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No.055  ライマー王太子殿下の誤算

VOICEVOXの合成音声で朗読動画を作ってみました。

作業をしながらや通勤・通学途中に聴いてみてください。


闘う錬金術師。1000の飛空艇を創る。

第1話 女神の導き①

https://www.youtube.com/watch?v=6SnPQVPtaYg

第1話 女神の導き②

https://www.youtube.com/watch?v=JyWw1w2hWQ8


ユグドリア王国内の街道を3000人の兵と水や食料を満載した10台以上の馬車を引き連れ、ライマー王太子殿下はルイーゼ討伐へと向かっていた。


ルイーゼは、自身の領地を守るために飛空艇を購入したのだが、それをライマーは王国への反乱を企てていると国王に進言したのだ。


ライマー王太子殿下は演者としての才能を秘めている。


妹の不始末は、兄が自らの手で解決すると苦渋の決断を涙ながらに訴えたことで、国王はライマーに妹のルイーゼ討伐を了承した。


そしてルイーゼの領地へと進軍している最中に、上空にガルラント王国の飛空艇が現れるとライマー王太子殿下の部隊に攻撃を始めた。


「なっ、何だあれは。何処の国の飛空艇だ!」


「紋章からするとガルラント王国のものです」


「ここは、ユグドリア王国の領内だぞ。なぜガルラント王国の飛空艇が飛んでいる!」


「以前よりガルラント王国は、越境行為と国内の村や街での略奪を繰り返しております。ルイーゼ様は、ガルラント王国の越境行為に対抗するために飛空艇を購入していたと推察いたします」


「なっ、なんだと。では、我らを援護するためにルイーゼに飛空艇を出すように伝令を出せ!」


「それはできません」


「なぜだ!」


「我らは、反乱を企てるルイーゼ様を討伐するために来た討伐軍です。討伐対象のルイーゼ様に援軍を要請するなどできません」


「ちっ!」


ライマー王太子殿下率いるルイーゼ討伐部隊は、ガルラント王国の飛空艇の攻撃により蹂躙されていた。


魔術師が空に向かって攻撃魔法を放とうとも、弓矢を放とうとも飛空艇に当たるはずもなく、ルイーゼ討伐部隊の数は既に半分にまで減らされていた。


「撤退、撤退!森の中に隠れて身を守れ!」


各部隊を指揮する指揮官達は、必死に自身の部隊に対して最善と思える命令を下す。


だが、ライマー王太子殿下には"撤退"という言葉は耳障り以外の何者でもない。


「誰が撤退しろと命令した。この討伐部隊の指揮官は俺だ。最後のひとりになっても戦え!飛空艇を撃ち落とせ!」


部隊の指揮官と討伐部隊の司令官が相反する命令を出したことにより、討伐部隊は混乱に混乱を重ねる。


いつしかガルラント王国の飛空艇は、空から姿を消していた。


水と食料を運んでいた馬車は、全て破壊され燃えている。


街道には千を超える兵士の屍が横たわり、生き残った兵士の殆どは、負傷していて歩くこともままならない。


「衛生兵、ケガ人の治療にあたれ。死んだ者は、街道の脇に寄せろ」


ルイーゼ討伐部隊の副司令官であるがゲルトが次々と指示を出していく。


「最寄りの領地は、ハイモ子爵領が最も近いな。伝令を出してケガ人を運ぶ馬車の手配をさせろ。他の者は飛空艇への警戒と散らばった部隊を集結させろ!」


ゲルトは、ケガ人救助と生き残った兵士達を集めて周囲に散らばった部隊の再編を計っている。


「おい、ゲルト。何をしている。勝手に指示を出すな。いますぐルイーゼ討伐に向かう」


副司令官であるゲルトは、ライマー王太子殿下の顔を一瞬だけ睨みつけると、敬礼を以ってそれに従うそぶりを見せた。


「たった数艇の飛空艇で3000人の部隊がこの有様です。今、動けるものは500人ほどですがこのケガ人だらけの部隊で飛空艇を有するルイーゼ様の領地に向かうことになりますが、よろしいですかな」


