がさく裂し、攻撃魔法により飛空艇は火だるまになっていく。


そしてカルルの飛空艇とダンジョンの縦穴の距離が間もなくというところで、カルルがバルコニーから魔力の魔石を縦穴へと投げ入れる。


計算では、魔力の魔石はダンジョンの縦穴へと入るはずであった。


だが、カルルの手から離れた魔石の前にダンジョンの飛空艇が立ちはだかり、魔力の魔石は扉を開け放ったダンジョンの飛空艇の中へと入るや、飛空艇は上空へとぐんぐん高度を上げていく。


「魔力の魔石を取られた!」


カルルの心の叫びが言葉となって放たれる。


そして遥か上空で巨大な爆発が起きるも、空を飛ぶダンジョンには全く影響は無かった。


さらにカルルの飛空艇の前にダンジョンの飛空艇が次次と立ちはだかり、次の魔力の魔石を投げ入れる余裕すらない状況となる。


このまま飛空艇が反転離脱をすれば二度とダンジョンを破壊する機会など無いと考えたカルル。


するとバルコニーから身を乗り出しダンジョンに向かって飛空艇から飛び降りたのだ。


カルルの体は、前方を遮るダンジョンの飛空艇と飛空艇の僅かな隙間をすり抜けつつ縦穴へ急降下していく。


カルルの飛空艇内では、カルルの位置が飛空艇からどんどん離れていくのを確認していた。 


「カルルが飛空艇から落ちた!」


飛空艇の操術室でアリスが叫びながら、バルコニーへと向かおうとするも、それを止めたのはハンドであった。


「無理だ。この状況では助けには行けない!」


「離して!カルルが、カルルが死んじゃう!」


「カルル殿なら絶対に助かる!」


ハンドは、根拠もなくカルルが助かると言い放ったが、正直この状況で助かる見込みなどないと断言できだ。


アリスが離れた操術師の席にパトリシアが座り、魔力の魔石に手を置き魔力を送り込むと、カルルの飛空艇は空へと舞い上がっていく。


「カルル!」


アリスの悲痛な叫びは、飛空艇内に響き渡るもそれはカルルの耳に入ることはなかった。


急降下を続けるカルルは、ダンジョンの縦穴から飛び出してくる飛空艇の横をするりと抜けながら、ダンジョンの奥深くへと落下していく。


そして腕に装備した飛空の腕輪に魔力を送り込み、急激に落下速度を相殺する。


カルルの体には、体重の数倍もの重力がかかり、胃の中のものを全て吐き出しそうになりながらダンジョンの最下層へと近づいていく。


「やっぱり体ひとつで降下するのは、正直厳しい。気持ち悪くて吐きそう」


カルルは、ゆっくりとダンジョンの最下層に着地すると、胃の中のものを吐き出しそうになりながらも、何とか立っていることができた。


周囲を見渡すと、目の前にはダンジョンコアがまばゆい光を放ち、その光を受けて周囲の景色がぼんやとりとカルルの目に入ってくる。


ダンジョンコアの背後の黒い壁には、見たこともない龍の彫刻が施されていて、それはかなり手の込んだ彫り物だということは、カルルにも分かった。


カルルの頭上には、ダンジョンの飛空艇が並び、カルルの脱出を阻止するかのうように幾重にも重なり合いながら浮遊している。


「これじゃ、逃げることもできないか」


魔力の魔石に大量の魔力を込めるには、どんなに早くても10分以上はかかるが、その間、カルルの頭上で浮遊している飛空艇が攻撃もせずにただ待っているとは到底思えない。


しかもダンジョンの魔獣が大量に降ってくれば、カルルでもさばききれる自信は無かった。


するとダンジョンコアの背後の壁に施された龍の彫刻が、動いたように見えた。


壁を凝視すると、確かに龍の彫刻が壁から這い出し、ゆっくりとカルルに向かって来ていた。


「これがハンドさんやパトリシアさんが言っていた、ダンジョンコアを守るガーディンというやつか」


カルルは、以前にハンドやパトリシアがダンジョンについて語っていたことを思い出しながら、自身に向かってくる黒くごつごつした体の龍を凝視していた。


鑑定魔法で調べてみると、カルルの目の前に現れた龍は、暗黒龍と鑑定された。


「暗黒龍か。分解魔法で倒せればいけど、恐らく無理だろうな」


