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No.057 食料輸送

VOICEVOXの合成音声で朗読動画を作ってみました。

作業をしながらや通勤・通学途中に聴いてみてください。


闘う錬金術師。1000の飛空艇を創る。

第2話 残骸と屑魔石

https://youtu.be/zpDSNp6WKok


ユグドリア王国のルイーゼ様からの手紙により、緊急の呼び出しを受けたカルルは、飛空艇で山奥の屋敷へと向かった。


「申し訳ありません。ルイーゼ様は、国境近くにあるベルモンド砦におりますので、そちらに向かってください」


屋敷の侍従の指示通りに国境へと向かうとそこには、ケガ人が溢れかえる山間部に聳え立つ砦があった。


ベルモンド砦に飛空艇で降り立ったカルル達は、ルイーゼと再会するとある部屋に案内される。


そこには、3人の男達が椅子に座らされていて、複数の兵士から何やら尋問を受けていた。


「あの人達は?」


「ガルラント王国で活動している冒険者と魔石研究員だと言っています。なんでも北極圏の島で新しいダンジョンが見つかったそうで、その調査に向かったものの、調査隊はダンジョン内で魔獣に襲われて全滅したそうです」


カルルの問に尋問に加わっている兵士のひとりが答える。


「そのダンジョンの調査とガルラント王国に魔獣被害が広がったことと何か関係があるんでしょうか」


「それが信じられないのですが、魔獣は人の体を乗っ取り飛空艇を奪って、ガルラント王国内に活動範囲を広げているそうです」


兵士が3人を尋問して得た話というのは、にわかには信じられないものであった。


「ダンジョンから生まれた魔獣は、ダンジョンから離れた場所では活動できないはずです」


「私もそう聞いています。ただ、ダンジョンの外で生まれた魔獣は、その範疇ではないという話ですが・・・」


ハンドとパトリシアは、元冒険者で何度もダンジョンに入った経験があるため、そう言った知識は豊富だ。


「それがですね、あの3人の話では魔石を介して、魔獣とダンジョンコアが繋がっていると言ってます」


「魔石と魔獣が・・・繋がる」


カルルが創った魔道具に転送の小箱というものがある。


この転送の小箱は、転送の魔石同士で手紙を交換できるという魔道具だが、手紙が送れるなら魔力や生命力も送れて不思議はないとカルルは考えた。


そもそも飛空艇には、魔石同士を繋げる魔道回路というものがあり、魔力を魔石に送る働きをする。


つまり魔石同士が物理的に繋がっているかどうかの違いくらいしかない。


「あの3人の話では、魔獣が体を乗っ取ると魔力や生命力を徐々に奪い、それを魔石を介してダンジョンコアに送っているのではないかというのです。あくまで推測の域を出ないとは言ってました。それと魔石から生まれた魔獣は、闇属性で防壁を駆使するので攻撃魔法も物理攻撃も効果がないそうです」


「攻撃が効かない魔獣か。それは厄介だ」


兵士が3人を尋問して得た内容を聞いたハンドが思わず唸る。


「ただ、聖属性の魔石や武具なら対抗できたそうです。あの3人も聖属性の魔石と魔道具を装備していたので何とか逃げることができたそうです」


「へえ、聖属性の魔石と魔道具かあ・・・」


カルルは、いろんな魔石を創ることはできるが聖属性の魔石も、それを創るレシピも持っていない。


「それで、あの3人は魔獣のことを知らせに来たんですか」


「いえ、砦に逃げ込んだ住民達の食料が底をつくので、その買い付けに来たそうです。何でもガルラント王国の北方地域から中央地域辺りまで魔獣の被害が広がっていて、街も村も王都までも魔獣だらけで地上は危険で移動できないという話です」


