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No.050  ミスリルと孤島の迷宮

カルル達は、北コルラード大陸のユグドリア王国に到着すると、アリーア王国のエミル国王陛下から送られてきた手紙を頼りにルイーゼの領地の場所を特定することができた。


ユグドリア王国に到着してから3日目にようやくルイーゼの屋敷までやってきたが、それはとてつもない山奥にあった。


「アリーア王国のエミル国王陛下からの紹介状になります。ご確認ください」


カルルが従士に手紙を渡すと、しばらくしてルイーゼに面会する機会を得た。


ルイーゼの歳は、エミル国王陛下と同じくらいと聞いていたカルルだったが、見た目はもう少し幼いといった印象であった。


「御覧の通りの山奥なので飛空艇があると移動とか領内の治安維持がとても楽になると思うの」


広いとは言えない客間に通された4人は、出された紅茶を飲みながら飛空艇を欲する理由などを、それとなくルイーゼに問いかけていた。


ここで敵対する王国に対して攻撃をするために飛空艇が欲しいと言われたら、カルルは北ラルバート大陸へ帰るつもりでいた。


だが、ルイーゼはそこまで攻撃的ではないことが分かった。


「お支払いは、金貨ではなくミスリルということですが」


「正直言いますとお金はありません。ですがミスリルはあります」


「では、飛空艇はミスリルで支払いということでよろしいですね」


「はい。それでお願いします」


「そういえば、北ラルバート大陸ではミスリル鉱山は無いと伺っておりますが、本当でしょうか」


「無い訳ではないのですが、ごく小規模なものがあると聞いています。ただ、僕はミスリル鉱山を見たことがなくて」


その言葉に、今まで緊張した表情を見せていたルイーゼだったが、急に表情が緩むとカルルにある提案をしてきた。


「これからミスリル鉱山を見に行きませんか」


ルイーゼは、数人の従士を従えてカルル達と領内にあるミスリル鉱山を案内してくれた。


「この鉱山はミスリル鉱石が掘り尽くされて廃坑となっています。ですが少ないながらもミスリルの鉱脈はまだ存在しています」


そう言うとルイーゼ様は、ミスリル製錬の魔法を発動する。


するとイーゼ様の足元に小さいながらもミスリルの塊が姿を現す。


「ユグドリア王国の王族は、ミスリルに関連したスキルを持つものを数多く輩出してきましたが、現国王様もライマー王太子殿下もミスリルに関連したスキルは持っていないんです」


「でもルイーゼ様はお持ちなんですね」


「はい。ですが私がスキル持ちであることは内緒なんです。もし私がスキル持ちであることが分かれば、ライマー王太子殿下にいいように利用されてしまいますから。あの方、いえお兄様はそういう人なんです」


カルルは、この会話でルイーゼとライマー王太子殿下が不仲であることは容易に想像ができた。


そしてライマー王太子殿下の人となりも想像に難しくない。


「今まで採掘したミスリルは、出入りの商人を通じて裏ルートで市場に流しています。本当は違法なんですが、領民用の食料が不足しているのでその購入資金に充てています」


「そのミスリルを飛空艇の購入費用に充てて大丈夫ですか」


「実は、国境を接するガルラント王国が数ヶ月前から飛空艇を大量導入したんです。その飛空艇が王国の私の領地に越境してきて村や街を襲っています。私の領地の兵士では空を飛ぶ飛空艇には対処できません」