「ケガなどポーションで直ぐに治るではないか」


「ポーションを運んでいた馬車は、飛空艇の攻撃により全て破壊されました。運んでいたポーションは既にありません」


「とにかくだ。ルイーゼ討伐に向かう。今すぐ部隊を前進させ・・・」


ライマー王太子殿下の話が終わる間もなく街道で爆発が起きた。


「飛空艇だ。ガルラント王国の飛空艇の攻撃だ!」


街道の上空には、10艇を超える飛空艇が飛び、魔法による攻撃が再び始まった。


「退避、退避、森に入って身を隠せ!」


兵士達は身を隠す場所を求めて散らばっていく。


街道とその両脇に広がる森の中でも火魔法による火柱が上がり、逃げる場所すらない有様だ。


「逃げるな。戦え!」


ライマー王太子殿下がそう叫んだ目の前でいくつもの火魔法による火柱が立ちあがり、兵士が次々と焼かれていく。


「ゲルト、この状況を何とかしろ!」


そう叫んだライマー王太子殿下の側にいたはずの副司令官のゲルトも街道に横たわり微動だにしない。


「ゲルト、ゲルト!」


体をゆすっても既にこと切れたゲルトは沈黙したままだ。


周囲を見渡せば、街道にも周囲の森の中も倒れて動かくなった兵士ばかりだ。


「どっ、どうしてこうなった・・・」


既にライマー王太子殿下を守り従う兵士はひとりもいいない。


ガルラント王国の飛空艇は、それでも攻撃をやめる気配はなく、森を焼き尽くさんばかりの攻撃を続ける。


ライマー王太子殿下は、燃え盛る森の中へと走り出した。


負傷して動けない兵士のことなど頭の隅にもなく、ただ自身の命だけを守り必死に森の中を駆け抜けていくばかりだ。

 

・・・・・・


ルイーゼの領内の警備飛行を続けていた飛空艇は、領地の遥か先で多数の煙が上がっているのを目視で確認した。


周辺を捜索すると味方の部隊が攻撃されたことが分かり、その知らせはルイーゼにも伝わると複数の飛空艇による救助が始まる。


負傷した兵士の話から、ルイーゼが反乱を企てているという情報により反乱鎮圧のために派兵された部隊だという。


そしてここまでやって来たところ、ユグドリア王国の飛空艇の攻撃を受けたことで、部隊はほぼ全滅という状況に陥ったとのこと。


ルイーゼは、負傷者を飛空艇に乗せると国境沿いの山麓にあるベルモンド砦へと運んだ。


負傷者の数は、軽症者と重傷者を合わせると800人にもなる。


飛空艇には、1度に10人ほどしか乗れないため800人の負傷者の搬送となると気の遠くなる時間がかかる。


まずは重傷者から先に搬送し、軽症者は現地で治療を行いながら搬送の順番を待つこととなった。


これだけの負傷者となると問題は、治療である。


この世界では、軽いケガならポーションで治せるが、ポーションにも消費期限というものがあり長期間の保存はできない。


そのため、戦争でもない限りポーションの在庫を大量に抱えることはなく、消費される数日分しか保管されていなかった。


中程度のケガであれば治癒師による治療で治るが、そもそも治癒師の数は限られており大きな街でも数人しかいない。


ルイーゼの領地を守る部隊に所属する治癒師は、たったの2人であった。


重症なケガとなると治癒師でも対処は難しく、製薬が難しいハイポーション頼みとなるが、ハイポーションを作れる薬師は少なく、材料の入手も困難なため市場では高値で取引されているくらいだ。


