表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/64

No.049 ミスリル製錬と中継コア

ルイーゼとカルル達は、ルイーゼの屋敷へと戻ると飛空艇の契約の話を進めた。


「ルイーゼ様、お願いがあります。この魔石を創らせてもらえませんか。もし創らせてもらえるのなら、飛空艇を注文の倍創ります!」


「えっ、倍ですか。それは10艇発注したら20艇作ってもらえるということですか」


「はい!」


「でも魔石を創るには、固有のスキルが必要なはずですが」


「そこは秘密です。飛空艇の契約を結んだら魔石を創ることに同意したとみなします。どうされますか?」


ルイーゼは、しばし考え込むと、こう切り出した。


「私の領地を守る兵士は500人程です。飛空艇を動かすにはどれくらいの人手が必要ですか」


「戦闘型の飛空艇1艇には、操術師2人、砲術師1人、飛空艇長1人の計4人になります。飛空艇10艇だと40人。倍になると80人必要です。交代要員を考えるともう少し必要になります」


「20艇で80人ですか・・・」


「飛空艇の操術師への訓練は、アリスが行います。訓練は少々厳しいですが誰でも短期間で操術師になれます」


「武装のない通常型で1艇につき金貨1000枚、武器を装備した戦闘型で1艇につき金貨1500枚になります。今回は金貨ではなくミスリルでのお支払いと伺っております」


ルイーゼは、しばし考え込むと覚悟を決めた。


「飛空艇10艇を全て戦闘型でお願いします」


「では、戦闘型の飛空艇10艇をお創りいたします。ふたつの魔石を創らさせていただきますので、戦闘型飛空艇をあと10艇お創りいたします」


ルイーゼは、カルルが用意した2枚の契約書にサインする。1枚はカルルが保管し、もう1枚はルイーゼが保管する。


「魔石を創りますので指輪をお借りしてもよろしいですか」


ルイーゼは、半信半疑ながらもふたつの指輪をテーブルの上に置いた。


「では、指輪をお借りします」


カルルは、ルイーゼの指輪を手に取るとそれを左手で握り、スキルを発動させる。


すると右手に小さな魔石が錬成された。


「えっ、どうやったんですか」


ルイーゼの驚く表情を横目に、左手で握っていた指輪をテーブルに置き、もうひとつの指輪を左手で握るとスキルを発動する。


すると右手に魔石が錬成された。


「まさか、カルル殿は魔石を複製するスキルをお持ちなのですか」


「どういったスキルかは秘密です。ただ、ルイーゼ様の魔石は他人に売ったりはしません。僕が使うだけの魔石だということをお約束します」


カルルは、ルイーゼにそう約束をするとルイーゼの屋敷の近くで飛空艇創りを始める。


作業用の工房があるとか、雨風がしのげる大きな倉庫がある訳ではない。


山奥の森の中にある小さなお屋敷の近くにある開けた場所で飛空艇創りを始めたカルルは、10日ほどで10艇の飛空艇を創りあげた。


飛空艇用の魔石は大陸を渡る時に錬成済みたったので、大して時間はかからなかった。


飛空艇が完成すると、飛空艇を操作する操術師の教育が始まる。


操術師の教育は、アリスの担当で最初は優しく次第に厳しくなり、最後は鬼教官と化すのが有名であった。


アリスの飛空艇の操作は、全員が食べたものを戻すほどの厳しさと過酷さで知られており、卒業する時には兵士達が大粒の涙を流す程だという。


とある日、飛空艇創りを行うカルルの前にルイーゼがやって来ると、こんなことを言い出した。


「カルル殿、先日錬成した魔石ですが、あれを使うところを見せていただきたいのです」


ルイーゼの言葉にカルルは飛空艇創りの作業を中断して答える。


「はい、構いません。これからミスリル鉱山へ向かいますか」


カルルとルイーゼとその護衛を乗せた飛空艇は、ミスリル鉱山へと向かうと坑道のひとつへと入る。


「カルル殿の作った魔石でどれくらいミスリル鉱石を掘れるのか、どれくらいミスリルを製錬できるのか、見せてください」


ルイーゼの言葉に答える様にカルルは、鑑定の魔石でミスリルの鉱脈がより多くある場所を探すと、ミスリル採掘の魔石を取り出して魔力を込めていく。


その魔石を坑道に露出したミスリル鉱脈に近づけると、ミスリル鉱石がボロボロと崩れていく。


「カルル殿はミスリル鉱脈の場所が分かるのですか」


「いえ、鑑定魔法で分かるだけです。僕はミスリル鉱山に入ったのは、以前にルイーゼ様と入ったのと合わせて2回目です」


カルルの足元には、ミスリル鉱脈から掘り出された鉱石で小山を形成されていた。


次にミスリル製錬の魔石に持ち換えると鉱石の小山へと近づける。