カルルは、ミスリル欲しさにここまでやってきた。


各国が抱える事情、その国の領地が抱える事情、そして立場や役割、それは異なる。


もしカルルが創る飛空艇や魔道具でそれらを解決できたり、或いは手助けができるなら答えたいという思いは強い。


「分かりました。飛空艇を創りましょう。それと僕は、魔道具を創ることができます」


「魔道具ですか。例えばどんな・・・」


「そうですね。例えば僕が装備しているのは、飛空の腕輪。防壁の腕輪。分解の腕輪。収納の腕輪です」


カルルは、それがどんな魔道具なのかを実際にルイーゼ様の前で実演してみせた。


「すっ、凄い。私が創る魔石や魔道具とは大違い!」


「えっ、ルイーゼ様も魔道具をお作りになられるのですか?」


「お見せしましょうか。これがミスリル鉱石を掘る魔道具、こちらがミスリルを製錬する魔道具です。魔道具に使っている魔石は、私のスキルで錬成したものです」


ルイーゼが見せた魔道具は、指にはめていたふたつの指輪であった。


それを見たカルルの胸が高鳴っているのが自身でも分かった。この旅で欲していたものはこれなのだ。


・・・・・・


ユグドリア王国と国境を接するガルラント王国の北極圏を超えた先に小さな島が点在する。


そのひとつでダンジョンが発見された。


小さなダンジョンだが誰も足を踏み入れていないダンジョンではないかと、発見した冒険者達は色めき立つ。


冒険者達は、3層まで走破して数々の天然魔石を持ち帰り、冒険者ギルドへダンジョン発見の知らせを行った。


これによりユグドリア王国と冒険者ギルドとの合同調査隊がダンジョンに派遣されることになる。


馬車と船でダンジョンへ移動すると往復に数ヶ月を要するため、調査隊は王国軍が導入した飛空艇での移動となった。


4艇の飛空艇は、北極圏に入ると高度を下げ搭乗者は防寒具を着て寒さに備える。


暖房のない飛空艇内に搭乗する者達が吐く息は白くなり、飛空艇の内壁が徐々に凍りついていく。


しばらく飛ぶと目的のダンジョンがある小さな島に到着した。


小さいとは言っても周囲20kmほどもある島で、生い茂る木々は雪を被り白い塊となっている。


ダンジョンから少し離れた場所に飛空艇を着陸させると、ダンジョンを調査する部隊と飛空艇を護衛する部隊とに分かれて移動が始まる。


調査隊は、雪をかき分けながら雪原を進むと報告のあった洞窟の入り口が見える。


だが、大量の雪が覆いかぶさっているため、除雪をしないとダンジョンには入れない。


調査隊全員で除雪を行い、入り口近くにベースキャンプを設置し、安全が確保できた段階で飛空艇をベースキャンプに移動させる手はずだ。


ダンジョンの入り口の除雪が終わると、先遣隊として20人がダンジョンへと入っていく。


残留組と調査隊は、数時間毎に連絡員を派遣して状況の確認を行うことになっている。


そしてダンジョン入った調査隊は、洞窟内に広がる色とりどりの天然魔石に目を奪われた。


「こんな天然魔石は、見たことがない」


「こりゃお宝の山だ」


先遣隊の何人かは天然魔石に見とれて足を止める。


「おい、何をしている。俺達はダンジョンの調査に来たんだ。魔石を取りに来たんじゃない。それと探査担当者はダンジョンのマッピングを怠るな。記録用の魔石にしっかり記録しろ!」


調査隊の隊長を務めるグランゼが全ての隊員の行動に目を光らせる。


「探査担当、魔獣の反応はどうだ」


「はい。今のところ魔獣の反応はありません」


隊長であるグランゼは呟く。


「これだけの天然魔石があるのだから、魔素も濃く魔獣は多いとにらんだが、未だに魔獣1匹の姿すら見られないというのは妙だな」


ダンジョンの奥へと進む調査隊の前に広間が現れ、そこには大小無数の魔石が並んでいる。


「ここを調査の拠点とする。調査用の天幕の設営を始めろ。周囲に魔獣がいないか探査を怠るな。それと外にいるベースキャンプに連絡員を派遣しろ」


グランゼが調査隊に指示を飛ばす。


「探査担当、魔獣の反応はあるか?」


「いえ、全くありません。地上から既に2kmほど入ったはずですが、ここまで魔獣がいないダンジョンも珍しいですね」


「何処かで我々を見ているかもしれんからな。探査は怠るなよ」


調査隊を指揮するグランゼは、S級の冒険者でギルドから雇われた身の上だ。


そして調査隊からベースキャンプへ2人の連絡員が向かった。


2人ともBランク冒険者であり、ひとりは剣士でもうひとりは魔術師である。


魔術師が魔法ランタンの灯りで暗いダンジョン内を照らしながら探査の魔法で魔獣の有無を確認しながら来た道を戻っていく。


相変わらず魔獣の姿はない・・・はずだった。


「おい。魔獣の反応だ。かなり小さいが複数いる。前方に2体。後方に2体だ」


「鑑定魔法で魔獣の特定はできるか」


「確認する・・・ん、魔獣の属性は闇、種類は・・・不明だ」


「まずいな。闇属性の未知の魔獣だと俺の雷系の攻撃魔法は通用しない可能性があるぞ」


「ならば、前方の2体を蹴散らしたら地上に向けて全力疾走だ!」


「了解!」


魔術師は、雷魔法を前方に向けて広範囲に放ちながら、剣士と共にダンジョンを駆け上がっていく。


間もなく息が切れかかるも魔獣の姿は消え、先ほどのように静かなダンジョンの風景となった。


「何とか魔獣からは逃げきれたようだな」


魔術師が振り返り剣士の姿を確認すると、剣士の頭の上に何か黒い影のようなものが乗っていた。


「おい、その頭の上にあるその黒い影みたいなものは何だ!」


魔術師の問いに答えない剣士の表情は、何か虚ろで視線は何処を見ているのか分からない。


「くそ。魔獣に取り付かれたか、雷撃!」


魔術師は、剣士は既に魔獣に取り込まれたと判断して、剣士の頭に乗っている魔獣らしきものにめがけて雷魔法を放った。


だが、雷魔法は剣士の直前で防壁のようなものに阻まれてしまう。


「くそ。この魔獣は防壁まで使うのか!」


雷魔法が効かない闇属性の魔獣。


サイズは小さいものの、人間に取り付いて自由を奪うタイプと判断した魔術師は、剣士を置いて地上のベースキャンプに知りえたことを伝えるために走ることを決意する。


「悪いがお前はここに置いていく。すまん!」


魔術師は、左手に魔法ランタンを持ち右手に魔法杖を持つ。


走る度に左手の魔法ランタンが左右に揺れながらダンジョン内を照らしていく。


そして目の前に現れた数十体の黒い影のような魔獣の群れに出くわした。


「くっ、くそ。今までどこにいやがった!」


魔術師は、雷撃魔法を放つも防壁を展開してくる黒い影の様な魔獣には、全く通用しない。


そして背中に何かが乗ったような重さを感じた。


「ひっ」


魔術師は、思わず魔法ランタンを持つ左手を高く持ち上げた。


するとダンジョンの天井には、黒い影のような魔獣がびっしりと張り付いている。


その魔獣が一斉に魔術師へと襲いかかる。


「やっ、やっ、やめろ!」


しばらくして剣士と魔術師は、何事も無かったようにダンジョン内を歩き出し、ベースキャンプへと向かう。


2人の頭の上には、黒い影の様な魔獣が取り付き、背中は黒い影の様な魔獣で埋め尽くされていた。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:154

 1000艇まで残り846


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイザバード王国軍向け飛空艇 30艇

・フルーム王国軍向け飛空艇 23艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼、商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物質補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


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