ベルモンド砦は、規模の小さな砦であるためケガ人を収容する場所は限られる。


そのため、通路にもケガ人が溢れかえる有様であった。


そして次に問題になったのは、ガルラント王国の攻撃により殉職した兵士達の埋葬である。


亡骸だけでも1000人を超える数となり、砦を守る兵士や街を守る兵士を総動員しても全ての殉職者を埋葬するにはかなりの日数を要する。


さらに逼迫した問題があった。


ベルモンド砦に運ばれてきたケガ人に与える食料である。


ルイーゼ討伐部隊が馬車で運んできた食料は、ガルラント王国の飛空艇により全て焼かれてしまった。


800人のケガ人が消費する食料となると、近隣の街からかき集める必要があり、それを運ぶには大量の馬車がいる。


飛空艇に乗れるのは10人程度であるため、飛空艇は物資の輸送には不向きであった。


ルイーゼは、領民のために港に備蓄していた食料をベルモンド砦へと運ぶ指示を出したが、港から内陸のベルモンド砦へ行くには山越えをする必要があり、馬車では早くても3日ほどかかる工程だ。


結局、ベルモンド砦ではケガ人の治療も出来ないため、ケガ人を飛空艇で街へ運ぶことになったが、越境してくるガルラント王国の飛空艇にも対処する必要があるため、20艇の飛空艇はフル稼働の状態となった。


その頃、カルルはどうしていたかというと、ルイーゼ討伐部隊が攻撃を受ける数日前には、飛空艇の製作も操術師の初期訓練も終わり、ルイーゼの領地を離れて海岸沿いで観光を楽しんでいた。


カルルは、飛空艇創りを始めると現地で飛空艇に寝泊まりをしながら休みなく作業を行うため、飛空艇創りが終わると高級な宿屋に泊まり、フカフカのベットで体を休めるのが通例だ。


海岸沿いの高級な宿屋に泊まり、海を見ながら美味しい食事を楽しみ、フカフカのベットで日々の疲れを癒し、街へ出て買物などを楽しんでいるカルル達。


ルイーゼには、飛空艇が故障した時に連絡ができるようにと、転送の小箱を渡してあるので連絡はいつでも取れる状態となっている。


カルルは、宿屋の部屋の中で目の前に純度99.9%のミスリルを並べると、これを何に使うかを思案していた。


市場で売れば相当な高値で売れることは分かってはいるが、純度99.9%のミスリルをただ売るだけでは芸がない。


カルルは、魔石と魔道具創りができる錬金術師である。


何か面白い魔道具が創れないかと神殿遺跡で入手した知恵の魔石を覗いていた。


知恵の魔石は、魔石を創るための多数のレシピが記録されているが、その中には魔石の使い方や魔石同士を連携させた場合の使い方なども記されている。


カルルは、時間が許すかぎり知恵の魔石内に記された記述を読んでは、飛空艇に追加できる装備や面白そうな魔道具創りを思案していた。


そんな時、知恵の魔石内に"禁則事項"という項目を発見する。


今までに見たことのない項目であったが、その記述を読んでいくと興味深いことが記されていた。


それは・・・。


<99.8%以上のミスリルで魔石全体をコーティングしてはいけない">


という内容であった。


さらに記述を読み進めるとこう記されている。


<魔石に魔力を込めた状態で純度99.8%以上のミスリルにより魔石をコーティングすると、魔石内で異常な魔力増幅の連鎖が始まり魔石が崩壊する>


というのだ。


この<魔石崩壊>というのは、どういう状態のことを差すのかは記述されていなかったが、カルルはこれに興味を引かれた。


そしてそれを試すべく飛空艇で海へと向かうことにした。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:174

 1000艇まで残り826


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


◆北ラルバード大陸


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイザバード王国軍向け飛空艇 30艇

・フルーム王国軍向け飛空艇 22艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼、商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物質補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


◆北コルラード大陸


王国向け飛空艇

・ユグドリア王国向け飛空艇 20艇(戦闘型20艇)


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