「そんな状態でよくここまで来ることができましたね」


「あの3人は、魔獣に乗っ取られた調査隊が乗っていた飛空艇を奪ったそうです」


「あの3人が乗ってきた飛空艇はあるんですか」


「あるにはあるんですが、途中で飛空艇の攻撃に合ってボロボロの状態です。飛空艇自体は砦の外に放置してあります」


「ちょっと見てきてもいいですか」


カルルは、3人が乗ってきたという飛空艇を調べるため、兵士から飛空艇が放置してある場所へと向かった。


飛空艇は、砦から少し離れた山の中に放置されていて、外壁にはいくつもの攻撃魔法を受けた後が見られた。


カルルは、飛空艇の中に入ると魔石の痕跡がないか鑑定の魔石で調べることにした。


すると鑑定の魔石がある魔石の破片に反応する。


鑑定の魔石の結果は、あの3人の証言を裏付けるものであった。


<天然魔石(中継コア)>


カルルは、鑑定の魔石の結果をルイーゼに伝えると、3人と話がしたいと伝えた。


しばらくしてカルル達4人は、取り調べを行っている部屋へと通された。


「失礼します。僕はカルルと言う錬金術師です」


その言葉に、魔石研究員と名乗る男が反応する。


「ほう、まだ子供なのに魔石研究員の前で錬金術師を名乗るとは度胸があるな」


カルルは、その男の言葉を挑戦と受け取り、魔力の魔石を目の前で錬成して見せた。


「なっ、何だと。この短時間で魔石を錬成できるのか。それも魔力の魔石だと!」


カルルが目の前でやってみせた魔石錬成に驚く魔石研究員のことなど気にせずに、カルルは話を始める。


「飛空艇内で天然魔石(中継コア)の破片を見つけました。彼らの言っていることは本当です」


「それでは、ここに魔獣がやって来るのも・・・」


「恐らく時間の問題です」


3人を尋問している兵士達は、カルルが飛空艇を創る錬金術師だということを、ルイーゼから知らされているのでガルラント王国から来た見知らぬ3人よりも信頼のたる人物と思われている。


「彼らは、砦に残された避難民の食料を調達に来たと言ってましたね」


「はい。ですが我が国も王都から派遣された部隊が、ガルラント王国の飛空艇からの攻撃を受けて、多くのケガ人を抱えています。現実問題として他国に回す食料の余裕がありません」


「問題は、食料だけですか」


「いえ、実際のところ大量の食料を運ぶ輸送手段がありません。例えば馬車で食料を運ぶとしても未知の魔獣がはびこる他国の土地を数十台の馬車を連ねて進むなど無謀極まりない行為です」


兵士が言っていることには嘘偽りはない。


「例えばですが飛空艇で食料を運ぶとしても、飛空艇1艇で運べる食料はたかが知れています。まして食料を運ぶために防衛の要である飛空艇を他国への食料運搬に向かわせることなどできません」


「ならば、ルイーゼ様に進言してみるか・・・」


カルルは、兵士の話と自身が実現できることを鑑みて、何ができるかをルイーゼに話してみることにした。


ルイーゼもカルルの言っていることには、理解は示したものの援助するにも金がかかるという話になり難色を示した。


「国は、違えど食料難で困っている人達がいるのなら救ってあげたいとは思いますが、この状況では恒久的に食料援助が必要になります。せめて魔獣出没の原因の特定と排除ができなければ、我が国も同じ運命をたどることになりなります。そうなれば、他国に食料援助などしている場合ではなくなります」


ルイーゼは、王太子殿下という立場上、自国を守るという最優先事項がある。


感情に流されていては、自国の民を守ることなど出来ないのだ。


「では、僕が砦まで食料を運びます。僕の飛空艇を使うなら問題ないですよね。その帰り道に魔獣を生む魔石の調査に向かいます。何か対処方法でも分かれば、ルイーゼ様の国を守る方法が見つかるかもしれません」