するとカルルの目の前にミスリルの塊が現れた。


掘り出した鉱石から粉のような物が浮き上がり、それが宙を舞ってカルルの目の前でミスリルの固まりになっていく。


しばらくすると小さな玉のような形となり地面に落ちていく。


それを手に取ったカルルは、ルイーゼへ手渡した。


「僕も初めてミスリルの製錬をやってみたので成功しているか分かりません」


「このミスリルを鑑定してもよろしいですか」


「どうぞ」


ルイーゼは、カルルから手渡されたミスリルの塊を注意深く鑑定魔法にかける。


すると驚きの鑑定結果となった。


「純度90%!」


ルイーゼのあまりの驚き具合に思わずカルルも驚いてしまう。


「あの、ミスリルの純度って通常は80%だと聞いたことがあります。でもこのミスリルはそれよりも高いんですよね」


「そうです。私でも純度80%が限界です。それを初めて製錬した方が90%を出せるなんて信じられません」


「製錬は、そんなに難しいんですか」


「それはもう熟練の方でも90%を出せる人は殆どいないと伺っています」


ルイーゼの言葉にカルルは、製錬したミスリルを再度手に取ると、もう一度製錬を行った。


ただし、今度はミスリル製錬の魔石の魔法術式を開いて製錬の純度の設定を最大に上げてからの挑戦となった。


カルルが魔石に魔力を送り製錬の魔法を発動すると、ミスリルの塊の中から粉のようなものが落ちていく。


「再度、製錬を行ってみました。どんな感じでしょうか」


カルルは、製錬したミスリルの塊をルイーゼの手の平の上に置く。


ルイーゼは、半信半疑でミスリルの塊を鑑定魔法にかけてみると驚きの結果となった。


「純度・・・99.9%、えっ、ええ!」


カルルは、どの魔石にも存在する魔法術式の組み換えに長けている。


それは、飛空艇を創る過程では必須の作業だからだ。


ルイーゼは、想像すらしていなかった出来事に思わず気を失い坑道内に倒れて混んでしまった。


・・・・・・


北極圏にある小さな孤島で見つかったダンジョンの調査にやってきたガルラント王国と冒険者ギルドの合同調査隊は、調査隊がダンジョンへと入った。


残りの調査隊は、飛空艇とベースキャンプの護衛とダンジョンの入り口付近にある魔石の解析を行っている。


魔石は、天然の魔石と変わない形をしていて鑑定魔法の結果でも天然魔石という鑑定結果が出ていた。


いくつかの天然魔石を飛空艇内に持ち揉み、王都の研究施設へ運ぶ準備をしていた時だった。


飛空艇内に運ばれてきた魔石を研究者のひとりがひとつずつ詳しく鑑定していると、おかしな鑑定結果が出た。


「んっ、天然魔石(中継コア)だと。こっちの魔石も鑑定結果が天然魔石(中継コア)と出ているな。初めて見る鑑定結果だが、まさかダンジョンコアと何か関係があるのか」


飛空艇内に運ばれてきた天然魔石を調べると20個の魔石のうちの半分が天然魔石(中継コア)だった。


この魔石に興味が湧いた研究者は、さらに詳しく調べるために魔石に近づいてみると魔石に何やら小さい黒い影のようなものが付着しているのが見えた。


「これは、何だ?」


研究者は興味本位でその黒い影に手を伸ばすと、影は研究者が伸ばした腕を伝わり頭部へと駆け上がっていく。


「うわっ、何だ。虫か!」


それは、虫ではなくダンジョン内で調査隊の連絡員を襲った魔獣と同じものであった。


魔獣は、研究者の頭部に移動すると複数の食指を出し、それを研究者の頭部へとねじ込んでいく。


「いっ、痛い。だっ、誰か・・・」


研究者は、助けを呼ぶこともできずに精神を乗っ取られ体の自由を奪われてしまう。


そして天然魔石(中継コア)からは、次々と黒い影のような魔獣が湧き出すと研究者の体へと飛び乗っていく。


「おい、そろそろ夕飯だぞ」


飛空艇内で魔石の調査をしていた研究者を呼びに来た同僚は、飛空艇内に並べられた魔石の中で佇む同僚の姿を捉える。


「おい、こんな暗い中で灯りもなしに何をしてるんだ。魔法ランタンくらいつけろよ」


そういって男は、飛空艇の床に置かれた魔法ランタンに魔力を送りこみ灯りをつける。


すると男の目の前に佇む研究者の体には、無数の黒い影のようなものが張り付ているのが見えた。


「うわっ、何だそれは・・・」


そう声をあげた途端、黒い影のようなものが男に飛び移り、あっと言う間に精神と体の自由を奪っていく。


黒い影のような魔獣を体中に纏わりつかせたふたりの男は、夕食を囲む研究者と護衛の兵士達の輪の中へと入っていき、新しいダンジョンについて弾んでいた会話はいつしか悲鳴と怒号へと変わっていった。