そうつぶやきながら、分解の魔石を埋め込んだ腕輪に魔力を送り込む。


暗黒龍は、カルルに向かってゆっくりと歩いてくると突然、ダンジョンコアに向かってブレスを放った。


「えっ、えっ、何が起こったの?ガーディアンがダンジョンコアを攻撃した。ガーディアンってダンジョンコアを守るんじゃないの?」


あまりに唐突に起こった出来事に思わず唖然とするカルル。


だが、次の瞬間に暗黒龍が苦しみだすとその巨体が動かなくなる。


暗黒龍をよくよく観察してみると額に赤い魔石のようなものが埋め込まれていて、それが明滅しているように見えた。


鑑定の魔石で暗黒龍を再度鑑定すると、額の魔石は"隷属の魔石"だということが分かった。


隷属の魔石は、相手の自由を奪い行動を強制する魔道具に使われるが、それが暗黒龍の額に埋め込まれている理由が分からない。


「とにかくあの龍の動きが止まっているうちに何とか魔石の準備を・・・」


カルルがそうつぶやいた時、カルルの頭の中で誰かが囁く。


<世話の焼ける子ですね。服のポケットに用意しておきました。それを使いなさい>


カルルがその言葉通り服のポケットに手を入れてみると、そこには既に魔力が込められた知恵の魔石と純度99.9%のミスリルの塊が入っていた。


「今の声ってまさか・・・」


頭の中で響いた声は、カルルが飛空艇を創りたいと願った日の夜に、枕元に立ったあの女神の声のように感じた。


目の前に立つ暗黒龍は、徐々にカルルの方向に体の向きを変えると、大きな牙が並ぶ口を開けると何かを放つような体勢を取る。


「これは、攻撃の前触だよね」


カルルは、ポケットから取り出した知恵の魔石全体に純度99.9%のミスリスをコーティングすると、知恵の魔石をダンジョン最下層の床に勢いよく転がし、ダンジョンコアに対して右方向にある壁に向かって走りだす。


そしてダンジョンの壁に向かって分解魔法を放ち、壁に穴を開けるとそこに勢いよく飛び込んでいく。


ダンジョンの壁の向こう側は、通路になっていて小さな部屋がいくつも並んでいる。


そこに壁を貫通して暗黒龍のブレスが次々と打ち込まれていく。


「うわ、早く逃げないと!」


円形のダンジョンの外壁沿いと思われる通路をひた走るカルルに向かって、暗黒龍が無差別にブレスによる攻撃を放ってくる。


「60、59、58、57・・・」


ふと気が付くと視界の片隅に何かの数字が映し出され、それは徐々に数を減らしている。


「あれ、何の数字だろう?」


ダンジョンの通路を走りながら、視界に映る数字の意味を考えるうちに、数字の上に小さな文字を見つけ、それを読んでみる。


<知恵の魔石爆発までの残り時間>


と記されている。


「あっ、そうだった。早くダンジョンから脱出しないと!」


カルルは、近くの小部屋に入ると外壁の方向に向かって分解魔法を放つが、なかなか外壁を破壊するまでには至らない。


その間にも暗黒龍のブレスがカルルがいる小部屋のあちこちに穴を開けていく。


そしていつの間にか暗黒龍が放ったブレスにより、外壁に穴が開き外の景色が見えるようになっていた。


外には一面の青い空と眼下の遥か下に草原が広がっている。


カルルは、飛空の腕輪に魔力を込めるとその穴から勢いよく外へと飛び出した。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:174

 1000艇まで残り826


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイザバード王国軍向け飛空艇 30艇

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼、商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物質補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


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