「よろしいのですか。人の体を乗っとる魔獣となれば、命の危険を伴いますが・・・」


実は、カルルが他国へ食料の輸送に行きたがる理由は、ダンジョンが生み出す魔石に興味を引かれたというのが本音であった。


食料の輸送という最もらしい理由付けをしながら他国の領内で未知の魔石の調査を行う。


もし、他国とトラブルになったとしても、隣国の王太子殿下が食料援助を行うと、砦を守る地方伯と約束をしたと言い張れば、トラブルを回避することも容易い。


「分かりました。食料援助はいたしますが、どうやって食料を砦まで運ぶのですか。飛空艇で運べる食料は僅かです。もし馬車を連ねて街道を行くのであればかなり危険です」


「その点なら問題ありません。僕は、こういった魔石を持っています」


カルルは、ルイーゼの前に収納の魔石を並べてみせる。


「これは魔石ですね。どういった・・・」


カルルは、ルイーゼの前に飛空艇で移動した際に、屋外でお茶をする時に使うテーブルと椅子を収納の魔石から取り出して見せると、ルイーゼが食い入るようにその光景を見ていたのを見逃さなかった。


「収納の魔石ですか。まさかカルル殿は、収納の魔石を錬成できるのですか」


「はい。この魔石ひとつで荷馬車2台分くらいの荷物を収納できます」


「そんなに!」


「これに食料を収納して砦に運びます。これがあると荷物の運搬はかなり楽になります」


「収納の魔石は、どれくらいの時間で錬成できるのですか」


「そうですね。これと同じ魔石なら1日に10個は錬成できます」


ルイーゼは、収納の魔石を凝視しながら頭の中で何かを考えている様子だ。


「その魔石を売ってはもらえませんか。それがあれば領内で物資の輸送力が各段に向上します」


「それは構いませんが、市場で売られている収納の魔道具は、殆どが小さい物しか収納できない割に高額です。この魔石のように馬車2台分の荷物が収納できるとなると金貨50枚程度はしますがよろしいですか」


「収納の魔石ひとつで金貨50枚ですね。では、その収納の魔石を50個。それと飛空艇を追加で発注できますか。数は10艇です」


「お支払い方法は?」


「以前と同様にミスリルでよろしいですか」


「分かりました。では、砦への食料輸送を行う飛空艇内で収納の魔石創りを行いつつ、帰りの道すがら魔獣を生む魔石の調査を行います。砦への道案内には、あの3人を同行させます。調査が終わったところで砦に戻り飛空艇創りを始めますが、魔石調査の時にあの3人がいるとはかどると思います。それでよろしいでしょうか」


「はい、それで構いません」


カルルは、アリス、ハンド、パトリシアの3人を集めるとルイーゼとの決め事を共有し、砦への食料輸送を行なった帰り道に魔獣を生む魔石の調査を行う旨を伝える。


「この前、壊れてしまった魔道具は作り直したので、各自装備しておいてください。これから港の倉庫に小麦やら食料を受け取りに行きます。それから他国の領内に入ることになります。攻撃を受ける可能性が十分にあります。未知の魔獣による襲撃もあると考えてください。まずは自身の命を守ることを最優先にお願いします」


アリス、ハンド、パトリシアの3人は、お互いの顔を見合いながら真剣な表情を浮かべている。


「今、この大陸では、ダンジョンが地上に広がり多くの人が命を落としているようです。もしこのダンジョンが僕達が住むラルバート大陸に広がるようなことがあれば、誰も止めることはできないでしょう。そうなる前に調査をして対処方法を探るべきです」


カルルの言っていることは最もである。


今までのように王国に飛空艇を創って売り歩くという行為とは、明らかに異なる危険を伴う行動だが、それはカルル達が住む大陸を守るためにも必要であった。


ただ、その行動の裏には未知の魔石を調べてみたいというカルルの本音は隠されたままであった。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:174

 1000艇まで残り826


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイザバード王国軍向け飛空艇 30艇

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼、商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物質補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


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