翌朝、4艇の飛空艇の中には複数の天然魔石(中継コア)が運ばれ、飛空艇は空へと駆け上がっていった。


今まで天然魔石(中継コア)を島の外に運び出す手段が無かったダンジョンだったが、それを可能にしたのは飛空艇である。


ダンジョンが見つかった北極圏の孤島から海を渡ると、大陸の淵に小さな村がある。


住民の数は100人ほどで夏の間は畑を耕し、冬は動物を狩って生計を立てていた。


そんな村の中央に1艇の飛空艇が降り立つ。


飛空艇には、この土地を治める王国の旗が掲げられており、国の役人が来たのだと思った村長と村人があわただしく出迎える。


「これは、王国軍の兵士様。本日はどんな御用向きで・・・」


村長が飛空艇から出てきた兵士に声をかけるも、飛空艇から降りてきた王国の兵士達の様子が何かおかしいことに気がつく。


兵士達の目は虚ろで足運びもたどたどしく、何か病気にでもかかっているのかと思える有様だ。


「いかがなされました。体調でも悪いのでしょうか」


すると兵士達に近づいた村人に黒い影のようなものが飛びつき、それは他の村人へ次々と広がっていく。


「ひっ、なっ、何だあれは!」


一瞬の出来事であった。村人に次々と黒い影のような魔獣が取り付くとあっという間に村人全員が魔獣により支配された。


飛空艇から降りた兵士のひとりは、天然魔石(中継コア)を手に持つと村の家の中へそれを置いて立ち去る。


その後、飛空艇は何事も無かったように空高く舞い上がっていった。


村人全員の頭には、黒い影のような魔獣が取り付き、村人の魔力と生命力を殺さぬ程度に徐々に奪っていく。


魔獣が吸い上げた人間の生命力と魔力は、天然魔石(中継コア)を介して孤島のダンジョンの最深部にあるダンジョンコアへと送られる。


村人の生命力と魔力は、冒険者に比べれば微々たるものだが、それが数百、数千、数万の数となれば、ダンジョンを大きく拡張するには十分なものとなる。


天然魔石(中継コア)は、ダンジョンコアから約50kmほどの距離であれば、人間から吸い上げた生命力と魔力をダンジョンコアへ伝送することができる。


さらにダンジョンコアの一部の能力を受け継ぎ、魔獣を生み出す能力をも有する。


黒い影のような魔獣に支配された兵士達が乗る飛空艇は、北の地に点在する村や街に降り立つと、魔獣をばら撒き天然魔石(中継コア)を置いては飛び立っていくを繰り返した。


飛空艇に積まれた天然魔石(中継コア)が底をつくと、孤島のダンジョンに戻り天然魔石(中継コア)を補充してまた飛び立っていく。


北極圏の孤島に誕生したダンジョンを訪れる冒険者はほんの僅かだったが、その冒険者達の記憶を奪いダンジョンを大きく拡張させるために何が必要なのかを数百年もの歳月をかけて準備してきたダンジョンは、ようやくその成果を出す時が来たのだ。




◆飛空艇の外殻と躯体を作る魔法

・土魔法


◆飛空艇を創るために必要とされる魔法

・強化魔法

・固定魔法


◆飛空艇を飛ばすために必要な魔石など

・浮遊の魔石

・飛空の魔石

・魔力の魔石

・魔道回路


◆カルルが創った飛空艇

 飛空艇:154

 1000艇まで残り846


◆カルルが創った飛空艇の内訳

 ・飛空艇試作一号艇

 ・飛空艇試作二号艇 ※両親が使用

 ・飛空艇試作三号艇 ※カルルが使用


王国向け飛空艇

・アリーア王国向け飛空艇 53艇(通常型20艇、戦闘型30艇、早期警戒飛空艇3艇)

・アリーシュ王国向け飛空艇 30艇

・ハイザバード王国軍向け飛空艇 30艇

・フルーム王国軍向け飛空艇 23艇(通常型10艇、戦闘型10艇、早期警戒飛空艇2艇)


錬金術ギルド用飛空艇

・グランドマスター用兼、商談用戦闘型飛空艇

・薬草栽培兼治療用飛空艇

・トーデスインゼル(死の島)救助隊用飛空艇 8艇

・トーデスインゼル(死の島)物質補給用飛空艇 2艇

・遊覧用飛空艇 4艇


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